Arcane視聴メモ — 英語読解・物語解剖・考察
はじめに
- 本稿はNetflix配信ドラマ「Arcane」の個人的な視聴メモ。
- 筆者は英語圏のドラマを見る際は基本的にオリジナル音声で(聞き取れない部分は英字幕で補完しつつ)見ているが、Arcaneは物語構造が非常に難しく、初回視聴時は理解できないところが多かった。
- 複雑に入り組んだ物語構造とそれを前提とした英語表現を理解するためにメモを取りつつ再視聴した。
- 同じように英語で視聴する日本語話者の参考になるかもしれないと思い、走り書き状態だったメモを元に書き起こしたのが本稿となる。
- 設定や考察、関連情報の深掘りはLeague of Legends(以下LoL)の公式WikiとFandom、ArcaneのFandomとRedditを利用している。
- 用語や登場人物の深堀り用にLoL公式Wikiへのリンクを張っているが、後付けで正史化されたArcaneとは齟齬がある(=レトコンが間に合っていない)箇所も多いので注意。
用語解説
- ルーンテラ[Runeterra]: Arcaneのスピンオフ元であるLoLの舞台。rune+terraなので「魔法の存在する別の地球」のような意味が強いと思うが、劇中キャラクターたちが “Runeterra” と言う場合は「我々が住むこの世界」の意味で使っている感じ。
- ピルトーヴァー[Piltover]: 別名、進歩の都市[City of Progress]。魔法による惨禍を避けるために作られた都市なので、国民国家というより、いろんな民族・種族の寄り合い所帯のような感じ。アカデミーには才気あふれる発明家たちが集まり、物語序盤でも科学技術によって発展しているが、魔法技術(ヘクステック)によってさらに発展していくことになる。
- ハウス[House]: 字幕だと大文字始まりになっているので、一般的な “house” とは違う使われ方。氏族=クラン[clan]とほぼ同義か。
- 評議会[Council]: ピルトーヴァーの最高意思決定機関。普通選挙によって選ばれた代表ではなく、有力ハウス[House]の代表(とピルトーヴァー設立者であるハイマーディンガー)によって構成される。議席は個人ではなくハウス[House]に割り当てられる。物語序盤の議席数は7。現実世界の「政府」を想像しているとドラマの内容に混乱する可能性が高い。筆者は序盤で混乱したが、一族経営大企業(ハウス)のCEO(代表)による寡頭制政治が行われているとみなすとすっきりした。裁判所の役割も担い、執行官への指揮命令権がある。三権分立やシビリアン・コントロールの概念はない。
- 執行官[Enforcer]: ピルトーヴァーの治安を維持する警察、かつ、他国からの侵略に備える軍隊。職業(個人)を指すこともあれば、組織全体を指すこともある。組織は有力ハウスからの資金援助によって運営されている。「一族経営大企業~」の見方を用いるなら、その企業群によって作られた自警団という感じ。それが大規模になるなら国家警察になるし軍になる、というだけ。日本で最も勢力の強い自警団は桜の代紋を使っているように。
- 長官[Sheriff]: 執行官組織のトップ。
- ゾウン[Zaun]: 別名、下層都市[undercity]。または単に地下[underground]と呼ぶことも。採掘が主な産業か。上層の規制は厳しすぎると感じた学者が危険な研究や発明をしていたりするので違法な裏稼業も盛ん。治安が悪い。 “undercity” という字面と相まって地下都市のように見えるが、地面の下にあるというわけではなく、深い谷になっているので光が届きにくい&空気がよどんでいるせいで地下っぽくなっている。
- レーン[Lanes]: 別名、裂け目[fissures]。劇中キャラクターが “the fissures” と言う場合は、必ず特定の場所(レーン)を想定している。日本語でも、ある地域内に山がひとつだけある場合に「昨日、山で鹿を見かけてさ~」と話すときの「山」は一般名詞ではあるが、話し手・聞き手双方ともに特定の場所を想像している。こういう感じで “the fissures” という言葉を使っているのだと思われる。上空から見れば細い小道[lane]のように見える裂け目[fissure]=谷が連なった地域があって、それをまとめて “the Lanes” もしくは “the fissures” と呼んでいる。そしてその谷の中が採掘場。
- ラストドロップ[Last Drop]: ヴァンダーが経営するバー。レーン住人の集会所のようになっていた。S1Act2以降はシルコの拠点となる。
- ケミ長者[Chem-Baron]: S1Act1~2の間にシルコに引き立てられてゾウンを牛耳った犯罪組織のトップたち。および、彼らによって構成される評議会。
- シマー[Shimmer]: 少量接種なら治癒効果、大量摂取すると身体強化の効果がある薬。中毒性があり、シルコがゾウンを牛耳ったS1Act1~2の間に蔓延する。可燃性が高く、戦闘用義肢の動力源として使われることも。
- ファイヤーライト[Firelights]: ゾウンに蔓延するシマーの撲滅を目的とする集団。S1Act1~2の間に結成された。名前はゾウンに生息するホタル[firefly]に似た虫に由来する。
- クリスタル[crystal]: 魔力を秘めた鉱物。青く光っている。未加工では不安定。劇中では単語として出てこないが、LoLロアでは “hexite crystal” と呼ばれている。 “-ite” は鉱物の響き(e.g. アダマンタイト)。 “hex-” なのでおそらく六角形の結晶構造を持っている。 “hex” には「呪い(魔法)」の意味もあるのでダブルミーニングかも。
- ジェムストーン[Gemstone]: クリスタルを加工して安定化させたもの。
- ルーン[rune]: クリスタル(ジェムストーン)から魔力を取り出す際に効果を特定するもの。魔法を実行するためのプログラミング言語みたいな感じ。
- ヘクステック[Hextech]: 魔法を科学的に活用する技術の総称。ヘクステック以前は才能によってしか魔法は発動しなかったが、以後は装置さえあれば誰でも使用可能になった。
- ヘクスゲート[Hexgates]: ヘクステックによって開発された巨大な長距離転送装置。これによってピルトーヴァーはハブ都市としてさらに発展する。
- ヘクスコア[Hexcore]: 進化するヘクステック装置。
- アーケイン[Arcane]: 大文字始まりなので一般的な意味(難解・不可解・神秘的)とは違う。序盤~中盤は「魔法」とほぼ同じ意味で使われている感じだが、終盤ではハガレンの真理の扉っぽいニュアンス(扉の向こう側から魔法を取り出せるようにする技術=ヘクステック)、時間と因果を超越した形而上の何かっぽいニュアンスで使われている感じがする。しかし意味深な匂わせがあるだけで、「アーケイン」が何を指すのか劇中で明言されることはない。
- ノクサス[Noxus]: 軍事国家。ノクサスの名家であるハウス・メダルダがピルトーヴァー評議会の議席を有する。
- 黒薔薇[Black Rose]: ノクサスの歴史を陰から操ってきた魔法使い(科学技術ではなく才能で魔法を使える者)たちの秘密結社。メダルダ家と因縁がある。
地理・社会
- 劇中にも何度か出てくるピルトーヴァー地図には、Upper Piltover、New Piltover、Mid Townが東側にあり、川を挟んで、Low Piltover、Alcove District、The Fissures(Lanes)、とある。おそらくこの順番で社会的な階層が形成されている。The Fissuresのあたりに巨大な「裂け目」があることに注目。南にはSouth side harbor(港)とStill water hold(刑務所)が、最北にはヘクスゲートがある。
- 用語解説ではピルトーヴァーとゾウンを明確に分けたが、上の地図を見てもわかるように、公的には川の南側もピルトーヴァーの一部という扱い。しかしまともに統治されておらず、下層側は搾取されるだけなので不満が溜まっていて、物語が進むにつれゾウン独立の機運が高まっていく。
- Arcaneという物語は、基本的に上層(ピルトーヴァー)と下層(ゾウン)の対立構造を主軸として進む。
- 下層側の人間は、「私たちはピルトーヴァー人[Piltovan]だ」と思っている人は少なそう。
- 上層側も同様に、公的には「私たちは同胞だ」と主張しても、下層側を侮蔑している人が多そう。
- どちら側の人間も、反対側の人間を “your people” と呼び、自分たちの側を “our people” と呼ぶ。明確に「やつら」と「われら」を分けている。
- ここまで把握していれば序盤で迷子になることはないはずだが、この「上層と下層の対立構造」というシンプルな枠組みだけで捉えていると、ファイヤーライトやノクサス人のような第三勢力・第四勢力が出てきたとき、話の流れを見失ってしまう。Arcaneは物語構造が本当に複雑だ。しかしその分、見応えがある。
以降は各話ごとの視聴メモ。前後関係を考慮せず最初から完全ネタバレしているので注意。
S1Act1: 要約
- ヴァイたちの幼少期とヘクステックの黎明を描く。
- ヴァイたちが起こした騒ぎをきっかけとして上層と下層の対立が激しくなる。
- ヴァンダーはシルコ一味からヴァイを守って死亡。
- ヴァイはマーカスに捕まって監獄へ。
- パウダーはヴァイに見放されたと思い込んでシルコの元へ。
- シルコとシンジドはシマーの実験を終えて量産体制を整える。
- ジェイスとヴィクターはヘクステックの実験を成功させる。
S1E1: Welcome to the Playground
S1E1: 登場人物
- ヴァンダー[Vander]: レーンの顔役。ラストドロップの経営者。ヴァイ・パウダー・マイロ・クラガーの育ての親。
- フェリシア[Felicia]: ヴァイとパウダーの母。パートナーのコノルとともに冒頭の戦闘(ゾウンの独立を目的とした革命/上層から見れば暴動)で死亡。ヴァイとパウダーは母親の紫の髪をそれぞれ赤と青で受け継いでいる。
- ヴァイ[Vi]: 主人公(Arcaneは群像劇なので明確な主人公はいないが物語の中心にいる)。殴り合いが得意。両親を殺されたことで上層に対する憎しみがある。正式な名前はヴァイオレット[Violet]。菫色=紫。
- パウダー[Powder]: 主人公(同上)。後のジンクス[Jinx]。発明と射撃が得意。他の三人に比べて幼いのでできないことが多く、お荷物扱いされている。マイロ曰く
[19:33] She jinxes every job。日本語の「ジンクス」は幸運・不運の方向は問わないが、英語では不運の方向にのみ使われる。 - マイロ[Mylo]/クラガー[Claggor]: ヴァイたちと血はつながっていないが、兄弟として育てられている。
- シルコ[Silco]: かつてはヴァンダーとともにゾウン独立のために戦ったが、いまは袂を分かっている。シンジドに生物を強化する薬(シマー)を開発させている。目的はゾウン独立のための力を手に入れること。
- シンジド[Singed]: 元アカデミーの学者。最終目的は死んだ娘を蘇らせること。シンジドにとってシマーの開発はその一環にすぎない。
- デッカード[Deckard]: シルコに命じられてヴァイたちを見張っていた。試験段階のシマーで怪物じみた身体能力を得る。
- ベンゾー[Benzo]: 質屋の店主。ヴァンダーとは旧知の仲。
- エコー[Ekko]: ベンゾーの店で働いている少年。Little Manの愛称で呼ばれる。小さいけど大人びている、みたいなニュアンスか。手先が器用&賢い→後年さまざまなデバイスを開発&まともな教育を受けていないのにハイマーディンガーやジェイスと高度な議論をする。別の世界線でパウダーと通じ合っていたのは両者ともギフテッドだからか。
- グレイソン[Grayson]: 執行官組織の長官。レーンを実質的に取り仕切るヴァンダーが下層の人間を上層から遠ざける代わりに、グレイソンは下層に干渉しない、という取引をしている。
- マーカス[Marcus]: 執行官。グレイソンの相棒。小物。出世欲が強い。シルコにこの性質を利用される。グレイソンの死後に長官となる。
- ハック[Huck]: 取引相手に約束を反故にされそうになっていたがラストドロップの面々に助けられる。他人につけこまれやすい自分を変えたくてシマーの中毒者となる→ヴィクターに救われて信奉者となる。
S1E1: あらすじ
- ヴァイたちはジェイスの研究室へ盗みに入るが、撤収時にパウダーがクリスタルを落として爆発させてしまう。駆けつけた執行官から逃げ延びたヴァイたちは、今度はデッカードたちに絡まれる。パウダーに荷物(盗品)を預け、ヴァイたちは乱闘を始める。追い詰められたパウダーは手製のグレネードを使うが不発に終わり、荷物を投げ捨てて逃亡する。ポケットに入れていた数個のクリスタルのみが手元に残る。
- 爆発の発生した場所はキラマン家(ジェイスのパトロン)の所有物件だったため、上層では大ごとになっていた。執行官であるグレイソンは犯人の引き渡しを要求するが、ヴァンダーは断る。グレイソンはヴァンダーに連絡手段を渡していったん引き上げる。
S1E1: 脚本
♪ Dear friend across the river
この土地の中心を流れる川(とその上に架かる橋)が、上層と下層を隔てる象徴になっている。こういった隔絶がさまざまな苦しみを生むなら、じゃあどうしたらいいのか、というのがこのドラマのテーマのひとつか。
[17:30] Vi: Wanna see how that ends?
「それ(刃物を使った戦い)がどういう結末になるか知りたいの?(命のやり取りをする覚悟はあるんだな?)」
[30:06] Vander: There’s worse things than enforcers out there. We both know that.
話しながらヴァンダーが自分の右腕(シルコを殺そうとしたときにナイフで切られた)を見る。
[30:46]
Ekko: This weirdo came into the shop, bought a whole bunch of stuff Benzo only keeps there for display. He paid in gold and didn’t even haggle. I charged him double price. Sucker.
Claggor: But how did you know where he lived?
Ekko: Followed him.
本エピソードの前にジェイスがベンゾーの質屋に来て品物をごっそり買っていった。魔法を実現するためにさまざまなものを蒐集しているからか。エコーがジェイスを尾行して住居を特定し、ヴァイたちに教えた→序盤の盗みにつながる。
[31:37] Marcus: Some trencher trash attacked one of the buildings in the Academy district, but you already knew that.
- trencher: 塹壕を掘る人→レーンの労働者。転じて下層の人間全般。おそらく蔑称。
[37:42] Deckard: They just caught us by surprise.
言い逃れのための嘘。
[37:44] Silco: Now his accomplice is asking questions about you. That’s not a risk I’m willing to take.
デッカードから自分にたどりつかれる危険を放置できない→シルコは言外にデッカードを殺してしまった方がいいか、と言っている。
S1E1: その他
- レーンは空気が悪いので上層の人間が来るときはマスクを着用している。下層の人間は慣れているので不要。
S1E2: Some Mysteries Are Better Left Unsolved
S1E2: 登場人物
- ジェイス[Jayce]: 上層側の主人公。幼いころに見た魔法を自分の手で実現したいと思っている。後のヘクステック開発者。
- ヴィクター[Viktor]: 下層出身。ハイマーディンガーに見出されて助手をしている。後のヘクステック開発者。チェコ訛りの英語(演者曰くbad Czech accent)で喋る。
- ハイマーディンガー[Heimerdinger]: アカデミー学長。ピルトーヴァー評議会の議長。精霊種なので不老。気取ったセリフまわし(=難しい英語表現)が多い。
- ケイトリン[Caitlyn]: 上層側の主人公。キラマン家の長女。正義感が強く、目的を果たすための能力も行動力もあるが、空回りしがち。
- カサンドラ[Cassandra]: キラマン家の当主。ピルトーヴァー評議会の一員。ジェイスに援助をしていた。
- メル[Mel]: ノクサスのメダルダ家代表としてピルトーヴァー評議会の議員を務めている。クールな政治屋かと思いきや意外と情に厚い。
- セヴィカ[Sevika]: 後にシルコの右腕となる。この時点ではモブっぽいがめちゃくちゃいいキャラになっていく。
S1E2: あらすじ
- 幼少期のジェイスは母とともに吹雪の中をさまよう。絶体絶命のところに魔法使いがやってきて、転移魔法で二人を救う。魔法使いはジェイスに加速[acceleration]のルーンが刻まれたクリスタルを渡す。
- 件の爆発により、許可なく違法な道具を用いて危険な研究をしていたことが公になり、ジェイスは裁判(法の専門家ではなく評議会による審判)を受ける。事前にハイマーディンガーから口止めされていたが、ジェイスは魔法を科学的に制御しようとしていたことを語ってしまう。ピルトーヴァーから追放されそうになるが、ジェイスの母親の懇願もあり、アカデミーからの追放のみで許される。魔法の研究が諦めきれず、キラマン家に協力を仰ごうとするが門前払いされる。絶望したジェイスは爆発で空いた穴から身を投げようとするが、直前にやってきたヴィクターによってタイミングを逃す。「世界を変えるのなら許可なんて求めるな」と言われたジェイスはヴィクターと協力関係を結ぶ。
- 執行官たちの捜査が苛烈(ゲームセンター前のやり取りや
[24:46] Grayson: We've conducted exhaustive interrogations, frozen commerce for half the district.のセリフからわかる)になり、レーンの住民の不満は爆発寸前になっていた。ラストドロップの集会で「反撃しよう[hit them back]」という声が上がるが、過去の暴動が多数の死傷者を出したことを引き合いに出して、ヴァンダーは住民たちを説得する。セヴィカを含めた数人がヴァンダーに見切りをつけて離脱する。
S1E2: 脚本
[06:45] Jayce: I believe I’ve discovered something truly incredible, a way to harness magic through science.
- harness: 自然の力を制御して利用する。
科学によって魔法を使いこなす術を見つけた→後のヘクステック。
[06:55] Heimerdinger: The Arcane is dangerous, Jayce. A force of nature. Science cannot control it.
「アーケイン」という単語が初登場。初回視聴時は「魔法」とほぼ同じ意味で使われていると思っていたが、2周目だと「現実世界に魔法として顕現する力の源=アーケイン」のようにも聞こえる。雷がすさまじいエネルギーを持っていることはわかっているが、その電力を利用することができないようなイメージ。
[10:57]
Elora: The House Ferros received your letter. They insist business is steady.
Mel: Steady is stagnant, Elora.
Elora: They wished me to remind you that it’s thanks to their innovations that you are the richest person in Piltover.
Mel: Yet I remain the poorest Medarda. We need something revolutionary, Elora. Something to put Piltover on the map.
メルはピルトーヴァーへ「追放」されたあと、優れた政治力で富を築き、ハウス・メダルダの影響力を評議会に議席を得るまで高めた。しかし「まだメダルダ一族の中では一番貧乏」なので、どうにかしたい。「安定は停滞、もっと革新的なものが必要」と考えている→S1E3でジェイスたちの不法侵入・ヘクステック実験を見逃す。流して見ているとシリーズを通してのメルの目的がわかりにくいが、ここではっきり言っている。「ピルトーヴァーの名を上げる」こと。「追放されたキレ者政治家は進歩の街を発展させる~いまさらノクサスに帰って来てくれと言われてももう遅い~」←これがやりたいのだと思われる。
[16:15] Shoola: Arcane talents are something you’re born with. They can’t be fabricated.
アーケイン(魔法)の才能は生まれ持つものであって、作り出せるものではない、というのはこの世界の常識っぽい。つまり、魔法は伝説上のものではなく、現実的に存在していることは広く知られている。が、ごく限られた一部の者が生まれ持った才によって使えるだけ。「もしそれが誰でも使えるようになったら?」というのがジェイスのやろうとしていること。
[16:28] Bolbok: The Arcane is the curse of our world. My race was nearly destroyed by it.
ボルボックの種族(気体種らしい)は、かつてアーケイン(魔法)の力によって絶滅しかけた。
[16:49] Heimerdinger: You don’t understand what’s at stake. But how can you? That’s a burden that only I here carry. Time.
重荷=歳月=その間にあったことの記憶。魔法が引き起こしてきた悲劇の歴史。それを背負えるのは不老のハイマーディンガーだけ。
[17:20] Shoola: Piltover was founded to escape the warmongering of mages, not cultivate it.
- warmongering: 戦争扇動。国を戦争に向かわせる行為。
ピルトーヴァーは魔法戦争を避けるために作られた。
[17:26] Bolbok: The Ethos is clear. He must be banished from Piltover.
“Ethos” はこの場面では直前の “to escape the warmongering of mages, not cultivate it” にかかっている? 魔法(戦争)を避けることがピルトーヴァーにおける道徳であり倫理規範(明文化された法かどうかは不明)なのに、真逆の方向に行こうとしているジェイスは社会(ピルトーヴァー)から追放しなければならない。
[17:39] Ximena: As a lower house, my voice doesn’t carry much weight here.
ジェイスの家系は下級ハウス。
[18:08] Heimerdinger: A violation of the Ethos calls for banishment, but I can sympathize with a young man’s dream to change the world.
- call for ~: ~が求められる。
「本来であればエートス違反は追放が妥当ではあるが」くらいのニュアンスか。エートス云々はやはり明文化された法ではなく、慣習法に近そう?
[21:01] Viktor: Could it work? Could these stones really invoke magic?
- invoke: (機能を)呼び出す。
- these stones: クリスタルのこと。
ハイマーディンガーには “far too unstable” と一蹴されるが、ヴィクターはクリスタルを安定化させれば魔法を使えるのではないかと思っている。施錠を任されたヴィクターはジェイスの研究を深堀りする時間を得る。翌朝には研究成果が破棄されてしまうので夜のうちにジェイスのところへ向かう。ちなみにこのとき映っている本にはルーンが書かれている。ジェイスが進めていた研究は「ルーンを使ってクリスタルの魔力を引き出す技術=ヘクステック」であることがわかる。
[26:44] Marcus: Nearly forgot. I ran into an old friend of yours. He had some stories. You weren’t always the peacekeeper, were you?
シルコから昔の話(革命運動をしていたこと、シルコを殺そうとしたこと)を聞いた。
[31:53] Viktor: Am I interrupting?
[S1E9:09:27] Jayce: Am I interrupting? と対になっている。ジェイスとヴィクターは互いの身投げを互いに阻止している。
[32:45] Viktor: Nobody’s ever believed in me, a poor cripple from the undercity. I was an outsider the moment I stepped foot in Piltover. I didn’t have the benefits of a patron or a name. I simply believed in myself. Which is why I’m here because I think you’re on to something. I want to help you complete your research.
「単純に自分自身を信じている」から「ジェイス(の研究)が何かをつかみかけていると思った自分」を信じてここにきた。
[34:33] Marcus: I was getting results! You heard the Council.
[24:55] Bolbok: Do whatever it takes. Turn the undercity upside down if you have to. でマーカスは「お前のやり方は甘いんだよ」みたいな感じでグレイソン(ヴァンダーとの取引があるのでハト派)の方を見ている。出世欲が強いマーカスは独断でラストドロップへ捜索に行って、いたずらに下層の人間を煽り、事態を悪化させた。
[34:47] Grayson: Maybe it’s not too late.
もう決定的な衝突は避けられないかもと思っていたが、ヴァンダーから連絡があったので「まだなんとかなるかも」となった。が、この連絡はヴァンダーからではなくヴァイから。おそらくエコー(グレイソンとヴァンダーのやり取りを声だけでなくレンズ越しに映像も見ている)に話を聞いて、連絡手段を知っていた。ヴァンダーはウサギのぬいぐるみ( [S1E1:36:03] Vi: When I was a kid, some guy took my favorite toy and threw it up there. 橋から帰ってくるときにどうにかして回収したっぽい)をパウダーが持っている(=自分が大切にしていたものを妹に与えている=別れを覚悟している)ことで、ヴァイがやろうとしていること(自首して事態を収める)に気づく。
S1E2: その他
- ボクシングゲームのランキング上位はすべてヴァイ。下位2つはクラガー。
- S2E2でジンクスがセヴィカの義手を修理していたのがこのゲームセンター。義手には本エピソードで出てくるパーツが流用されている。ランキング表示パネル。ボクシングゲームのグローブ。射撃ゲームの標的(パウダーが執行官の腕に嚙みつかせたやつ)。他のパーツもゲームセンターにありそうなもの。スピーカーはジュークボックスかな。
- 身投げを思いとどまった後、ジェイスはヴィクターから加速[acceleration]のルーンが刻まれたクリスタルを「本人から再び」渡されている。
S1E3: The Base Violence Necessary for Change
S1E3: あらすじ
- ジェイスとヴィクターはクリスタルを安定化させる方法を導き出す。実験なしでは確たる証明にならないため、機器が破棄されてしまう朝が来る前にハイマーディンガーの研究室に忍び込んで実験を強行し、成功させる。 “It’s time for the era of Hextech.”
- ヴァイは自首するつもりで執行官を待っていたが、先にやってきたのはヴァンダーとベンゾーだった。遅れてやってきた執行官に、ヴァンダーは自分が代わりに逮捕されることを申し出る。しかしベンゾーの店を出た矢先にシマーで怪物化したデッカードに襲われ、マーカスを除く執行官とベンゾーが殺される。ヴァンダーも気絶させられ、シルコのアジトへ連れていかれる。ヴァイ・マイロ・クラガーはヴァンダーの救出に向かい、シルコの手下たちと善戦するが、デッカードに圧倒される。件の爆発の原因がクリスタルであったことに気づいたパウダーは、ヴァイの言いつけを破って後を追い、移動式爆弾でクリスタルを起爆させる。予想外に大きかった爆発は、シルコを助けようとしたセヴィカの左腕を吹き飛ばし(→義手化)、シンジドを炎に包み(→火傷)、瓦礫でマイロとクラガーを絶命させた。ヴァンダーはデッカードとの戦闘中にシルコに刺されるが、シマーを摂取してデッカードを倒す。炎からヴァイを守って建物から飛び降りたところでヴァンダーは絶命する。パウダーは自分の爆弾が作動したことを喜びながらやってくるが、ヴァイは激高する。ヴァイは自分の怒りを鎮めるため、泣きじゃくるパウダーを置いていったんその場を離れる。パウダーの前にシルコがいるのを見たヴァイは急いで戻ろうとするがマーカスに捕まる。姉妹の関係性が自分とヴァンダーのそれに重なって見えたシルコはパウダーを殺せなくなり、親鳥が雛を庇護するように抱きしめ、安心させる。 “We will show them all.”
S1E3: 脚本
[01:31] Silco: And all the while, this question lingers before you: “Have you had enough?” It’s funny. You could pass a lifetime without ever facing a choice like that. But it changes you forever. For that, I thank you… old friend
直面しないまま人生を終えてもおかしくない、しかし直面すれば後の人生がすべて変わってしまう、この疑問に気づかせてくれた旧い友人(=自分を殺そうとしたヴァンダー)に感謝している(皮肉込みで)。
[05:56] Silco: You never did know when to walk away. Hmm. Stubborn to the end.
ヴァンダーとシルコが革命運動をしていたときに、ベンゾーは逮捕されたことがある(という裏設定がある→参考1、参考2)。おそらく「引き際を知らなかった」から逮捕された。あのころから変わってないんだな。ずっと引き際を知らないままなんだな[never know]というようなニュアンスのセリフ。
[10:11] Vander: You’ll get people killed. For what? Pride?
前半部分はデッカードがシマーを嘔吐しているカット。上層との衝突によってだけでなく、シマーによっても犠牲が出る。
[10:22] Vander: You had my respect. The Lanes’ respect, but that… that was never enough for you.
シルコはベンゾーの釈放を求めるデモ[protest]のとき(前述の裏設定リンク参照)に、最初に火炎瓶を投げた(こちらは裏設定ではなく [S2E5:17:10] で描写されている)。これに対して執行官が暴力で返答し、大勢の人間が死ぬことになった。おそらくこのあたりの文脈のセリフ。
[10:28] Silco: We shared a vision, Vander. A dream of freedom. Not just for the Lanes, but the whole of the underground, united as one. The nation of Zaun.
レーン(the fissures、ラストドロップのあるあたり)だけではなく、地下(the underground、実際に地面の下を指すわけではなくピルトーヴァーの川から南側一帯?)とされる地域全体の自由を勝ち取って、ゾウンという国家にすることが、かつてヴァンダーとシルコが夢見ていたことだった。
[10:47]
Silco: I trusted you, and you betrayed me.
Vander: What I did to you… I’ve never forgiven myself. You were my brother.
シルコが火炎瓶を投げた→大勢が死んだ→報いを受けさせる [S2E5:27:08] Vander: You deserved it. という単純な話ではなく、もっと複雑な事情がありそう。この二人の過去はかなり想像の余地がある。
[11:11] Silco: Can you imagine what it’s like? When your blood mixes with the filth and the river toxins eat through your nerves.
シルコの左目は下層の川(産業廃棄物で汚染されている)の毒によるもの。
[16:31] Vi: You’re not ready.
[S1E1:06:24] Vi: What did I tell you? / Powder: That I'm ready. と対になっている。
[27:12] Powder: You have to work. For me. Okay?
直前のシーンでジェイスとヴィクターはヘクステックの実験を成功させている。クリスタルの爆発によって何もかもを失ったパウダーと対照的に。マイロはヴァンダーの枷をすべて外し、クラガーは脱出口を確保していたので、このとき爆弾が作動[work]しなければ、実はすべてうまくいっていた。パウダーはいつも失敗して不運な結果を招いていたが、今回に限っては失敗すれば不運を回避できた。いつも通りに失敗すれば、この後に起こる何もかもが変わっていた。でもそうはならなかった。ならなかったんだよロック。だからこの話は続くんだ。
[37:21] Marcus: He’ll kill you if he hears you.
マーカスがヴァイを連れ去って投獄したのは、1. シルコに存在を知られたら殺されると思っていた(ので伝えていなかった [S1E5:36:47] Silco: From the dead? )、2. 自分にも幼い娘がいる(S1E6)ので慈悲の念がわいた、という板挟みで監獄に閉じ込めるしかなかった、みたいな理由か。
[38:44] Silco: We’ll show them. We will show them all.
- we: パウダーとシルコ自身。
姉妹(兄弟)だと思っていた人間に裏切られ、置き去りにされた私たちが、どんなことができるか、彼らに、世の中に見せつけてやろうじゃないか。
♪ Where is my home?
エンディングは帰る家を失ったパウダーの歌。
S1E3: その他
- ヴァイがパウダーに渡した発煙筒はS1E6で使われる。
- ヴァイが顎パン一発で最初に倒したシルコの手下(Gustove)は後でまたヴァイにボコられる。S1E4の監獄で飯を食っているときに顎を破壊され、S2E5の地下ボクシングで一発KOされるときも(義)顎を破壊されている。こいつの顎になんか恨みでもあるんか……。
- “take someone under one’s wing” は親鳥が雛を自分の羽で覆う動作から転じて、人が(弱い立場にある)他人を庇護下に置くことを意味する。劇中で直接的には出てこない表現だが、最後にシルコがパウダーを抱きしめる動作は、この表現を知っているかどうかで見え方が少し変わりそう。
以下はヴァンダーとシルコの過去を時系列に並べたもの。たぶんこうだと思う。5と7に時差がある(ヴァンダーの髭で判断できる)ところがポイント。
[S1E6:12:19]二人とも鉱夫をしている。[S1E5:30:24]二人とも革命運動をしている。[裏設定]ベンゾーが逮捕される。デモを行う。[S1E5:17:11]デモ中にシルコが火炎瓶を投げる。多数の死傷者が出る(死亡したフェリシアが映るがこれはヴァンダーの記憶の混濁によるもの)。[S1E5:27:01]ヴァンダーが近しい誰か(フェリシアではない女性)を失う。時系列的にWhen she died, I lost my head.の "she" はフェリシアではない。[S1E3:32:05]ヴァンダー(髭なし)がシルコを殺そうとする。シルコは姿をくらます。ヴァンダーはシルコに宛てて手紙を書くが読まれず、数年が過ぎる。[S1E1:0:15]暴動の中でフェリシアが死亡する。ヴァンダー(髭あり)がヴァイとパウダーを引き取る。
S1Act2: 要約
- S1Act1から数年後。
- ヘクステックは劇的に進歩し、ピルトーヴァーに繁栄をもたらす。
- 開発者であるジェイスは時の人となり、メルの画策もあってピルトーヴァー議員となる。
- 自身の病が進行する中でヴィクターは進化するヘクステック、ヘクスコアを開発する。
- ヘクスコアを巡ってジェイスと対立したハイマーディンガーは評議会を追放される。
- シルコについて調査するため、ケイトリンはヴァイとともにレーンへ潜入する。
- ヴァイはシルコの手下と戦いながら妹の行方を追う。
- ジンクスは奪ったジェムストーンと研究資料でヘクステックを再現する。
- ヴァイとジンクスが束の間の再会を果たす。
- ヴァイとケイトリンがファイヤーライトに連れ去られる。
- シルコはマーカスを使ってファイヤーライトを一連の襲撃事件の犯人に仕立て上げる。
- ジェイスの命令によって上層と下層の間に架かる橋が封鎖される。
S1E4: Happy Progress Day!
S1E4: 登場人物
- ジンクス[Jinx]: 自分の無垢さ(の象徴としてのパウダーという名前、幼く甘ったるい響きがある)が悲劇を起こしたので、それと決別するために不吉[jinx](
[S1E2:35:55] Vi: Because you're a jinx!)という正反対の響きの名前を使うようになった。イカれた感じのセリフまわし(=翻訳できない英語表現)が多い。
S1E4: あらすじ
- 実験の初成功から数年後、ヘクステックは進歩し、飛行船を長距離転送することも可能になっていた。このヘクスゲートによってピルトーヴァーはハブ都市となり、以前にも増して発展していた。
- ヘクステックはジェイスとヴィクターによってさらに進歩する。クリスタルを日常生活で安全に使用することを可能にしたジェムストーン。このジェムストーンを動力源としたガントレット(後のヴァイの武器)、レーザー(後のヴィクターの武器の原型)。これらの試作品を披露され、ハイマーディンガーは感嘆するが、世へ出すことには慎重な姿勢を見せる。対照的に、ジェイスをピルトーヴァーの新しいリーダーに据えて利を得ようと考えているメルは、「進歩の日」にジェイスが最新の研究成果を発表することを期待する。当日、ジェイスは逡巡するが、結局無難な内容でスピーチを終える。
- シルコ一味の飛行船がファイヤーライトに襲われ、積み荷のシマーが燃やされる。護衛のために同乗していたジンクス(パウダー)はファイヤーライトを制圧しようとするが、ヴァイに見捨てられた記憶がフラッシュバックし、錯乱しながら敵味方なくミニガンの弾を撒き散らす。この件がシルコの耳に入り、ジンクスは暇を出される。自分の有能さを証明するため、ジンクスはジェイスの研究室を襲撃し、ヘクステックの研究資料とジェムストーンを盗み出す。シルコはこの独断行動に激高するが、盗み出したのが上層の最新テクノロジーであることを知り、ジンクスにヘクステック兵器を製作させる。
- ピルトーヴァー評議会は襲撃犯がヘクステックを悪用する可能性を危惧する。安全側に倒すため、ジェイスはヘクスゲートを含むすべてのヘクステック事業を一時停止することを提案するが、それでは大勢が経済的に苦しむことになると却下される。スピーチの際は失望したメルだったが、この膠着状態を新たな機会とみなし、「科学者としてこの問題に対処可能なジェイスが必要な資源を使えるようにするため」という論理を用いて、ジェイスを評議会の一員に加える動議を出し、採択される。
S1E4: 脚本
[04:32] Cassandra: Our most famous protégé, Jayce Talis.
[S1E2:24:14] Cassandra: I think you've done enough. だったんちゃうんかーい。まあこれくらいじゃなきゃ名家の当主は務まらないか。
[06:59] Ekko: We have five minutes till they’re out of there.
やつらを拘束している結晶は5分しか持たない、の意。ファイヤーライトはシルコ一味相手でも不殺を貫いている?
[06:40] Marcus: Since you’re looking for more work, you can take the graveyard shift tonight at the fair. I want this one on a boat to Stillwater prison.
- on a boat: 監獄は孤島なのでこの表現。
ケイトリンはここで夜勤を命じられてジンクスの襲撃に居合わせる。かつ、シルコの手下が監獄へ送られたことをここで聞いている→本エピソードの終盤に監獄へ。
[18:16] Silco: The world’s growing smaller every day, thanks to the Hexgates. And now, we’re cut off. The topsiders are leaving us further and further behind.
ヘクスゲートによって高速な流通が可能になり、世界のサイズは小さくなった。それによって上層(ピルトーヴァー)はどんどん発展するが、下層(ゾウン)は置き去りにされている。上層と下層の差は開くばかりになっている。
[19:19] Silco: The sons and daughters of Zaun deserve more than their runoff.
- their: 上層側。
- runoff: 地表に吸収されずに流れてくる排水。
「上層のやつらの残飯(での暮らし)」くらいのニュアンスか。ゾウンの子供たちはもっといい暮らしを与えられるべきだ、の意。
[22:38] Jinx: I know. Just… just some wannabe street trash.
- wannabe ~: 日本語のワナビとほぼ同じ意味だが、「~気取りの勘違い野郎」みたいなニュアンスが強い。ここでは「ギャング気取り」くらいの意味か。
[28:05] Caitlyn: Get out! Now!
ここでケイトリンがすぐに事態に気づくのは、飛行船の調査中に同じ絵柄(ジンクスの落書き)を見ていたから。
[31:03] Mel: I propose that a new chair be brought forth, and that House Talis be elevated to this august body. As a Councilor, he will have the resources necessary to protect all our investments.
- House Talis be elevated: 下級ハウスは議員にはなれないとかの規定があるっぽい? ジェイスを議員にするには本人ではなく「ハウス」の格を上げる必要がある。
- august body: 由緒ある機関。「ピルトーヴァー評議会」の持ってまわった言い換え。
- investments: 投資(したもの)。メルの政治力が垣間見える表現。自分の利を損なわないためにもジェイスを議員にする必要がある、と商人の議員全員に思わせている。このあと「経験はあるのか」と聞かれて「科学者としての経験はある。(評議会のトップである)ハイマーディンガーと同じく」と答え、商人ではないハイマーディンガーからも「科学者として」賛同を得て採決へ。
[33:32] Caitlyn: The same symbols showed up at the botched smuggling operation at the Hexgates.
- botched smuggling operation: 本エピソード序盤でシルコの手下がやろうとしていたシマー密輸。
[36:15] warden: You’ll be able to, as soon as he can move his jaw again.
顎破壊1回目。
S1E4: その他
- セヴィカが入っていったナイトクラブはラストドロップの魔改造。シルコはここを拠点にした。
- ジェイスがスピーチをする前に最前列の席が映るが、このときハイマーディンガーの隣に座っている獣人は、S2E4でアンベッサに無謀な実験をさせられる学者。S2E1のメルの演説時にもケイトリンの後ろにいる。
- ジンクスの隠れ家はレーン換気システムの廃棄区画。巨大なプロペラは換気のためのもの。
- ジンクスが作業中に聞いている曲は Get Jinxed。リリースはだいぶ前だが、このMVからさまざまなモチーフがArcaneに持ち込まれているので必見。Arcane以前・以後の反応を並べたYoutubeコメントがおもしろい。
S1E5: Everybody Wants to Be My Enemy
S1E5: 登場人物
- スカイ[Sky]: ジェイスとヴィクターの助手。ヴィクターに想いを寄せている。
- アマラ[Amara]: 大手ギルドの商人。評議会と(商業的な)つながりは深いが議員ではない。
S1E5: あらすじ
- 「ヘクスゲートを稼働させたまま安全を確保する」という難題に対処するため、ジェイスはゲートの利用記録を調査し、多数の問題点を見つける。この機会に腐敗を一掃しようと奮闘するが、その腐敗によって恩恵を受けていた他の議員や有力者たちと、そうとは知らず敵対関係になってしまっていた。メルからこのことを知らされたジェイスは、彼らの特権を復活させつつ、自身の政治的基盤を築いていく。
- ジェイスの議員としての動きを冷めた目で見つつ、ヴィクターは「魔法は単なる『機能』ではない」という仮説に至る。多数のルーンでジェムストーンを覆ったヘクステック装置を使ってさまざまな組み合わせを試行するが、うまく動作しない。その作業中、ヴィクターは血を吐いて倒れる。ヴィクターの血を吸収した装置は何らかの劇的な変化を起こす。病院で目覚めたヴィクターは自分に残された時間が少ないことを悟る。
- ケイトリンは密輸船で逮捕された男に話を聞こうとしたが、顎を破壊されて会話不能だったため、この暴力事件を起こした囚人が何らかの事情を知っているとにらんで面会する。ヴァイは最初、執行官であるケイトリンをシルコの手先だと勘違いし、話が嚙み合わなかったが、ジンクスの落書きを見せると態度が一変する。ヴァイの話に出てきたシルコが一連の事件(密輸船襲撃・ジェムストーン強奪)の裏にいるという確証が欲しいケイトリンはヴァイを釈放する。
- ケイトリンはヴァイにゾウン内を連れまわされ、住民たちの暮らしぶりにふれる。ヴァイは最終的にセヴィカのところへたどりつく。激しい戦闘の後、セヴィカを制圧したヴァイは妹の行方を問う。事実を知って衝撃を受けているところにセヴィカが反撃し、ヴァイは重傷を負うが、ケイトリンがライフルで援護し、セヴィカとは痛み分けとなる。
- マーカスは先日の襲撃事件のことをシルコに抗議する。シルコは「お互いにとって厄介」な存在であるファイヤーライトに罪をなすりつけるため、ファイヤーライトのロゴが描かれたジンクスのグレネードをマーカスに渡し、一連の事件の証拠として偽装するよう要求するが、マーカスの反応は芳しくない。マーカスとの関係性が怪しくなってきたと感じたシルコは、上層とのパワーバランスを保つため、ジンクスにヘクステック兵器の開発を急がせる。
- ジンクスは盗んだ資料とジェムストーンからヘクステックを再現しようとするが、家族を奪った爆発の記憶がフラッシュバックし、作業を進めることができない。シルコは自分が殺されかけた川にジンクスを連れていき、「パウダーを死なせろ。ジンクスは完璧だ」と言って水底に沈める。この「洗礼」によって生まれ変わったジンクスはトラウマに邪魔されることなく作業を進め、ヘクステックの実験を成功させる。
S1E5: 脚本
[02:57] Vi: Hey, give Silco a kiss on that winning eye of his, will you?
確保されるときにちらりとマーカスの方を見ているので「自分がシルコとつながりのある執行官に捕まった」ことは把握している(個人の識別はしていない [S1E6:33:57] Vi: I don't know. )。長い監獄暮らしで疑心暗鬼になっている(?)こともあって、執行官の制服を着たケイトリンがシルコの手先に見えている。
[03:03] Caitlyn: Silco? The industrialist?
マーカスによってシルコの犯罪行為は隠蔽され、表では実業家として名が知られている。
[03:06] Vi: Okay, this is getting old. Can you just send in whoever’s gonna kick the shit out of me, so I can get on with my night?
- this: ケイトリンとの会話。
- is getting old: がダルくなってきた。
- kick the shit out of: ボコる。
- get on with one’s ~: (面倒なことを終わらせて)~に戻って続ける。 “get on with my day” の場合は「日常に戻る/自分の一日を再開する」。の夜[night]版。
ヴァイはケイトリンが終始とぼけていると思っているので、「そういう茶番はもういいから、さっさと私をボコるやつをよこせばいいだろ」と言っている。このシーンの後、看守が [04:20] You want us to have a chat with her? と言いながら杖を床に叩きつけるシーンがあるので、この監獄では日常的に「暴力」という名の会話[chat]が行われていることがわかる。「それ(面倒なこと)をさっさと終わらせたい」というようなセリフ。ケイトリンは嚙み合わない会話からヴァイが話の通じないイカれた囚人だと思っていたが、この諦観混じりのセリフを聞いて、そうではないかもしれないと考え、赤い線(red line: 越えてはならない一線)を踏み越えて、もう少し話を聞いてみることにした。
[04:13] Caitlyn: I’ve got orders from Councilor Talis, concerning Inmate 516.
[S1E6:23:16] I saw Caitlyn Kiramman had a prisoner released on your order. でジェイスが微妙な反応をするので、おそらくこれは偽造。
[04:37] Caitlyn: How many “chats” have you had with her?
さっきのヴァイのセリフを思い出してこの質問をしている。
[07:35]
Marcus: Arresting her would be doing you a favor.
Silco: I don’t need favors.
- do ~ a favor: ~のために役立つ。
- favor: 親切な行為。 “I need a favor.” で「(あなたに)頼みがある」の意になる。
このやり取りは日本語には変換できないやつ。「ジンクスを逮捕することが、(シルコの状況を改善することの)助けになるぞ」という申し立てに対して、 “favor” という単語をそのまま「必要ない」と返している。「余計なお世話だ」くらいのニュアンスか。
[07:46] Silco: The Firelights have been a thorn in both our sides. They ambushed my shipment at the Hexgates on the same day as the attack. It seems to me the Council has its culprit.
- thorn: トゲ。邪魔なもの。
シマーの撲滅を目的として行動するファイヤーライトはシルコにとっての敵。彼らはヘクスゲートで騒ぎを起こしているので、上層側から見ても犯罪者集団。だから「お互いにとって邪魔な存在」のはず。ジンクスが襲撃したのと同じ日にファイヤーライトがヘクスゲートで飛行船(シルコの密輸船)を襲撃したのだから、評議会はもうすでに「ホシをあげている」ように見える→ファイヤーライトを一連の襲撃事件の犯人に仕立て上げろ、の意。
[07:58] Marcus: Oh, that’s tidy for you. What if I’m not interested in playing along?
ファイヤーライトはシマーがなければそもそも活動していないので、「あんたにとっては都合のいいシナリオなんだろうが」みたいなニュアンスか。そこまでする必要性をマーカスは感じていない。が、これまでやってきた隠蔽工作その他( [08:04] Silco: We've accomplished a lot together. )があるので、いまさら足抜けできない。
[09:37]
Jayce: Have you made any progress with the stolen Gemstone?
Marcus: Yes. Chief suspect is an undercity gang. They call themselves the Firelights.
しかたないので “playing along” するマーカス。
[10:29] Jinx: It’s all about these runes. They form some kind of math-y, magic-y gateway, to the realm of heebie-jeebies.
- -y: ~っぽい。かなりくだけた(ふざけた)言い方。
- realm: 領域。ここでは異界のニュアンス。
- heebie-jeebies: ゾクッとする。ゾワゾワする。
ジンクスは本に書かれたルーンを見ながら、これらの文字が「キモい領域(アーケイン)への数学的・魔術的な扉になる」と、軽い口調で(自分に)解説している。日本語吹替と日本語字幕を確認してみたが、やはりこの「軽々でイカれているが本質を突いたような喋り」にはなってなかった。こういうのを翻訳するのは難しい。
[13:14] Vi: All us fissure folk can.
- fissure folk: レーンの住人。
[13:30] Jayce: You had a vision?
ヘクスゲートでふらついたとき( [10:06] Viktor: A headache. )に何か天啓めいたものを得ている描写がある。ここでアーケインの方から語りかけられた(ヘクスゲート内部なのでアーケインとの境界が薄い?)気がした(?)ので次のセリフに続く。
[13:32] Viktor: What if we’ve been looking at it backwards? We’ve been trying to discover runes that invoke specific effects and then molding them to a useful function. Tools, as you like to put it. But If the legends are true, mages aren’t bound to single functions. It’s said the Arcane speaks through them. They think. They adapt.
- have been doing: いままでしてきた(いまもしている)が、もしそれが間違っていたら? というニュアンスでの現在完了進行形。
- as you put it: 君が言うように。これに “like to” 「よくする/しがち」が組み込まれて「君がいつも言うように」みたいなニュアンス。
筆者訳: もしかしたら僕らはこれまで逆の見方をしてきたんじゃないか? 僕らはこれまで特定の効果を持つルーンを見つけ、それを便利な機能に、君が言うところの「道具」に作り変えようとしてきた。でも伝説が本当なら、魔法使いは単一の機能に縛られない。「アーケインはそれを介して語る」と言われている。それは自ら考え、適応するものなんだ。
全体として「魔法は無機的な機能・道具ではなく、それ自体が思考し、適応(順応・学習・成長・進化)していく、有機的なものではないか」みたいな話をしている。最後の “they/them” が何を指すかは少しわかりにくい。複数形なので素直に捉えると直前の “mages” の代名詞のように思えるが、ヴィクターがここで言わんとしていることを考えると、「魔法そのもの」であると捉えるべきだろう。それは単一の機能に縛られない汎用的なものであるはず、という仮説から、多数のルーンの複雑な組み合わせを試している。
[15:32]
Mel: That merchant formerly enjoyed certain leniencies with regard to her trade in exchange for her generous Academy patronage.
Jayce: By leniencies you mean corruption?
Mel: Hmm, Amara’s harmless.
- leniency: 寛容。ここでは商取引における「便宜」や「目こぼし」のニュアンス。
「あの商人(アマラ)は以前、アカデミーへの寄付と引き換えに取引において『目こぼし』を享受していた」とメルはやんわりした表現を使うが、ジェイスは「『目こぼし』って不正(腐敗)のこと?」と直接的に意味を問いただす。メルは「悪意はない/害はない存在だ」とまたやんわりと答える。やっていることはグレーゾーンで腐敗とまでは言えない感じか。商取引とは関係ない部分(S2E3)で “harmful” だったが。
[23:33] Silco: Good thing you’ve located proof of the Firelights’ involvement.
- good thing: 後の文を受けて「いやあ、よかったよかった」みたいなニュアンス。
- have located: 脅迫的ニュアンスの現在完了形。
(一連の事件に)ファイヤーライトが関係している証拠をお前が見つけてくれてよかったよ、と事実とは反することを、いままさに起こった事実のように言いながら、グレネードを取り出す。これを事実ということにしろ、の意。
[23:43] Marcus: This has gone too far!
流されながら(というかシルコの手のひらで転がされながら)ここまできてしまったが、ここがマーカスの「超えてはいけないライン」。倫理的葛藤(e.g. [07:15] Marcus: A good woman. )の限界点。シルコの人心操作に耐えられなくなってきているのもあるか。
[23:47] Silco: Imagining yourself a hero? One final act to make you the martyr you’ve always seen yourself as?
マーカスは小物だが、小物であるがゆえに「殉職して英雄になる」ようなことを常に思い描いている、ということを見抜いているシルコの(心理的負荷をかける系の)人心操作。小物すぎるのでどうせやれない、ということも見抜いている。「その “one final act” でお前がやってきたことが帳消しになるとでも思ってるのか」みたいな皮肉込み。
[24:28] Jinx: I can’t do it. Just… give it to the doctor.
- doctor: シンジド。
[25:20] Babette: Silco’s number two’s a regular. I can have Miguel tell you where to find her.
- Silco’s number two: セヴィカ。
- Miguel: たぶん店員。ここで名前のみ登場。誰やねん感がすごい。
[29:10] Jinx: Right, he was like a brother to you, and he turned his back and blah, blah, blah.
- blah, blah, blah: 英語ドラマ頻出。相手の話を茶化すときの意味のないフレーズ。Get Jinxed の冒頭でも使われている。
[32:06] Viktor: How much time do I have?
この直後にセヴィカが開示した手札がDEATH(死)とMAGICIAN(魔術師)。後者には腕が三本ある。ヴィクターの最終的な姿はヘクスクロー[Hexclaw](S1E9でヘクスゲート内上昇時にレーザー発射しているやつ)があるので、これはヴィクターの未来の暗示になっている。
[32:33] Vi: You filthy traitor.
セヴィカはS1E2のラストドロップの集会でヴァンダーに見切りをつけて出ていったメンバーの一人。その直後にシルコの手下になる。
[35:45] Vi: You gonna help me out, Cupcake?
「カップケーキ」はいわゆるペットネーム。ニックネームは知り合い程度でも使っていいが、ペットネームは極めて親しい人にしか許されない。が、ヴァイの場合は逆に距離感の表現としてペットネームを使っている。
[22:31] Vi: You're hot, Cupcake.→娼館で。- 今回
- ケイトリンが自分の銃を引き換えにしてヴァイを救う。
[S1E6:34:53] Vi: Caitlyn, just listen, we can work this out.→ジンクスとの再会時。[S1E7:28:29] Vi: It's been real, Cupcake.→橋の上での別れ。[S1E7:30:04] Vi: Caitlyn!→橋の上で別れたあとに銃声を聞いて戻っていくとき。[S1E8:24:19] Vi: Do yourself a favor, Cupcake.→評議会での意見不一致後。ヴァイは下層出身の自分には上層に居場所はないと感じている。[S2E1:11:19] Vi: You were right, Cait.[S2E1:12:05] Vi: Cait, I can't wear this.→ジンクスの評議会爆撃後にキラマン邸で。- ジャンナ寺院戦ではすべて “Cait” 呼び。
- ジャンナ寺院戦後に決別。
[S2E6:19:40] Vi: Don't sugarcoat it, Cupcake.→ヴィクターのコミューンでの再会時。- ケイトリンがアンベッサを裏切ってヴァンダー救出に協力する。
[S2E8:11:46] Vi: Cait, she's changed.→ジンクス逮捕について口論しているとき。[S2E8:29:28] Vi: Cait. I don't fucking care.→ "making love" 中。[S2E9:46:25] Vi: I am the dirt under your nails, Cupcake.→オーラス。ここでようやく「極めて親しい人にのみ許された呼び方」としての使い方をしている。
[36:47] Silco: From the dead?
シルコはマーカスからヴァイの死亡を報告されていた( [13:28] Silco: Her father went on a long trip and Daddy here assured me that she left with him. )ので驚いている。
S1E5: その他
- このあたりからマーカスの行動原理・キャラクター性がわからなくなる人がいるかもしれない(筆者がそうだった)ので、数千Voteを集めているRedditの投稿を用いて補助線を引いておこう。雑に訳すと次のようになる。普通に生きていて、シルコやアンベッサのようなヴィランに出会うことは稀だ。私たちは彼らのような存在について家で語り合い、ドキュメンタリーを見たり、歴史の教科書で読んだりする。ひるがえって、マーカスはあまりにリアルで、理解できすぎてしまう。マーカスのような存在[Marcuses]は普通に生きていれば毎日のように出会う。彼は腐敗した(社会)システムの現実そのものなのだ。
- ジェイスはS1E4では技術者としての倫理、「進歩か保守か」で揺れていて、スピーチや評議会での発言を見る限り、保守側(ハイマーディンガー側)に傾いていたが、本エピソードからは進歩側(メル側)に傾いていく。これ自体はヴィクターの価値観と合致するが、技術者としてではなく政治家(屋)としての考え方が強くなり、ヴィクターとすれ違っていく。
- ジンクスが見ていたヘクステックの資料は
[S1E2:21:01] Viktor: Could it work? Could these stones really invoke magic?でヴィクターが見ていた本。 - ヘクステック初実験の衝撃で倒れた箱に入っていたのは、ヴァイからもらったウサギのぬいぐるみと発煙筒。
- ケイトリンがパルクールを終えてレーンにたどりついたとき通りを歩いている老人は地上の列車乗り場にいた老人と同じ。
- ヴァイが着ているジャケット(とケイトリンに渡した服)は絡んできたチンピラたちのもの。
- ヴァイが違法肉屋で受け取った紙に描かれていたのは娼館の紋章。
- ゲームセンターでのジンクスのランキング表示名はパウダーのPOW。1位のVIに届かず2位。
- マーカスがシルコのオフィスで持っている血のついた金貨はS1E3でグレイソンが殺されたときのもの。
- シルコがジンクスを川に沈める行為はキリスト教の「洗礼」を知らないとたぶん意味がわからないやつ。創作でモチーフとして用いられる場合は、「古い自分を死なせて新しく生まれ変わる」という意味を持つことが多い。ジンクスのはまさにそれ。
- Enemy が流れているときに出ているのはバンドメンバー本人たち。MVにも登場している。 “My enemy” のフレーズのところでヴァイが「敵」であるセヴィカをにらみつける。
- セヴィカの義手はシマー注入機能付き。これで戦闘中にドーピング可能。機械部も紫に光っているので、おそらく義手の動力源としてもシマーが使われている。
- 最後にジンクスが製作したヘクステック装置はS1E3でジェイスとヴィクターが使っていた装置とほぼ同じ構造。これでS1E3時点の上層側に追いついた、という描写。
S1E6: When These Walls Come Tumbling Down
S1E6: あらすじ
- ヴィクターが手動でルーンの組み換えを行っていたヘクステック装置は、いまやそれ自体が意志を持つ一個の生命体であるかのように自動でルーンを組み替えるようになっていた。血を吸収したことでこの変化が起こったことに気づいたヴィクターは装置にふれようとするが(精神干渉を受けて?)気を失う。ヴィクターがヘクスコアと名付けたこの装置は生体機能を拡張する能力を持っていた。植物が巨大化する様を見たジェイスは、この力にヴィクターの病を治す可能性を見出すが、植物はすぐさま枯れてしまう。ヴィクターは「生体の側が変異を拒絶しているのだ」と予想する。原理を解明しようにもヴィクターに残された時間は少ない。二人が助力を仰いだハイマーディンガーは「これと同じものによって国が滅びるのを見てきた」と言い、さらにはヴィクターの変化がヘクスコアの影響(精神干渉)によるものであると主張する。ヘクスコアの破壊を強く求めるハイマーディンガーとジェイスは対立する。ジェイスは評議会でハイマーディンガーを糾弾し、「名誉ある引退(=除名)」を求め、全会一致で可決される。
- 幼少期のヴィクターは巨大なサンショウウオの変異体を生きながらえさせようとしている科学者、シンジドと出会う。ヴィクターはしばらく助手をするが、苦しみ悶えながらも生かされ続けている変異体の姿を見てショックを受ける。シンジドは憐れみからではなく、自らの目的(娘を蘇らせるための手段=シマー開発)のために変異体を生かし続けているにすぎなかった。時が流れ、死に直面したヴィクターは、かつてのシンジドの「変異体は生き延びねばならない」という言葉の意味を理解する。変異とは進化の可能性だ。その可能性を閉ざしてはならない。どんな手段を使っても。
- シルコはヴァイについて虚偽の報告をしていたマーカスを遠回しに問い詰める。「従わなければ家族に危害を加える」とシルコから無言の脅迫を受けたマーカスは、一連の襲撃事件の犯人として仕立て上げるため、ファイヤーライトのロゴが描かれたジンクスのグレネードをジェイスに渡し、「さらなる襲撃が予想される」と進言する。ジェイスは街の安全を確保するため、上層と下層の間に架かる橋の警備強化を命令する。それは交通・流通の遮断とほぼ同義だった。
- ヴァイとケイトリン、そしてそれを追うシルコの手下たちを、ファイヤーライトのリーダーが遠くから眺めている。
- ジンクスはセヴィカからヴァイのことを聞き出す。かつてヴァイに「どこにいても見つけるから」と言って渡された発煙筒を、見晴らしのいい高所で使う。
- 逃亡の末にたどりついたヴァイの生家でケイトリンとヴァイは一時の休息を得る。シマー中毒者となったハックの導きでケイトリンはシマー入りの薬を手に入れ、ヴァイを回復させる。二人の元にシルコがやってきて、シマー中毒者たちをけしかける。ヴァイは朽ちかけていた給水塔に拳を叩きつけて倒壊させる。混乱に乗じてシルコたちから逃げる途中、ヴァイは青い煙を目撃する。
- ジンクスとヴァイは再会し、泣きながら抱き合う。遅れてケイトリンが到着する。ヴァイに騙されたと勘違いしたジンクスは敵意を剥き出しにしながらミニガンを構える。突然ファイヤーライトがあらわれて乱戦になる。最終的にヴァイとケイトリンはファイヤーライトに連れ去られ、ジンクスだけが取り残される。
S1E6: 脚本
[03:14] Singed: Very well.
[S2E6:18:11] と [S2E8:34:06] でも使うフレーズ。シンジドの口癖っぽい。
[03:40] Heimerdinger: Seems just yesterday I stumbled upon an aspiring young scholar from the undercity here,
ハイマーディンガーはここでヴィクターに出会い、その才能を見出した。
[03:57]
Viktor: Do you contemplate death, Professor?
Heimerdinger: Only that of friends.
- contemplate: じっくり考える。
ハイマーディンガーは不老なので自分の死についてじっくり考えることはない。
[06:36] Jayce: I think it has something to do with gasses in the fissures where he grew up.
- gasses in the fissures: 灰色の靄[Grey]のこと。
[06:50] Jayce: Viktor saved my life once.
- once: 「かつて」の意だが周回視聴すると……。
ここでジェイスがいじっているリストバンドは、S1E2で身投げしようとしたときにヴィクターから渡されたもの。「命を救われた」は比喩ではなく文字通りの意味だとわかるようになっているカットだが、2周目視聴時には “once” ではなく “twice” だと気づくようになっている。ジェイスが幼少期に吹雪で死にかけたときに命を救い、このリストバンドのクリスタルを渡したのもまたヴィクターだから。
[09:03] Jinx: Someone? Anyone?
訳すとジンクスっぽさが失われてしまうやつ。
[09:19]
Thieram: They… they got in a fight with Sevika. They did a number on her.
Jinx: Oh really? Which number?
Thieram: It’s like a saying…
- do a number on ~: ~をコテンパンにする。
訳すとジンクスっぽさが失われてしまうやつ&日本語には変換できないやつ。イディオムとしての “do a number on” の “number” に単語としての意味はないが、その無意味な単語のみを取り出して、「どの番号?」と、コントみたいな返しをしている。それに対してバーテンは何かうまい返しをしようとするが思いつかず……というシーン。
[11:29] Jinx: I feel like you and I got off on the wrong arm. Maybe we should try the other.
- get off on the wrong foot: 出だしを間違える。
訳すとジンクスっぽさが失われてしまうやつ&日本語には変換できないやつ。本来のイディオムなら “wrong foot” となるところが “wrong arm” になっていて、これだけでもジンクスっぽいセリフまわしだが、この「言い間違い」があることで、後に続く「もう片方を試してみる?」が「もう片方の腕も斬り落としてみる?」の意味に転じている。
[11:49] Sevika: She’s with some girl enforcer.
ケイトリンは執行官の制服ではなかったが、使っている銃で執行官だとわかった(?)。
[11:57] Sevika: Her back in town, it’s only a matter of time before you implode and Silco finally gets the message that you’re about as good for our cause as you were for your family. Jinx.
- implode: 自滅する。自壊する。
- get the message that ~: ~を理解する。~に気づく。
- cause: 大義。信念に基づいた運動。ここでは「ゾウンを国家として独立させること」。日本語にはない概念なので正確には訳せない。
長いセリフなので分解。1. ヴァイが街に戻ったことで次のことが起こるのは時間の問題だ。2a. (家族のことで精神的に不安定な)ジンクスが自滅する。2b. (これまでさんざんジンクスに甘かった)シルコがついに「ジンクスは本人の家族にとってそうだったように私たちの目的にも不吉をもたらす」ということに気づく。2bの文節は “as good ~ as ~” の形だが、 “good” にかかっているのは “you were for your family” なので、本人の家族にとってジンクスは「不吉」でしかなかった、という事実をもって、反語となっている。
[12:16] Jinx: Ten outta ten, toots!
- ten out of ten: 10点満点中10点。よくできました。
- toots: お嬢さん。この場面では見下した言い方。
[12:18] Jinx: I think I know just how to deliver that message.
- I think: “It’s not what you think” を受けている。考えを見抜いた気になっていたセヴィカへのあてこすりのニュアンス。
- that message: “Silco finally gets the message that” 以下を受けている。
メッセージを伝える方法は知ってる→セヴィカに “LIAR” というメッセージを書いて天井に吊るす→終盤でシルコがそのメッセージを受け取る。
[13:20] Silco: You remember our old friend Vi, don’t you? Vander’s daughter. She was about your age. Her father went on a long trip and Daddy here assured me that she left with him. But it seems she never made it.
- a long trip: 長い旅。死の暗喩。
- assure: 「(マーカスがシルコに)ヴァイの死亡を保証した」の意。
- left with him: ヴァンダーと一緒に旅に出た。転じて「ヴァイも死亡した」の意。
- never made it: たどりつかなかった。転じて「死んでいなかった」の意。
[13:34] Silco: Isn’t that sad? Could you imagine being separated from your father?
「(一緒に旅に出たと思っていた親子が離れ離れだったなんて)悲しい話だよね。君は父親と離れ離れになるなんて想像できる?」とレン(マーカスの娘)に語り掛けながらマーカスを問い詰め、同時にレンを攫う可能性を示唆している。
[13:44]
Marcus: She’s… in a safe place.
Silco: She’s in the Lanes.
Marcus: That’s not possible.
マーカスはケイトリンがヴァイを釈放したことをこの時点まで知らなかった。
[13:57] Marcus: Caitlyn. She’s a Kiramman. Just like them, she does whatever she wants.
- a Kiramman: キラマン家の一人。
- them: 冠詞 “a” の対象を集団と捉えて、キラマン家の人々。
[14:06] Silco: Then of what use are you?
“You are of what use?” → “Of what use are you?”
[14:24] Silco: My people are tracking Vi and this… Caitlyn. They cannot be allowed to resurface. Do we understand each other?
シルコの手下がヴァイとケイトリンを追っている(から [14:09] Marcus: I'll track her down. は不要)。下層に潜った二人が再浮上することは許可されない。受動態の文の許可されない[not be allowed]対象は主語の彼女ら[they]の方だが、それを実現するのがマーカスの役割[what use]だと言っている。
[14:50] Silco: Oops. Ah. So sorry. Accidents happen.
「従わなければ家族に危害を加えるぞ」という脅迫。
[16:03] Viktor: I can feel my body… eroding.
- erode: 病が体をむしばむ。
[17:30]
Caitlyn: I know you have your reservations about me, but this only works if we can trust each other.
Vi: It doesn’t work. It never has. You topsiders always find a way to screw us.
Caitlyn: I suppose topside is to blame for all your misfortunes.
Vi: No. Not all of them.
ヴァイがパウダーを失ったという不幸[misfortune]はヴァイ自身の行動が招いた結果なので「いや、すべてじゃない」。
[17:56]
Vi: I shouldn’t have left you.
Caitlyn: It’s all right.
痛みによる幻覚で見えているパウダーに対するヴァイの言葉を、ケイトリンは娼館に置いてけぼりにされたことを言っていると勘違いしている。
[17:58] Caitlyn: It’s all right. Despite it all, I can tell… you have a good heart.
[S1E3:3:39] Vander: You've got a good heart
[18:21] Viktor: It’s an adaptive rune matrix. Hextech that evolves.
- adaptive: 適応性のある。静的ではなく動的、自律的に動作する。
- matrix: 基盤。行列。
ルーブックキューブのようにルーンを組み換え可能なこの装置は適応性があり、自律的に動作する。それは「進化するヘクステック」とでも呼べるもの。
[18:52] Heimerdinger: I’ve seen nations destroyed by a single seed and it looked… exactly like this.
- have seen: 「見たことがある」ではなく「時代を超えて何度も見てきた」というような強いニュアンスの現在完了形。後の “nations” が複数形なのを考慮しても、ハイマーディンガーはヘクスコア(のようなもの)が原因で国が滅びるのを何度も見てきている。それが強烈な印象をともなっていて、ハイマーディンガーの中では現在までその影響が続いているので、ありありとした表現の現在完了形になっている。
- single seed: 実際に植物の種を意味するのではなく、破滅の種という比喩。
[19:02] Heimerdinger: Viktor, something’s different. You’ve changed. What did you do?
ヘクスコアにふれようとしたときに精神干渉を受けた? それとももっと前、ヘクスゲートで啓示を得たときから変わり始めていたのか。
[19:11] Heimerdinger: It’s that thing. It must be destroyed!
“It’s that thing.” の “it” が受けるのは直前の自身の疑問、ヴィクターが変わってしまった理由。しかしヴィクターが何かをした[you did]のではなく、その物体[that thing](ヘクスコア)がヴィクターに何か(精神干渉)をしたのだ、と主張している。もうすでに事態は始まっているのだから、ヘクスコアは直ちに破壊しなければならない。
[19:18] Heimerdinger: Jayce, this is a violation of the Ethos. I will have it destroyed one way or another.
また出たエートス。便利だな。
[19:39] Viktor: I might know someone else who could help.
- someone else who could help: シンジド。
[19:41] Jayce: You do what you have to. I need to get ready.
- ready: ハイマーディンガーを失脚させるための準備。
[21:15] Huck: I just… wanted to feel what it was like… To be somebody. To make other people afraid. Instead of —
- somebody: 何者か。特別な存在。
- instead of ~: ~ではなくて。~の代わりに。
ハックはつけこまれやすいタイプだったので、シマーを使って「他人に恐れられるような」強い自分になりたかった。 “Instead of — “ の後には「弱い自分」を表すセリフが続くはず。
[22:13] Huck: Just tell her, uh, tell her I’m sorry. About everything.
- sorry: 気の毒に思う。申し訳なく思う。
“I’m sorry.” はこの時点では「気の毒に思う」の方、ヴァイの家族や周辺に起こったことを言っているように聞こえるが、シルコへ密告したのがハックであることが判明した(シマーを受け取っているシーンで示唆される)あとは「申し訳なく思う」の方になる。 “About everything.” と言っているところを見ると両方の意味を持たせているか。日本語には変換できないやつ。
[22:34] Marcus: I found this on one of the Firelights. It matches fragments we found outside your lab and at the Hexgates.
- your lab: ジェムストーンと研究資料が盗まれたときのジンクスによる襲撃。
- Hexgates: ファイヤーライトによるシマー密輸船襲撃。
[22:42] Marcus: I… have reason to believe they’re planning more attacks.
- have reason to believe ~: ~を信じるだけの根拠がある。
ここまで言わなくても「ケイトリンとヴァイを下層から出さない」「ファイヤーライトを襲撃の犯人に仕立て上げる」というシルコの命令は実行できそうなので、このセリフはちょっとよくわからなかったが、マーカスが「そのへんにいる人間そのもの」であると前提すると、これは「嘘をついたときそれをカバーするために咄嗟にいらんことをしてしまう」というやつに見えてくる。偽の証拠でもって完全な偽証をしているので、小物のマーカスは、咄嗟にそれをカバーするための追加(偽)情報を出してしまったのではないか。そしてそれが「橋の封鎖」という極端な対応につながってしまう。
[23:04] Marcus: Are you certain? This sort of an order —
「こういった命令は」の続きは「評議会の合意が必要では」とか、もしくは「対応がラディカルすぎるのでは」とか? [S1E5:9:28] Marcus: You sure you don't want to confer with the other Councilors before-- でジェイスの独断専行を諌めたりしてるから前者っぽいか。このあたりの会話を見ても、「事態が思ったより大ごとになってしまった」感がある。やはり咄嗟の言動でやらかしてしまった説あるな。
[24:12] Jayce: Shimmer is rampant in the undercity. Attacks at the Hexgates and in the Academy Square.
- Hexgates: ファイヤーライトによるシマー密輸船襲撃。
- Academy Square: ジェムストーンと研究資料が盗まれたときのジンクスによる襲撃。ケイトリンが警備していた広場の固有名詞っぽい。
[26:25] Caitlyn: What was the name Sevika gave you? Jinx?
[S1E5:34:30] Sevika: Keeping her? You mean Jinx?
[26:58] Vi: My sister. I thought she died, but, no.
[S1E5:34:27] Vi: Where's my sister? Where's he keeping her? の時点でも、もう死んでいると思っていたが、怒りをぶつけるために問い詰めている。
[34:20] Vi: I know, Pow-pow, I know. You did what you had to do to survive.
Pow-powはヴァイのパウダーに対する呼びかけ方のバリエーション。 [S2E6:12:42] でコノル(ヴァイたちの実の父親)が使っている。ちなみにジンクスが持っているミニガンの名前が同じ。
[34:44] Jinx: Sevika wasn’t lying? You’re with an enforcer?
ケイトリンは執行官の制服を着ていないが、ジンクスはセヴィカから「ヴァイは女性執行官と一緒にいる( [11:49] Sevika: She's with some girl enforcer. )」と聞いている。「ヴァイが女性と一緒にいる」というところまでは嘘でないなら、「(女性)執行官と一緒にいる」まで本当かもしれない。
[34:51] Caitlyn: Your sister is Jinx?
ケイトリンはS1E4の襲撃時、気を失う前にジンクスの姿を遠目に見ている。一連の事件の裏にシルコがいる可能性がある( [S1E5:3:40] Caitlyn: I need proof if I'm to believe what you're saying about Silco. )からレーンに調査に来ている。シルコの手下であるセヴィカから出た名前がジンクスであることをヴァイから聞いている( [26:25] Caitlyn: What was the name Sevika gave you? Jinx? )。ここに到着する前におそらくヴァイから「妹があの煙の元にいるかもしれない」と聞いている。その妹の足元にジェムストーンが転がっている。以上のことから、ケイトリンはヴァイの妹=襲撃犯=ジンクスであると推察した。
[34:59]
Jinx: Shut up! I’m in no mood.
Caitlyn: We didn’t say anything.
- in no mood ~: ~する気分じゃない。
「(いつもの幻聴による自己非難・自己憐憫を)する気分じゃない」と、幻覚のマイロに言っているが、もちろんケイトリンたちには見えていない。
[35:08] Jinx: It’s Jinx now. Powder fell down a well.
- fall down a well: 井戸に落ちる。ここでは「洗礼で死んだ」の意。
[35:22] Jinx: You’re a class act, Sister. Sister. Thought I missed her. Bet you wouldn’t miss her.
- class act: 賞賛に値する人、振る舞い。ここでは皮肉。
難解。初回視聴時は “her” はパウダーの代名詞だと思って聞いていた(この解釈で捉えても問題はない)が、物語の構造と文の構造を照らし合わせると違和感が残る。シリアスなシーンなのでジンクス特有の「軽々でイカれた喋り」でもない。おそらくここは、ジンクスの情緒がぐちゃぐちゃになっていることで、言語もぐちゃぐちゃになっているのだと思う。綺麗に直すなら “You thought I missed you. I bet you wouldn’t miss me.” か。目的語の “you/me” がどちらも “her” に置き換えられている。 “You’re a class act, Sister.” では明らかにヴァイに目を据えているが、次の “Sister.” で焦点が外れ、狂気を感じる表情になり、 “you wouldn’t” でまた焦点が戻ってくる。英語では姉も妹も同じ “sister” だ。ヴァイ(sister: 姉)とジンクス(sister: 妹)と、さらにもう一人の自分、パウダー(sister: 妹)がごちゃごちゃになり、その代名詞として “her” が使われ、人称(文法)が壊れている。これも日本語には変換できないやつ。
S1E6: その他
- 冒頭で幼少期のヴィクターと目が合う女の子は幼少期のスカイ。顔見知りだったという訳ではなさそう?
- ジェイスとマーカスが会話しているのは議会ホール。ジェイスはハイマーディンガーを失脚させるための原稿を書いている。
- 現在のシンジドの研究所でも培養槽の中で変異体が生かされている。紫の花はシマーの原料。この変異体(回復力が高いorシマーへの耐性が高い?)を使ってプロトタイプの実験をしていた。
- ジンクスはジェムストーン(シルコ側の象徴)を右手に、発煙筒(ヴァイ側の象徴)を左手に持ち、発煙筒の方を選択する。ヴァイがあらわれなかったので苛立たしく発煙筒を投げ捨て、ジェムストーンの方を選択し直そうとするが、ヴァイがあらわれて、ジェムストーンを取り落とす。「洗礼」でパウダーは死んでなどいないという描写。
S1Act3: 要約
- ケイトリンはシルコの情報を上層に持ち帰ろうとするがマーカスに止められる。
- マーカス含め橋を封鎖していた執行官たちがジンクスによって爆殺される。
- マーカスの裏切りが明らかになる。
- 橋の上の戦いで瀕死のジンクスがシマーによって復活する。
- アンベッサがヘクステック兵器を求めてピルトーヴァーにやってくる。
- ヴィクターはヘクスコアの力を使って自分の体を徐々に機械化する。
- ヘクスコアの力でスカイが死亡する。
- ヘクステックが兵器化される。
- ジェイスとヴァイがシルコのシマー工場を奇襲する。
- ジェイスはシルコにジンクスの身柄と引き換えにゾウン独立を約束する。
- ジンクスがシルコを殺し、評議会を爆撃する。
- ゾウン独立は白紙に戻る。
S1E7: The Boy Savior
S1E7: 登場人物
- フィン[Finn]: ケミ長者。シルコを追い落とそうと画策する。日本訛りの英語で喋る。
S1E7: あらすじ
- 「ピルトーヴァーの問題は他国から注視されている」とエローラはメルに報告する。メルはアンベッサから手紙を受け取る。
- メルは襲撃犯がヘクステック兵器を製作する可能性を示唆し、万が一に備えて上層側もヘクステック兵器を用意しておくよう促す。ヴィクターは強硬に拒絶するが、ジェイスは検討の必要があると考える。
- ヴィクターはシンジドからもらった「劇的な変化に耐える」ための特別製シマーを自身に投与し、ヘクスコアによる生体改変を試みる。
- シルコはケミ長者の緊急会議に呼ばれる。橋の封鎖によって上層との商取引が滞っている件で突き上げを食らいそうになるが、いつもの人心操作によって場を支配する。オフィスに戻ったシルコは、ヴァイが生きていた件でジンクスから突き上げを食らうが、いつもの人心操作でジンクスを懐柔する。
- ファイヤーライトのリーダーであるエコーは下層に戻ってきたヴァイが信用できるかどうかを見定める。お互い昔と変わってしまったところはあれど信用できると判断した二人は、ケイトリンを上層へ送り届けることにする。ケイトリンは、ジェムストーンを返し、ジェイスに事情を話せば、ファイヤーライトに対する執行官たちの過剰な攻撃が止むと考える。エコーは「自分が直接ジェムストーンを手渡す」ことを条件に、ケイトリンの話に乗る。
- ヴァイは「妹を置いていけない」と言って下層に引き返す。ヴァイと別れたケイトリンとエコーは橋の上を進むが、マーカス含む執行官たちに止められる。ケイトリンは「シルコが一連の事件の裏にいる証拠を得た」とマーカスに報告する。自分とのつながりにたどりつかれることを恐れたマーカスは、エコーを撃ってジェムストーンを奪い、続けてケイトリンも撃とうとするが、突然飛来した蝶型爆弾によってマーカス含む執行官たちが爆殺される。ジンクスが橋の上にあらわれ、ジェムストーンを奪う。マーカスの発砲音を聞きつけて戻ってきたヴァイが足に怪我を負ったケイトリンを支えているのを見たジンクスは、二人を引き離すために発砲する。防弾チョッキで無事だったエコーがジンクスを奇襲し、ジェムストーンを取り返す。エコーはジェムストーンをヴァイとケイトリンに渡し、二人を上層側へ向かわせる。エコーはジンクスを制圧するが、攻撃をためらった瞬間にジンクスがグレネードのピンを抜き、二人とも爆発に呑まれる。
S1E7: 脚本
[01:10] Vi: You’ve been a real picnic yourself.
- picnic: 楽しいこと。簡単にできること。ここでは反語として使われているので「厄介」「面倒」の意。
- yourself: あんたもまた。
「あんたも大概だったけどね」みたいなニュアンス。
[01:12] Caitlyn: I’m not the one who walked us into, not one, but two of Silco’s traps.
1回目はS1E6の給水塔。今回はファイヤーライトの画策なのでシルコの罠ではないがケイトリンは勘違いしている(のでこの後ヴァイが訂正する)。
[01:20] Vi: ’Cause we’d already be dead.
- ’Cause ~: “How do you know?” への返答としての「なぜなら~だから」。
- we’d ~: 「もしシルコに捕まっている状況なら」という仮定での「~だろう」。
もしシルコに捕まっている状況なら私たちはとっくに死んでるだろう。まだ生きているという現実があるのだから、これはシルコの仕業じゃないとわかる。
[01:23] Caitlyn: When were you planning to tell me that your lunatic sister works for him?
ヴァイは、「妹がいること」「ジンクスという名前のシルコの手下がいること」はケイトリンに伝えていたが、両者が同一人物であることは伝えていなかった。
[01:26]
Vi: Just as soon as you came clean about what the hell you’re really doing down here.
Caitlyn: I told you the truth.
Vi: Bullshit. What was that glowing stone?
Caitlyn: (sighs)
Vi: That’s what I thought.
- come clean: 真実を話す。
ファイヤーライト奇襲前、1. ヴァイに再会して放心状態になったジンクスがジェムストーンを取り落とす、ファイヤーライト奇襲後、2. 戦闘の余波でジェムストーンが転がる、3. ヴァイの靴にぶつかる、4. ヴァイは戦闘を続ける、5. ジェムストーンがさらに転がって落ちそうになる、6. ケイトリンがあわてて拾う、という流れなので、ヴァイはケイトリンがジェムストーンにこだわっている様子を(戦闘しながら)見ている→下層に来た目的が「シルコの調査」の他にも何かあると思っている。ケイトリンは未発表の技術であり(ジンクスによる襲撃があった「進歩の日」のスピーチでジェイスはジェムストーンを公開していない)、知識ある者に渡れば悪用される可能性があるジェムストーンについて迂闊に話せないので、沈黙で返答し、ヴァイは「ほら、やっぱり他に本当の目的(隠してること)があるんじゃないか」と返している。
[04:17]
Ekko: People change.
Vi: Yeah. I’m getting that.
“I get ~” ではなく “I’m getting ~” なので、「いままさに理解していってるよ」のニュアンス。ファイヤーライトとの戦闘時、ヴァイはジンクスの戦いぶりを見て妹の変貌ぶりに戸惑った。そしていまはエコー。
[04:26] Ekko: I thought you were dead. Now you show up with a Piltie and give her a tour of the Lanes?
- Piltie: ピルトーヴァーの人間。響きからしておそらく侮蔑語。 “dog” を “doggie” にすると「かわいく」なるが、転じて「見下す」ニュアンスにもなる。ここでの “a Piltie” はケイトリンのこと。
[04:25] Vi: Fuck. You.
Arcaneはガラの悪いキャラが多いが、Fワードを使うのは実はヴァイだけ。
[S1E6:28:28] I'm gonna find her and erase whatever fucked-up delusions you put in her head.シルコとの会話。- 今回。
[S1E8:28:47] Fuck the Council.ジェイスとの会話。[S2E6:24:22] Just shut the fuck up.アンベッサとの会話。[S2E8:29:31] I don't fucking care.ケイトリンとの会話。
[04:44] Ekko: And you still block with your face.
顔でブロックしている→顔面でパンチを受けている→ガードできてない、の意。
[04:58]
Ekko: How long have you had those off?
Vi: How long have you been whining?
- whining: 泣き言。ぐずる。犬がクンクン鳴く音。
「いつから(どれくらいの間)手錠を外してたんだ?」に対するヴァイの返しは日本語にするとエモさが失われてしまう。子供時代のエコーを知っているヴァイには、威勢のいい言葉は幼子のぐずりに等しく、子犬がクンクン鳴いてるように聞こえている。ファイヤーライトなんて大層な組織のリーダーとして虚勢を張ってても心の中ではずっと子供みたいに泣いてたんじゃないの? どれくらいの間そうしてきたの?
[05:41] Singed: Nature has made us intolerant to change, but fortunately, we have the capacity to change our nature.
- nature: 自然界(前半の文)。性質・本質(後半の文)。
自然(淘汰)は我々(生物)を、変化に対して不寛容にした(その方が生き延びやすいから選択圧によってそのようになった)。しかし幸いにも、我々には我々自身の性質を変える力(=シマーによる生体機能拡張)がある。
[05:49]
Viktor: And this is… Shimmer?
Singed: A variant. It should provide everything one needs to survive a violent transition.
- variant: 変種。亜種。派生型。
このシマーは流通しているものとは目的が違う。「劇的な変化に耐える」ためのもの。自分の娘に必要だと思って以前から開発していた? シンジドの娘は最終的に機械化した体になっている(S2E9)ので、実際に「劇的な変化」が起こっている。
[06:18] Singed: It’s why I parted ways with Heimerdinger.
- part ways with ~: ~と袂を分かつ。
シンジドはかつてアカデミーの学者だった。
[07:03] Mel: Hammer work is such a delicate art.
- delicate: 反語。
[07:07] Mel: You’re the de facto head of the Council. People notice where you go.
- de facto: 事実上の。ジェイスは議長ではないが、もはや誰もが評議会のリーダーだと思っている。
[08:16]
Jayce: No sign of Caitlyn either.
Mel: The Kiramman girl?
Jayce: It’s just… Uh, never mind.
ケイトリンが命令を偽造して勝手に囚人を釈放したことを話そうとしてやめた。
[08:25] Mel: I’ll stall the Council but they’ll soon need their leader.
- stall: (リーダーのいない評議会を)引き延ばす。時間稼ぎをする。
[08:32] Mel: Try not to lose your nuts.
- lose your nuts: 正気を失う。
気をしっかり持て、の意。同時にさっき外れて転がってきた「ナット」を渡す。
[08:46]
Sevika: All our business is down. Enforcers are searching anyone who crosses the bridge.
Silco: Marcus is following my orders. Preventing Vi and Caitlyn from returning.
Sevika: Or he’s finally flipped.
橋はほぼ封鎖状態なので流通が止まってシルコたちのビジネスも動かなくなっている。シルコは、マーカスが「ヴァイとケイトリンを上層に戻らせない」という自分の指示に従っているからこの事態が発生していると思っている。が、セヴィカに「ついに裏切ったのでは」と言われたあと、少し考えている。やっぱりここまで大ごとになるのは想定外?
[09:08] Sevika: It didn’t sound like a request.
要求・要請ではない→命令・強制に近い。
[09:19] Silco: I need to find Jinx.
“LIAR” とメッセージを受け取ったので関係を修復するため&橋の問題処理を任せるため。
[09:22] Sevika: I got more in common with cave lice than Jinx. But let’s just say I didn’t always see eye-to-eye with my old man.
- have in common with ~: 〜と共通点が多い。ここでは “I have” がくだけた言い方の “I’ve got” になっている。
- cave lice: 洞窟のシラミ。最底辺の不快な存在として引き合いに出している。そのへんにいる最底辺のやつらとは共通点があるけど、自分とジンクスはまったく違う人種だ、みたいなニュアンスか。
- see eye-to-eye with: 意見が合う。
- my old man: カタカナ書きの「オヤジ」のニュアンス。
[11:25] Ekko: After Vander died, Silco flooded the lanes with Shimmer. He didn’t care what it did to people. Everyone here was an addict or a victim. They needed somewhere safe to start again.
ヴァンダー亡きあと、シルコはレーンにシマーを蔓延させた。それが(レーンの)人々にどういう影響を及ぼすか気にもかけずに。ここにいるのは元中毒者か被害者だ。彼らには(人生を)やり直すための安全な場所が必要だった。
[01:48] Ekko: That’s a good way to drive yourself crazy. If I just went with you that day, maybe none of this would have happened.
エコー自身「もしあの日……」をずっと考え続けて気が狂いそうになっていたから前半のセリフがある。そしてそんなエコーはS2E7で実際に「もしも」の世界を体験することになる。
[11:11]
Vi: Is that real tree?
Ekko: Pretty cool, huh? When I first saw it, I knew this was the place. If a single seed could make it down here, so could we.
ヴァイが驚いているのは、レーン(=深い谷)には太陽光がほとんど届かず、木が育つことは稀だから。ここは奇跡的に太陽光が届く場所なので大きな木が育っている。エコーはこの木に象徴的なものを感じ、ファイヤーライトの拠点とした。
[12:29] Ekko: This is everyone we’ve lost. The price of our freedom. Some of it was Enforcers. Most was Silco.
ファイヤーライトの犠牲のほとんどはシルコ(の手下)によるもの。描かれている最中のメンバーはS1E4でジンクスがヴァイと間違えた赤髪。
[13:20] Jayce: Thank you for alerting me, Sheriff.
ヴィクターがシンジドの研究所にいる間に橋が封鎖。戻ろうとしているヴィクターのことをマーカスがジェイスに知らせた。
[13:37] Jayce: There are people down there who seem hell-bent on destroying us.
- hell-bent on ~: ~しようと躍起になっている。
マーカスの偽証でジェイスはファイヤーライトがさらなる襲撃を行うと思っている。
[13:40]
Jayce: What were you doing?
Viktor: I was consulting a friend about our quandary. I told you, I knew someone.
Jayce: Well, you didn’t say they were from the undercity.
Viktor: What difference does that make?
Jayce: What diff… They’re dangerous.
Viktor: I’m from the undercity.
Jayce: You’re right. I’m sorry. I’ve had a lot on my plate.
徐々にすれ違っていくジェイスとヴィクター。
[14:06] Viktor: No, he said, “Nature was resistant to this sort of tampering.”
ここでヴィクターはシマーの件を隠す。シンジドからシマーを受け取るときには [06:26] Viktor: Jayce will understand. と言っていたので、おそらく上のやり取りがなければ自分が何をするつもりなのかジェイスに明かしていたはず。
[14:34] Finn: First, this wild attack in the heart of Piltover. Now, the border’s closing.
- heart of Piltover: ピルトーヴァー中心部。ジンクスが襲撃した
[S1E6:24:12] Academy Squareのこと。
[15:02] Renni: Merchandise is frozen at the border.
橋がほぼ封鎖状態なので上層と下層の流通が止まり、ケミ長者が取り仕切る商売(上層との商取引)が滞っている。その原因を作ったシルコの突き上げのために(定例ではない緊急の)会議を開いた。
[15:18] Finn: Way I see it, we should cut a deal and give back the Gemstone.
シルコはジェムストーンについてケミ長者と情報を共有していた。ジェムストーンの名称は同時に盗んだ研究資料から?
[15:27] Silco: The border issue is temporary. Jinx will deal with it.
橋の問題はジンクスに対処させる→これは実際にはさせていないかも。詳細は「S1E7: その他」のセクションで。
[15:33] Finn: Rumor is, your dog’s off her leash. How you meant to bring Piltover to heel if you can’t handle your own people, huh?
- off her leash: リードにつながれていない(犬)。 “her” はジンクス。
- bring ~ to heel: ~を従わせる。かかとの位置に犬がいて従っているイメージ。
「自分の手下も従わせられないやつが~」みたいな話のあとに、従わせる方法(苦痛と救済による人心操作)を実践してみせる。
[15:58] Silco: Oh, you don’t recognize it? Have you forgotten where we came from? The mines they had us in? Air so thick it clogged your throat. Stuck in your eyes. But I pulled you all up from the depths. Offered you a taste of topside. And fresh air. I gave you life. Purpose. But you’ve grown fat and complacent. Too much time in the sun.
- recognize: 馴染みがあるものだとわかる。「かつてはこの空気の中で生活してたのに」というニュアンス。
- they: 上層の人間。
- had us in: 私たちを置いていた。閉じ込めていた。転じて「(上層のやつらが私たちを)働かせていた」、下層から見れば「働かされていた」の意。
- thick: レーンは空気の密度が高い。
[S1E8:18:15] It's designed for the fissures. The air is denser. - sun: 比喩的な意味合いが強いと思うが、
[14:33]を見るとケミ長者の集会が行われているタワーの頂上は、実際に太陽光がギリギリ届いている。光の届かない谷底からここまで(この立場を得るまで)引き上げてやったのに、みたいな話。
ここで散布しているのは灰色の靄[Grey]を薄めたもの? シルコが平然としているのは、かつて鉱夫として働いていて、この空気に慣れているからか。
[18:03]
Elora: I’ve had word from our friends overseas. This threat from the undercity is drawing attention. Piltover looks vulnerable.
Mel: It’s too soon. Jayce isn’t ready.
ジェイスを評議会のリーダーに仕立て上げてピルトーヴァーを発展させて(強くして)いく計画(?)が進む前に、上層と下層の対立が激化したことで他国から脆弱(侵略のチャンス)だとみなされてしまった、という意味?
[18:27] Elora: This arrived for you.
メダルダ家の家紋の封蝋がされた手紙。アンベッサから。
[19:48] Jinx: Here, there, chasing down dead ends. And guess what? They’re not all dead.
- chasing down dead ends: 行き止まりを追いかける。転じて「無駄な努力をする」の意。
あちこち行って無駄骨[dead ends]を折ってた。けど全部が無駄[dead]ってわけじゃなかった。 “not dead” は、死んだと聞かされていたヴァイが生きていたことへのあてこすり。
[20:05]
Silco: I didn’t know. Marcus never told me she was in Stillwater.
Jinx: But you found out she came back. You lied.
Silco: I wanted to protect you.
Jinx: From what?
Silco: She and the enforcer are back for the crystal. Not for you.
ヴァイが監獄にいることをシルコはマーカスから聞かされていなかった。これは視聴者から見れば事実だが、ジンクス視点では嘘か本当かわからない。とはいえ直近で知っていたことはジンクス視点でもたしかな事実(でないと手下に追跡を命令しない)。ずっと前から知っていたか、最近になって知ったかはどうでもいいことで、知っていたのに自分に知らせていなかった、という事実をジンクスは「嘘」と言っている。「姉が自分のためではなくジェムストーン奪還のために来た」ということを知ってジンクスが精神的にダメージを受けないようにしていた、とシルコは主張する。これは嘘。ヴァイとは直接話しているし、セヴィカからも報告は受けているはずなので、シルコはヴァイがジンクスのために動いていることを知っている。
[20:29] Silco: Who found you? Who cared for you? Gave you a home? I am your family. Everyone else betrays us. I need you. Now more than ever. You have to complete the weapon.
私は(私だけが)お前の家族だ。他の人間はみんな私たちを裏切る。裏切られてきた[betrayed]ではなく、(いつも)裏切る[betrays]。裏切られる対象は私たち[us]。 [S1E3:38:44] Silco: We will show them all. の "we" は他の手下を含まず、姉妹(兄弟)だと思っていた人間に裏切られた「シルコとジンクスのみ」を指す。いつもの人心操作であり、本心でもある。
[21:19]
Ekko: If your people had your way, it’d be rubble and ash.
Caitlyn: It’s a misunderstanding. They think you work for Silco.
Ekko: Your people hunt us like animals. Silco pays them to do it.
Caitlyn: That’s not possible. You’re wrong.
Ekko: Say that one more time.
エコーの視点: 上層の人間から見ればファイヤーライトの活動(シマー撲滅)は下層内部での問題にすぎないのに(密輸船襲撃時にヘクスゲートで暴れたりはしているが) “hunt us like animals” までやるだろうか? これはシルコが手をまわしているからだ。
ケイトリンの視点: マーカスがシルコとつながっていることは知らない。単独行動しているので執行官たちがどのような情報の元に動いているのか知らない。執行官たちがファイヤーライトを執拗に追い立てているのであれば、襲撃事件の犯人だという前提で動いていると推測できる。シルコの手下であるジンクスがジェムストーンを持っていたので、シルコが襲撃事件の裏にいると確信できた。これを執行官たちが突き止めているかはわからないが、エコーには “They think you work for Silco.” で通じる。
[23:19]
Jayce: You think they could crack Hextech?
Viktor: Mm. It’s a leap.
Mel: It’s been suggested that they may have found a way to utilize the Gemstone. If we are to assume the worst, that would mean they’ve turned it into a weapon.
Jayce: Well, do we know this for certain?
Mel: We can’t afford to wait to find out.
Viktor: Wait. What are you suggesting?
Mel: We should prepare our own countermeasures.
ヴィクターに「(襲撃犯がヘクステックを使いこなせるというのは)飛躍かな」と言われて、メルはヘクステック兵器を作らせる方向に話を持っていく。これは本エピソードで受け取った手紙とは無関係。アンベッサの思惑とは別。 [S1E9:7:42] Mel: I wanted to protect the city from people like you.
[23:41] Mel: Heimerdingers’ inaction is what brought us here. You said so yourself.
ここでヴィクターが驚いたようにジェイスの方を振り返る。橋での会話で開いた亀裂がさらに広がる。
[24:54] Viktor: There is always a choice.
ここでヴィクターはシマーを使う決断(選択)をする。
[28:47] Jinx: She wouldn’t do that. Not again.
- do: ジンクスを置き去りにすること。
[30:15] Jinx: Liar.
[S1E6:35:29] Powder! I'm here for you. Only you. You can fire that thing if you want, but I'm not going anywhere. I'm not going to abandon you again.
[30:18] Marcus: I told you to leave this alone.
- leave ~ alone: ~を放っておく。~に手を出さない。
[S1E4:16:36] Marcus: I'll take it from here.
お前は知りすぎたんだパァン! とはならず、ひたすら躊躇するマーカス。(おそらく罪をなすりつけるために)エコーには即時発砲しているので、良心の呵責というよりも、「キラマン家の人間を衆人環視の中で殺すとか、これもうごまかしようがなくね」と思っている感じか(ちらりと執行官たちの方を見ているし)。しかしシルコの情報を掴んだケイトリンをこのまま上層に戻せば、詳しく調査されて自分とのつながりまでたどられる。どちらにせよ破滅が待っている。
[32:02] Marcus: Tell my… Tell my daughter I…
続きは “I love her.” か。殉職者[martyr]のようにそれっぽいことを言おうとするが最後まで言えず死亡。どこまでも「そのへんにいるやつ」すぎて、濃すぎるドラマの中では逆にわけがわからないといういいキャラクターだった。RIP。
[33:38] Jinx: Oh, look who it is. The boy savior.
いろんな背景が想像できるセリフ。おそらくエコーはS1E3以降の数年間にシルコからパウダーを取り戻そうと試みているが、現在は諦めている( [S2E7:31:32] Gave up on you. )。本エピソードでヴァイを何度も諭している( [12:07] Ekko: You can't. [28:11] Ekko: You can't change her. )のは、自分が何度もトライしてダメだったから。こういった文脈から、ジンクスにはエコーが「救世主気取りの少年」に見えているのだと推察できる。エコーの反応から察するに、もしかしたら前にもまったく同じセリフを言われたことがあるのかもしれない。
以下は筆者の妄想。回想で幼少期の二人の遊びが描写されているが、もうちょっと妄想を膨らませて、これを「ヒーローとヴィランのごっこ遊び」と捉えてみる。ヒーロー役(剣)とヴィラン役(銃)に分かれて、ヴィランの射撃をすべてかわしてヒーローがヴィランのところまでたどりつければ勝ち。この「ごっこ遊び」の決まり文句が “Oh, look who it is. The boy savior.” だと妄想してみる。ヴィラン役がこのセリフを言ったらヒーロー役がカウントダウンをしてゲームスタート。このやり取りが「戦闘開始の合図」だから、エコーが懐中時計を振り子にしたとき、ジンクスはハッとして、そのあと芝居がかった感じ(play: 演技・遊び)で戦闘準備をする。子供のころはパウダーに負けていたエコーだが、その記憶をたどって、ジンクスの手癖や思考の癖を読み切った。懐中時計や時間巻き戻しの描写はZドライブの foreshadowing か。
S1E7: その他
- マーカスに撃たれたエコーが助かったのは服が防弾仕様だったから。
- グレネード爆発後のエコーは
[S2E7:12:41]で描写されている。 - ジンクスが橋の上にあらわれるときの鼻歌はS1E1の冒頭で歌っていた曲。
25:00~27:30の各カット: 川をボートで渡っているのはハイマーディンガー。ヴィクターが足の補助具に刻んでいるのはSorceryのルーン。ジェイスが子供のころに描いたハンマー(ヘクステック兵器開発の示唆)を持ったヒーロー(自分自身?)。- 幼少期戦闘シーンでエコーの後ろに映っている虫はファイヤーライト。パウダーの後ろは鳥(猛禽類っぽい)。
以下、蝶型爆弾の経緯。
[S1E4:4:13]「進歩の日」に路上展示されている。[S1E4:32:00]ジンクスが構造を調べている。襲撃時についでに盗んだ?[S1E7:9:55]机の上に大量にある。複製した?
以下、終盤のジンクスの行動。 [15:27] Silco: The border issue is temporary. Jinx will deal with it. という前振りがあるのでシルコの命令で動いたように見えるが、おそらく違う。ジンクスの目的は、嘘をついているのがヴァイなのかシルコなのかを確認することにあり、ヴァイがケイトリンの元に戻っていかなければ、何もせずに立ち去っていたように見える。 [S1E9:03:44] Sevika: Too bad Jinx didn't think so. のやり取りも参照。
[20:49]シルコに「(ヘクステック)武器を完成させろ」と言われる。橋の問題については何も言われていない(描写外で言われている可能性はある)。[26:11]橋の高所でヴァイを待っている?[20:19] Silco: She and the enforcer are back for the crystal. Not for you.が本当なら、ジェムストーンを取り戻したいま、橋を渡って上層に戻るはず、という推測?[28:38]ヴァイとケイトリンが別れのハグをしているのを見る。幻覚のマイロから何かを囁かれる。苛立つが何もしない。[29:45]エコーがジェムストーンを取り出したのを確認する。幻覚のマイロから何かを囁かれる。シルコが言っていたこと(ヴァイはジェムストーン奪還のために戻って来た)は本当かもしれないと思い始める? この時点でも何もしない。[30:04]マーカスがジェムストーンを奪うのを確認する。ヴァイがケイトリンの名を叫ぶのを聞いてヴァイに視線を移す。ヴァイが戻っていくのを確認する。驚きに目を見開く。幻覚のマイロから何かを囁かれる。しばらく苦悩したあと、嘘をついていたのはヴァイの方だったと「確信」してしまう? 後ろを振り返る(蝶型爆弾を解き放つため)。[30:26]ヴァイの後ろから蝶型爆弾が飛来し、執行官たちを爆殺する。
S1E8: Oil and Water
S1E8: 登場人物
- アンベッサ[Ambessa]: メルの母。ノクサスの将軍。ヘクステック兵器を求めてピルトーヴァーにやってきた。
- キノ[Kino]: メルの兄。ノクサスでは珍しいハト派。
S1E8: あらすじ
- ヴァイとケイトリンはジェムストーンが入っているはずの容器の中身が空になっていることに気づく。ジンクスと一緒に爆発に呑まれたはずのエコーはどこかに消え、橋の上には蝶型爆弾で死亡した執行官たちと瀕死のジンクスだけが倒れている。その手にはジェムストーンが握られていた。
- (騒ぎの連絡を受けて橋に駆けつけた?)シルコは瀕死のジンクスをシンジドの元へ連れていく。シンジドはジンクスに(ヴィクターに渡したものとは別の特別製?)シマーを投与して命をつなぐが、それは激痛をともなう手術だった。痛みの中でジンクスはヴァイの隣にいる自分とケイトリンが入れ替わる悪夢を見る。ジンクスの中でケイトリンの悪魔化が進む。
- 評議会を追放されたハイマーディンガーは川の下層側でエコーと出会う。グレネードの爆発から逃れたエコーは橋の下に身を隠していたが、足の怪我とホバーボード故障でアジトに戻れず、途方に暮れていた。
- メルはアンベッサからキノが死んだことを知らされる。同時に、アンベッサのピルトーヴァー来訪の目的がこれから始まるであろう戦争に備えてヘクステックの兵器化を進めるためであることを理解する。
- 特別製シマーによってヘクスコアの生体改変に耐えたヴィクターの右足は機械化されていた。シンジドにもらったシマーはなくなっていたが、ヴィクターはさらなる改変を無理やり試みようとする。ヘクスコアの前で苦しむヴィクターを救おうとしたスカイは灰となって消え、代わりにヴィクターの右手が機械化される。逆にヘクスコアは肉質的な表皮を得て、一個の生命体のようになる。
- カサンドラの計らいによって、ヴァイとケイトリンは評議会で一連の事件について話をする機会を得る。シルコの目的は下層(ゾウン)の独立であること、マーカスがジェイスに渡したグレネードの製作者がジンクスであることを明かす(=ファイヤーライトの濡れ衣が晴れる)。強硬策を取ろうとするジェイスとは裏腹に、評議会は戦争を避け、対話によって問題解決を図ろうと考える。
- 評議会の態度に苛立ったヴァイはジェイスとの交渉の末、シルコのシマー工場を奇襲する。ヴァイのガントレットとジェイスのハンマーはヘクステック兵器として初陣を飾る。 過熱した戦いの中、ジェイスは工場で働いていた少年を誤射で殺してしまう。
- 死の淵から蘇ったジンクスがケイトリンを攫う。ジンクスの目はシマー使用者特有のピンク色に染まっていた。
S1E8: 脚本
[06:52] Cassandra: And you found a stray.
- stray: 野良犬(猫)。
[07:13] Cassandra: You understand you’ve broken several laws?
ジェイスの命令を偽造してヴァイを釈放したこと。他になんかあったっけ。もう執行官ではないのに銃を持ち出したこととか?
[07:21]
Cassandra: You’re a Councilor’s daughter. Your actions reflect on the entire body.
Caitlyn: My actions? You know what else reflects on the Council? Its citizens living on the streets. Being poisoned. Having to choose between a kingpin who wants to exploit them and a government that doesn’t give a shit.
Cassandra: Caitlyn!
- reflect: 影響する。ここでは「評判を落とす」の意。
- entire body: 評議会全体。
- being poisoned: シマーの蔓延。
- kingpin: 裏社会の元締め。シルコのこと。
- not give a shit: 気にかけない。ここでは「まともに統治していない」の意。
「議員の娘であるケイトリンの迂闊な行動は評議会全体の評判を落とす」に対して、「評議会の評判を落としているものは他にある(そちらの方が重要なのに目をそらしている)」と返している。カサンドラは “not give a shit” という汚い言葉そのものよりも、それを使って評議会に攻撃的な態度を取っていることを諫めている。ケイトリンの態度は子供の駄々にすぎない→だから評議会で発言の機会を与える。
[11:26]
Ambessa: It’s been over a decade, Mel.
Mel: Since you banished me?
Ambessa: Such drama. I sent you here to oversee our family’s interests and grow yourself. Which you have.
Mel: You said, “Perhaps, your sentimentality will be more at home with those soft-spined idealists overseas.”
Ambessa: You have your father’s memory.
Mel: Don’t try to ingratiate yourself with me.
Ambessa: Mel.
Mel: Or that.
- interests: 権益。
- soft-spined: 柔らかい背骨の。転じて「腰抜け」の意。
- father’s memory: 話の流れからして「父親の記憶」ではなく「父親譲りの記憶力」の意。
- ingratiate yourself with ~: ~の機嫌を取る。
- or that: 直前の “don’t” を受けて、「それも(やめて)」の意。
メルが「追放」されてから10年。「メダルダ家の権益と、メル自身の成長のためだった」というアンベッサの言葉は、「自分がメダルダ家の基準に満たなかった [S1E6:07:21] Mel: I fell short of Medarda standards. 」から「追放」されたと思っているメルにとっては、体のいい建前にしか聞こえない。これが「追放」である根拠として、メルは過去のアンベッサの言葉を(おそらく一言一句違わず)引用してみせる。メルの父も記憶力が高いタイプだったので(実の父親は別なので遺伝ではないが)、「父親譲りの記憶力ね」と言ってアンベッサはメルとの距離を縮めようとする。メルはこの「親が子と仲良くしようとするうざいムーブ」を拒絶する。抑揚をつけて名前を呼ぶ親ムーブもうざいので「それもやめて」とさらに拒絶する。
[12:11]
Ambessa: Your brother’s gone.
Mel: What happened?
Ambessa: He crossed the wrong man. I was distracted. That’s a mistake I can’t take back.
- cross: 怒らせる。敵対する。
- the wrong man: 関わってはいけない相手。危険な人物。
- distracted: 油断。不注意。アンベッサはキノに黒薔薇の調査をやめるよう警告していたが、キノは無視して調査を続け、罠にかかった。
[12:31]
Ambessa: Your Jayce Talis has turned his eye to Hextech weaponry.
Mel: I knew it.
Ambessa: War is coming. You’ve let the problems of your undercity fester too long.
Mel: Piltover isn’t like Noxus. War isn’t our first and every recourse. I sponsored Hextech to protect the city, not burn it to the ground.
Ambessa: It’s not conjecture, it’s a fact. Weapons can’t be unmade and they are always used. I’m here to help guide you to the right decisions.
Mel: I don’t need your guidance.
Ambessa: We’ll see.
“Your Jayce Talis” という言い方からして、アンベッサはエローラからピルトーヴァーの状況について定期的に報告を受けているような感じ? なので最初のセリフは「~という話だけど実際どうなの?」のニュアンスか。ヘクステック兵器の話を持ち出されて、聡いメルは「(あなたが兵器を求めて遠路はるばるやってきたことは)わかってた」と即座に返す? メルとアンベッサの会話はコンテキストが不明な部分が多い&メルがキレ者すぎていろいろすっ飛ばした会話をしがちだから非ネイティブにはつらい。
[14:16] Vi: So she would say, “I’m a slug monster with venom for ooze.” And I’d say, “Well, I’m a slug-eating crab with razor spikes.”
この空想の怪物はパウダーの落書き [S1E6:17:34] [S1E6:26:52] ですでに登場している。
[14:46] Vi: “No monster’s gonna get you when I’m here.” Then a real monster showed up. And I just ran away. I left her.
“real monster” はヴァイが直面した現実か。パウダーが起こした爆発であり、家族の死であり、それを受け止めきれずにパウダーに怒りをぶつけてしまった自分自身であり……。これを前振りとしてS1E9のタイトル “The Monster You Created” がある。
[19:26] Ambessa: The Alornian General Sonnem Parlec used to find ways to meet his enemies blindfolded. He said a man’s mind hides behind his body.
- Alornian: おそらく国名(名詞としてはAlorniaかな?)。アローニア国の(将軍ソネム・パーレク)。少し調べたけどLoLのロアにも出てこない。このセリフでのみ登場する国。話の感じからして大昔の(かつて存在した)国っぽい?
[20:00] Ambessa: The Council is the problem. The mind hiding behind the body.
- body: パーレク将軍の話のときは「身体」の意味だが、ここでは評議会という「機関」の意。
[20:32] Ambessa: I see why this province and my daughter have fallen for you.
“Your Jayce Talis” といい、やっぱりエローラから報告受けてるなこれ。
[21:55]
Bolbok: We’ve done investigations of Silco. They yielded no such level of organization.
Caitlyn: And who led these investigations?
- who: マーカス。
[22:05]
Jayce: What does this Silco even want from us?
Caitlyn: He believes the undercity should be independent. He calls it the Nation of Zaun.
ここまでは劇中でシルコしかこの名称を使っていない。この時点では独立運動に関わっていた人間以外には聞きなれない言葉っぽい。下層の人間も含めてシルコ以外が「ゾウン」という名称をあたりまえのように使い始めるのはS2以降。
[22:14]
Jayce: What about these? Do you know who made them?
Caitlyn: No, well… Uh…
Vi: Her name is Jinx.
ケイトリンはヴァイの方をチラ見して言いよどむ→ヴァイ自身がジンクスの名前を明かす。上層側に名前が出ているのはシルコのみで、ジンクスの名前は(ケイトリン以外には)これまで知られていなかった。ここでヴァイが名前を出したことで、上層側にとっては反旗の、そして下層側にとっては独立の象徴のような存在になっていく。
[22:30]
Shoola: Even if we wanted to invade, they have Shimmer.
Jayce: We have Hextech.
Caitlyn: What happened to you?
シマー(による強化)がある。こちらにはヘクステック(兵器)がある。ケイトリンのセリフはわりと強めの「どうしちゃったんだよ/何があってそんなに考えが変わったんだよ」。橋で見た光景(恐怖)とアンベッサの人心操作。
[23:21]
Salo: Enforcers, please escort them out.
Vi: Forget it. I remember where your fancy damn door is.
ここでの “fancy damn door” とか、このあとの “big shiny house” とかにヴァイの「ケッ」という感情、劣等感ドリブンの「上層のやつらとはやっぱりわかりあえない」感が出てる。
[24:06]
Vi: Topside and bottom. Oil and water. That’s all there is.
Caitlyn: What about us?
Vi: Oil and water. Wasn’t meant to be.
Caitlyn: You’re just saying that.
Vi: Do yourself a favor, Cupcake. Go back to that big, shiny house of yours and just… forget me, okay?
- not meant to be: うまくいくはずなかった。縁がなかった。
- just saying that: 本心じゃない。口でそう言ってるだけでしょう?
- do yourself a favor: あんたのために言ってる。
[28:16]
Vi: You want to make Silco pay for what he’s done?
Jayce: I could have you arrested.
Vi: You guys really like to bandy that threat around. You ever been to Stillwater?
Jayce: No.
Vi: So you just wave an arm, have someone dragged off, don’t bother to find out what it does to someone being stuffed in a stone box for weeks, or months, or even years?
Jayce: Yeah. I want to make Silco pay.
Vi: I want in.
Jayce: There is no in. You heard the Council.
Vi: Fuck the Council. You said you were tired of doing nothing. That’s the only sensible thing that came out of anyone’s mouth tonight.
Jayce: I’m not a vigilante.
Vi: No, you’re a victim.
- wave an arm: ただ命令するだけ。腕を一振りするだけ(で他人の人生を左右するような軽薄さに対する皮肉)。
使役動詞(have)を使って「逮捕『させる』こともできる」と高慢な態度を取っているジェイスに対して、ヴァイは「世間知らずのお坊ちゃまが」みたいにあてこする。権威を振りかざして大上段に構えていたジェイスは、権威の椅子からいったん降りて “No” から “Yes” に返答を変える。それでも「私怨では動けない」と体制の側に立ち続けるジェイスの被害者意識をくすぐって自身を正当化させる。ヴァイが [S1E6:27:42] Silco: Vander's prodigy. であることが垣間見えるシーン。ジンクスやエコーのようなギフテッドではなく、シルコやメルのような計算ずくの人心操作術でもなく、野生のカン的なやつ。
[29:18] Vi: Someone close to me had a pair of these.
- someone: ヴァンダー。
S1E8: その他
- “local cuisine” の男は娼館にいた仮面の男
[S1E5:21:55]とおそらく同一人物。 - ハイマーディンガーは川岸で係船ロープを外そうとしているので(エコーに出会わなければ)上層に戻るつもりだった。
- 議会シーン冒頭でジェイスがいじっているのは蝶型爆弾。
- ヴィクターの右足が機械化されたあと、ヘクスコアは少し肉質的になっている。使用者は機械部品を手に入れ、ヘクスコアは生体部品を手に入れる、という関係。しかし通常は「劇的な変化」に耐えられない(植物実験)。おそらくスカイは特別製シマーなしで生体改変を行おうとしたヴィクターの身代わりになった。スカイがいなければ灰になっていたのはヴィクターだったのかも。ヘクスコアがさらに肉質的な表皮になったのはスカイの身体を丸ごと「交換」したからか。
- シマー製造工場の警報で呼び出されたのはケミタンク。
以下、ジンクスの中でケイトリンの悪魔化が進む過程。
[S1E7:10:08] She was there for me! Not the enforcer.[S1E7:32:39]怪我をしたケイトリンをヴァイが支えているシーン。[S1E8:15:39]シマー投与時の幻覚。
S1E9: The Monster You Created
S1E9: 登場人物
- レニ[Renni]: ケミ長者。ジェイスの誤射で死んだ少年の母。
S1E9: あらすじ
- エコーはハイマーディンガーに付き添われてファイヤーライトのアジトへ帰還する。発明について語り合い、二人は親交を深める。
- シマー工場奇襲後、ヴァイはこのまま流れでシルコを打倒するつもりだったが、工場の子供を殺してしまった罪悪感に苛むジェイスと口論になり、二人は決別する。
- ヴィクターは灰となったスカイを前にして嘆き悲しむ。怒りとともにヘクスコアを破壊しようとするが(それは自身の死を受け入れることを意味するため)できず、逆にヘクスコアから攻撃を受ける。ヘクスコアはいまや意志を持つ一個の生命体のように蠢いている。
- ヴィクターはかつて自分が下層側で遊んでいた場所(S1E6冒頭参照)を見下ろす場所でスカイの遺灰を撒く。そのまま自分も身を投げようと考えるが、工場襲撃から帰還したジェイスに話しかけられたことでタイミングを逃す。ヴィクターは自分にはできなかったヘクスコアの破壊をジェイスに託す。
- 工場襲撃で息子を殺されたレニはシルコに不満を持つ。フィンはセヴィカ同様にレニをそそのかし、二人をともなってシルコのオフィスにやってくる。フィンがシルコを糾弾し、セヴィカが仕込み刀を振り上げるが、セヴィカは最初から裏切ってなどおらず、シルコではなくフィンを斬殺する。
- ジェイスは書状でシルコに和平交渉を持ちかけ、一対一で会合する。シルコはジェイスの恐怖心を見透かし、ゾウン独立の要求を突きつける。ジェイスはジンクスの身柄と引き換えに、ゾウンの独立を約束する。
- シルコは長年夢見てきたゾウン独立の要求があっさり通ったことに拍子抜けする。しかし同時に、それが自分の娘と引き換えであることに苦悩する。ヴァンダーの銅像前での「告解」を隠れて聞いていたジンクスがシルコを攫う。
- ヴァイはシルコ一味の拠点となっているラストドロップへ単身乗り込む。仕込み刀を使うセヴィカに圧倒されるが、ガントレットのシールド機能の助けを借りて倒す。戦闘後、消耗しきったヴァイをジンクスが攫う。
- メルはノクサスと黒薔薇の戦争が始まろうとしていることをアンベッサから知らされる。戦力差を補うためにヘクステック兵器を持ち帰る必要があり、そのために、ピルトーヴァーでの上層と下層の衝突をそのままにして戦争を起こさせ、兵器開発が進むよう事を運べと促される。同時に「追放」が撤回されてメルは戸惑う。
- ジェイスは評議会でシルコとの和平交渉について、そしてゾウン独立について述べる。当然の帰結として議会は荒れる。メルもまたジェイスの和平提案とアンベッサの言葉(ピルトーヴァーで戦争を起こさせる&メルの追放撤回)の間で揺れていた。
- かつて自分が悲劇を起こしたシマー工場跡地でジンクスは「お茶会」を開く。参加者はこれまで攫ってきた三人。ヴァイ、ケイトリン、シルコ。目的は「自分がジンクスなのかパウダーなのかを決める」こと。相反するヴァイの言葉とシルコの言葉に精神的限界を迎えたジンクスは、ヴァイを撃とうとしたシルコを反射的に殺してしまう。この「2度目の(意図せぬ)親殺し」をもって、最終的にジンクスは「不吉の象徴」として生きることを選び、開発していたヘクステック兵器を用いて評議会を爆撃する。そこではいままさに和平提案が可決されようとしていた。
S1E9: 脚本
[00:47]
Jayce: We’re done here.
Vi: We haven’t even scratched the surface. Silco’s still out there.
Jayce: Do you not understand? I am part of this now! The next parents who get a message their kid isn’t coming home… I don’t even know where to take it.
- where to take it: “take” は「(感情や状況を)受け止める/処理する」だが、 “how to take it” が「どうやって受け止めれば」なのに対して、”where ~” は「どこに持っていけば」という感じ。ジェイスのやりきれなさが出ているフレーズ。
S1E8の「交渉」でヴァイはジェイスを与しやすしと見て、このまま流れでシルコ打倒まで押し切るつもりだった(フットインザドア)が、ジェイスが想定以上に豆腐メンタルだった(のでここで決裂)。
[01:12] Vi: There’s hundreds more where he came from, thanks to Silco, and thanks to people like you who stuck their heads in the dirt.
- stuck their heads in the dirt: (土に頭を突っ込んで)見て見ぬふりをする。一般的には “stick one’s head in the sand” だがここでは “dirt” になっている。 “dirt” という単語は下層側の人間がよく口にする(
[S2E4:16:20] Sevika: Stick your head in the dirt if you want[S2E5:27:10] Vander: But the dirt was on both our hands[S2E9:46:25] Vi: I am the dirt under your nails, Cupcake.)ので、鉱夫が多いレーン独特の言い回しかも。最終話のタイトルが "The Dirt Under Your Nails" なので、物語全体としても重要ワードっぽい。
[03:41]
Sevika: Been a while since topside’s gotten this bold.
Silco: Say what you want about the late Sheriff. He had his uses.
Sevika: Too bad Jinx didn’t think so.
Silco: We’ll buy another.
- bold: ガチ対応。前回は暴動のとき?
- the late Sheriff: マーカス。 “late” は最近死んだ人に対する形容詞。故○○。
- buy: 買収。
[03:53]
Renni: You gonna do anything about that piece of shit that murdered my boy? Let me guess, “Jinx will take care of it.” Just like she’s been taking care of everything else.
Silco: We all mourn the loss of your son, Renni. At least, we have the solace of knowing he died fighting for our cause, instead of some petty personal dispute, as so often occurs here.
Renni: You’re one to talk about sacrificing for the cause. Where is Jinx anyhow?
- my boy: ジェイスが誤射で殺した少年はレニの息子。危険を顧みず警報を鳴らしたところからして、施設の管理側として働いていた?
- taking care of everything else: 言い方からして反語っぽい。
- petty personal dispute: しょうもない個人的諍い。このフレーズのとき、まさにこれで命を落とすことになるフィンが映る。フィンの動きを察知しているシルコの牽制かも。
- you’re one to talk: どの口が言う。自分の娘(ジンクス)が好き勝手やらかしても咎めもしないくせに、みたいなニュアンスか。
[06:57] Mel: Stay away from Jayce!
[S1E8:21:10] でジェイスの様子がおかしいことには気づいている。今回のシマー工場襲撃でアンベッサが何か吹き込んだのだと察した。
[07:26] Ambessa: We’re in trouble, Mel. The man who killed your brother doesn’t believe the score is settled, and his resources exceed ours. If there is a chance Hextech can be weaponized, we must have it.
- the score is settled: 借りを返した。決着がついた。
黒薔薇はキノを殺したことで決着がついたとは思っていない。さらなる攻撃が予想され、戦力は向こうが勝る。だからヘクステックを兵器化できるのであれば、それを保持して戦争に備えたい。というのがアンベッサがピルトーヴァーに来た目的。問題の発端はこの時点ではぼかされている。初見では「キノが何かをしでかしてしまった→黒薔薇の怒りを買った」ことが原因のように見える。「S1E9: その他」のセクションで掘り下げる。
[08:03] Ambessa: Because you weakened me! I couldn’t endure the look in your eyes whenever I made the decisions, the necessary decisions to keep us safe!
これも本心ではありそうだが、本当の目的はメルを黒薔薇から守るため。
[08:19] Ambessa: We need that weapon, Mel. Let the war unfold.
日本語字幕では「戦争が始まるの」、日本語吹替では「戦争を始めるために」となっていて、どちらの訳も「the war=ノクサスと黒薔薇の戦争」であるように聞こえるが、 “Let the war unfold” は直前の “We need that weapon” を受けているので、「黒薔薇との戦いにはヘクステック兵器が必要だ。だからピルトーヴァーで起こっている上層と下層の衝突をそのままにし(止めるな)、戦争を始めさせよ(戦争が始まればヘクステック兵器が本格的に開発されるから)」という意味で捉える必要がある。
[08:26] Ambessa: And you come home, take your place at my side. It’s where you belong.
「追放」されたことに執着していたメルは思いがけない形でそれが撤回されたので戸惑う。評議会 [24:22] で見ている指輪はメダルダ家の紋章。「戦争を止めるな」という母の言葉と、ジェイスの和平案の間で板挟みになっている(邦訳だとこれがわかりにくい)。前者を選んで和平案を却下すれば「追放」が撤回される。それはずっとメルが求めていたこと。後者を選ぶことはメダルダ家への執着を捨て、ピルトーヴァーで自主独立していくことを意味する。迷った末にメルは指輪を外し [35:27] 後者を選ぶ。評議会という場の力学はメルがコントロールしているので、メルの選択が上層の選択となる(が、ジンクスの爆撃によってうやむやになる)。
[09:27] Jayce: Am I interrupting?
[S1E2:31:53] Viktor: Am I interrupting? と対になっている。
[09:41]
Jayce: Remember the Distinguished Innovators competition?
Viktor: I remember you notching gears in the carriage over.
Jayce: They started cranking the engine and the whole thing was rattling. I thought a loose cog was gonna take someone’s eye out.
Viktor: At least, you didn’t throw up.
- the Distinguished Innovators competition: おそらく別世界線でエコーが参加しようとしていた発明家大会。E3~E4までの間にジェイスとヴィクターはペアで参加した?
- throw up: 吐く。公式訳は「断念する」の方で解釈しているがたぶん違う。詳細は後述。
日本語字幕: 「発明家の大会を覚えてる?」「君はライバルの車を修理した」「ガタガタ音がしてて危ないと思ったから」「君は諦めなかった」
日本語吹替: 「大発明家大会、覚えてる?」「君はライバルの車のギアを直してやった」「エンジンをかけたらカタカタ言ってたから、部品が飛んで怪我人が出ると思ったんだ」「君の意地を見せたな」
公式訳は「理解できるよう綺麗に」訳しすぎていると思う。筆者にはこの会話は「二人以外には理解できない親密な会話」に聞こえる。想像の余地がある、というより、想像するしかないやつ。というわけで想像してみる。まず “carriage over” をどう捉えるか? 英語のセリフを聞いて頭の中に浮かぶのは、ヴィクターから少し離れたところに “carriage” (馬車or機械装置を載せた荷台のようなもの)があって、ジェイスがその中(上)で装置を修理しているシーン。公式の翻訳者が想像したのはおそらくこれ。少し離れたところにある→なぜ離れているのか→ライバルの装置、と解釈したのでは。この解釈だと “not throw up” が「諦めない」の意味になってくる。この解釈でもいいといえばいいかもしれない。しかし筆者が想像したのは次のようなシーンだ。ヴィクターはスピーカーとして研究発表をしていて、ジェイスが少し離れたところでガタガタ言い始めた装置をリアルタイムに修理している。ヴィクターは大勢の前に出るのが苦手( [S1E4:23:28] Not in front of all of them )なので、発表前に緊張で吐いて[throw up]しまった。その思い出話でジェイスが "take someone's eye out" 「目が飛び出る」とか言ってるから、「まあでも少なくとも[at least]胃の内容物は飛び出なかったじゃないか(僕のは出たけどね)」みたいに返しているのではないか。もしくは、ヴィクターのセリフがすさまじく圧縮(親密ゆえに省略)されていて、展開すると "carriage ride over to" になるなら "carriage" は移動装置の意味で、二人ともそれに乗っていて、ジェイスは動いている装置の中で修理をし、ヴィクターは乗り物酔いで吐いてしまった、みたいな意味になるか。筆者としてはヴィクターが発表前の緊張で吐いてしまった説を唱えたいが、ここは理解できないままにしておくのが正解なんだろうなと思う。もう決定的に道が分かたれてしまった[take part ways]二人が、かろうじてつながっている過去の記憶で黄昏の時間を共有する。その会話は、視聴者には理解できない。そっちの方がエモい。
[09:59] Jayce: Everything made sense then.
- make sense: 頻出だが日本語に変換できないイディオム。納得できる。理にかなう。直近のジェイスには理不尽ばかりが降りかかっているので、その理不尽がなかったころ、世界のありように納得できていたころ、「そうあるべきだ」と感じられていた時代を懐かしんでいる。
[10:05]
Viktor: You have to destroy it.
Jayce: I know.
Viktor: The Hexcore.
ジェイスは最初「破壊しないといけない」対象をヘクステック兵器のことだと思い込み、 “it” をヘクスコアと言い直されたときに驚く。ヘクステックの兵器化に強硬に反対していたヴィクターにはそう言われて然るべきだと考えていたからこの勘違いをした。ひるがえって、兵器化についてヴィクターが何も言わないのは、自身もまた隠し事があるから。シマーの使用、ヘクスコアによる生体改変、そしてスカイの死。ジェイスが腰を下ろす前にヴィクターはスカイのバインダーを隠している=後ろめたい→自分にはジェイスを責める資格がない。
[10:27]
Viktor: Promise me.
Jayce: I promise.
この約束はヴィクターがヘクスコアと同化したことによって果たせなくなるが、未来のヴィクターと交わした約束 [S2E7:36:54] Jayce: I swear it. と同時に果たされる。 [S2E9:35:24] Jayce: Because I promised you.
[10:38] Viktor: We lost ourselves. Lost our dream. In the pursuit of great, we failed to do good. We have to make it right.
ジェイスは政治に巻き込まれて、ヴィクターは死から逃れるために、本来の自分を見失った。ヘクステックは結局兵器化され、この技術で世界をよりよくするという二人の夢もどこかに行ってしまった。「偉大」を成そうとして(大きな成果を求めて)、「善」を成すことに失敗した(大切にすべき身近なものを失った)。もう取り戻せないものもあるけれど、道は正さなければならない。
[12:18] Silco: That’s a risk I’ve known all my life. But I still believe in loyalty.
「わかってましたよ」風に堂々としているのがこういう場面のクリシェだが、セヴィカがフィンを斬ったあとシルコはだいぶ動揺している。Arcaneのこういうところがいい。キャラクターが生きている。
[14:06] Jayce: I was reminded recently of what brought us together in the first place. The threats beyond our walls.
[S1E2:17:20] Shoola: Piltover was founded to escape the warmongering of mages.
[15:12] Jayce: The Council couldn’t care less. I’m trying to save you from annihilation.
「まずは対話を」という評議会の決定を無視して強硬策を取ったのはお前ちゃうんかーい(たった2人のヘクステック兵器所持者でケミタンクを何体も倒しているので、このまま対立が激化すれば、ヘクステック兵器が本格的に開発されて下層側が壊滅的なことになるのはたしかではある)。ジェイスの評議会での立場をシルコが理解しているかどうかはわからないが、タヌキである(ただの優等生ではない)ことはわかったので、交渉の余地ありと見て、下層側の要求を突きつける。
[16:47]
Heimerdinger: You say all this came about in your own brief lifespan? How were you able to accomplish so much so quickly?
Ekko: You’d be surprised what you can pull off when your life depends on it.
Heimerdinger: Why this form? Surely, there are more efficient and safer methods of transportation.
Ekko: It’s not enough to give people what they need to survive, you have to give them what they need to live.
- brief lifespan: 不老であるハイマーディンガーからすれば人間の一生は短い。
これまでハイマーディンガーは不老ゆえの時間感覚と、長い人生の中で見てきた(特に魔法が起こした悲劇の)記憶によって、ジェイスやヴィクターとは考え方が異なっていた( [S1E4:13:55] Heimerdinger: Give it a decade of careful research, and it will be ready. )が、ここでエコーと過ごすことによって、少しずつ考え方が変わっていく。 "not to survive but to live" というセリフで、エコーのリーダーシップに焦点が当たっているように見えるが、ハイマーディンガーにも注目したいシーン。
[21:06] Vander: Your guard needs working.
ヴァイは攻撃主体で防御をおろそかにしがち( [S1E7:04:44] Ekko: You still block with your face. )なタイプ。このセヴィカ戦でも前半はろくにガードしていない。しかしセヴィカが仕込み刀を使い始めてからガードせざるをえなくなり、普段とは違う戦い方をしたせいでセヴィカに圧倒される。意識が遠のく中でヴァンダー(の幻覚)に「ガードを改善しろ」と言われる→「ちゃんとしたガード」を行う→ガントレットに仕込まれたシールド機能が発動する。これはLoLでのブラストシールドにあたると思うが、このガントレットは採掘労働者用なので、おそらく落盤時の緊急安全装置として作られた機能。咄嗟に頭をかばう動作(落盤発生時にやるであろう動作)をトリガーとして作動するっぽい? 視聴者からすると唐突だし、シールド発動後の反応を見る限りヴァイ自身にとっても予想外で、ジェイスからこの機能について聞かされていなかった感じがするが、普段はおろそかにしているガードをちゃんと意識して行ったことによって発動した、というプロット上の納得感はある。
[23:07] Jayce: My recent unsanctioned activities in the underground have shown me two things.
- unsanctioned: ジェイスの工場襲撃は独断。執行官を連れていたのはその権限が与えられていたから。
[S1E4:31:12] Mel: As a Councilor, he will have the resources necessary to protect all our investments.
[23:29] Cassandra: You’re walking a fine line, Jayce.
- fine line: 危ない橋(を渡っている)。警告。
[23:45] Jayce: My days here are numbered, but I’ve come with Viktor, my partner and a Zaunite, with one final proposal.
- my days here are numbered: ここにいるのはもう長くない。ジェイスは議員を辞めるつもりでいる。 “not give a shit” とか言ってるのは「もうどうにでもな~れ」状態だから。
- Zaunite: ゾウン人。もうゾウンという国があるかのような呼び方。
[24:42] Jinx: Really thought I buried this place. But I should have known better. Nothing ever stays dead.
- bury: 葬り去る。記憶から消し去る。
- this place: かつて自分が悲劇を起こしたシマー工場。
“Nothing ever stays dead.” はジンクスの死生観が最もよく出ているセリフ。直訳だと「何も死んだままにはならない」か。「S1E9: その他」のセクションで掘り下げる。
[25:26] Jinx: But he didn’t make Jinx. You did.
タイトルの “The Monster You Created” はここにかかっている。最後に完成させたのはシルコではあるが。
[27:48]
Jinx: I made her a snack.
Vi: No!
Jinx: I’m not that crazy.
ヴァイはケイトリンの頭部が出てくると思っていた。皿の上に乗っていたのが「カップケーキ」なのは偶然か( [S1E7:28:29] Vi: It's been real, Cupcake. をジンクスは遠くから見ているが聞こえてはいないはず)。本来はフルーツが乗っているべき部分にジェムストーンが乗っている。
[29:50] Silco: The topsiders offered me everything. Independence, a seat at the table. All in return for you. They can all burn.
- they can all burn: 全部燃えちまえばいい。強い拒絶。
[30:00] Silco: Everyone betrays us, Jinx. Vander. Her. They will never understand. It’s only us. You’re my daughter. I’ll never forsake you.
[S1E7:20:34] Silco: I am your family. Everyone else betrays us. で言っている "us" も "only us" で、姉妹(兄弟)に見捨てられた同じ体験を持っている(とシルコは思っている)二人のみを指す。
[32:55] Silco: I never would have given you to them. Not for anything. Don’t cry. You’re perfect.
「お前は完璧だ」はS1E5の洗礼前にも言っている( [S1E5:30:09] Silco: Jinx is perfect. )。完璧には程遠い不安定なジンクスに対してこう言うのは、親だけが可能な「無条件の肯定」か。Arcaneからちょっと話がずれるが、人が社会の中で認められるには、「有能だから」とか、「容姿がいいから」とか、何らかの条件が必要となる。わかりやすいのは資本主義社会の賃労働で、この社会においては「誰かの役に立つ」ことで貨幣、つまり生存に必要なリソースへのアクセス権が与えられる(筆者はこの仕組みを肯定しつつもこれが社会の基盤であってはならないと考えているが)。そんな社会の中でも、無条件で存在を肯定するのが「親」である。ジンクスは幼少期からここに至るまで、ずっと「不吉」を呼ぶ存在だと言われてきた。信じていたヴァイにまでそう言われ、置き去りにされた。シルコの元でも、セヴィカだけでなく他の手下や関係者からも疎まれているであろうことは察せられる。シルコはジンクスを必要だと言う( [S1E7:20:39] Silco: I need you. )が、それはジンクスの技術力を求めてのことだし( [S1E7:20:49] Silco: You have to complete the weapon. )、「お前は唯一の家族だ」という言葉も、「お前は完璧だ」という肯定も、いつもの人心操作かもしれない(ジンクスはマーカスやその他の人間に対するシルコの接し方を間近で見ている)。それが本心なのかどうかずっとわからなかった。しかし「2度目の親殺し」をしてさえ、シルコはジンクスを肯定する。しかも今回殺されたのはシルコ本人だ。その本人から発せられる最期の言葉が、人心操作のための言葉であるはずがない。ジンクスはこの瞬間に、シルコはたしかに自分の「親」だったのだと気づく。
[34:10] Jinx: I thought maybe you could love me like you used to. Even though I’m… different. But you changed too. So… Here’s to the new us.
- here’s to ~: ~に乾杯。
「新しい私たち(の関係性)に(乾杯)」で盛大な「祝砲」を捧げる。ヴァイの「ここを出てどこかへ行こう」への返答。
[35:31] Mel: I support Councilor Talis’ proposal for peace.
ここでジンクスが評議会を爆撃しなければ、実はすべてうまくいっていた。戦争は回避され、ゾウンは独立を果たし、上層と下層は新しい関係性を築けていた。でもそうはならなかった。ならなかったんだよロック。だからこの話は続くんだ。
♪ What could have been?
エンディング曲のタイトルは「(もし何かが違っていたら)どうなっていただろう?」の意。シマー工場でパウダーがいつも通りに失敗して爆発を起こさなければ、ヴァイが父の教え( [24:13] Vi: Be patient. )通りに怒りを抑えていれば、マーカスがヴァイを投獄しなければ、その他にもいろんな思惑やすれ違いが重なり合って、こうなってしまった。何かが少しでも違っていたら、まったく違う世界もありえたかもしれない。そしてその可能性はS2E7で描かれる。
S1E9: その他
- ここらへんから公式の邦訳が微妙になってくる。物語構造をちゃんと理解していないと翻訳が難しそうだなと思った箇所を確認すると、間違った解釈で訳していることがそこそこあった。特に字幕。切り替えが面倒なので吹替はあまり確認していないが、字幕が間違っていても吹替は合っていることが多かったので、初見は吹替で見た方がよかったかも、と思った。でも英語圏のアニメってリップシンク(唇の動きとセリフを合わせる)をものすごくきっちりやってるので、それに慣れると全然違う発音のセリフを喋ってるのが違和感バリバリになってしまうのよね。悩ましい。
[13:32]でシルコが見ている書簡の紋章はタリスのT。[24:32]でヴァイの足元にあるのはジェイスの研究室にあったアンティークオルゴール([09:10] Powder: Whoa, I think this is a real Valdiani.)。水底から回収した?[32:24]でジンクスがケイトリンの反応速度を上回る動きができたのはシマーによる身体強化のおかげ。シンジドがジンクスを回復させるために使ったシマーは、ヴィクターに渡したものとは別の「特別製」で、耐えた人間には永続的な身体強化効果がある、みたいな感じか。
以下、ジンクスが放ったロケット弾(スーパーメガデスロケット)が着弾するまでのカット。
- 評議会メンバーがジェイスの和平提案に賛成していく。
- セヴィカはヴァイとの戦闘で義手を破壊され、主のいないオフィスに帰る。
- ファイヤーライトのアジトでエコーの熱弁をハイマーディンガーが興味深そうに聞いている。懐中時計がちらりと映る。
- シンジドが自分の研究所で娘の写真を見ている。獣化した人間が吊るされているのがちらりと映る。ヴァンダーが獣化されるのはS2だから別の実験体?
- メルが描いていた絵(ノクサスの港)が汚損しているのをアンベッサが見つける。メルは評議会に出る前にすでに心を決めていた。
- 評議会メンバーが全員賛同した瞬間にロケット弾が飛来し、メルの魔法の力が(無意識に)発動する。
以下、メダルダ家・黒薔薇関連まとめ。他にもいろいろあるがArcaneの内容を理解するのに必要な情報はこれくらいのはず。メルがLoL本編に逆輸入されたり、2025年シーズン1のムービーに登場していたりして、現在進行形の話なので、まだよくわからないところも多い。
- アンベッサはアジジと結婚するが、政略結婚なのでお互い別にパートナーを持ったりする関係だった。
- ノクサスの名家であるメダルダ家を傀儡とするため、黒薔薇はルドを送り込む。
- 非人道的な魔術実験を厭うルドはアンベッサと共に黒薔薇を倒そうとする。
- 黒薔薇は掌握に失敗したメダルダ家を滅ぼすことにする。
- ルドとアンベッサの間に強力な魔法の力を持つ子供(メル)が生まれる。
- メルを黒薔薇から隠すためアンベッサとルドは関係を断つ。
- 幼少期のメルは(父であることは隠している)ルドと出会う。メルはルドを信用し、母を失望させてしまったと打ち明ける。画家でもあるルドの「好きな絵画をひとつ持ち帰っていい」という言葉に対し、メルはルド自身に彫られた黄金のタトゥーを選ぶ。このタトゥーによってメルの魔法の力は封じられ、長らく発現せず、黒薔薇が気づくことはなかった。ちなみに、メルの絵画の趣味はルドの影響。
- アジジが事故で死亡する(黒薔薇に暗殺される)。
- 黒薔薇といろいろあって疑心暗鬼になったアンベッサはメルをピルトーヴァー(魔法が忌避されていて黒薔薇の手が及びにくい場所)へ「追放」する。
- 黒薔薇との確執が深まり、アンベッサは領土・財産を失い続ける。
- キノは父(アジジ)の死について調査している途中でアンベッサとルドの関係を知る。深く入り込みすぎたキノの調査行動が黒薔薇の目にとまる。黒薔薇はキノがルドの子だと思って捕らえたが、すぐに違うとわかり、アンベッサを精神的に追い詰めるために使う。
- アンベッサはキノを救うのは手遅れだと判断し、メルを守るためにキノを見捨てる。キノは黒薔薇に殺される。
- アンベッサは黒薔薇と戦える力(ヘクステック兵器)を手に入れるためにピルトーヴァーへ向かう(領土も財産も失い続けて他に手段がない)。
- S1E8でアンベッサがピルトーヴァーに来る。
以下、ジンクスの死生観について掘り下げる。
[28:41] Jinx: Make her go away. Please. Send her on her way and… And you can have Powder back.
本エピソードの「お茶会」でジンクスはヴァイに銃を渡し、ケイトリンを殺すように仕向ける。しかしここで使っている言葉は、 “go away” と “send her on her way” で、どちらも「追い払う」の意味だ。
Lined up all the little duckies in a row
Why did they look so sad?
They’ll be together after
Wherever people after go
これはLoL内で見ることができたジンクスの日記の一部。 “duckies” (子供たちの意?)が一列に並ばされ、(シルコの手下orジンクスに?)順番に殺されていくような光景がイメージされる。ジンクスは彼らが悲しんでいる理由がわからない。あとで会えると思っているから。ここでもジンクスは死を「移動」のように捉えている。
[24:50] Jinx: Nothing ever stays dead.
何も死んだままにはならない。ジンクスがそう考えるのは、彼女の現実ではマイロやクラガーがたしかに「生きて」いるからだ。ジンクスは自分のミスによって家族を殺してしまったという事実に耐えられず、「死」という概念そのものを根底から書き換える必要があった。「死」が壊れた世界。それが劇中で描写されたジンクスの幻覚だ。それは他者からすれば壊れた世界であっても、ジンクス本人からすれば整合性の取れた現実なのだ。ジンクスにとって「死」は終わりではなく、状態の変化、ただの移動。だから大丈夫。過去に何があったとしても。
[S2E4:16:05]
Sevika: He believed in your potential.
Jinx: Well, then he shouldn’t have died!
ジンクス自身の手で葬ったシルコに対して「なら死ぬべきじゃなかった」「ならなぜ死んだ」という、ここだけ聞けば身勝手すぎるセリフも、上のような前提があれば理解できる。これは、一般的な言葉で言い換えれば “Then he shouldn’t have left!” なのだ。セヴィカの「シルコはお前の可能性を信じていた」に対するジンクスの返答を「ならなぜ(私を置いて)去ったんだ」と変換すれば、普通のやり取りになる。
[30:45] It’s time to leave them.
これは本エピソードでケイトリンがジンクスにミニガンを向けたときに聞こえる音声(かなり注意していないと聞き取れないが英字幕がある)。おそらく幻覚のマイロのセリフ。実はこの謎のセリフは、橋の上でジンクスが蝶型爆弾を解き放つ前 [S1E7:30:10] にも幻覚のマイロが囁いている(こちらはほとんど聞き取れないが同じセリフであることはわかる)。このあとジンクスはどうしたか。エコーと戦い、敗れた。エコーが自分を殺せないとわかるとグレネードで自爆した。本エピソードでジンクスはどうしたか。ケイトリンに銃を向けた。普通に考えればミニガンで蜂の巣にされている場面だ。このセリフが聞こえたあとに毎回、ジンクスは死につながるような行動を起こしている、ということになる。ここでもう一度「お茶会」のセリフを思い出そう。ジンクスはケイトリンを殺すことを "go away" と表現した。ジンクスにとって死は「移動」にすぎないからだ。これを逆向き(死に向かう本人視点)で捉えれば "leave" となる。以上のことを前提すれば、このセリフの本当の意味が見えてくる。これは、死への誘いだ。劇中、ジンクスにはずっとこの声が聞こえていたのだ。「もうそろそろ頃合いじゃないか?」という、死への誘いが。
[25:39] Jinx: You never left. I always heard you. Shadows in the streets, prickles on the back of my neck. Your voice. Pushing me. Picking me up when all the colors were black. You’re the reason I’m still alive.
それでもジンクスが生き続けていたのはヴァイがいたから。
[S2E3:25:26] Jinx: Go on. I’m ready. I’m glad it’s you. Had to be you.
だから自分を殺す(苦しみから解放する)のは、無限の責苦の中でずっと自分を生かし続けてきた(苦しめ続けてきた)ヴァイでなければならなかった。
S2Act1: 要約
- ジンクスの爆撃で評議会の議員が3名死亡し、サロは下半身不随となる。
- 瀕死のヴィクターはヘクスコアと融合して機械の体となる。
- アンベッサの手引きでレニが追悼式を襲撃する。
- ケイトリンがキラマン家の家督を継ぐ。
- ジェイスがヘクステック兵器を追加開発する。
- ケイトリンは急襲部隊を結成して下層へ赴く。
- ヴィクターはジェイスと袂を分かち、最下層でシマー中毒者の救世主となる。
- ファイヤーライトのアジトの巨木に異常が発生する。
- ジェイス、エコー、ハイマーディンガーはヘクスゲート基部で発生した異常[anomaly]によって別世界へ飛ばされる。
- アンベッサはアマラに暗殺されそうになるが返り討ちにする。
- 黒薔薇への対抗手段としてヘクステック兵器を手に入れるため、アンベッサはピルトーヴァーの傀儡政権化を進める。
- メルが黒薔薇に囚われる。
- ジンクスはヴァイと戦って(計画通りに)敗れるが、殺される寸前でイーシャが乱入する。
- セヴィカは(ジンクスの殉死計画を無視して)ジンクスの仕掛けを起動する。
- 灰色の靄[Grey]を上層に届けるジンクスの仕掛けは、ある種のポリティカルアートとして成功し、(意図通りに殉死できなかった)ジンクスは(意図に反して)下層の象徴となっていく。
- 下層脅威論がより一層強くなり、上層はケイトリンを司令官として戒厳令を敷く。
S2E1: Heavy Is the Crown
S2E1: 登場人物
- サロ[Salo]: 評議会メンバー。ジンクスの爆撃によって下半身不随となった。
- シューラ[Shoola]: 評議会メンバー。ジンクスの爆撃によって右目を損傷した。
- マディ[Maddie]: 執行官。ケイトリンの急襲部隊に加わる。ノクサスのスリーパーエージェント。
- ロリス[Loris]: 執行官。ケイトリンの急襲部隊に加わる。吞んだくれのタンク。
- ステブ[Steb]: 執行官。ケイトリンの急襲部隊に加わる。寡黙な魚人。
- リクタス[Rictus]: アンベッサの護衛。モヒカンの巨漢。
S2E1: あらすじ
- ジンクスの爆撃によって評議会は壊滅的な打撃を受ける。メルとジェイスは(メルの魔法によって)無傷だが、ケイトリンの母を含む3名が死亡し、他メンバーも負傷。下層の代弁者としてその場に居合わせたヴィクターも瀕死で倒れている。これまで手袋と服で隠れていた機械化部位があらわになり、ジェイスはヴィクターが秘密裏にヘクスコアを使っていたことを理解する。ジェイスはヴィクターを救える可能性があると判断し、ヘクスコアの元へ連れていく。ヘクスコアはヴィクターに反応し、両者は融合する。これによってヴィクターは命をつなぎとめるが、ジェイスは「ヘクスコアを破壊する」というヴィクターとの約束を破ったことになる。
- 半壊した議会ホールで議員たちが今後の対応について話し合う。メンバーが約半数となった評議会では、個人的な意見の相違が全体の結論を大きく左右する。さまざまな思惑が交錯する中、いったん「ジンクスを捕えるために下層へ全面侵攻する。ただしヘクステック兵器なしで」という結論になる。このままではヘクステック兵器が開発されないため、アンベッサは追悼式襲撃を手引きする。
- ケイトリンは自分の過信が悲劇を招いたことを反省し、単独でジンクスを追おうとするヴァイの無謀を諫め、執行官として全面侵攻(ジンクス捕獲)に加わるよう提案する。両親を執行官に殺されているヴァイはその提案を強く拒絶する。
- アンベッサに手引きされたレニが政府主催の追悼式を襲撃し、会場はパニックになる。ケイトリンらが善戦するが、強力なケミタンクを前に劣勢に立たされる。ヴァイがジェイスのハンマーを持ち出して応戦しようとするが、タイミングを見計らって待機していたアンベッサらノクサス軍によって事態は即座に収拾する。アンベッサは口封じのためにレニを殺す。
- 立て続けに起こる悲劇・事件で限界に達しようとしていたケイトリンをヴァイが精神的に支える。ケイトリンは家督という重責[heavy crown]を引き受ける覚悟を決め、ヴァイを含めた少数精鋭チームを結成し、「ジンクス捕獲、シマー流通シンジケート解体、シルコの残党を無力化」という目標を定め、ジェイスが開発した新たなヘクステック兵器と共に下層へ赴く。
S2E1: 脚本
[06:10] Salo: To think we nearly extended sovereignty to the creatures who did this.
- to think ~: ~とは。~だなんて。感嘆。
- sovereignty: 主権。ゾウン独立のこと。
- creatures: 相手を人間以下とみなすときの侮蔑語。理性のないケダモノみたいなニュアンス。日本語の「ケダモノ」だときつすぎるので筆者訳では「連中」とした。
日本語字幕: 我々は主権を広げていき、この状況に至った
日本語吹替: この悲劇を起こしたやつらも、我々の統治下にあった
筆者修正訳: こんなことをしでかす連中に主権を認める寸前だったとは
公式訳はどちらも誤訳。翻訳者がピルトーヴァーとゾウンの政治的状況を把握できていないのだと思う。ピルトーヴァーの評議会(主語)が、これをやった連中=ゾウンの人々(対象)の主権[sovereignty]を拡大[extend]する=独立を認める(ところだった)、という構文。S1ラストでジェイスの和平提案(=ゾウン独立)は可決される寸前だった。
[07:07] Salo: What is she doing here?
議員でもないただの執行官がここで何をしてるんだ(なぜ口をはさんでるんだ)、の意。
[07:17]
Mel: Silco is dead. The underground, leaderless. If we follow your plan, we risk unifying them against us.
Salo: So, what is your solution? Chastisement? A firm reprimand?
Mel: We use their division against them. Pin the attack on Jinx, post a reward too substantial to ignore.
Shoola: I’m sorry, Mel. I’m not comfortable trusting our fates to chance. Jinx has proven elusive. Our healing can only begin once she’s been brought to justice.
Salo: Then it’s settled, 2 to 1. We invade.
Ambessa: If I may? In crises such as these, it’s imperative you present a unified front to the public, whatever your personal feelings.
Mel: How wise. I’ll agree to endorse the invasion. But I draw the line at Hextech. We have an ethos. Such force must be a final resort.
Shoola: Agreed.
Mel: Then it’s settled, 2 to 1.
- chastisement: 懲罰。経済制裁とか。
- firm reprimand: 厳重注意。非難声明とか。 “chastisement” と合わせて武力行使をともなわない「ぬるい対応」の意。
議論の流れがわかりにくいのでそれぞれの立場をまとめる。
- アンベッサ: サロ(の下層に対する怒り)を利用して戦争を起こさせ、ヘクステック兵器を開発させたい(黒薔薇との戦いに備えてノクサスに持ち帰るため)。ヘクステック兵器ありの侵攻支持。ただし議員ではないので票には数えられない。
- サロ: いままで放置していたがゾウン(と呼ばれる地域)はピルトーヴァー統治下にあるのでその責務を果たさなければならない(公的)。自分にこんな仕打ちをした下層の連中をどうにかしたい(個人的)。ヘクステック兵器ありの侵攻支持。
- シューラ: ジンクスを法の下で裁くことが解決の始まりと考える。しかしそれは「賞金目当ての人間にジンクスを捕えさせるような確実性のない策」であってはならない。ジンクスを確実に捕えるために侵攻支持。しかしピルトーヴァーが作られた意味を理解している(
[S1E2:17:20] Shoola: Piltover was founded to escape the warmongering of mages, not cultivate it.)のでヘクステック兵器なしの条件付き。 - メル: キノと同じくハト派なのでもともとメダルダ家とは相容れない(
[S1E8:12:43] Mel: War isn't our first and every recourse.)。メダルダ家とは袂を分かつ覚悟があるのでアンベッサの意向・事情ではなく自分の信条・事情を優先する(アンベッサも汚損した絵を見て理解しているので "personal feelings" みたいな言い回しをして牽制している)。戦争の恐ろしさを知っている([S1E8:22:42] Mel: Jayce, you don't know war. I do.)ので侵攻不支持。ジンクスにすべての責を負わせて下層を分断すれば、全面衝突は避けられると考える。が、この案はシューラが反対したので却下。侵攻自体は支持するが、壊滅的な結果になることを避けるため、ヘクステック兵器なしの条件付き。
評議会は今世代に至るまで7席だったのをジェイスを加えるために8席にしたが、ハイマーディンガーの追放によりS1終了時点での議員は7人。ジンクスの爆撃で死亡したのはカサンドラ(ケイトリンの母)、ボルボック(気体種)、ホスケル(髭)の3人。生き残った議員はジェイス、メル、サロ、シューラの4人。ジェイスはヘクスコアの解析中&もう議員を辞めるつもり( [S2E2:16:03] Jayce: I'm going to resign from the Council. )なので出席者は3人。侵攻賛成2、ヘクステック兵器なしでの賛成2、となって、ヘクステック兵器なしの条件付きで侵攻、という結論になる。ヘクステック兵器が開発されない流れになったのでアンベッサがリクタスに目くばせをする→リクタスがレニに追悼式の招待状を渡す→レニが息子の復讐のために追悼式を襲撃する→下層脅威論が強くなる→ヘクステック兵器が開発される。ここまではアンベッサの思惑通りだが、ヘクステック兵器を所持した少数精鋭による特殊作戦(≠侵攻)なので、最初の結論とは逆になっている。
ちなみに “We have an ethos ~” のところが日本語字幕では「エートスこそが解決策となるに違いない」となっているが、これは誤訳。「我々にはエートス(魔法に対する倫理)がある。そのような力(ヘクステック兵器)の行使は最終手段でなければならない」が正しい。日本語吹替は合ってる。
[09:45] Caitlyn: I had the shot.
撃つチャンスがあった(が逃してしまった)。ケイトリンがジンクスにミニガンを向けたときのこと。
[10:04] Caitlyn: The Kiramman Key?
“key” が大文字始まりなので「キラマン・キー」という名のユニークアイテムという感じ。キラマン家のアーカイブにアクセスするための鍵であり、レーンの換気システムの鍵(=管理者権限)でもある。おそらく家督も意味している。王冠[crown]が王権の象徴であるような感じ。ケイトリンはその重み[heavy]をいったん拒むが、追悼式襲撃後に考え方を変え、家督を継いでキラマン家当主(ハウス・キラマン筆頭[leader of House Kiramman])となる。タイトルの “Heavy is the Crown” はここにかかっている。重み(を背負う覚悟)こそが王冠。
[10:29] Tobias: What is she still doing here?
[07:07] Salo: What is she doing here? と合わせて、ヴァイとケイトリンの居心地の悪さ、立ち位置の不安定さが表現されている。本エピソードはこの二人が足元を固めるまでの過程を描いている。
[11:46] Caitlyn: They’re sending all the Enforcers after Jinx.
序盤の議論の結論。
[12:19]
Vi: I watched them kill my parents. Do you have any idea how that feels?
Caitlyn: Yes. I do.
上層の人間に両親を殺されたヴァイと同様に、ケイトリンは下層の人間に母を殺されたばかりなので、力を込めて「わかる」と言える。
[12:30]
Caitlyn: I thought you were on our side.
Vi: You didn’t think at all.
日本語には変換できないやり取り。ケイトリンの “I thought” は「~だと思ってた」のニュアンスだが、その “think” に対する “not think” は、「思ってない」ではなく、「考えていない」のニュアンス。ケイトリンが軽率なことを言って、ヴァイがその「浅慮」を責めているシーン。かなり強めの拒絶。
[14:44] Jayce: The Hexcore has been evolving. Shifting through runic patterns faster than I can keep up. All I know for certain is that it’s keeping him alive. It’s the sort of puzzle Viktor would love if he wasn’t… It should be me up there instead of him.
ヘクスコアは進化し続けている。解析不可能な速さでルーンを組み替え続けている。ジェイスは “if he wasn’t” の後ろに「現在の状況」を続けようとしたが、喋っている途中で「そうなっていたのは自分だったかも」という考えが浮かび、一瞬物思いにふけったあと、あとに続く言葉を変えている。
[15:09] Jayce: I still don’t understand. He was right next to me. How does the explosion do that to him, and I just…? I just walk out without a scratch?
メルが(無意識に魔法で)ジェイスを守った。
[15:23] Mel: There’s no sense to these things, Jayce.
“make no sense” のニュアンス。理にかなわないこともある。この時点のメルは、自分の力でそうなった(=必然)とは気づいておらず、二人が無傷だったのは偶然だと思っている。こういう偶然には理屈なんてない、というニュアンス。
[16:53] Jayce: Hey, Sprout.
- Sprout: ヴァイの「カップケーキ」みたいなペットネーム(とまでは言えないカジュアルな感じ?)。ここでしか使われない。
[17:20] Jayce: I can’t even tell if he’s still in there.
ヘクスコアによって生かされてはいるが、ヴィクターと呼べるもの(自我・意識)がそこにあるのかどうかはわからない。
[17:36] Caitlyn: And every fiber of me just sinks, like a stone swallowed in dark water.
憎悪で心が黒く染まっていく感じがありありとわかる詩的表現。ケイトリンの心象風景はモノクロ(=dark water)だが菫の花[violet]のみ色が付いている(それすらも黒く染まっていくが)。母を失って自分の足元が揺らぐ中でケイトリンはヴァイを心の拠り所としている。だからどうにかしてつなぎとめておきたくて、ヴァイに軽率な提案をしてしまった。
[17:56] Caitlyn: One vicious act.
直前の「簡単に憎しみは募る」を受けているので、「そうなるにはたったひとつの悪意ある行動(=ジンクスのしたこと)で十分だとわかった」のニュアンス。
[18:11]
Caitlyn: She thinks those gauntlets of yours will solve all her problems.
Jayce: What if she’s right?
Caitlyn: Hextech may keep us alive, Jayce, but it’s not what will save us.
「ヴァイはガントレットですべての問題が解決できると思ってるみたい(皮肉・軽口)」「それが正しいとしたら?(若干本気)」の流れなので「ヘクステック(兵器)で問題を(武力)解決しても、開発されたヘクステック兵器がまた惨禍の種となる(から救われない)」のニュアンス。この時点のケイトリンはヘクステックの兵器化には反対の立場だが、追悼式襲撃で考え方が変わる。
[18:33] Vi: Me. Join the peanut patrol.
- peanut patrol: 執行官(の職務)に対する侮蔑表現。
[18:43] Vi: Her dad’s right. There’s no point in sticking around up here. Except… I’m the one who created the monster.
ケイトリンの父が言っていた [10:29] Tobias: What is she still doing here? のこと。ヴァイが上層にいる意味はない[no point]が、ジンクスという怪物を生み出したのは自分なので、その後始末をする責任がある、という意味[point]はある。
[19:12] Maddie: Junior Officer Nolen. Maddie.
初対面&仕事中なので階級+姓をまず名乗り、しかし相手と親しくしたい(その方がスパイ活動が捗る)ので直後に「マディ(って呼んで)」と付け加えている。
[19:18] Maddie: It’s written on your face.
「細かい人相まで知れ渡っているから」かもしれないが、咄嗟の言い訳のようにも聞こえる。ちなみにヴァイの顔のタトゥーはローマ字ではなくローマ数字の6[VI]だが、この数字が何を意味するのか公式設定はない。ファンダムでは「監獄の囚人番号が516だったのでは」とか、「失った家族の人数では」とか、いろいろ推測されている。
[19:38]
Maddie: Caitlyn made quite a scene at the station when they tried to deny your enlistment. Now I have to ask, is it all true? You went after Silco alone when the Council wouldn’t back you? Took on his whole gang?
Vi: Cait said all that?
Maddie: She said if every Enforcer had a heart like yours, we could take on Noxus itself. Then she threatened to withdraw her family’s funding. Anyhow, I’m glad you’re joining up. After the sheriff betrayed us, well, let’s just say, it’s nice to know there are still good ones left.
- make a scene: 騒ぎを起こす。ヴァイの入隊に反対する人間に対してケイトリンが声を荒げているのをまわりが遠巻きに見ているようなシーンが想像される。
- station: 署。
- take on: 戦える。対峙できる。ここでマディがノクサスの名前出してるの草。
- withdraw: (執行官組織への資金援助を)引き上げる。
- the sheriff: マーカス。
ここでヴァイはケイトリンが本気で行動していた(浅慮ではなかった)ことを知り、マディの勘違い(入隊)を訂正せずにいる。
[24:12] You aren’t safe up here, toppers.
下層→上層の呼称。
- “Piltovan” が正式な呼び方だが下層の人間で使っている人はまずいなさそう。
- Piltie: からかう感じの蔑称。
- topsider: ある程度ニュートラルではあるが、搾取構造への怒りが若干込められてる感じ。
- topper: 搾取構造への怒りがだいぶ出ている感じ。
上層→下層の呼称。
- trencher: 蔑称。
- ゾウンの独立を認めていないので “Zaunite” はジェイス(
[S1E9:23:48] My partner and a Zaunite)しか使っていない。アンベッサ([S2E3:32:01] Two Zaunite assassins fell upon us.[S2E4:12:05] The news of Jinx's return will ignite Zaunite resistance.)は普通に使っている。 - あとは「あいつら」「ああいった連中」みたいな感じの、自分たちとは違う種類の人間ですよ的な言い方が多い。
上層の人間は下層の人間を気にかけていないが、逆はそうではない、という社会構造が言語にもあらわれている。Arcaneほんとすごい。
[32:03] Vi: Thought you were gonna get yourself killed.
[11:33] Caitlyn: No more rogue mission. No more reckless plans. って言ってたくせに、を含意している感じ。
[32:27]
Vi: You need to find a way to call off the invasion.
Caitlyn: What?
Vi: This battle was on your soil. Down there, you’ll be on their terms.
Caitlyn: None of this is on our terms.
Vi: Maybe you should change that.
Caitlyn: I don’t know how, okay? She dies and leaves this giant hole, and I’m just supposed to fill it. Like she was never there to begin with.
- call off: 呼びかけて攻撃を中止させる。
- on one’s term: 土俵。主導権を握る、みたいなニュアンス。ケイトリンの返答は「いまだってずっと振り回されている」「全部めちゃくちゃじゃないか」みたいな感じ。
ヴァイは上層も下層も知っているので侵攻中止を提案をしている。上層の人間はレーンの空気に慣れていないので呼吸がしづらい、入り組んだ構造の街区に対する知識差、等々、があって不利な状況に置かれるのは必然。主導権を握れていない現状をケイトリンが(家督を継げば、までは含意してなさそうだが)変えられる。
[33:03]
Caitlyn: I was wrong to spring the badge on you. It’s just… every way I slice it, if I go after your sister alone, one of us comes back in a box. It’s all coming apart.
Vi: No, it isn’t. We won’t let it.
- spring on: 唐突なことをして驚かせる。あれは軽率だった、のニュアンス。
- every way I slice it: どう切り取っても。いろいろ方法を考えてみたが。
- comes back in a box: 棺桶に入って帰ってくる。ケイトリンかジンクスのどちらかが。
- all coming apart: 何をどうしようと壊れていく。すべてがめちゃくちゃ。もう何もかもどうにもならない。ヴァイはこれに対して「まだ大丈夫」「私たち[we]の手でそうならないようにする」と言って、間接的に「バッジを受け取る」とケイトリンに伝えている。
ヴァイがいなければケイトリンはもう精神的に限界に来ていたように見える。こういう状況で支えてくれる人には恋愛感情を抱いてしまうものよね。
[33:38] Cassandra: I know you doubt the merit of your birthright, Caitlyn. There’s wisdom in that. But remember: You’re a Kiramman.
日本語字幕: 我が一族には特別な力がある。英知よ。
日本語吹替: 自分の生まれをありがたくは思っていないでしょう。それはしかたない。
筆者修正訳: 恵まれた生まれを疑う。それは賢明さの証です。
日本語字幕は誤訳。日本語吹替も微妙。家柄に頼らず、自分の力で生きていきたいという考えを持っていること( [S1E4:35:02] Caitlyn: I don't need charity, Councilor. Yours or my parents'. )は知っている。生まれながらの特権を当然のことだと考えず疑問を抱くのは賢明さゆえであり、それ自体はいいことだ。だけどそれでもキラマン家の人間であることを忘れるな、というセリフ。いつでも家の力に頼っていい、という優しい言葉でもあり、重責[heavy crown]から逃げるな、という厳しい言葉でもある。
[34:32] Salo: Does anyone still doubt that our enemy is greater than one deranged individual?
- deranged individual: ジンクス。
冒頭の議論の結論は「ヘクステックなしで侵攻してジンクスを捕らえる」だったので、好戦的になっているサロは「敵はジンクスという個人よりも脅威ある存在だといい加減わかっただろう」→「だからヘクステックで武装化して徹底的に戦え」と言っている。
[34:38]
Shoola: How did they sneak so many of these things into the ceremony? I thought we took every measure to secure it.
Mel: They must have had help. From someone up here.
- someone: アンベッサ。
[34:48] Salo: We can’t afford any more handwringing. If we do not defend ourselves with Hextech, our principles will mean nothing.
- handwringing: 手をこまねく。
- principle: 理念。
こういった現実的な脅威を前にしても、理念(≒エートス)を掲げて手をこまねいているなら、その理念すらも(破壊されて)無に帰す。
[34:58] Caitlyn: We aren’t prepared for a full-scale invasion. The undercity’s attack proved that.
全面侵攻するには準備が整っていない。追悼式襲撃時、まったく対処できなかった事実がそれを証明している。
[35:07] Caitlyn: I am a decorated officer. Leader of House Kiramman. Address me with respect, or keep your mouth shut.
- decorated officer: 一連の事件の真相を暴いた(マーカスの裏切りまではたどりついてないが)りしたから描写外で勲章を受けた?
- address me with respect: (もうただの小娘ではなく対等な立場になったから)それなりの言葉遣いで話しかけろ、の意。
ここでアンベッサが「お、このイキった若造、御しやすそうだな」みたいな感じでケイトリンを見ている。
[35:16] Caitlyn: I will lead a strike team into Zaun with three objectives: locate Jinx, dismantle Shimmer, and neutralize any agents still loyal to Silco.
- locate: (ジンクスの)居場所を突き止める(逮捕する)。
- dismantle: (シマー流通シンジケートを)解体する(壊滅させる)。
- neutralize: (まだシルコに忠誠を誓う者を)無力化する。
[35:29]
Salo: What makes you think you’ll fare better than our forces today?
Caitlyn: We’ve got a few surprises of our own.
- fare better: (ものごとを)うまくやる。古くさい(=格調高い)英語。サロは倒置構文を使ったり、いかにも貴族的な、もってまわった言い回しが多い。
- few surprises: 新たなヘクステック兵器。ヴァイの加入(レーンでの戦い方を知らない不利がなくなる)。
ジェイスはケイトリンとの会話( [18:18] Jayce: What if she's right? )の時点ですでにヘクステック兵器が必要になるかもしれないと思っていた。そこに追悼式襲撃があり、多くの人命が失われ、自身も命の危険にさらされて、覚悟を決めた。しかしこれはヴィクターとの合意( [S1E7:24:32] Viktor: We agreed Hextech was to improve lives… not to take them. )を無視していることになる。さらに(本人を助けるためとはいえ)ヘクスコアを破壊する約束( [S1E9:10:05] Viktor: You have to destroy it. The Hexcore. )も破ってしまっている。これが次エピソードでの決別につながる。
S2E1: その他
[09:11]でケイトリンが見ている手紙の封蝋はピルトーヴァーの紋章。黒=喪。政府主催の追悼式への招待状。[22:31]で執行官(に偽装した襲撃犯)をヴァイが訝しんだのは、上層の人間ならまずしないであろう首元のタトゥーがあったから、というだけ? 紋様に見覚えがあった?- 執行官に偽装した襲撃犯はバッグをレニの足元に置く(チェーンソー)→そのまま通り過ぎて壇上へ→信号弾(襲撃の合図)を発射→飛行船からケミタンクが襲来。
- レニがジェイスにハンマーで殴られても無事だったのは緑色の薬品(≠シマー)で身体強化していたから。上層にヘクステックがあるように、下層にはケミテックがある(劇中で単語としては出てこないが)。レニは薬品の製造を取り仕切っていた。
- 通常兵器のみでは分が悪いと判断したからヴァイはヘクステック兵器を取りにいったのに、己の筋肉のみでケミタンクを屠るノクサス、戦闘民族すぎるだろ。
- アンベッサが追悼式襲撃の自作自演をしたのは、ヘクステック兵器を開発させるためだけでなく、ノクサス軍が事態を収拾させたという事実をもってピルトーヴァー内での存在感を高めるためでもある→
[S2E4:03:05] They doubled their fortification requests. - ステブは全編にわたってセリフなし(ケミタンクに追われているときに叫び声は上げている)。
[S1E5:14:24]でのジェリコの喋り方から察するに、魚人は人語を喋れないor喋りにくいっぽい。 - マディは痴情のもつれで裏切ったわけではなく最初からスリーパーエージェントとして送り込まれていた。根拠: 1.
[S2E1:21:35]で追悼式会場にレニが入れるかどうか確認している。2.[S2E3:34:42]で最初にノクサスに同調し始める。3. ノクサス人だと脚本家が明かしている。とはいえ、ケイトリンとの関係に本気になってノクサスを裏切りかけているようにも見える。[03:28] Maddie: You could call it off. Withdraw from the underground. Reestablish the Council. All you have to do is give the order.はケイトリンを心配してアンベッサの思惑とは違うことを言っている。しかし最終的にケイトリンはヴァイを選んだのでノクサスを裏切らなかった、という意味では痴情のもつれの結果とも言えるか。
S2E2: Watch It All Burn
S2E2: 登場人物
- イーシャ[Isha]: ストリートチルドレンだったがジンクスの妹のようになる。言葉を話せない。
- スミーチ[Smeech]: ケミ長者。違法サイバネティクス組織のボス。ハイマーディンガーと同じ精霊種。
- クロス[Chross]: ケミ長者。情報屋(監視・隠蔽)組織のボス。
- マーゴット[Margot]: ケミ長者。違法売春組織のボス。
S2E2: あらすじ
- スカイの声で目を覚ましたヴィクターの体は、顔以外すべて機械化されていた。ヴィクターは自分がヘクスコアと同化している事実と、ヘクステック兵器の仕様書を見たことで、ジェイスが自分との約束を違えたことを理解する。ヴィクターはジェイスに別れを告げ、スカイの声に導かれてシマー中毒者が集う最下層へ赴く。金目の物を奪おうと近づいてきたハックに「無意味な苦しみ」を見たヴィクターは、ヘクスコアの生体改変能力を使って、シマー乱用でボロボロになっていたハックの体を修復する。本物の奇跡を目の当たりにしたシマー中毒者たちはヴィクターを崇拝し始める。
- ファイヤーライトのアジトにある巨木の葉に奇妙な斑点が出る。ハイマーディンガーはその症状がヘクスコアの実験で使った植物に似ていると気づき、エコーと共にジェイスの研究室に忍び込む。ジェイスとハイマーディンガー、そしてエコーは、三人で異常の原因について考察し始める。
- 下層を牛耳っていたシルコがいなくなり、権力の空白をめぐってケミ長者たちは抗争を始める。自分が「不吉」をもたらさずとも十分に混沌の中にある街を、ジンクスは死んだ目であてもなく彷徨う。
- ストリートチルドレンを片っ端から攫うクロスの手下から逃げていたイーシャは、ジンクスと遭遇する。ジンクスはクロスの手下たちを殺し、イーシャを助ける。イーシャはジンクスの後をこっそり付いていく。
- スミーチはマーゴットの隠し財産を強奪しようとカチコミに行った先で、「シルコの残党を無力化する」という任務を遂行中のケイトリン部隊と鉢合わせる。(ジンクスを引き渡す取引をしていったん見逃される?)
- セヴィカはケミ長者たちを集め、抗争をやめて上層へ対抗することを呼びかけるが、クロスとマーゴットはいがみ合うばかりで話がまとまらない。スミーチは上層にジンクスを引き渡して事態を収めることを提案する。
- セヴィカはシルコのオフィスでジンクスと再会する。シルコとの思い出を共有するうちに険悪だった空気が少し和らぐ。「シルコがいなくなってこれからどうしたらいいのか」というセヴィカの独白に、ジンクスは「すべてが燃えるのを(ただ黙って)見てればいい」と投げやりに返す。
- ジンクスは子供のころに通ったゲームセンターでセヴィカの義手を修理する。作業を終えたところに(スミーチから連絡を受けた?)ケイトリン部隊がやってくる。ヴァイが執行官としてケイトリンと共に自分を追っていることを知ったジンクスは、逃げ出した先の路地裏で慟哭する。
- 灰色の靄[Grey]で弱っているジンクスをスミーチとその手下たちが奇襲する。ジンクスはセヴィカとイーシャの助けを借りてスミーチの手下たちを殺す。セヴィカはジンクスに魔改造された義手を使ってスミーチを殺す。ジンクスの目に光が戻ったことに気づいたセヴィカは何をするつもりなのか問う。ジンクスは「家族の残骸を片付ける」と答える。無目的に生と死の狭間を漂うだけだったジンクスは、とりあえず当面の目的を得る。
S2E2: 脚本
[00:46] Jinx: Because someone put all those holes in you.
私が、ではなく、誰か[someone]がやった。撃ち殺した、ではなく、いつのまにかシルコの体に穴[holes]が開いていた。解離症状のような印象を受けるセリフ。家族を二度も意図せず殺してしまったことで、ジンクスは「死」だけでなく「罪」の概念も破壊しているように思える。
[00:58] Jinx: Vi used to say I could fix anything. Before I broke everything.
パウダー(ジンクス)の能力は何か善いことのために使える、のようなニュアンスか。でも実際は壊すしかできなかった。シルコの体に開いた穴も直せない。不吉をもたらすことしかできない。
[01:06] Jinx: She used to say a lot. Her and you. Always bossing me around. Now it’s so quiet. What am I supposed to do with that?
- say a lot: いろいろ言ってくる。あとの “bossing” と合わせると小言のイメージ。
幼少期はヴァイが、そのあとはシルコが、いつも誰か「小言」をいう人がまわりにいた。いまはもう誰もいない。「不吉の象徴」として生きることに決め、「罪」の概念が破壊され、家族を殺したことへの良心の呵責がなくなり、あれだけ自分を責め立てていた幻聴も聞こえなくなった。まわりも、頭の中も、とても静かになった。それは、自分を世界につなぎとめておくものが何もないということでもある。
[01:58] Silco: Have you had enough?
ここだけ聞くと「懺悔(自己憐憫)はもう十分か?」のような皮肉に聞こえるが、このセンテンスがどこから引用されているのかを知ると印象がガラリと変わる。これは、S1E3冒頭のシルコのモノローグだ。
[S1E3:00:43] Silco: Ever wondered what it’s like to drown? Story of opposites. There’s peace in water. Like it’s holding you, whispering in low tones to let it in. And every problem in the world will fade away. But then, there’s this thing… in your head, and it’s raging. Lighting every nerve with madness. To fight. To survive. And all the while, this question lingers before you: “Have you had enough?” It’s funny. You could pass a lifetime without ever facing a choice like that. But it changes you forever.
ジンクスの現在の状態は、シルコがヴァンダーに殺されかけたときに水の中で感じた静けさ[peace in water]と同じだ。すべての問題が遠のいていって、「ああもういいかな……」と思える瞬間。楽になろうとする瞬間。その瞬間に、全神経が昂り、全細胞が生きようと暴れだす。そしてこう突きつけられる。「本当にもういいのか?」「本当に十分に生きたか?」「世界の理不尽になすがままでいいのか?」「抗わなくていいのか?」「もうあれこれ言ってくる人間はいない。立ち止まるのか、進むのか、お前が決めろ」。ジンクスは水の中の静けさに身を委ねる(死に向かう)ことができず、再び水面(現実)へと浮上する。
♪
Get the fuck outta my head
So long, sucker
I don’t wanna see you, I hate this life, woah-oh
Get your fingers out of my hair,
You’re gone, sucker
Good luck killing me ’cause I’m already, already
Dead inside
- get the fuck out of my head: 私の頭の中から出ていけ。
- so long: さようなら。
- sucker: おめでたいやつ。
[11:48] Jinx: Big baby couldn't do it himself.のニュアンスもあるか。 - get your fingers out of my hair: 私の髪を梳く指をどけろ→ジンクスの三つ編みを結っていたのはシルコ。
- dead inside: 中身は死んでる(から私を殺すことなんてできないよ)。
シルコへの鎮魂歌。
[05:56] Jinx: You feel it? That… buzzing behind your eyes? Because you know, in a moment, it could all… poow! Best feeling in the world, kid.
わかる? (アドレナリンが大量分泌されて)目の奥がじんじんするような感じ。(そんな状態になる理由は)次の瞬間には、頭を撃ち抜かれて意識が途絶えてるかもしれないから。最高の感覚だよ。
ジンクスはずっと生と死の狭間を漂っているが、イーシャと出会ったこの瞬間が死の側に限界まで寄っている。「このジンクス」に救われたことで、イーシャもまた死を恐れない生き方をするようになる。
[06:46]
Heenot: Well, you know, far be it from me, but, uh, you hired me to run the numbers. And ever since we’ve gone up against the other chembarons, the numbers are in the, uh…
Smeech: Shitter?
Heenot: Not exactly the term I…
Smeech: Ever wonder why fat brains like you always wind up working for grunts like me?
Heenot: No, uh, never.
Smeech: You only use half your head. Plotting moves. Calculating odds. Know how Silco took hold of the Lanes? With his bare teeth.
Heenot: It just, you know, seems, uh, hasty. Last count, Margot had at least ten hitters guarding the stash.
Smeech: Margot and Chross can buck all they want, but in the end, I’ll be the one smiling. Until I’m in Silco’s chair, our only job is to make the numbers work, hmm?
- go up against ~: ~と対立する。
- fat brains: インテリ。頭でっかち。侮蔑表現。
- wind up ~: (最終的に)~するはめになる。
- grunts: “fat brains” との対比なので「脳筋」の意。
- bare one’s teeth: 動物が歯を剝き出しにする行為。暴力ではなく威嚇、威圧。シルコが見せていた「獰猛さ」の表現。
- stash: 隠し財産(のありか)。
- buck: 抵抗する。馬が暴れて人を振り落とそうとしている感じ。最終的には乗りこなすからいいんだよ、みたいなニュアンス。
以下、会話の流れ。
- 前提: スミーチはマーゴットの隠し財産を奪って権力闘争で優位に立とうとしている。いまはその現場に向かっている最中。
- ヒーノット: 他のケミ長者と対立し始めてから(帳簿の)数字が芳しくない→会計士の立場から言えば抗争をやめるべきだ。
- スミーチ: なんでお前みたいなガリ勉が、俺みたいな脳筋の下で働くことになるかわかるか? 頭を半分(左脳みたいなニュアンス)しか使ってないからだ。シルコは(策や計算だけではなく)獰猛さで下層を牛耳った→損得じゃなくガンガン強気でいけばいい。
- ヒーノット: (これから向かうマーゴットの隠し財産の場所には)10人以上の用心棒がいる。行動が性急すぎる→もうちょっと慎重に。
- スミーチ: マーゴットもクロスも好きに抵抗すればいい。最後に笑うのは俺だ。俺がシルコの椅子に座る(下層を牛耳る)まで、(帳簿の)数字を合わせて(破綻しないようにして)さえいればいい。
[08:58]
Sevika: I know you’re all fantasizing about sawing each other’s heads off. So I’m gonna get right to it. These turf wars have to stop.
Chross: These two have been the aggressors. I’ve only defended my interests.
Margot: Playing coy doesn’t suit you, love. You started this dance when you raided the Rapturewalk.
Chross: What could I want with your boulevard of filth?
Sevika: Topside is the real enemy. Us killing each other is playing right into their hands. Our best shot is to put aside these petty squabbles and join forces.
Margot: Ally with these two? I rather favor my chances with Topside.
Chross: Even together, they outnumber us four to one. That’s before all the recent casualties.
Sevika: Might matter up there, but they don’t know the first thing about fighting in the fissures.
Margot: Is he dead? Why is he so quiet?
Smeech: She’s right. We don’t get Topside off our backs, we don’t last. But I got a different solution. We give them Jinx. It’s all they really want.
Sevika: We don’t hand over our people.
Smeech: “We”? You don’t do much of anything anymore, do you, magpie? Bird without a wing’s just a funny-looking rat. Struck a nerve, did I? Okay, I’ll make you a deal. You help me put a bow on Baby Blue for our friends upstairs, I’ll cut you a brand-new puncher, top of the line, all the fixings. Think on it. But I promise, it’s the last offer you’re gonna get.
- playing coy: 猫をかぶる。とぼける。
- raid: 相手に打撃を与えるための襲撃。カチコミ。
- this dance: 抗争の比喩。
- Rapturewalk: 通りの固有名詞。響きからして娼館街。
- boulevard of filth: 汚らわしい通り。娼館街への侮蔑表現。
- petty squabbles: つまらない小競り合い。
- casualties: (抗争で出た)犠牲者。
- you don’t do much of anything anymore: (シルコがいなくなって)お前はもうたいしたことしてないだろ。
- magpie: カササギ。「ピーチクパーチクうるせえな」のニュアンス。
- bird without a wing: 義手のないセヴィカへの侮蔑。シルコという後ろ盾がない、のニュアンスもあるか。
- strike a nerve: 癪にさわる。
- Baby Blue: ジンクス。
- our friends upstairs: 上の階にいるお友達(にリボン付きでジンクスをプレゼント)。「潔くジンクスを上層に引き渡せ」をファンシーに表現。
以下、会話の流れ。
- セヴィカ: 抗争をやめろ。
- クロス: 先に仕掛けてきたのは他の二人だ。
- マーゴット: クロスが娼館街を襲撃してこの抗争が始まった。
- クロス: なんで私がそんなことをする必要がある→おそらく最初は小競り合い程度だった抗争がここまで激化したのは、ケイトリン部隊が「シルコの残党を無力化」していて(はからずも?)
[S2E1:07:27] Mel: We use their division against them.になっている。 - セヴィカ: 下層の人間同士で殺しあうのは上層の人間の思う壺だ。団結して上層に対抗すべき。
- マーゴット: 上層と組む方がマシ。
- クロス: (抗争の)犠牲者を換算しなくても向こうはこちらの4倍の戦力だ→勝ち目はない。
- セヴィカ: 上層の人間は下層での戦い方を知らない(から勝ち目はある)→ヴァイと同じ考え
[32:33] Vi: Down there, you'll be on their terms. - スミーチ: 上層の人間が欲しいのはジンクスの身柄だけだ。ジンクスを差し出せばいい。
- セヴィカ: 私たちは仲間を売らない。
- スミーチ: 「私たち」って、お前は(シルコという後ろ盾がなくなって)もう何もしてない(仕切れてない)じゃないか。上層にジンクスを差し出すなら最新型の義手をやるぞ→スミーチの組織はサイバネティクスを扱っている。
[11:16]
Sevika: You here to finish me off?
Jinx: Haven’t I done you enough favors?
- finish ~ off: ~を始末する(殺す)。
- favor: 文脈的に反語なので「親切」ではなく「迷惑(e.g. S1E6で天井から吊るした)」のこと。もうこれ以上あんたにしてやれることはない(殺すなんてめんどくさい)、の意。
[11:45]
Jinx: Same time every day. Big baby couldn’t do it himself.
Sevika: Couldn’t do much himself. About now, he’d have me all over the Lanes running his collections.
Jinx: Building his weapons.
Sevika: Making his deals.
Jinx: Exploding his enemies.
- do much oneself: 自分でいろいろできる。シルコは人を使うばかりで自分でできることは少なかった。
- about now: シルコが生きてれば今頃の時間は、という仮定の時制。
- collections: 取り立て。みかじめ料とか(?)の回収の使い(haveは使役動詞)をさせられていた。
やらされていたことの列挙にはすべて “his” が付いている。互いにとって重要な存在だったシルコの喪失によって、ヴァイやイーシャとはまた違った形で、ジンクスはセヴィカと(壊れた)姉妹のような関係になる。
[12:17]
Sevika: He dips out, the whole world flips over. All his plans. Everything we built. The hell we supposed to do now?
Jinx: Watch it all burn.
- dip out: (挨拶もなく)去る。
ジンクスのセリフはセヴィカの(半ば)独り言に対する答えなので “We are supposed to watch it all burn.” となる。シルコ自身が [S1E9:29:57] Silco: They can all burn. と言ってたんだから、なんとかしようとする必要はない。「すべてが燃える」のを黙って見てればいい。この時点のジンクスは生と死の狭間を漂うだけで、特に何も目的を持っていない。
[14:24]
Viktor: What… am I?
Jayce: You’re… You’re alive.
ジェイスとヴィクターが完全に決別するシーンの始まり。「僕は何なんだ?[What am I?]」「君は生きてる[You are alive]」 はどちらもbe動詞だが、ヴィクターが言っているのは(人間以外の何かじゃないかという)種別で、ジェイスは(生きてるという)状態を指している。最初からもう会話がズレている。
[14:47]
Jayce: You must be cold.
Viktor: Cold. No, I don’t think so. I sense a charge. A potential. A recursive impulse. Unpleasant, but… “cold” isn’t its name.
- charge: 蓄積された何か。電荷。
- potential: 可能性。電位。
- recursive impulse: 再帰的衝動。電圧のHigh/Lowを繰り返すことで電子回路を動かすようなイメージ。
おそらく比喩ではなく、ヘクスコアと融合してほぼ全身機械化したヴィクターが自分の中で起こっていることをどうにかして言語化しようとしている。「自分には何らかの力がある」と、この時点でなんとなく気づいていた→ハックに対して能力を使う。
[15:12]
Viktor: The Hexcore.
Jayce: Viktor, it saved you. Somehow it adapted to your injuries, changing and evolving. It was as if it was connected to you. I did my best using the notes from your leg. Recorded everything. There are still so many questions, but —
- notes from your leg: 足に対してヘクスコアを使用したときの研究ノート。ヴィクターは科学者として記録に残さずにいられなかった→ジェイスがそれを発見して調査・研究のために参照した。
[15:26]
Viktor: I was supposed to die. You promised to destroy the Hexcore.
Jayce: No. Don’t you see? Heimerdinger was wrong. We were wrong. It’s not as bad as we —
誠実さがあるなら “No” のあとに “I didn’t/couldn’t destroy it because ~” と続けるようなシーンだが、ジェイスは約束を破ったことを軽く流して「それよりこの結果を見ろよ、すごいだろ」と話の流れを戻そうとする。
[15:40]
Viktor: It killed Sky, Jayce.
Jayce: What? No.
Viktor: She had such dreams. As did we once.
その軽薄さにうんざりしたヴィクターはヘクスコアがスカイを殺した事実を明かす。さすがにジェイスも黙る。机の上にスカイのバインダーを見つけたヴィクターは、ヘクステック兵器の仕様書を目にし、ジェイスが何をやっていたか理解する。
[16:03]
Jayce: I’m going to resign from the Council. I understand now. My place was always here in the lab with you. We’ll make this right. Together.
Viktor: I must say goodbye to this place now. To you.
[S1E9:10:48] Viktor: We have to make it right. と言ったのに、何も正されていない。むしろ間違った方向へ進んでいる。だからジェイスの言う "We'll make this right. Together." も空虚にしか聞こえない。合意を無視してヘクステック兵器を(本格的に)開発した事実の前ではすべての言葉が軽薄にしか聞こえない。だから「この場所にさよならを告げなければらない」「君にも」。
[16:19]
Jayce: Goodbye? Viktor, you’re my partner.
Viktor: Our paths diverged long ago. It was affection that held us together.
- affection: 友情、信頼、親愛の情。
もうとっくに道は分かれていた。友情がどうにかつなぎとめていただけ。そしてそのか細い糸もいま切れた。
[16:42] Jayce: I never asked for this!
直訳の「こんなの頼んで(望んで)ない!」でも意味が通るといえば通るが、日本語には変換できないやつかも(自由意志や運命に対する考え方が日本語圏と英語圏でけっこう違うので)。「こんなはずじゃなかった」「どうしてこんなことに」みたいな、自分の意志・行動とは無関係に望まない結果になった、という慟哭。しかし今回の場合は確実にジェイスの意志・行動が招いた結果なので、だいぶみっともないセリフ=すさまじく人間味を感じるセリフ。
[19:01]
Heimerdinger: The brambleback has left the jungle.
Ekko: You do realize code phrases don’t work when you make them up on the spot?
即興で暗号を作っても通じない。ブランブルバックはLoLに登場するモンスター。
[20:57]
Ekko: Did any of the plants survive?
Jayce: They weren’t what we were trying to save.
実験に使った植物を救おうとはしてなかった。救おうとしていたヴィクターがいなくなった直後なのでこういう言い回しになっているのだと思われる。
[21:16] Heimerdinger: Where’s Viktor?
ヴィクターが目を覚ます→ファイヤーライトのアジトの巨木に異変が発生する、の順序。ヴィクターとヘクスコアが融合したことで、アーケインと現実世界の境界が薄くなった?
[27:30] Smeech: Baby Blue. Right through their fingers. You must be part eel. Just means I can up my finder’s fee. There’s always a deal to be struck.
- finder’s fee: 仲介料。この場合はジンクスの身柄を引き渡すことで得られる報酬。
明確な描写はないが、おそらくスミーチはカチコミ先で遭遇したケイトリン部隊と「ジンクスの身柄を引き渡す」という取引をしている。根拠: 1. ケイトリン部隊に制圧されていない。2. セヴィカの招集による会議でジンクスを引き渡す提案をしている。3. ゲームセンターでタイミングよくケイトリン部隊が来る→ラストドロップから尾行していたスミーチが知らせた。4. “Right through their fingers” の “their” は「まさに[right]」という強調があるので直前のケイトリン部隊のことだと考えるのが自然→なぜジンクスが追っ手から逃げおおせたところだと知っているのか→連絡した本人だから。5. ジンクスがケイトリン部隊から逃れたことで(交渉次第で)さらに報酬を上げられると言っている。5. ケイトリン部隊は [S2E3:01:31] でジンクスの指名手配書を(クロスの手下に)突きつけている→制圧だけでなく情報収集もしている。6. [03:54] Vi: You're Smeech's man. →ヴァイはヒーノットの顔を知っている→遭遇時に会話したから。
[27:43] Smeech: They want you alive. But don’t think I won’t skewer out those peepers. Drawback of you long-range types. Me? I’m the kind of guy who likes to get in close.
- peepers: 目玉。
- drawback of you long-range types: お前みたいな長距離攻撃タイプの弱点。
- get in close: “long-range” との対比なのでここでは「近距離攻撃タイプ」の意。
[27:57]
Smeech: Never thought I’d catch you blubbering. Wonder if Silco even saw that.
Jinx: Twice. When he met me and when I killed him.
Smeech: You?
ジンクスはシルコを殺したのが自分であることを誰にも(セヴィカにも)話していない。
[28:09] Jinx: It’s always me. Whether I’m pulling the pin or not, everyone who gets close to me dies. Wanna know the real kicker? You’re the kind of guy who likes to get in close.
- pull the pin: 手榴弾のピンを抜く=死のきっかけを作る。
- real kicker: 最高におもしろい話。
- get in close: ここは「近距離攻撃タイプ」ではなく「親密になる」の意。
いつだって(殺す役割は)私(が担う)。私が(意図的に)死のきっかけを作らなくても、私と近しくなったやつはみんな死ぬ(不吉のジンクスだから)。衝撃の事実(この話のオチ)を知りたい? あんた、近しくなるの(近接戦闘)が好きなんだっけ(だからお前も死ぬ)。
[31:15] Sevika: Tell me, who’s a funny-looking rat now?
火炎放射で毛がなくなったスミーチは「笑える見た目のネズミ」。 [10:08] Smeech: Bird without a wing's just a funny-looking rat. って煽られたの根に持ってて草。
[31:52]
Jinx: You could’ve just let me eat it.
Sevika: Haven’t I done you enough favors?
[11:33] Jinx: Haven't I done you enough favors? と対になっている。「死にたがりに付き合うのはもううんざりだ」のニュアンスか。しかし次エピソードでまた付き合うことになる(途中で放棄するが)。
[31:58]
Sevika: I didn’t ask you for this.
Jinx: It was something I could fix.
「義手を直してくれとは頼んでない」「直せるやつだったから」→ [00:58] Jinx: Vi used to say I could fix anything. →ジンクスはヴァイのことを思い出して目つきが変わる→セヴィカが気づく。
[32:03]
Sevika: You got that look in your eye again. What are you planning?
Jinx: To finish what’s left of my family.
- what’s left of: わずかに残った。残骸。名残。
家族の残骸を片付ける(≠ヴァイを殺す)。「自分をこの世に留めている唯一の細い糸を断ち切る」のニュアンスか。
[32:47] Huck: Careful not to scrape up the gear. Won’t sell as well.
仲間への呼びかけ。(これから奪う)物品に傷を付けないように注意しろ。(高く)売れなくなる。
[33:06] Huck: We just got needs we can’t ignore.
シマーを買う金に換える。
[34:53] Viktor: You need not suffer anymore.
ヴィクターの目的は「生活を改善する」という地道なものから、「人類を苦しみから解放する(=栄光の進化)」という壮大なものに変わっていく。ヘクスコアと融合して身体的にだけでなく精神的にも変化している。
S2E2: その他
- クロスの額のタトゥーと
[03:54]で映る基地は電話をモチーフにしている。手下の額には0~9の数字、顎には受話器。情報屋であることの示唆。 - クロスの手下がイーシャを追っていたのはストリートチルドレンを捕まえて労働力にするためか。曲が流れている
[04:12]あたりでもクロスの手下が子供たちを連れ去ろうとしている。レニの工場には子供が多かったので、おそらく工場の労働力確保。 [21:31]でゾウンの住人が祈りを捧げているのは女神ジャンナ。[24:22]でヴァイが手に取っているのはクラガーのゴーグル。セヴィカの義手を修理しているときにジンクスが使っていたが、隠れるときに置いてきてしまった。次エピソードではヴァイが使用している。- 対スミーチ戦の流れ: 1.
[27:11]奇襲に対してジンクスは銃で応戦しようとするが弾き飛ばされる。2.[27:38]スミーチの手下(会計士のヒーノット)がジンクスのグレネードを捨てる。3.[28:34]銃をセヴィカが拾って使う。3.[28:54]隙を見てジンクスが義手をセヴィカに向かって投げる。それに気づいたセヴィカがジンクスに銃を投げ渡す。銃を受け取ったジンクスはそのまま振り向かずにスミーチの手下に向けて撃つ。4.[29:26]劣勢になったジンクスを助けるためにイーシャがグレネード(中身はペイント)を投げる。 - スミーチが倒されるときに飛び散る緑色の液体は血液ではなくケミテックの薬品(レニと同じ)。
- スミーチ戦後にヒーノットが生き残っている→次エピソードでヴァイへのメッセンジャーとして使う。
S2E3: Finally Got the Name Right
S2E3: 登場人物
S2E3: あらすじ
- アンベッサは黒薔薇のエージェントであるアマラに暗殺されそうになるが返り討ちにする。これから本格化するであろう黒薔薇との戦いに備えてヘクステック兵器を手に入れるため、アンベッサはピルトーヴァーの権力掌握を急ぐ。当初はサロをトップに据えて傀儡政権とする予定だったが、ドラッグに溺れるような人間は不適切と判断し、この役割は、有力ハウスの筆頭だが精神的に未熟で御しやすいケイトリンに変更する。サロには戒厳令発令のお膳立てのみをやらせる。
- メルはサロのところに送り込んでいる間者から得た情報をエローラに調査させる。アマラの調査をしていたエローラは黒薔薇の罠にかかり、連鎖的にメルも囚われる。
- ケイトリン部隊は「シマー流通シンジケート解体、シルコの残党を無力化」という任務を着実に進めていく。レーン換気システムの管理者権限であるキラマン・キーを用いて灰色の靄[Grey]の流れを制御し、アーカイブの知識を用いて迷路のようなダクトを移動することで隠密裏に行動する。ピンポイントで襲撃場所に灰色の靄[Grey]を流し込み、対象が弱ったところに奇襲をかけてヘクステック兵器で無力化する。結果、シマー流通シンジケートは解体され、クロスとマーゴットはケミ長者としての地位を失い、これで下層を牛耳っていたケミ長者は全員退場となる。残るもうひとつの任務「ジンクス捕獲」も進めるが、ケイトリン部隊の動きを察知したジンクスのトラップによってロリスが負傷する。さらにジンクスはスミーチの手下を介して「旧いトンネルの奥にいる」と伝えてくる。ケイトリンは負傷したロリスと他の仲間を帰還させ、ヴァイと共にジンクスを追う。ダクトの壁には親切にも道案内の落書きがあり、二人はジンクスが待ち構えるジャンナの寺院へと導かれる。
- ファイヤーライトの巨木に発生した異常の原因はヘクスゲートにあるのではないかと推察したジェイスは、ハイマーディンガー、エコーと共に地下深くに設置されたフェイルセーフを調査する。ハイマーディンガーは床に発生した異常[anomaly]に気づく。突然、空間が歪み、装置全体が異常[anomaly]に包まれ、三人はそれぞれ別の時空へ飛ばされる。
- 寺院でヴァイとジンクス、ケイトリンとセヴィカが戦う。同時刻にヘクスゲートの基部で異常[anomaly]が発生し、この戦いでもヘクステック兵器が異常動作する。最終的にヴァイがジンクスを制圧し、とどめを刺そうとしたとき、イーシャが割って入る。ケイトリンはかまわずイーシャごしにジンクスを撃とうとするがヴァイが強制的に止める。その間にセヴィカは寺院の壁に仕掛けられた爆弾を起爆させる。寺院内部に溜まっていた灰色の靄[Grey]が解き放たれ、ヴァイとケイトリンを吹き飛ばす。さらに換気システムを通じて上層の街に吹き上がり、途中に設置されたカラースモークで着色され、街がカラフルな煙で満たされる。
- ヴァイはケイトリンの人道にもとる行為を非難する。あと一歩で復讐を果たせなかったケイトリンはヴァイを非難する。二人は袂を分かつ。
- サロの招集で会合が開かれる。アンベッサはアマラがゾウンの刺客に殺されたと偽証し、戒厳令の発令を呼びかけ、この状況が終わるまで強権を持つ司令官としてケイトリンを推薦する。ケイトリンはそれを受け入れる。
S2E3: 脚本
[00:33] Cassandra: The rise of industry in the fissures has led to the air becoming increasingly toxic. They call it the Grey. I’ve instructed our architects to devise a ventilation system. The people of the underground deserve to breathe.
レーン(the fissures)での産業の発展にともない発生した有毒ガスを灰色の靄[Grey]と呼ぶ。カサンドラ(ケイトリンの母)はレーン内に換気システムを構築させ、空気を清浄化した。
♪
Can I do the right thing for the wrong reason?
Is it bad that I’m making friends with my demons
And living by a couple deadly sins
Just to make sure I finish what you began
And I ain’t afraid to lose a life or ten
If it means that I get to win in the end
So I’ma do this on my own, step into the danger zone
Pull the pin and watch it blow
I would rather die alone
- a life or ten: 命のひとつやふたつ、いや十でも(失われても構わない)。
- would rather: むしろ~の方がいい。
ケイトリンの歌。ピンポイントに灰色の靄[Grey]を流し、的を絞って襲撃しているが、無辜の人々を巻き込まないとは限らない。それでもジンクスへの復讐心が勝るので多少の犠牲は気にしない。むしろ自分から危険地帯に踏み込んで、手榴弾のピンを抜いてやる。そうして孤独に死ぬ方がいい。
[03:54]
Vi: You’re Smeech’s man.
Heenot: Was. Not anymore. Name’s Heenot. I… I decided it was time for me to retire.
Caitlyn: Looks more like someone decided to retire you.
- was: スミーチが死亡したのでもう手下ではない。
もう辞めようと決めてたというが、こんなところで吊るされてるってことは自分で辞めたわけじゃなくて、ジンクスがそういう状態にさせたのでは(事情を話せ)、とケイトリンは言っている。
[04:14] Caitlyn: Tell us how you wound up here.
遠回しな質問が伝わらずヒーノットが無関係な話ばかりするので直截的に、かつ威圧的に聞き直す。気が逸っている&殺気立っている(上の歌詞そのまま)。ケイトリンが武器を構えたときにはヴァイとステブが驚いた表情をする。
[04:16]
Heenot: Jinx is off the rails, even for her. She’s got a real fire lit under her ass. She’s planning something big, right here in the pipeworks.
Vi: It’s a pretty big place down here.
Heenot: She was headed towards the old tunnels. Something about rerouting the vents.
- off the rails: 常軌を逸している。
- even for her: ジンクスは普段から常軌を逸しているがいまはそれ以上に。
- fire lit under one’s ass: ケツに火が付いてる。急いてる。やる気になってる。
ヒーノット「ジンクスはレーンの換気システム(=pipeworks)を使って何か大きなことをやるつもりだ」→ヴァイ「ここは規模が大きすぎる(からジンクスを探すにしたってどうすればいいんだ)」→ヒーノット「旧いトンネルの方に向かった(からそっちを探せばいい)」
[04:41] Caitlyn: This is what we’ve trained for.
直訳だと「このときのために訓練してきたんだ」だが、こういう場面での定型句なので、「いよいよ大詰めだ」「気を引き締めろ」くらいのニュアンス。
[04:52]
Ambessa: Your first request for an audience was uninteresting. The second, inappropriate for someone of your station. The third… plain annoying. People have lost their heads for less. So tell me, Amara, what does a member of Piltover’s merchant guild want from me?
Amara: I’m not here representing the guild. I’ve come here to settle a debt.
Ambessa: My bookkeeper is down the hall.
Amara: What you’ve stolen… is more precious than any gold. Did you truly believe Piltover was beyond our reach?
Ambessa: My son is dead. Is that not enough to sate your bloodlust?
Amara: I haven’t insulted your intelligence, Ambessa. Do not insult mine. We know what you’re chasing in Piltover. We will not allow it.
Ambessa: Allow? Thank you. Your visit only confirms my suspicions. Try to stop me, insolent witch.
Amara: My death means nothing. You should have given up the feud.
Ambessa: You have no inkling what family is to me.
Ambessa: Triple the guard. This will have consequences. We need control now.
Rictus: Salo isn’t ready. Perhaps it’s time we involved Mel.
Ambessa: No. We must distance ourselves. She’s safer as our enemy. I’ll handle Salo.
Rictus: Her disappearance won’t go unnoticed for long.
Ambessa: It’s worse than that.
- 前提: アマラはアンベッサに謁見要請を3回出している。
- アンベッサ: 最初の謁見要請のときは取るに足らないと思った(から却下した)。2回目はお前の立場では(一国の将軍である私に会うのは)ふさわしくないと思った(から却下した)。3回目は単純に不愉快だった(がなぜそこまでしつこく謁見要請を出すのか知りたかったので却下しなかった)。もっと些細なことでも人は首を落とされてきた(私を不快にさせて首を落とされていないことをありがたく思え&次の問いには慎重に答えろ)。教えてアマラ、ピルトーヴァーの商人ギルド(ごとき)が私に何を求める?
- アマラ: 私はギルドを代表してここにいるのではありません。借りを返してもらいにきたのです。
- アンベッサ: 経理なら廊下の向こうだ→この時点のアンベッサはアマラは金[money]の話をしていると思っている。そんな話をするために何度も謁見要請を出すのが意味不明すぎて怒りより怪訝の方が勝っている感じ。
- アマラ: お前が盗んだものは……どんな金[gold]よりも価値あるものだ。ピルトーヴァーには私たち(=黒薔薇)の手が及ばないとでも思っていたのか→盗んだもの=アンベッサとルドの間に生まれた子=メルが受け継いだ魔法の力。
- アンベッサ: 私の息子(=キノ)は死んだ(お前たちが私を苦しめるために殺しただろ)。それでもお前たちの血の渇きは静まらないとでもいうのか→清算[settle a debt]はもう完了してるだろ、の意。黒薔薇との戦争のためにヘクステック兵器を求めてピルトーヴァーに来たことをとぼけている。
- アマラ: 私はお前の知性を見くびっていない(何の考えもなくピルトーヴァーに来たとは思わない)。だから私の(知性)も見くびらないで(とぼけないで)。我々はお前が何のためにピルトーヴァーに来たかわかっている。それ(ヘクステック兵器の保持)を許すつもりはない。
- アンベッサ: 許す? 感謝するよ。お前の来訪は私の推測を裏付けた→黒薔薇がヘクステック兵器を恐れていることが確信できた
[S2E4:09:11] Ambessa: Our instincts were right. They fear Hextech.→ヘクステック兵器があれば黒薔薇と戦えるとわかった。 - リクタスが魔法抵抗力のあるアイテム(ケイニック・ルーケルン)を使ってアマラの魔法を弾く→アマラが動揺する→隙を付いてアンベッサがアマラを刺殺する。
- アンベッサ: (ヘクステック兵器を手にしようとしている)私を止めてみるがいい。不作法な魔女(許すとか許さないとか何様のつもりだ)よ。
- アマラ: 私の死に意味はない。素直に降参すればいいものを→黒薔薇との確執[feud]による攻撃の応酬をお前のターンでやめろ(息子の復讐なんて諦めろ)。
- アンベッサ: 私にとって家族がどういう意味を持つか、お前には到底わかるまい。
- アマラ死亡。
- アンベッサ: 警備の大幅な増強を。これから大変なことになる→刺客を退けたので今度はもっと本気で来る。
- アンベッサ: (ピルトーヴァーを)いますぐ掌握しなければ。
- リクタス: サロ(を傀儡のトップとして祭り上げるに)はまだ早い。そろそろ(事情を話して)メルを巻き込むタイミングでは?
- アンベッサ: いえ、メルとは距離を保たなければ。私たちとは敵対関係にしておいた方が安全よ。サロは私がどうにかする→結局サロはダメだと判断してこの役割はケイトリンに。
- リクタス: アマラの不在はすぐに明るみに出る。
- アンベッサ: 事態はもっと深刻よ→いち商人の失踪(死亡)なんてどうでもよくなる事態になる。
[07:35]
Vi: We should cut the others loose. Listen, if that Heenot idiot is telling the truth, Jinx is gonna have surprises in store for us.
Caitlyn: All the more reason to bring backup.
Vi: She’ll smell their nerves a mile away and find a way to use them against us. Tell me I’m wrong.
- cut the others loose: 他の部隊メンバーを切り離す(=帰還させる)。
- surprises in store for ~: ~のために用意しているサプライズ。
- all the more: なおいっそう(他のメンバーを連れていく理由になる)
- nerves: 動揺。不安な気持ち(をジンクスは巧みに利用してくるから覚悟を決めている私たちだけの方がいい)。
[07:53]
Caitlyn: I can’t let her get away again. Are you sure you’re ready to…?
Vi: My sister is gone. There’s only Jinx now. It has to end. I’m so sorry about your mother. I’m sorry I can’t bring her back, but please just… Everyone in my life has changed. Promise me you won’t change.
Caitlyn: I won’t.
家族は死に、唯一残った妹は凶悪犯罪者になり、ヴァイの周りは何もかもが変わってしまい、ヴァイ自身も変わった。親の仇である執行官になるなんて以前の自分からは想像もできなかったことをしている。S2E1のケイトリンがそうであったように、ヴァイもまたどこにも寄る辺がない。ケイトリンがヴァイを拠り所としたように、ヴァイもまたケイトリンを拠り所としている。そのケイトリンが変わろうとしている。以前は嫌っていた家の威光を使い、権限をフル活用し、目的のためなら手段を選ばなくなってきている。地獄の炎の中で孤独に死んでしまってもいいと考えているように見える。いまは「責務」とか「復讐」とかで頭がいっぱいになっているからいい。でもこれが終わったら、そのあとは? またすべてが変わってしまうのではないか。ヴァイはそれを恐れている。だからケイトリンと「約束」という安全帯で互いをつなぐ。
[09:49]
Ambessa: Do you realize how easy it was for me to track you down here?
Salo: Hmm. Well, I do own the place.
Ambessa: It’s enough work propping you up without you dulling what few wits are left rattling around in there.
Salo: If you propped as well as you prod, maybe I’d have better uses for my time than sitting around waiting for an update on Princess Kiramman’s underground escapades. She’s gotten no closer to Jinx. But that doesn’t seem to steal the stars from anyone’s eyes.
Ambessa: Perhaps if you hadn’t let a child overpower you in your own chamber.
Salo: It’s not the girl. It’s the name. It bewitches people. You should know. Do you really think Mel could have succeeded —
Ambessa: Never speak ill of my family.
Salo: Why are you here?
Ambessa: To sober you up.
Salo: Mission accomplished.
Ambessa: It’s time. Rally every house and family with even a modicum of influence. Can you manage that?
Salo: Wait. For certain? Yes, of course. Whatever you need.
Ambessa: There is another matter, concerning your guild merchant Amara.
- レストがサロの足にシマーを塗布し(経口摂取以外にもスミーチみたいに煙で吸入したりいろいろあるっぽい)、サロの目が紫に染まる→麻痺した足の治療も兼ねて(?)精神高揚ドラッグとして使っている。
- (隣の部屋から?)音楽が響く中でレストがアンベッサの足音を聞き分けてシマーを隠す→ピルトーヴァーでの忌避度は現実のコカインくらいか。やってる上流層はそこそこいるが公言するものではない。
- サロが怪訝そうにするが部屋に入ってきたアンベッサを見てレストの行動を理解する。サロは面倒そうに舌打ちする。
- アンベッサはレストを出ていかせる→メルの間者であるレストは部屋の外で会話を聞いている。
- アンベッサ: あんたを見つけ出すのがどんなに簡単だったかわかってる?→シマーをやるならもっと見つかりにくいところでやれ。
- サロ: まあ、ここは私が所有してるから→いいだろ別に。
- アンベッサ: あんたを支える(支持する)だけでも大変なのに、そのわずかに残った脳みそまで(シマーで)溶かさないでくれる?
- サロ: あなたが(評議会に)口出しする[prod]だけでなく、もっとちゃんと私を支えて[propped]くれていれば、私はここでダラダラしながら「キラマン姫の地下大冒険」の続き(=レーンに潜入したケイトリンからの報告)を待つよりも有意義な時間を過ごせているはずなんだけどね→アンベッサのあてこすりに対するあてこすり。サロは神輿として担がれようとしていることは理解しているが、担ぐならちゃんと担げよ、と言っている。 “prod” と “propped” は言葉遊び。口出しする[prod]のは上手ですね。それと同じくらい支える[propped]のも上手にお願いしますよ。みたいな感じ。
- サロ: 姫はジンクスにまったく近づけていないのに、みんなまだ瞳をキラキラさせてお話の続きを待ってる→成果が上がっていないのに周囲が失望していないことへのあてこすり。
- アンベッサ: あんたが自分の縄張り(=評議会)でお子様(=ケイトリン)に言い負かされて(圧倒されて)なければねえ(もうちょっと状況は違っていただろうに)→
[S2E1:35:10] Caitlyn: Address me with respect, or keep your mouth shut.でケイトリンに黙らされたこと。 - サロ: (私が負かされた原因は)お姫様(本人の力)じゃない。(キラマン家の)名だ。あれは人を魅了する(=キラマン家は影響力が強い)。わかってるでしょう。あなた本当にメルが(本人の力で)成功……(したとでも?)→ケイトリンと同じでメルもまたメダルダ家の名で成り上がったんだから(実際は本人の力なのでこれはサロの勘違いor僻み)、なぜこうなったかあなたもよく理解しているでしょう。
- アンベッサ: 二度と私の家族を侮辱するな→メルは自分の力で成功した(とアンベッサは思っているし実際にそうだ)からサロの発言はメルに対する侮辱。
- サロ: (ところで)何の用でここへ?→こんな話をするためじゃないはずだ。
- アンベッサ: あなたの酔いを醒ましに→
[07:12] Ambessa: I'll handle Salo. - サロ: (それなら)任務達成だ→いま酔いが醒めたので。
- アンベッサ: (計画を実行に移す)時が来たわ。わずかな影響力でも持つすべてのハウスを招集しなさい。できるかしら?→戒厳令を発令してサロを司令官にする計画。だったがシマーで脳を溶かしているようなやつには務まらないと考えてサロにはお膳立てのみをやらせている。
- サロ: ちょっと、本気で? もちろんできるとも。(私がトップに立つために)必要なことはなんでも。
- アンベッサ: 問題がもうひとつ。あなたのところの商人ギルドにいるアマラについてなんだけど→黒薔薇の件は極秘なのでサロにも「アマラはゾウン人に殺された」と言ったはず。
[11:36]
Mel: Good to see you again, Lest.
Lest: I’m out. Keeping an eye on a councilor with peculiar tastes doesn’t rattle me. But that woman…
Mel: You met my mother? What did she want?
Lest: I don’t know. They kicked me out before I could hear any of it.
Mel: We both know you heard every word.
Lest: I’m sorry, but I really can’t.
Mel: Lest, this is vitally important. I need to know.
Lest: This was never about Salo. You’re using me to get to her. And then what? You take what you need, hang me out to dry? Hmm? I’m expendable?
Mel: No, no one is expendable. That’s what this is all about. Everything with my mother is a calculated risk. I’d love to promise your safety, but I can’t make any assurances other than this: If my mother gets what she wants, the whole city will suffer. And right now you’re the only one who can stand in her way.
Lest: They’re setting up some big announcement. All the who’s who. Aiming to take over and put Salo in the hot seat, but… we know who’s really pulling the strings.
Lest: I caught a name. Amara. I don’t know what you make of that.
Lest: Here, brand-new cocktail. All the rage. It’s made with Shimmer. Leaves traces on the body. That should be all you need to shut Salo down.
Mel: Thank you.
Lest: For what it’s worth… dangerous as she is, your mother was spooked. I could smell it. Like a cat backed into a corner.
- メル: 変わりないかしら、レスト。
- レスト: (間者の役割から)降りるわ。癖の強い議員を監視するくらいならいい(怖くない)。でもあの女……(は怖い)。
- メル: 母に会ったの? 母は何をしようとしてる?
- レスト: 知らない。何かを聞く前に追い出されたから。
- メル: 隅々まで聞いてるでしょ→(耳がいいのは)私もわかってるし、あなた自身もわかってるでしょ。とぼけないで。
- レスト: ごめん、本当に無理なの→話してこの件に関わるのが怖い。
- メル: レスト、これはとてつもなく(人命がかかった)重要な話なの。私は知らなきゃいけない。
- レスト: (サロの監視を頼んでおいて)サロなんて問題じゃないんでしょう。(最初から私に)あなたの母について調べさせたかったのね。それで? 欲しい情報が手に入ったら(私の正体がアンベッサにバレても)見殺し? 私は使い捨て?
- メル: 違う。使い捨てにしたりしない。まさにそれ(誰も使い捨ての存在なんかじゃないということ)が問題の本質なの→ピルトーヴァーはアンベッサに使い捨てにされようとしている。
- メル: 母にまつわることはすべて危険を覚悟しないといけない。あなたの安全を保証したいけど、たしかなことはこれだけ。母が欲しいものを手にしたとき、この街全体が(戦争の惨禍で)苦しむことになる。そしていまこの瞬間、それを未然に防げるのはあなただけなの→懇願であると同時に、話さないと大勢が苦しんで後悔するぞという脅しでもある。
- レスト: 何か大々的な発表の場を設けるみたい。名だたる顔ぶれでね。サロをトップにして実権を握る腹積もりみたいだけど……誰が裏で糸を引いてるかは、わかってるわよね→サロをトップとしたアンベッサの傀儡政権になる。
- レスト: (ああそれから)アマラって名前が出たわ。あなたがどう解釈するかは知らないけど→このあとメルはエローラにアマラを調査させる→エローラが黒薔薇の罠にかかる。
- レスト: (それともうひとつ)これを。新しいカクテル。巷で人気の。シマーが入ってる。体に跡が残るわ。サロを潰すにはこれがあれば十分でしょう→皮膚から接種するので体に跡が残る→糾弾したときにシラを切られても体を調べれば一目瞭然→コカインレベルの忌避度の薬物を常用している政治家がトップに立てるわけがない→失墜させるには十分。
- メル: ありがとう。
- レスト: これは参考までに、なんだけど……。あなたのお母さん、あれほど危険な匂いなのに、ひどく怯えてる匂いもしたわ。追い詰められた猫みたいな匂い→アンベッサは領土・財産を失い続けてあとがない。
[13:38]
Jayce: Viktor hypothesized that there may be something he called “wild runes.” Patterns that occur naturally where the border between our world and the Arcane is thin.
Ekko: Runes like the ones you use in Hextech. What’s the difference between those and wild runes?
Jayce: Pass me a tome.
Jayce: I used words you understood in order to elicit your action. This is what Hextech runes are.
Jayce: Pass me a tome.
Jayce: Pass me a tome.
Jayce: There, you sighed. Still a kind of language. A sound, but not words. Something raw. Natural. That’s wild runes. Most places, the Arcane is dormant, but here and there, it’s more active. Wild runes are…
Ekko: Sort of like its fingerprints.
Jayce: Exactly.
Ekko: So you’re telling me that pattern is on my tree because you pissed the Arcane off with all your demands?
Jayce: That’s — That’s not what I…
Heimerdinger: Oh, the lad may be onto something. Every action sparks a reaction.
Jayce: Do you think this could actually be a result of overuse of Hextech?
Heimerdinger: I’ve seen miracles spring from the hands of mages many times, but so often, they turned to horrors. I’d always presumed it was due to mankind’s… turbulent relationship with power. But perhaps it is a property of the Arcane itself.
Jayce: We tested our Hextech under every conceivable condition for years. If there’s some reaction taking place, how come we’ve never seen any sign of it until now? And why would it appear on a tree, deep underground?
- ジェイス: 「ワイルド(野生の)ルーン」とでも呼ぶべきものが存在するとヴィクターは仮説を立てていた。僕らの世界とアーケインとの境界が薄い場所に発生するパターンがあると。
- エコー: ルーンってあんたのヘクステックで使ってるやつだろ。それとワイルドルーンは何が違うの?
- ジェイス: 本を取って。
- エコーはジェイスに本を渡す。
- ジェイス: 僕はいま君が理解できる言葉を使って君の行動を引き出した。これがヘクステックで使われるルーン。本を取って。
- エコーはジェイスに本を渡す。
- ジェイス: 本を取って。
- エコーは溜息をつきながら本を投げ渡す。
- ジェイス: それだ。君は溜息をついた。それも一種の言語だ。言葉ではなくただの音。原始的で、自ずと生まれるもの。それがワイルドルーン。たいていの場所ではアーケインは休眠状態だが、活発な場所もあちこちにある。ワイルドルーンは……。
- エコー: アーケインの指紋みたいなもんか→アーケインが活発になった場所の痕跡がワイルドルーン→アーケインが現世に表出した証→指紋。
- ジェイス: その通り。
- エコー: じゃあ俺の木にそのパターンが出たのは、あんたがアーケインにいろいろ強要しすぎて怒らせたからってこと?→ヘクステックの使い過ぎでアーケインとの境界が薄くなってワイルドルーン(=葉の斑紋[pattern]=異常[anomaly])が発生した→ジェイスのせいでこうなったんじゃないか。
- ジェイス: い、いや、そういう話じゃ……。
- ハイマーディンガー: 少年(=エコー)はいいところを突いているかもしれないぞ。あらゆる行為(作用)には反動(反作用)がある。
- ジェイス: これは実際にヘクステックの過剰使用の結果であると?
- ハイマーディンガー: 私は魔法使いたちの手から奇跡が生まれるのを何度も見てきた。それがしばしば恐怖(災厄)に変わるところも。私はずっと、それは人類が(魔法の)力と折り合いをつけられないことに起因すると思っていたが、もしかしたらアーケインそれ自体の性質なのかもしれない→ヘクスコアは意志あるように振る舞い、いまは明らかにヴィクターに「寄生」している。
- ジェイス: ヘクステックはあらゆる条件下を想定して何年も試験を重ねてきた。もし何らかの反応が起きるなら、なぜいままで何の兆候もなかったんだ? それになぜ、地下深くの木に……?
- ジェイスが「地下深く」のところでヘクスゲートのフェイルセーフに思い至る。
[15:58]
Elora: Your source panned out. I’ve confirmed Salo met privately with members of several houses today. I should have been first to bring this to you. I promise I wouldn’t have missed it. It’s just such a bold move. And at this moment, it’s…
Mel: Foolish.
Elora: Of course, your mother is anything but a fool. There must be an angle I’m missing.
Mel: Did you look into the other matter?
Elora: There’s a rat’s nest of misinformation surrounding your brother’s passing. Whomever he crossed knows how to cover their tracks. Moreover, (it seems: 英字幕では抜けているが発音がある) they’ve managed to strip your mother of most of her holdings.
Mel: She’s desperate. Which makes her all the more dangerous.
Elora: What are we going to do? Mel: Summon the apothecary. I’ll want his opinion of this. And check in on Amara.
- rat’s nest: 複雑な構造の比喩。とっ散らかったもの。
- apothecary: 日常的には使われない古風な単語。日本語の「くすし」の響き。
以下、会話の流れ。
- エローラ: 情報はたしかでした→メルはレストから得た情報(サロが名家を集めて大々的な発表の場を設ける)をエローラに調査させていた。
- エローラ: サロが今日、複数のハウスと密会していたことを確認しました→戒厳令発令前の根回し。
- エローラ: 本来なら私が真っ先にこの情報をお持ちすべきでした→外部協力者(レスト)ではなく自分が。
- エローラ: (こんな大掛かりな動きを)見逃すはずがないのですが→常に注意を払っていたのに気づかなかったことへの言い訳。
- エローラ: ただあまりにも大胆な行動で→逆に気づかなかった。
- エローラ: それに(ピルトーヴァーの不安定な)現状でこれは……。
- メル: 愚かな(行動だ)。
- エローラ: もちろん母君は愚かではありません。何か私が見逃している切り口があるはず→エローラは言い訳モードに入っているので自分のことを言われたと思っている。
- メル: もうひとつの件は?
- エローラ: 兄君の死については情報が錯綜していて正確な情報を掴むのは困難です。兄君が敵対した相手は自身の痕跡の消し方を心得ている。さらに、彼らは母君の資産の大半を奪うことに成功しているようです。
- メル: (領土・財産を失って)母は必死ね。ゆえにいっそう危険だとみなさなければ。
- エローラ: これからどのように?
- メル: 薬師(くすし)を呼んで。これ(=レストからもらったシマーカクテル)について意見を聞きたい→本当に体に跡が残るかどうか知りたい→サロ糾弾時の論証に使うため。
- メル: それと、アマラの様子を確認して→レストから「サロとアンベッサの会話に出た名前」だと聞いたので確認させる→エローラが黒薔薇の罠にかかる→連鎖的にメルが罠にかかる。
[17:04]
Ekko: This is still part of the Hexgates? We must be at least 200 feet below the surface.
Jayce: The entire structure is a channel, focusing the Hextech energy into a precise beam. How do you know so much about its design?
Ekko: Read what I could, deduced what I couldn’t. Plus, I didn’t think the Topside would trust anything that important below the surface. I thought the gemstone mesh was installed aboveground.
Jayce: The mesh is aboveground, but we weren’t sure what would happen if the gate overloaded, so we installed a failsafe at the base.
Ekko: So instead of it exploding in your neighborhood, it would blow up in ours.
Jayce: We’re miles from the main fissures.
Ekko: These are the same utility ducts that carry our water and facilitate our ventilation. That would explain it affecting the tree.
Heimerdinger: Inconceivable.
Ekko: You know, you say we should feel like we’re all one people. But whenever it rains, we’re the ones that get wet…
Jayce: What the…?
- エコー: ここもまだヘクスゲートの一部? 地表から200フィート(≒60m)以上は下りてるぞ。
- ジェイス: この(タワー状の)構造全体が導管になってるんだ。ヘクステックエネルギーを精密なビームとして収斂させるための→ヘクスゲートはタワー上部の転送装置だけで成立しているわけではなく、タワーそれ自体が巨大なエネルギー収斂装置。
- 三人はエレベーターを降りて扉の前へ。
- ジェイス: どうしてここの仕組みにそんなに詳しいんだ?
- エコー: 読めるもの(下層からアクセスできる本やドキュメント)は読んだ。読めないものは推測した→これは直前のジェイスの質問への回答。
- エコー: あと、上のやつらが地下に重要なもんを置くなんて思わなかった(からさっきの自分の驚きがある)→これは半ば独り言っぽい感じ。
- 扉が開く。
- エコー: ジェムストーンメッシュは地上に設置されてると思ってた→ジェムストーンメッシュは言葉の響き的にジェムストーンを格子状に並べて共振させるような感じのやつか。エコーの知識は本から得たもので、それは地上(タワー上部)にあると推測していた。その推測は当たっていて、いま三人が来ているのは、地下に設置されたフェイルセーフ。
- ジェイス: メッシュは地上にある。でもゲートが過負荷になったときどうなるか確証が持てなくて、フェイルセーフを地下に設けたんだ→過負荷時のエネルギーの退避先、安全弁みたいな感じか。
- エコー: つまり、あんたらのところじゃなくて、俺らのところで爆発するようにってか→このセリフを言っているエコーの足元は鏡面になっていて、タワー内部の壁面が見える。
[S1E5:09:17]あたりで映っている地上部と同じ(円周の長さは違うが)。つまり上部からここまでずっと吹き抜けになっている。この構造のせいで異常[anomaly](=ワイルドルーン)がここに発生した? - ジェイス: レーンの中心(裂け目が連なった地域[fissures]の主たる裂け目[main fissures])からは何マイル(1マイル≒1.6km)も離れてる→ピルトーヴァー地図を見るとたしかにだいぶ離れている。
- エコー: ここのダクトは俺らの給水や換気に使ってるのと同じものだ。だから(俺のところの)木に影響が出たんだろ。
- ハイマーディンガーが床の異常[anomaly]を見つける。
- ハイマーディンガー: 信じがたい。
- エコー: なあ、みんなでひとつの共同体だと思えって言うけどさ、雨が降ったら濡れるのはいつも……。
- 三人のいる空間がおかしくなる。
- ジェイス: 何だ……?
[19:04]
Vi: Jinx!
Jinx: Finally got the name right. Guess there really isn’t a crack in the earth where you won’t find me.
Vi: What is this place?
Jinx: Don’t you remember the old Janna bedtime stories Vander used to tell us? Miners trapped underground. Air running thin! But then some wispy wind woman wafts to their rescue. Wild the kind of crap people get up to when you choke them out.
Vi: We used the Grey to clear the streets. To keep people safe.
Jinx: “We.” Never thought my sister would turn bluebelly.
Vi: Never thought mine would orphan kids.
Jinx: Ha! Why not? Done it to myself enough. But plastering my face all over so someone else would do your dirty work? Poisoning our air? You’ve turned a leaf, sister.
Vi: I’m done blaming myself for your mistakes. Done pretending you’re my sister. You’re not. You killed her. I’m not gonna let you stain her memory anymore.
Jinx: Then stop me. ’Cause no matter what I do, I just can’t seem to die.
Vi: I’m sorry.
Jinx: I’m sorry too.
- Janna: ゾウンで信仰されている風の精霊ジャンナ。
- bluebelly: (青い服を着た)執行官のこと。下層側からの蔑称っぽい。
- turn (over) a (new) leaf: (改心して)新しい自分になる。
以下、会話の流れ。
- ヴァイ: ジンクス!
- ジンクス: やっと(パウダーじゃなくてジンクスって)名前をちゃんと呼んだね。地球のどこ(どんな小さな裂け目)にいたってあんたは私を見つけるみたいだ→実際はジンクスがここへ二人をおびき寄せたので、からかいのニュアンスで言っている。
- ヴァイ: ここは何なんだ→ジンクスのからかいのニュアンスを汲み取っているので、なんでこんなところにおびき寄せたんだ、の意。
- ジンクス: 覚えてない? 寝る前にヴァンダーが聞かせてくれたジャンナの昔話。鉱夫たちは坑道に閉じ込められる。空気はだんだん薄くなる! でも風の精霊みたいな女がふわりと助けに来る、ってやつ。窒息しそうになった人間は常軌を逸したとこまで行っちゃうねえ→ “when you choke them out” は一般的な話をするときの “you” だが、ジンクスが言わんとしていることは灰色の靄[Grey]を武器とした作戦への非難なので、ここではケイトリン部隊を指すニュアンスが強い。ここは何だ?(なぜここにおびき寄せた?)→お前らが私を窒息させたから、いまの状況がある。
- ヴァイ: 私たちは灰色の靄[Grey]を使って街を掃除したんだ。みんなの安全のために→非難への反論。抗争で街は混沌としていた(
[S2E2:17:13] Scar: It's all the fighting.)が、ケミ長者を排除してそれを解決した。 "clear" は突入部隊が敵の排除後に「安全確保」の意味で使う "clear" のニュアンス。 - ジンクス: 「私たち」ね。私の姉が青服(執行官)になるなんて考えもしなかったよ。
- ヴァイ: 私の妹が孤児を増やすようなやつになるなんて考えもしなかったけどね→ジンクスの行為で死んだ人間にも子供がいた、のニュアンスだが、ケイトリンの母の死がヴァイの中で大きなしこりになっているからこそのセリフかも。
- ジンクス: ハッ! いいでしょ別に。私は自分で自分を孤児にしてるんだから→ “enough” は自分で自分を孤児にしてるんだから十分(他の人間を孤児にしてもいい)でしょのニュアンスだが、ジンクス本人的には2回も、のニュアンスもありそう。ヴァンダーとシルコを殺して、ジンクスは2度、自分を孤児にしている。本人しか笑えないギャグ(周囲は凍りつくやつ)。
- ジンクス: でもあんたは私の顔をそこら中にペタペタ貼って、他人に汚れ仕事を押し付けて? 空気を汚して? ご立派になったもんだね、姉さん→ジンクスという怪物を作ったのはヴァイなのに、その怪物退治を他人にさせるってどういうこと? のニュアンスか。
- ヴァイ: もうあんたの過ちを自分のせいにするのはやめた。あんたを妹だと思い込むのも。あんたはあの子(パウダー)じゃない。あんたはあの子を殺した。もうこれ以上あの子の思い出を汚させない。
- ジンクス: なら私を止めてみな。何をどうしようが私は死ねないみたいだけどね→これまで何度も死のうとしてきたが失敗した。
- ヴァイ: 残念だよ。
- ジンクス: 私も残念だ。
[24:09] Jayce: What have we done?
直訳だと「私たちは何をしたんだ?」だが、ニュアンスとしてはもうちょっと重い。現在の状況に対してだけではなく、ヘクステックの開発が始まってからこれまでの積み重ねに対して、何か取り返しのつかないことをしてきたのではないか、という恐怖と焦りの言葉。
[27:03] Jinx: No, no, this isn’t how it’s supposed to…
おそらく本来はジンクスがヴァイに殺されたあとに「盛大な花火」として起爆させるようにセヴィカに頼んでいた。「死にたがりにはもう付き合いきれない」と思った(?)セヴィカはジンクスの計画を無視して起爆させる。
[29:03]
Caitlyn: You stopped me.
Vi: I shouldn’t have had to.
Caitlyn: I had the shot.
Vi: That was a kid. What if you missed?
Caitlyn: I wasn’t going to miss.
Vi: What’s wrong with you?
Caitlyn: I keep telling myself that you’re different. But you’re not. It’s her blood in your veins.
Vi: Then why are you the one acting like her?
- ケイトリン: なぜ止めたの→事実を述べているだけだが詰問の形。
- ヴァイ: そんな状況になるのがおかしいでしょ→日本語に変換することはできるがめちゃくちゃ説明的になってしまうやつ。 “shouldn’t have done” 「すべきじゃなかった」と “have to” 「する必要がある」が組み合わさって、「そんなことをする必要がある(状況になる)べきじゃなかった」の意。ケイトリンがイーシャごしにジンクスを撃とうとしている状況がまずもっておかしい。それを私が止めなきゃいけない状況になるべきじゃなかった。私にそんなことをさせるな、というケイトリンへの非難。
- ケイトリン: 撃てたのに→
[S2E1:09:45] Caitlyn: I had the shot.と対になっている。 - ヴァイ: (ジンクスをかばっていたのは)子供だったでしょ。外してたらどうするの?
- ケイトリン: 外さないわ。
- ヴァイ: どうしちゃったんだよ→ “What’s wrong with you?” は字面だけだと軽めの言葉に見えるがかなり強めの非難。
- ケイトリン: あなたは違うって自分に言い聞かせてた。でも結局、あなたにもジンクスと同じ血が流れてるのね→ケイトリンはいま自分がやっていることを崇高だと思っている。ヴァイがそれを理解できないのは下賤の血が流れてるから、みたいなニュアンスか。
- ヴァイ: じゃあなんであんたの方がジンクスみたいに振る舞ってるんだよ!→ジンクスとヴァイは同じだと非難しているケイトリン本人の方がジンクスのように非道なことをしている。文頭の “then” は、そういう前提ならなぜ同じ血が流れてる私の方ではなく、というニュアンスの接続詞。
[35:33] Ambessa: Your mother will have justice.
ケイトリンの母は非業の死を遂げたのでいまは魂が安らいでいない。その魂が救われる、浮かばれる、無念が晴らされる、のようなニュアンス。同時に、犯人には適切な裁きが下される、のニュアンスも含む。ケイトリンの個人的な復讐心を正当化して、強権を振るうことへのためらいをなくさせる言葉。S1E8でヴァイがジェイスの被害者意識をくすぐって私怨のために権力を振るわせたのと同じ感じ。
S2E3: その他
- 物語構造と会話が難しすぎて、すべてのセリフに翻訳と解釈が必要なレベルになってきた。つらい。うわっ……私の理解力と英語力……低すぎ!? って思ったけどReddit見たら英語ネイティブも「なんもわからん」って言ってる人ばっかりだったから安心した。
- ヴァイがケイトリンの作戦に反対しなかった理由: 1. 灰色の靄[Grey]は致死性ではない。2. 換気システムの制御によってピンポイントで使える→民間人の被害は最小限。3. 全面侵攻よりはマシ。4. シルコの手下は無力化したい。
- これまで描写されているジンクスの希死念慮を考慮すると、本エピソードでのジンクスの計画は、ほぼ確実に「ヴァイと戦って殺される→セヴィカが寺院の仕掛けを起動する→(本人的にはようやく解放された喜びの&上層的にはようやく宿敵を殺したことへの)祝砲を上層へ届ける(嫌がらせも兼ねて)」というもの。計画が狂ったのはイーシャの存在があったから。イーシャは死に向かうジンクスを強制的に生の側へ連れ戻す。ジンクスが大切にしているものを壊してでも。本エピソードではヴァイを撃てなかったが、S2E6ではヴァンダー(ワーウィック)を撃つ。
以下、冒頭のモンタージュの流れ。
- 換気システムを制御して灰色の靄[Grey]の流れを制御する。
- 換気システムを通路として利用して秘密裏に移動する。
- マーゴットの施設
[S2E2:07:47]を襲撃。 - クロスの手下にジンクスの手配書を突きつける。
- クロスの施設
[S2E2:03:54]を襲撃。 - マーゴットとクロスはケミ長者の地位を失う。
- シマー流通シンジケートが解体される。
- ロリスがジンクスの罠にかかって怪我を負う。
以下、寺院での戦闘シーンの流れ。
- ケイトリンはジンクスに照準を定める。
- セヴィカの奇襲でケイトリンはライフルを落とす。
- ジンクスは位置の不利を捨てて(目的はヴァイに殺されることなので)地上に降りる。
- ヴァイはジンクスが鏡として使っていた金属板を盾にして(都合よく盾があったのは同上の理由)ミニガンの弾を防ぐ。
- ケイトリンはライフルを拾う。
- ヴァイはガントレットの力でジンクスのミニガンを引き裂く。
- (ヘクスゲート基部で)ジェイスが異常[anomaly]にふれようとするとハンマーが異常動作する。
- ケイトリンはライフルを使おうとするが異常動作の衝撃で取り落とす。
- セヴィカはケイトリンの動きを封じる。
- ヴァイのガントレットも異常動作を始め、ガントレット本来の重さで動けなくなる。
- ジンクスがロケットランチャー(通常弾)を使う。
- ガントレットの異常動作が収まり、ヴァイはロケット弾をギリギリかわす。
- ロケット弾はセヴィカとケイトリンがいた場所付近に着弾し、二人を吹き飛ばす。
- ヴァイは床のトラップ(グレネード)を起動させてしまう。
- グレネードの爆発でヴァイも吹き飛ばされる。
- ジンクスがロケットランチャー(ヘクステック利用)を使うが異常動作して吹き飛ばされる。
- ロケットランチャーに使われていたジェムストーンが転がる→異常動作の原因が視聴者に示唆される。
- ヴァイvsジンクス、ケイトリンvsセヴィカはどちらももみ合いの戦いになる。
- 武器を失って不利になったジンクスを見てイーシャが動く。
- ジンクスはシマーによる身体強化で肉弾戦をする。
- (ヘクスゲート基部で)ジェイスがハンマーを異常[anomaly]に叩きつける。
- ヘクステック兵器の異常が激しくなる。
- ケイトリンは武器の異常をセヴィカに押し付けて制圧する。
- ケイトリンのライフルがジンクスの中指を吹き飛ばす。
- 動揺したジンクスをヴァイが制圧する。
- ケイトリンはライフルを下ろす。
- ジンクスは覚悟を決める。
- ヴァイは逡巡したあと拳を振り下ろそうとする。
- イーシャが間に割って入り、ヴァイに銃を突きつける。
- ケイトリンはライフルを構えなおす。
- 膠着状態がしばらく続く。
- ケイトリンが発砲し、イーシャの銃が吹き飛ばされる。
- イーシャが身を挺してジンクスを守る。
- ジンクスはイーシャを引き離そうとするが離れない。
- ケイトリンは続けて発砲しようとするがヴァイが止める。
- セヴィカが爆弾を起爆させる。
- ジンクスが “This isn’t how it’s supposed to …” と叫ぶ。計画通りではない、のニュアンス。
- ヴァイとケイトリンが風圧で吹き飛ばされる。
- ジンクスはイーシャを抱えて祭壇の後ろに行き、セヴィカは義手を祭壇に引っかけて二人が吹き飛ばされないように守る。
- ヴァイはケイトリンを抱えながら吹き飛ばされないようにこらえる。
- 灰色の靄[Grey]の上昇気流でプロペラが回り、靄に色が付く仕掛けが起動する。
- 上層に色付きの灰色の靄[Grey]が吹き上がる。
S2Act2: 要約
- 黒薔薇に囚われていたメルが魔法の力に覚醒する。
- ピルトーヴァーはゾウンを制圧するがジンクスは見つからず、戒厳令状態が長引く。
- イーシャがジンクスを模倣したパフォーマンスを行い、「ジンクスが戻ってきた」という噂が流れる。
- セヴィカが招集をかけた決起集会で多くのゾウン人が逮捕されるが、ジンクスが脱獄させる。
- ジンクスは監獄でワーウィックと遭遇する。
- ジンクスはヴァイと協力してワーウィック(ヴァンダー)の人間性を取り戻す。
- アンベッサはケイトリンを傀儡化する。
- アンベッサは黒薔薇と戦うための手段をヘクステック兵器からワーウィックに変更し、シンジドにワーウィックを追跡させる。
- ヴィクターはワーウィックを治療する。
- ケイトリンはアンベッサを裏切り、ノクサス軍の手からワーウィックを逃がす計画を立てる。
- 未来から帰還したジェイスがヴィクターを殺す。
- シンジドがワーウィックを暴走させる。
- イーシャが身を挺してワーウィックを止め、死亡する。
S2E4: Paint the Town Blue
S2E4: あらすじ
- 戒厳令が敷かれたピルトーヴァーは、有力ハウスによる合議制から、最高司令官であるケイトリンに権限を一極集中した独裁制へと移行する。下層ではジンクスの「ポリティカルアート」に影響されたフォロワー、ジンクサー[Jinxers]が生まれ、各地で反乱が発生するが、軍政権のアドバイザーであるアンベッサの助力とノクサス軍の協力もあって、上層は下層の制圧に成功する。各地に検問所が設けられ、住居は強制捜査され、多数のジンクサーが逮捕され、尋問にかけられる。しかし依然としてジンクスの行方はわからず、当初はすぐ解除されると思われた戒厳令は長引いていた。
- (死に損ねた)ジンクスは隠れ家でイーシャと穏やかな暮らしをしていた。イーシャはジンクスに以前のように戻ってほしいと伝えるが、ジンクスは乗り気ではない。イーシャはジンクスに発破をかけるため、検問所でペイントグレネードを使ったパフォーマンスを行う。この行動によって上層・下層どちらにも「ジンクスが戻ってきた」という噂が流れる。
- アンベッサは科学者たちにヘクステックを再現させようとするがことごとく失敗する。ジェイスとハイマーディンガーが失踪し、現状唯一ヘクステックを兵器化可能な人間であるジンクスを確保するため、アンベッサはケイトリンに発破をかける。その後、監獄前でワーウィックと遭遇して驚異的な戦闘力を目の当たりにしたアンベッサは、確保対象をワーウィックに変更する。
- アンベッサに見放されて司令官になりそこねたサロの権威は失墜し、失意の中でシマーに溺れていた。サロはレストから奇跡を起こすヒーラーの話を聞く。他に縋るもののないサロは下層へ赴き、ヴィクターに治療されて信奉者となる。
- これまで下層をまとめていたシルコやケミ長者たちがいなくなり、烏合の衆と化した下層をもう一度まとめるため、セヴィカはジンクスを統合のシンボルにしようと決起集会を開く。ジンクスが来なかったことで現場が白けかけるが、イーシャが青い発煙筒を焚いて参加者に発破をかける。参加者が拳を上げて応え始めた瞬間、リクタス率いる執行官たちが集会を制圧し、参加者は次々と逮捕されていく。その中にはイーシャも含まれていた。
- セヴィカから決起集会の顛末について知らされたジンクスは、しばらく聞こえなくなっていた幻聴(=罪の意識)に苛まれる。ジンクスはセヴィカとともに監獄へ侵入し、囚われていたイーシャたちを救出するが、シンジドが呼び寄せたワーウィックと戦闘になる。ワーウィックはジンクスを殺す直前にヴァンダーの記憶を思い出す。
S2E4: 脚本
[02:56]
Caitlyn: I have an audience with the Masons’ Guild first thing in the morning.
Maddie: Let me guess. Complaints about the Noxians.
Caitlyn: They doubled their fortification requests. Again. To keep —
Maddie: Keep us safe.
Caitlyn: I never expected this to go on so long. I thought… I don’t know what I thought. Just… it wasn’t this.
Maddie: You could call it off. Withdraw from the underground. Reestablish the Council. All you have to do is give the order.
Caitlyn: Not without Jinx. Besides, a withdrawal could lead to a worse situation than the one —
Maddie: Ah. Okay, Ambessa.
Caitlyn: She delivered us Zaun, as she vowed. I’ve learned so much from her. Without her, who knows how many Enforcers we’d have lost? I’ve learned so much from her.
Maddie: You’re our leader. The Enforcers, Piltover, they follow you. I follow you.
Caitlyn: I’ll come to bed soon.
- Masons’ Guild: 建築関係のギルド。
- fortification requests: 要塞化の要請(が我が物顔で再三出されるので建築関係のギルドからノクサス人への不満が出ている)。
- okay, Ambessa: アンベッサみたいなこと言ってる、のニュアンス。
- deliver: 「届ける」ではなく、「約束を果たす」の意。セリフ全体では「ゾウンを制圧するという約束を果たした」「ゾウンを我々の制御化に置くという状況を作ってくれた」のニュアンス。
“I follow you.” で甘い空気になりかけてケイトリンが険しい顔をするのはヴァイを思い出してしまったからか。
[04:26] Jinx: Ladies and gentlemen, you’re in the wrong place. Scumbags and scalawags, put your hooks and paws together for the meanest, ugliest, goriest spectacle of your lives. In the gray corner, our undefeated champion. With claws like daggers and teeth like sharper daggers. The devilish, the wretched, Stink Maw! And in the other gray corner, the challenger. A rising star, with hideous mandibles and a face that would make a brood mother squirm. The creepy, the dastardly Scuttle Butt! Two will enter. And after that, who knows? Handlers, release your beasts.
- ladies and gentlemen, you’re in the wrong place: 紳士淑女の皆様、ここはあんたらのいる場所じゃない(帰れ)。定番の呼びかけと見せかけた前置き。
- scumbag and scalawag: ろくでなし。ごくつぶし。紳士淑女ではない本当の観客への呼びかけ。韻を踏んでいる。
- put your hooks and paws together for ~: 「~に盛大な拍手を[put your hands together for ~]」という決まり文句を昆虫・獣の「手」に変えている。
- like daggers ~ like sharper daggers: 普通のアナウンサーなら表現豊かにするところ。「どっちもダガーやんけ!」のノリ。
- in the other gray corner: 「コーナーどっちも同じ色やんけ!」のノリ。
- Stink Maw: LoLのモンスターのもじり。
- Scuttle Butt: 同上。
[06:39] Jinx: Ta-da! You like it? You’re lucky. I didn’t get to do much of this with my older sis. She was more into… hitting things. I had a different name back then, you know. Powder. Stupid, right? I thought I was rid of her for good, but, uh… you kind of remind me of her.
- do much of this: こういうようなこと。今回の場合は髪を染める=おしゃれに関するようなこと(をヴァイと一緒にやってはしゃいだりすることはあまりなかった)。
- hitting things: 殴ったり蹴ったりするようなこと(の方がヴァイは好きだったので)。
[07:21] Jin: Did Sevika put you up to this? That’s a past life, kid. And it was about as sweet as last year’s milk. Jinx is dead.
- put up to: そそのかしてやらせる。ジンクスはセヴィカがイーシャに何か吹き込んだんじゃないかと思っている。
- as sweet as last year’s milk: 去年のミルク=腐臭がするもの、なので “sweet” は反語。
[08:38]
Ambessa: How, in a city teeming with brilliant inventors, have we managed to unearth such unrelenting incompetence? This is their doing.
Rictus: We can’t be certain the Black —
Ambessa: Keep their name out of your mouth.
Rictus: We can’t be certain the Order was also behind the disappearance of Jayce and Heimerdinger.
Ambessa: Who else? The moment we seize control of this backwater, everyone with an inkling of talent vanishes. It’s no coincidence. Our instincts were right. They fear Hextech. But we were too slow. How could I not secure the scientists? They have my daughter, Rictus.
Rictus: Our moment will come. But you must be prepared.
- the Order: 教団。結社。アンベッサに固有名詞を禁じられたので黒薔薇のことを抽象化して呼んでいる。
- backwater: 僻地。(アンベッサから見た)ピルトーヴァーのこと。
以下、会話の流れ。
- アンベッサ: ここは才気あふれる発明家がひしめく都市のはずでしょ。どうしてこんな救いようのない無能しか出てこないの? これはやつらの仕業よ。
- リクタス: まだ断定できるわけではありません。黒……(薔薇の仕業であるとは)。
- アンベッサ: その名を口にするな。
- リクタス: ジェイスとハイマーディンガーの失踪にも「あの結社」が関わっているとは断定できません→ も[also]となっているのは、アマラの襲撃に関しては黒薔薇の仕業であることが確定しているから。
- アンベッサ: じゃあ誰が(裏にいるっていうの)? この僻地を掌握した途端に、有能な者は皆いなくなった。これが偶然であるはずがない→ジェイスとハイマーディンガーの失踪に黒薔薇は関わっていないのでこれは勘違い。アンベッサはメルを「追放」したときと同様に疑心暗鬼に陥っている。
- アンベッサ: 我々の直感は正しかった。やつらはヘクステックを恐れている→これは正しい。
- アンベッサ: だが(私たちの行動は)遅すぎた。どうして科学者たちの安全を確保しておかなかったのか……→自分の判断ミスへの悔恨。
- アンベッサ: 私の娘もやつらの手の内にあるのよ、リクタス。
- リクタス: いずれ(反撃の)時期が来ます。そのための準備はしておかなれば→具体的な反撃の準備をしておく&メルがキノのように利用されるorすでに死亡していることも視野に入れて覚悟を決めておく。
[10:13]
Rictus: You have Jinx to thank for this. She is not your friend. She is not your champion. She hides while you suffer. And yet you refuse to hand her over.
- champion: (ゾウンの)英雄のニュアンス。
リクタスが検問所でこんな大立ち回りをしているのは、膠着した状況を動かすためのアンベッサの指示。そして実際に、イーシャの乱入によって状況が動いた。
[11:15]
Caitlyn: You’re right. It’s hers. I’d recognize it anywhere.
Maddie: That’s where the similarities end. No body count. No theatrics.
Caitlyn: You think it’s a copycat?
Maddie: I think we’ve made them desperate for something to believe in. This doesn’t have to change what we talked about this morning. You can still —
Ambessa: Officer Nolen. Quite the familiar face these days.
Maddie: General.
Ambessa: I’d like a word with Commander Kiramman. In private.
Ambessa: I suppose I don’t need to advise you on the hazards of professional entanglements.
Caitlyn: Nor is that the advice you rushed here to provide.
Ambessa: It’s beyond question that the news of Jinx’s return will ignite Zaunite resistance. But the blade cuts both ways. There’s a trail. We have her scent. I’d expected this development would encourage you.
Caitlyn: Was it for my encouragement that your man Rictus was instigating violence?
Ambessa: You don’t trust me.
Caitlyn: “The blade cuts both ways.”
Ambessa: Fearless child. You never shy.
Caitlyn: You have a recommendation?
Ambessa: If it wasn’t Jinx at the checkpoint, one of them knows where she is.
Caitlyn: Arrests require cause.
Ambessa: What greater cause is there than returning peace to this city?
Caitlyn: Why is peace always the justification for violence?
Ambessa: We’ve lost so many. The anger, the sorrow… It’s tiring. Gods, I know it’s tiring. But you will never rest knowing that she’s out there. Or maybe I underestimated you. Maybe you have the strength I do not. To forgive and trust in tomorrow. The decision is yours, commander.
- entanglement: 人間関係(痴情)のもつれ。
- cuts both ways: 日本語の「諸刃の剣」とほぼ同じだが、自分にもリスクがあるというニュアンスが強め。
以下、会話の流れ。
- 検問所で使用されたグレネードについてケイトリンとマディーが検証している。
- ケイトリン: たしかに。これはどう見ても彼女(ジンクス)のもの。
- マディー: でも似てるのはそこまで。死人は出てないし、芝居がかった仕掛けもない→S1E4ジェムストーン強奪事件やS2E3ジンクス追跡時の演出のように凝っておらず、イーシャのそれはただのパフォーマンスでしかなかった。
- ケイトリン: 模倣犯だと思う?
- マディー: 彼ら(ゾウンの人々)は信じられる何かを必死で求めてるんだと思う(私たちの高圧的な態度がその状況を作った)。それでも今朝の話(
[03:28] Maddie: You could call it off. Withdraw from the underground.)は変わらない。いつでも……(ゾウンから撤退していい)。 - アンベッサ入室。
- アンベッサ: ノーレン執行官。最近よく見かけるな。
- マディー: 将軍→階級名だけで返答するのは敬礼or了解のニュアンス。立場の差があるので敬意を示しつつ余計なことは言わず短く返答している。ドラマだと緊張感の演出として使われることが多い。
- アンベッサ: キラマン指令と二人で話したい→席を外せ。
- 立場の差はあってもアンベッサは外部協力者でしかないのでマディーは上官であるケイトリンに(この「命令」に従うべきか)確認してから退室する。
- アンベッサ: 公私混同(職場恋愛)の危険性について(までアドバイザーである)私が助言する必要はないと思ったけど?
- ケイトリン: そんな話をするためにここへ駆け込んできたわけでもないでしょう→ “nor” はアンベッサの “don’t” を受けている。 “rush” はジンクスの手がかりが見つかったからあなたは急いで私のところに来た、のニュアンスか。だったらくだらない前置きはやめてさっさとその本題に入ろう、の意。
- アンベッサ: ジンクス帰還のニュースがゾウン住民の反抗心をかき立てるのは疑いようもない。だがその剣は諸刃だ。それは(ゾウン住民にとっては鼓舞だが我々にとってはジンクスへの)足掛かりとなる。
- アンベッサ: これ(足掛かりを得た状態)はあなたをやる気にさせると思っていたけど?→「足掛かりとなる」にケイトリンから何の反応もなかったので。
- ケイトリン: あなたの部下であるリクタスが暴力を扇動していたのも私をやる気にさせるため?
- アンベッサ: 私を信用していないな。
- ケイトリン: 「その剣は諸刃」→いろいろ策を弄するのは構わないが、それで相手(ケイトリン)の信用を失うリスクも覚悟しろ、の意。「私を信用していないな」という非難に対して、「そうなるのは当然でしょう」と返している。
- アンベッサ: 恐れを知らぬ子ね。怯むことがない→一国の将軍であるアンベッサに対しても毅然と反駁する。
- ケイトリン: あなたの助言は?→信用していないが(こういった状況への対処能力は)信頼しているので助言を求める。
- アンベッサ: 検問所にいたのがジンクス本人でないとしても、居場所を知っている者がいる→グレネードはジンクスの技術なので何らかのつながりはあるはず。
- ケイトリン: 逮捕には大義名分がいる。
- アンベッサ: この都市に平和を取り戻す以上の大義名分がどこにある?
- ケイトリン: なぜいつも「平和」が暴力を正当化するの?
- アンベッサが感傷的になる。ケイトリンにストレートな疑問をぶつけられて、メルのことを思い出している→
[S1E9:08:03] Ambessa: Because you weakened me! I couldn't endure the look in your eyes whenever I made the decisions, the necessary decisions to keep us safe! - アンベッサ: 私たちは多くを失ったわ。怒りも、悲しみも……疲れる。本当にもう、うんざりする。だけどあれがまだそこらにいるとわかってて、心が休まるわけもない→ “she’s out there” の “she” はケイトリンに対してはジンクスの意で伝わっているが、アンベッサ本人は黒薔薇(ルブラン)のことを考えながら話している。
- アンベッサ: それとも、私はあなたを過小評価しているのか。あなたは私にない強さがあるのかもしれない。未来を信じ、赦しを選ぶ強さが→「ジンクス確保のために手段を選ぶな」「平和のためには暴力も正当化される」と言っている自分の方が弱く、物事を見誤っていて、あなたの方が強く、物事を正しく捉えているのかもしれない、という意味での “or” 接続詞。
- アンベッサ: 決断はあなた次第よ、司令官。
アンベッサは最初 “manipulative” な感じだが、感傷的になってから(=メルのことを思い出してから)は本心で話している感じがする。
[13:50]
Salo: I hosted the most lavish galas in the city. It was a measure of status to be on my guest list. Toast of the town. Now people avert their gaze when I roll by.
Lest: My gaze isn’t averted.
Salo: Oh, spare me. I wouldn’t have hired you if you weren’t versed in the art of indulging your clients’ egos.
Lest: Plus you’re one of the few councilors left from the old batch, right? Never learned anything about the younger Medarda, did they?
Salo: Even when she’s not here, she’s all anyone talks about. I get it. She’s the last heir of the great Medardas. But the writing’s on the wall. When you’re missing this long, you’re not coming back.
- lavish: 豪華な。贅沢な。
- gala: 舞踏会。パーティー。
- toast: 乾杯。(みんながグラスを掲げる対象となるような)主役。花形。
- roll by: (車が)通り過ぎる。ここではサロの車椅子のこと。
- writing’s on the wall: 壁に書かれた予言。災いの前兆。聖書のエピソードから。なんでArcane世界に聖書由来の慣用表現があるんだと思ったけど日本でもファンタジーで仏教由来の表現使いまくってる(作者も読者も気づいてない)からそんなもんか。ちなみにRWBYはこのあたりけっこう気を使っていて、 “God knows” が “Brothers know” になっていたりする(Brothersは二柱の創造神)。
以下、会話の流れ。
- サロ: 私はこの街で最も豪奢なパーティーを主催していた。私の招待客名簿に載ることがステータスの証だった。街中の注目を集める存在。それがいまや、私が(車椅子で)通りかかると皆、視線をそらす→街中の視線を集めていたのに逆になっている、というエスプリのきいた自虐。
- レスト: 私の視線はそれていないわ。
- サロ: (わかりやすい同情は)よしてくれ。君が顧客の自尊心を満たすことに長けてなければ雇ってないよ→だからやるならもっとうまくやってくれ。
- レスト: あなたは生き残った数少ない議員の一人でしょう→だからそんな自虐的になるな。
- レスト: (同じく生き残った議員の一人である)メダルダ家の娘(アンベッサと区別したいがメルと個人的つながりがあると思われたくないので個人名を避けて “the younger Medarda” と呼んでいる)については何も?→メルの消息についてそれとなく聞いている。
- サロ: たとえ失踪中でも話題は彼女のことばかりだ。わかるさ。偉大なメダルダ家の、最後に残った後継者だからな→キノの死はすでに公になっているっぽい。
- サロ: でももう結末は見えている。こんなに長いこと行方不明の人間が帰ってくるわけがない。
[15:14]
Sevika: You could have warned me.
Jinx: Fat chance. About what?
Sevika: Your stunt at the checkpoint.
Jinx: No idea what you’re babbling about.
Sevika: That wasn’t you?
Sevika: Well, however it happened, the whole undercity’s buzzing, saying you’re back. So I’m thinking —
Jinx: Not your strong suit.
Sevika: Would make a world of difference if you showed up. You’re a symbol.
Jinx: Ha. You want a symbol?
Sevika: Silco spent his whole life trying to rally the undercity together. Stupid joke that it is, you have the chance to pull it off.
Jinx: I told you, I’m not interested.
Sevika: Do you know how much he sacrificed to protect you? He believed in your potential.
Jinx: Well, then he shouldn’t have died!
Sevika: We’re having a rally tonight. Vander’s statue. Firelights, your fans… Anyone I can bring to the table. Stick your head in the dirt if you want, but this fantasy you’ve been living out here, it’s not gonna last forever.
Jinx: Don’t trip on the way out.
Sevika: I don’t know how you do it, kid.
Jinx: I gotta go bother someone.
Jinx: Still giving me the silent treatment, huh? Between you and Isha, I’m losing my snappy comebacks. Me, a hero. How screwed up is this place? I know Sevika’s right, and I probably owe it to you, on account of the murdering and all. But I got something going now. A friend. And I don’t want to mess it up. Maybe that’s what I was like for you. If you care so much about me playing your stupid revolution game, speak up now, or I guess… I guess you… You’re really gone. And there’s no reason to stay here anymore.
- snappy comebacks: 咄嗟のうまい切り返し。気の利いた返し。
以下、会話の流れ。
- セヴィカ: 一言くらいあってもいいだろ。
- ジンクス: ないね。何の話?→何についての話かは知らないが私が事前に警告するなんてないね、と答えてから何の話なのかを聞いている
- セヴィカ: 検問所での騒ぎだよ。
- ジンクス: 何をくっちゃべってるのかぜんぜんわからん。
- セヴィカ: あれはお前じゃないのか?
- セヴィカとジンクスがイーシャの方を見る。
- セヴィカ: まあ誰がやったにせよ、下層全体がざわついてる。「お前が帰ってきた」って。それで考えてたんだけど……。
- ジンクス: (考えるのは)あんたの得意分野じゃないでしょ。
- セヴィカ: お前が姿を見せれば状況は一変する。(下層の)象徴として。
- ジンクス: ハッ、象徴が欲しいって?
- ジンクスは中指を立てて(=冒涜の象徴)回答しようとするがジャンナ寺院の戦いで失っている。
- セヴィカ: シルコは生涯をかけて下層をまとめようとした。バカげた話だけど、お前ならやれるかもしれない。
- ジンクス: 言ったでしょ。興味ないって。
- セヴィカ: お前を守るためにシルコがどれだけ犠牲を払ったかわかってるのか? シルコはお前の可能性を信じてたんだよ→ここでジンクスの幻聴が復活しそうになっている。
- ジンクス: ならなぜ死んだ!
- セヴィカ: 今夜、ヴァンダーの銅像の前で集会を開く。ファイヤーライト、お前の信奉者……呼べるやつは全員呼ぶ。現実から目を背けたければ好きにすればいい。でもこの幻想の生活は、いつまでも続かないよ。
- ジンクス: 出口で転ばないようにね→さっさと帰れ。セヴィカの真剣な話をまともに取り合う気がないという意図が込もった表現。
- セヴィカ: こんなのとよく一緒にいられるね→初見視聴時はジンクスに対するセリフだと思っていたが、よく見るとイーシャに向かって言っている(半ば独り言だが)。 “do” は「うまく付き合う[handle]」 のニュアンスか。 “I don’t know how you handle it.” と置き換えればわかりやすい。
- セヴィカが出ていく。
- ジンクス: ちょっと人に会ってくる。
- ジンクスは誰も座っていないシルコの椅子に向かって話しかける。
- ジンクス: まだ無視を続けるの?
- ジンクス: あんたとイーシャのせいで、気の利いた返しができなくなってきたよ→S1E6でバーテンに対してやっていたようなやつ→
[S1E6:09:22] Jinx: Oh really? Which number?→こういうのでのらりくらりとしたいがマジレスしてしまう(さっきのセヴィカに対してのように)。 - ジンクス: 私が、英雄だってさ。この街、イカれすぎでしょ。
- ジンクス: セヴィカの言ってることは正しいってわかってる。私はあんたに借りがあるんだろう。殺しちゃったこととか、他にもいろいろ。
- ジンクス: でもいま、いい感じなんだ。友達がさ(=イーシャとの暮らし)。台無しにしたくない→いままで何度も自分で台無しにしてきたので、今回はそうしたくない。
- ジンクス: あんたにとっての私がこんな感じだったのかな→シルコがジンクスの存在によってヴァンダーの考えを理解したように、ジンクスはイーシャの存在によってシルコの考えがわかるようになった。
- ジンクス: あんたのくだらない革命ごっこに私を付き合わせたいってんなら、いまこの場ではっきり言いなよ。
- ジンクス: 言わないってんなら、あんたはもう……本当にいないってことなんだ→文頭の “or” はジンクスが心を整理するための接続詞。これだけ話しかけても何も返ってこないってことは。でもまだ認めたくないから “I guess ~” 推量。
- ジンクス: だったら私がここに留まる理由も、もうないってことじゃないか。
[22:37] Jinx: I’m back. Time to find out who’s the new pebbleweight…
- pebble: 小石。
小石級(フェザー級[featherweight]のような階級)の戦い。昆虫バトルの新しいチャンピオンを決める時間。
[22:59]
Sevika: They got her.
Jinx: What?
Sevika: She came to the rally. Topside raided the place. Took everyone.
ここでジンクスの幻聴が本格的に再発する。
Jinx: You know what you are.→「自分がどういう存在かわかってるだろ(今回も自分のせいで不吉なことが起こったんだ)」という自分自身の声。[S1E9:31:38] Vi: Damn it, Powder!→「お茶会」でジンクスがケイトリンを撃とうとしたときのヴァイのセリフ。Jinx: Shut up. Shut up. Shut up. Shut up.[S1E6:35:06] Jinx: Stop calling me that.→発煙筒を使ってヴァイと再会したあとでヴァイにミニガンを向けたときのジンクスのセリフ。[S1E9:29:21] Silco: Her name is Jinx!→「お茶会」で猿轡を外された直後のシルコのセリフ。[S1E9:30:58] Vi: She's my sister.→「お茶会」でケイトリンがジンクスを撃とうとしたときのヴァイのセリフ。JinxJinx: You have to be someone else.JinxJinxJinx
[28:42] Jinx: Here I am, your big fat hero.
おどけた登場をしたがシリアスな反応に戸惑うジンクス。ふざけたジャブの打ち合いではない真摯なやり取り、他人に承認されること、そういう経験に慣れていない。
[31:12] Jinx: You’re late for Stink Maw’s great comeuppance.
スティンク・ モーはジンクス陣営。チャンピオンだったが負けた方の昆虫。
[34:54] Jinx: You got me, hairball. But just remember… you’re no Stink Maw. Smile!
- you got me: お前は私を倒した。やられたよ。
- hairball: 毛の塊。毛むくじゃら。
- you’re no Stink Maw: お前なんかスティンク・ モーには遠く及ばない。 “not” だと「お前はスティンク・ モーじゃない(別の個体だ)」だが、 “no” だともっと根本的な否定になる。
- smile: 写真を撮るときのフレーズ。はい、チーズ。本来なら “Three, two, one” とカウントダウンするところをすっ飛ばして(フラッシュの代わりに)グレネードを炸裂させようとした。エコーのときと同じことをしようとしたが今度は止められた。
S2E4: その他
- 本エピソードから評議会が表に出てこなくなるのは、戒厳令によって行政機能を停止しているから。現在はケイトリンに全権限が集中している状態。
- ジンクスのデバイスを軽々と扱っているところを見ると、イーシャもギフテッドっぽいなと思う。喋れないから誰にも理解されてなかったけど、初めて自分の言いたいことが通じる人間(ジンクス)に出会って救われた、とかだったらエモいな。
- ジンクスが隠れ家でセヴィカと話しているときに作っているのは自分の中指の義肢。机の上にある馬の玩具
[15:30]を流用している。これはジェイスの研究室[S1E1:08:57]にあったもの。 - ファイヤーライトの壁画
[18:47]にはエコーが追加されている→別世界に飛ばされて帰ってこないので死んだと思われている。 - ワーウィックがヴァンダーの記憶を思い出すシーンでかかっているのはS1E1冒頭でパウダーが歌っていた曲。
以下、ワーウィック登場までの流れ。
- シンジドは双頭の狼モンスターを罠にかけ、モンスターが逃げ込んだ洞窟に毒を投げ込む。
- シンジドは捕えたモンスターを解剖し、実験を行う。その隣ではふたつ連なった心臓がケミテックによって動いている。
- シンジドは自らの血液をワーウィック(ヴァンダー+狼モンスター)に流し込む。
S2E5: Blisters and Bedrock
S2E5: 登場人物
- ルブラン[LeBlanc]: 黒薔薇の実質的な首領。幻影魔法や分身魔法を使う。二つ名は “The Deceiver” 欺く者。
- オリアナ[Orianna]: シンジドの娘。幼少期に死亡している(理由は不明)。
S2E5: あらすじ
- 黒薔薇に囚われたメルは牢獄の中でキノと出会い、アンベッサが非嫡出子をもうけていたこと、監禁者はその子供が受け継いだものに強い興味を示していることを聞く。メルはこのキノが偽物であることを見破る。メルは鎖の魔法で拘束されるが、魔法の力が覚醒し、拘束を破壊する。
- 監獄を襲撃した獣がシンジドの元へ向かっていたことに気づいたケイトリンは、アンベッサと共にシンジドを尋問する。シンジドは要領を得ない回答を続け、過酷な独房へ収監されそうになるが、再度やってきたアンベッサの「兵器(この時点ではワーウィック)を私のものにしたい。代わりに必要なものはすべて与える」という取引を受け入れる。
- 研究所でのシンジドの作業をアンベッサが監督しているところにケイトリンがやってくる。ケイトリンはシンジドがシマーの開発者であることを告発し、なぜこんなことをするのかと問う。シンジドは「すべては娘を治療する(=蘇らせる)ため」と回答する。この「死という病を克服する研究」の最後の鍵は、ワーウィックが握っている。
- ジャンナ寺院での戦いのあと、ヴァイは地下闘技場で金を稼ぎながら自暴自棄な生活を送っていた。何をしていてもケイトリンの影がちらつき、素行が悪すぎて飲み仲間だったロリスにも見放され、堕落していく。ジンクスはその姿を遠くから見守る。酒に溺れて試合にも負けるようになり、潰れていたヴァイのところにジンクスが訪問する。一触即発の空気になるが、ジンクスの「ヴァンダーが私たちの助けを求めてる」という言葉を信じるか否か、ヴァイはいったん保留する。
- ジンクスとイーシャ、ヴァイの三人は、ヴァンダーが逃げ込んだ坑道へ向かう。途中、ヴァイは「(ジンクスの意図に反して発生した)ポリティカルアート」を描いた宗教画のような壁画の中にジンクスの姿を見つけて戸惑う。三人は坑道の奥へと進み、ワーウィックと遭遇して戦闘になる。ヴァイは最終的にジンクスの言葉を信じ、拳を下げてヴァンダーの名を呼ぶ。ワーウィックはヴァンダーの心を取り戻し、家族三人は抱き合って再会を喜ぶ。ジンクスの新しい家族であるイーシャもそこに加わる。
- (減衰していくヴィクターの力を充填するため)サロはヘクスゲートのフェイルセーフから、異常[anomaly](=ワイルドルーン)汚染されたシリンダーを持ち去ろうとする。そこへジェイスが(崩壊した未来から)帰還する。ヴィクターはサロの体を通してジェイスとの再会を喜ぶ。ヴィクターは独自に研究を進め、ハイブマインド(集合精神)を扱えるようになっていた。その先に「栄光の進化」があると信じるヴィクターと、その結果が空虚でしかないと知るジェイスは対立する。ジェイスはシリンダーを持ち帰ろうとするサロを殺し、ヴィクターの元へ向かう。
S2E5: 脚本
[06:14]
Caitlyn: The beast came for you. It was summoned by you.
Ambessa: In my experience, only guilty men answer accusations with silence.
Singed: In my experience, no one in power is innocent.
Caitlyn: There are cells buried deep within this prison so devoid of light and fresh air and all basic human considerations that up till now, I have forbidden their use. If you do not want to waste away the remainder of your days in one of these, you have one recourse.
Ambessa: Tell us everything we need to know to hunt down this beast.
Singed: Your youth betrays you. Patience is a product of age. Both of which I possess in abundance.
Caitlyn: This is your final chance. Tell me what you were planning. How was Jinx involved?
Caitlyn: You will rot in here.
- betray: ここでは「裏切る」ではなく「表す」「漏れ出る」のニュアンス。
以下、会話の流れ。
- ケイトリン: あの獣はお前のところに向かった。お前が呼び寄せたのか。
- アンベッサ: 私の経験上、告発に沈黙で答えるのは罪人だけだ。
- シンジド: 私の経験上、権力を持つ者は皆、罪人だ→アンベッサの脅迫的なセリフをからかう感じの返答→ケイトリンがイラつく。
- ケイトリン: この監獄の地下深くには、光も空気もない、人として最低限の配慮もされない独房がある。私はこれまでその使用を禁じてきた。お前がそこで余生を過ごしたくないなら、道はひとつだ。
- アンベッサ: 我々があの獣を確保するために必要なことをすべて話せ→シンジドはこのセリフでアンベッサがワーウィックの力を欲していることを理解する→取引ができると判断→取引を有利にするためにからかう態度を崩さない。
- シンジド: 若さは隠せない(=焦っているのがモロバレだ)。老いれば忍耐を知る。ちなみに私はその両方に長じているがね→若いエネルギーとそれを隠す老獪さの両方を兼ね備えている、のようなニュアンス? これも煙に巻いてる感じの返答っぽい。
- ケイトリン: これが最後のチャンスだ。何を計画していた? ジンクスはどう関わっている?
- シンジドは鼻で笑って答える。
- ケイトリン: ここで朽ちなさい。
[09:06]
Kino: Hope you find these quarters to your liking. They still haven’t replied to my requests for a transfer.
Mel: Who’s there?
Kino: Not sure I know anymore. Our hosts have a way of scrambling your omelet.
Mel: They killed my friend. Elora was there. And then…
Kino: Ah. The stewards of the old world are always keen to give you a glimpse of their might.
Mel: What is this place?
Kino: Near as I can tell, an Oculorum. According to legend, the ancients built specialized chambers to seal away false prophets. But if you ask me, they’re just the fancy pits peacock princes like to toss their friends into.
Mel: Peacock princes?
Kino: Sorry, just an old family joke. You know, the kind of rulers with an artistic flair.
Mel: Step into the light.
Mel: Kino? It’s me, brother. Mel.
Kino: Mel. You’ve grown up. I’d hoped they’d never come for you.
- キノ: この部屋(住処)、気に入ってもらえるといいんだけど。俺の転居願いに返答はないんだよね→ “they” は自分を閉じ込めたやつらの意。ここから出たいが出られない、のニュアンス。
- メル: 誰かいるの?
- キノ: もう自分が誰かもわからないね。ここの主は人の頭をかき混ぜる方法を知ってるんだ→ “omelet” は頭(脳)の比喩。
- メル: やつらは私の友達を殺した。エローラが(私の目の前に)いて、そして……。
- キノ: ああ、旧い世界の管理者たち(黒薔薇→ノクサスの歴史を陰から操ってきた)は力をちらつかせるのが好きだからな→メルの目の前でエローラを殺したことへの説明。
- メル: ここは何?
- キノ: おそらく、オクロラム。伝説では、偽預言者を隔離するために古代人が作った特別な部屋。でも俺に言わせれば、孔雀(=派手好き)王子が友達を放り込む穴だね→秩序のための牢獄ではなく、権力者が自分の気に入らない人間を偽預言者扱いして投獄するための場所、みたいな意味か。
- メル: 孔雀王子って?→ “old family joke” なのでメルも知っている。いま話している男が家族である可能性に思い至る。
- キノ: すまない、身内で使ってた冗談だ。まあ、芸術家気質の君主みたいな意味かな→孔雀王子の説明。
- メル: こっち(光の下)に出てきて。
- キノが顔を見せる。
- メル: キノ。兄さん、私よ。メル。
- キノ: メルか。ずいぶん成長したな。お前まで巻き込まれないことを願っていたのに→黒薔薇がメルのところに行かないことを願っていた(が来てしまったのか)。
[11:47] Jinx: This is where I lost him.
ワーウィックは監獄でジンクスを殺そうとするがヴァンダーの記憶を思い出す→しかし獣性が残っているので錯乱して逃亡(?)→ワーウィック=ヴァンダーであることに気づいたジンクスが追跡する→ここで見失った。
[12:30]
Vi: Why would Vander be all the way down here?
Jinx: Beats me. Ask him yourself.
Vi: When will you admit that this is just one of your fantasies? Or do you not want the kid to know how delusional you are?
Jinx: She wasn’t always like this. She actually used to be pretty cool, before I kicked her butt.
Vi: See what I mean? Delusional.
Jinx: Wish I was just seeing things when you decided to throw in with the Piltie goons who murdered Mom and Dad.
Vi: At least they never had to see the psycho their daughter turned into.
Jinx: Which one? Wake up, sis. I’m a hero. I busted half of Zaun out of Stillwater while you were passed out in the bottom of a mug. Now can it and keep walking, before I kick your ass again.
Vi: You wouldn’t last one second without all your ugly gadgets and chickenshit tricks.
Jinx: Ha! What about those overdesigned bitch-mittens you didn’t even build yourself?
Vi: You think I need these to-
Jinx: There. One second.
Vi: Last chance to surrender.
Jinx: Go right ahead, fat hands.
Jinx: Hey, kid. Still got all your insides?
Jinx: But don’t ditch us.
Vi: Why’d you come get me? You don’t actually need my help. You haven’t for a long time.
Jinx: You haven’t for a long time. Last time Vander needed us, we tried it alone, and nothing was ever the same. So… maybe this is like a do-over. Besides, he’s your father too.
- delusional: 妄想。激しい思い込み。日本語の「妄想」よりネガティブ、かつ病的なニュアンス。
- just seeing things: 気のせい。見間違い。
- throw in with ~: ~と手を組む。
- can it: (無駄話をやめて)黙れ。
- chickenshit: 臆病な。しょうもない。
以下、会話の流れ。
- ヴァイ: なんでヴァンダーがこんな(坑道の)奥深くにいるわけ?→いるわけないでしょ。
- ジンクス: さあね。自分で聞けば?
- ヴァイ: これ(ヴァンダーが生きていてこの坑道の中にいること)がいつもの妄想だっていつになったら認めるの? その子(イーシャ)に自分が妄想狂だって知られたくないだけ?
- ジンクス(イーシャに): (ヴァイは)昔はこんなじゃなくて、けっこうイケてたんだよ。私がぶちのめすまではね。
- ヴァイ: (私が言ってる)意味わかってる? 妄想(だって言ってんだよ)→ジャンナ寺院で敗北したのはジンクスの方なので現実を歪めて話している→妄想。
- ジンクス: あんたがママとパパを殺したピルト野郎共の仲間になってたのは見間違い(私の妄想)であって欲しかったね。
- ヴァイ: (ママとパパは)自分の娘が狂人に変わり果てたのを見ずにすんだだけマシだね。
- ジンクス: (娘って)どっちのこと? いいかげん気づきなよ。私は英雄なの。監獄からゾウン人の半分(→誇張表現)を脱獄させたんだから。あんたが酒に呑まれて潰れてる間にね。ほら、黙って歩け。またぶちのめされたくなかったらね。
- ヴァイ: ダサいガジェットやしょうもないトリックがなきゃ1秒も持たないくせに。
- ジンクス: ハッ! そのデカいだけの鍋掴み、自分で作ったわけでもないくせに→ “bitch-” は日本語には対応する概念がない(?)ので訳せない。ありそうな気もするが思いつかなかった。英語のニュアンスそのまま受け取ろう。
- ヴァイ: これがないと私が……(戦えないとでも思ってる)?
- ジンクスがヴァイの頬を叩く。
- ジンクス: ほら、1秒(持ったじゃん)。
- 二人が取っ組み合う。
- ヴァイ: 降参するならいまのうちだよ→完全に普通の姉妹喧嘩のセリフ。
- ジンクス: あんたの方がね(降参するならいまのうち)→同上。ジャンナ寺院での本気の殺し合いとはまったく別物。
- イーシャが参戦してヴァイがイーシャを弾き飛ばしてしまう。
- ジンクスはイーシャを助け起こす。
- ジンクス: ねえ、中身(内臓とか)は全部ある?
- ちゃんと「姉」をやっているジンクスを見て複雑な心境になるヴァイ。
- イーシャは先へ進んでいく。
- ジンクス: はぐれないでよ。
- ヴァイ: なんで私を呼んだ? 本当は私の助けなんていらなかっただろ。もうずっと前から→今回の件にヴァイの助けは必要ない&離れ離れになってからずっとヴァイの助けを必要としていなかった。
- ジンクス: 前にヴァンダーが私たちを必要としたとき(=S1E3のシマー工場)、私たちはバラバラに動いて、何もかも壊れてしまった。だから、これはそのやり直しみたいなもの。それに、(ヴァンダーは)あんたの父親でもあるでしょ。
[15:37]
Singed: I’ve been expecting you.
Ambessa: Confident, aren’t you?
Singed: It’s always the same look when one covets a weapon.
Ambessa: I’ve fought battles from the Bloodcliffs to the Dalamor Plain. I’ve never seen a beast of such savagery.
Singed: No beast is more savage than man. I trust you have terms.
Ambessa: You will serve me. My enemies will be yours. Your weapons will be mine. In return, I will supply all your needs. You will be treated as an esteemed adviser. But I demand absolute loyalty. Do not test this, or you will yearn for Caitlyn’s dungeons. You already know what I want.
Singed: He isn’t a monster. He was once a man. Well respected, at that. Victim of great tragedy. He had a ferocious will to live. An incredible tolerance for pain. With him, I was able to make strides impossible with any other specimen. But the mind… The mind I could not recover. The man forever lost in the bowels of the beast, compelled only by the scent of blood. Or so I thought. It now seems I had yet to uncover the right catalyst.
- Bloodcliffs: ノクサスの地名。
- Dalamor Plain: 同上。
- bowels: 内部。奥。
- ~ or so I thought: ~と思っていた(が実際は違うかもしれない)。
- catalyst: (何かの反応を起こす)触媒。きっかけ(となる存在)。
以下、会話の流れ。
- シンジド: 来るのはわかっていたよ。
- アンベッサ: ずいぶん自信たっぷりね?
- シンジド: 兵器を欲しがる人間は皆、同じ目をするのでね→シルコとか。
- アンベッサ: 私はブラッドクリフからダラモール平原まで(=ノクサスの各地で)戦ってきたが、あれほど獰猛な獣は見たことがない。
- シンジド: 人間ほど獰猛な獣はいない。(そんなことより取引の)条件を聞こうか。
- アンベッサ: お前は私に仕える。私の敵はお前の敵。お前の兵器は私のもの。その代わり、必要なものはすべて与える。権威ある参謀として待遇する→シンジドが自分の目的を果たすにはこの待遇を得る必要があったので尋問で態度を崩さなかった。
- アンベッサ: ただし、絶対の忠誠を誓え。私を試そうなどと思えば(=つけ入る隙を探したりするなら)、お前は(ケイトリンが使用を禁じていた)地下牢を恋しく思うことになる(=地下牢にいた方がマシだったと思うような扱いを受けることになる)。私が何を求めているかはもうわかっているな?→あの怪物を確保したい。
- シンジド: 彼は怪物ではない。かつては人間だった。しかもまわりから尊敬されるような。惨劇の被害者なのだ→ヴァンダーはレーンの顔役だった(銅像が立つくらい)。
- シンジド: 生への執着も、痛みに耐える力も、類を見ないものだった。彼のおかげで、他のどんな被験体でも成しえなかった大きな成果を手にできた→ “strides” のあたりでオリアナが映る→オリアナを蘇らせるための研究に大きな進捗[strides]があったと言っている。
- シンジド: しかし心は……元に戻せなかった。彼の心は怪物の奥底に埋もれ、血の匂いにのみ反応する存在になってしまった(→ワーウィックの元々の設定)。そう、思っていたのだが、(ジンクスに対する反応を見るに)私が(彼が心を取り戻すための)正しいきっかけを見つけられていなかっただけのようだ→ここでジンクス=パウダーが映るがヴァイの顔はぼやけている→ヴァイのことをまだ思い出していないから「正しいきっかけ」が発動しない→ジンクスとパウダーが協力してワーウィックの元へ行く→
[15:00] Jinx: Last time Vander needed us, we tried it alone, and nothing was ever the same. So… maybe this is like a do-over.→ジンクスの「ヴァイと二人で協力する」という判断のおかげでヴァンダーは人の心を取り戻す。補足: シンジドはジンクスが来るかもしれない集会に参加していたので「正しいきっかけ」についての見当はついていた。
[18:04]
Mel: There was a funeral for you in Noxus.
Kino: Oh. Did Mother commission a statue?
Mel: I held rites in Piltover. She believes you’re dead.
Kino: I do like to disappoint her.
Kino: How did you know to do that?
Mel: I don’t know. I just felt… It’s like some sort of puzzle. Kino, what happened to you? How did you wind up here?
Kino: She didn’t tell you. After a few rounds with some dubious noblefolk in Basilich, I started hearing strange rumors about Mother. Different than the usual kind. They said, many years ago, she passed through their hometown and… fell in love.
Mel: That’s not our mother.
Kino: Indeed. But the more I inquired, the more I started believing it. The old travel logs. The local accounts. I should have left it alone, but… The affair led to a child.
Mel: That’s impossible.
Kino: It is the reason we are here. Simply put, whatever that child inherited is of terrible interest to our captors.
- rite: 儀礼。慣例的な儀式。
- a few rounds: ここでは「数回の社交」のニュアンス。いかがわしい貴族連中[dubious noblefolk]相手なのでたぶん酒の席。
- Basilich: ノクサスの地名。
以下、会話の流れ。
- メル: ノクサスでは兄さんの葬儀があったのよ。
- キノ: ほう、母さんは(俺の)銅像を建ててくれた?→軽口。
- メル: 私もピルトーヴァーで(葬儀というほどではないが)追悼をしたわ。母さんはあなたが死んだと思ってる。
- キノ: 母さんをがっかりさせるのは好きだよ→軽口。母を失望させるのは俺の役目だからな、くらいのニュアンス。ハト派のキノはアンベッサを失望させてきた。
- メルが壁のパズルに気づく。
- キノ: なぜ(壁のパズルのやり方が)わかったんだ?
- メル: わからない。ただ感じた(ままにやっただけ)。これはある種のパズルのようね。
- メル: (話題を戻して)キノ、何があったの? なぜこんなところに(閉じ込められるはめになったの)?
- キノ: 母さんから聞いていないのか(隠してたんだな)。バジリックでいかがわしい貴族連中と何度か酒を酌み交わしていたら、母さんについての妙な噂を耳にし始めた。それがいつもの(武勇伝や畏怖のエピソード)とは違っていてね。こういう話だ。昔、母さんがこの街に(旅or遠征の途中で)一時滞在したとき、恋に落ちたと。
- メル: そんなの私たちの母さんじゃないわ→そんなタイプの人じゃないでしょ。
- キノ: だよな。でも調べれば調べるほど、信じざるをえなくなった。古い旅行記。現地の噂話。本当は調査をやめるべきだったけど……(そのまま調査を続けてたどりついた真相は)、その情事で一人の子供が生まれた。
- メル: ありえない。
- キノ: それが俺たちがここに閉じ込められてる理由だ(ありえないかどうか確かめるため)。簡単に言うと、俺たちを監禁してるやつは、その子供が受け継いだ何かに多大な関心を寄せている。
[20:10]
Ambessa: This will allow you to locate your beast?
Singed: Not precisely.
Caitlyn: My family archives have shed light on many of this city’s mysteries.
Ambessa: Commander.
Caitlyn: General.
Caitlyn: One such mystery caught my attention. The curious dismissal of a revered academy alchemist. Unparalleled, by all accounts. And no mention of his crime. This led to one other missing puzzle piece whose absence has always gnawed at my mind. Who invented Shimmer? We have our answer now, don’t we, Dr. Reveck? You’re a monster. Why? Why do all this?
Singed: Why does anyone commit acts others deem unspeakable? For love.
Singed: Perhaps, in another life… you would have been friends. Everything I’ve done is to cure her. I believe the beast may hold the final key.
Ambessa: Precisely what are you trying to cure?
Singed: That affliction we all suffer. Death. Imagine a world that no longer need fear it.
- dismissal: 免職。
- revered: 崇敬の対象となるような。
- by all accounts: 誰から見ても。
以下、会話の流れ。
- アンベッサ: これで獣の位置がわかるのか?
- シンジド: 少し違うかな→いまやっている作業はオリアナの死体保存のための調薬なのでワーウィックを捕えることとは関係ないが、はっきり言うのもはばかられるのでごまかしている。
- ケイトリン入室。
- ケイトリン: キラマン家のアーカイブはこの都市で起こる事件(謎)の真相を明らかにしてきた。
- アンベッサ: 司令官→何をしに来たんだ。私のやっていることに口出ししに来たわけじゃあるまいな、のニュアンス。
- ケイトリン: 将軍→マディーのときとは違って、対等な立場であることを強調するような言い方。(おそらくケイトリンの了解を得ずに)シンジドを釈放したことに対する牽制。前エピソードで生じた不信感(
[S2E4:12:29] Caitlyn: The blade cuts both ways.)がさらに募り、アンベッサはピルトーヴァーを救うために協力しているのではなく、独自の目的によって動いていると(ほぼ)確信する→次エピソードでの決別につながる。 - ケイトリン: (アーカイブの中に)ひとつ、私の興味を引いた謎がある。かつて誰よりも優秀と称された錬金術師がアカデミーから追放された。どのような咎があったのか記述はない。この謎は、ずっと私の頭から離れなかったもうひとつの謎、シマーの開発者は誰かという、欠けたパズルピースを埋める→シマーという高度に完成されたドラッグが厳然として存在するのにその開発者が不在[absence]、という欠けたパズルピース[missing puzzle piece]があったが、(おそらく倫理規定違反で)追放された天才科学者ならシマーの開発くらいやってのけるはず→だから欠けたピースが埋まる。
- ケイトリン: もう答えはわかった。ねえ、レヴェック博士?→シンジドの本名。シンジドは娘を蘇らせるために倫理に反する研究をし、アカデミーを追放された→
[S1E7:06:18] Singed: It's why I parted ways with Heimerdinger. - ケイトリンが銃を構える。
- ケイトリン: あなたは怪物よ。なぜ? なぜこんなことを?
- シンジド: なぜ人は忌むべき行いをするのか? 愛のためだ。
- 三人がオリアナの死体保存室に入る。
- シンジド: あるいは、別の人生があったなら、君たち(オリアナとケイトリン)は友人になっていたかもしれない。
- シンジド: 私がやってきたことはすべて、この子を治療するため→シマーの開発もワーウィックも。ケイトリンの “Why do all this?” への返答。
- シンジド: あの獣が最後の鍵を握っているはずだ。
- アンベッサ: いったいぜんたい、何を治療しようとしている?
- シンジド: 誰もが苦しむ病、死だ→オリアナは延命処置を施されているだけのようにも見えるが、アンベッサの問いに対してシンジドはここではっきりと「死を治療しようとしている」と答えている→オリアナはすでに死んでいる→死体を保存しつつ蘇生の方法をずっと研究している。
- シンジド: 想像してごらんなさい。死を恐れずにすむ世界を。
[23:02]
Kino: Mel?
Mel: I’m getting us out of here.
Kino: Say this is some sort of sordid labyrinth. Usually there are consequences for someone who fails these tests. Deadly consequences.
Mel: I deserve to know the truth.
Kino: Of course. Makes you wonder why she kept this from you, doesn’t it? For all these years?
Mel: I’m missing something.
Kino: A healthy sense of self-preservation, I’d say.
Mel: You aren’t my brother.
Mel: Who are you? What have you done with Kino?
LeBlanc: We had such high hopes for him. At first, it seemed plausible that he could have been the child. But then your mother… led us to you. Sister.
- キノ: メル?
- メル: ここから脱出してみせる。
- メルが壁のパズルを解き始める。
- キノ: ここは悪質な迷宮みたいなものだ。こういった試練への失敗には結果がともなう。致命的な結果が。
- メル: 私は真実を知らなきゃいけない(私は真実を知る資格がある/私は真実を知るに値する)。
- キノ: そうだな。でもなぜ母さんがそれ(真実)を何年も隠していたのか、不思議に思わないか?→メルを肯定しつつも、ずっと真実を隠していたのにはそれなりの理由があるのかもしれないし、真実を暴くのはやめておいた方がいいんじゃないか? というニュアンス。
- メル: 何かを見落としてる(パズルのピースが欠けてる)気がする。
- キノ: 健全な自衛本能ってやつじゃないか?→メルに欠けているのは自衛本能だ→無謀なことはやめておけ、のニュアンス→好奇心旺盛だった(そのせいで黒薔薇の罠にかかったレベルの)キノが「真実を暴くのはやめよう」「パズルを解くな」と言っているのはおかしい、とメルが気づく。
- メル: お前は兄さんじゃない。
- メルがキノの頭を壁に打ち付ける。キノの顔がめまぐるしく変化する。
- メル: お前は誰? キノに何をした?
- ルブラン: 我々は彼(キノ)に大きな期待をかけていた。当初は彼こそが例の子供だろうと考えていた。しかしお前の母は、我々をお前へと導いた→アンベッサがピルトーヴァーに来たことでメルがルドの子であるという可能性が高まった。
- ルブラン: 姉妹よ→血のつながりではなく「シスターフッド」のニュアンス。
壁のパズルに意味はなくて、これが解けたところで「IQの高い人間」だと証明されるだけ。自分の肉親の姿をした偽物を殺害する(相当の確信がなければできない)ことで試練クリアになる、と設定されていた。
[26:44] Vander: To Silco. Silco, I’ve looked everywhere, but… it’s clear you don’t wanna be found. God, I’m shit at this. I’m sorry. When she died, I lost my head. I told myself what I did to you was for the greater good, that you deserved it. But the dirt was on both our hands. Anyway, you know where to find me. Blisters and bedrock. V.
シルコへ。シルコ、あちこち探しまわったが、どうやらお前は(俺に)見つかるのを望んでいないようだ。まったく、こういうの(和解を求めること)はうまくやれない。本当にすまない。彼女(→フェリシアではない)が死んで、俺は我を失ってた。お前にしたこと(→殺そうとしたこと)は大儀のためだと、つけるべき落とし前だったと自分に言い聞かせてきた。だけど手が汚れてるのはお互い同じだったな(→革命運動で汚いこともやってきたみたいなニュアンス?)。とにかく、俺がどこにいるかはわかるだろ(→ラストドロップにいるから会ってくれ)。血豆と岩盤を。V(→ヴァンダーのイニシャルだが、手紙全体がヴァイ→ジンクスに重なるようになっていることを示唆する)。
[27:21] Jinx: If he found this, everything might have been different.
おそらくS2E7のシルコはこの手紙を見つけている。
[28:38] Jinx: Something’s got him riled up.
- rile up: 興奮させる。イーシャの血の匂いがワーウィックを興奮させている。
[30:28]
Vander: What’s the occasion?
Felicia: Hmm. Can’t a lady just be in the mood for a familiar song?
Vander: Not this lady, and not this song.
Felicia: Tonight a harebrained scheme these two bozos cooked up to turn a dank crack in the earth into a thriving, healthy community became a reality.
Vander: Tonight, eh? You hear that, Bozo 2? We made it. We’re done.
Silco: Oh, you’re sadly mistaken. I’m Bozo 1.
Vander: A night of revelations.
Felicia: I’m knocked up. A girl.
Vander: How do you know?
Felicia: Mm. Wasn’t really part of my plan, but guess that’s everything when you’re living week to week.
Vander: What did Connol say?
Felicia: I haven’t told him. Working up the nerve. I don’t know anything about kids. I get sweaty being alone with one.
Vander: Hey, you’re gonna be a great mother.
Felicia: Shut up. I’m not ready for that. I started trying to come up with a name, and it hits me that this one word is a decision she’s gonna live with her whole life. I can’t protect her from all the shit down here and work out how to be a parent at the same time. Then I realized, I don’t have to.
Vander: Hmm? Why’s that?
Felicia: Because the second I told you, I put you on the hook. You two are gonna figure this Zaun thing out. I don’t care if you have to carve it out of the bedrock, covered in blisters. You’re not allowed to fail anymore. For her. For me.
Vander: What’s the point if we can’t raise an ankle biter or two?
Silco: To Zaun, then. Blisters and bedrock.
Vander: Blisters and bedrock.
Vander: I’ve always liked the name Violet.
- harebrained: 軽率な。
- bozo: マヌケ。
- cook up: でっち上げる。
- dank crack in the earth: じめじめした地球の裂け目。レーンのこと。
- revelation: (隠されていた事実の)発覚。
- carve out of: 削り出す。彫る。ここでは「未来を切り開く」のニュアンス。
- bedrock: 岩盤。ここでは(変革するには大変な困難を伴う)社会基盤の比喩。
- blister: 水ぶくれ。まめ。ここでは(変革に伴う)痛みの比喩。 “bedrock” と合わせて鉱夫としての労働の象徴。
- ankle-biter: (足首を噛むような)小さな子供。
以下、会話の流れ。
- フェリシアがジュークボックスで曲をかける。
- ヴァンダー: 何の祝いだ?
- フェリシア: 馴染みの曲を(何の理由もなく)聴きたい気分になるときが女にはあるでしょ。
- ヴァンダー: 君が、この曲を、(何の理由もなく)はないな→だからやっぱり何か特別なことがあったんだろう→妊娠。
- フェリシアがグラスを手にする。
- フェリシア: 今宵、マヌケ二人がでっち上げた、この陰気くさい地球の裂け目を健康的で活気あふれるコミュニティーへ変えようというトンチキな計画が、現実のものとなった→偉業を成し遂げたあとの演説(スピーチ)のパロディーのようなセリフ。まだゾウン独立は果たされていない(おそらく革命運動は始まってもいない)のに、もうそれを実現したかのように、おどけた感じで(乾杯前の)スピーチをしている。
- ヴァンダー: 今夜だって? 聞いたか、マヌケ2号。やったぞ俺たち。成し遂げたんだ→フェリシアのおふざけに乗っている。
- シルコ: おっと、間違えてるな。俺がマヌケ1号だ。
- ヴァンダー: 新発見の夜に(乾杯)→すでにゾウン独立が果たされていたり、シルコの方がマヌケ1号だったり、びっくりだな、のニュアンス→このあとフェリシアからさらに “revelation” がある。
- フェリシア: 妊娠した。女の子。
- ヴァンダー: わかるのか?(どうやって性別がわかった?)→この質問は肩をすくめて “Mm” で返される→なんとなくね、しらんけど、みたいなニュアンスか。
- フェリシア: 予定してたわけじゃないんだけど、その日暮らしで生きてればそんなものよね。
- ヴァンダー: コノル(=フェリシアのパートナー)は何て?。
- フェリシア: まだ言ってない。勇気が出なくて。(それはそれとして)子供のことなんて何もわからない(のにどうしたらいいの)。(子供と)二人きりでいるのを考えただけで(どうしたらいいかわからなくて)冷汗が出るわ。
- ヴァンダー: 大丈夫、きっといい母親になれるさ。
- フェリシア: やめてよ。そんな覚悟できてない。子供の名前を考え始めたけど、このたったひとつの単語が彼女の人生に生涯ついてまわるのよね→それを決めなきゃいけない重みにショックを受けた。
- フェリシア: 下層のクソみたいな現実から彼女を守りながら、同時に、ちゃんとした親になれるよう努力するなんて無理だって思った。でも気づいたの。そんなこと(ふたつのことを同時に)する必要はないって。
- ヴァンダー: ん? どうして?
- フェリシア: だって、いま打ち明けた瞬間、あんたたちも当事者になったから→私の子供に対して責任を負う立場になったからあんたたちはもう逃げられない。
- フェリシア: あんたたちはゾウンの問題をなんとかする→だから私は親になることだけに集中すればいい→ふたつのことを同時にやる必要がない。
- フェリシア: 固い岩盤を削り出して(=社会を根本的に変革するために)、手が血豆だらけになろうが(=どんな痛みを伴おうが)妥協は許さないわ。(私の子供に対して当事者になったあなたたちに)もう失敗は許されない。この子と、私のために。
- ヴァンダー: 小さな子供の一人や二人育てられないんじゃ(この革命運動に)意味ないな→次世代のためにも絶対に成し遂げる。
- シルコ: それじゃあ、ゾウンに(乾杯)。血豆(だらけになろうが)と岩盤を(削り出そう)。
- ヴァンダー: 血豆と岩盤を→この三人の間で “blisters and bedrock” が「ゾウン独立への固い決意」を意味するジャーゴンとなる→ヴァンダーがシルコに宛てた手紙の中で使う。
- ヴァンダー: 俺はずっと「ヴァイオレット」って名前が好きだったよ→ヴァイに呼びかけられたワーウィックがヴァイのことを思い出す→「正しいきっかけ」が揃ってヴァンダーの心を取り戻す。
[34:19] Vi: He’s your dad too.
[15:16] Jinx: he's your father too.
[36:07]
Jayce: Salo? What are you doing here?
Salo: Jayce. One could ask the same question.
Jayce: How are you walking?
Salo: Who do you think could mend such a broken creature? Would you want to speak with him?
Viktor: Jayce. I’d feared I wouldn’t have the chance to speak with you again.
Jayce: Viktor?
Viktor: I would prefer to converse in person. But there’s so much work to be done.
Jayce: How are you doing this?
Viktor: I suppose this is somewhat beyond where we left off.
Jayce: Is Salo still in there?
Salo: Where else would I be? You have my solemn vow that anything you discuss will be kept in the strictest confidence. I owe Viktor… everything.
Viktor: Very kind, Salo. I have so many breakthroughs to share with you, Jayce.
Jayce: I thought you were done with Hextech. And me.
Viktor: I was clouded by emotions. Come. Visit me. See what I’ve accomplished. I’ve helped so many.
Jayce: You’ve given Hextech to the people?
Viktor: As we always promised we would.
Salo: Viktor has truly worked wonders.
Jayce: Hextech isn’t a miracle. It’s a curse. We have to end it, Viktor. We have to.
Viktor: You seem different. Something happened. Now I see it. You, too, have touched the Arcane. Your mind suffered.
Salo: If you’ll excuse me, I must return to him.
Jayce: I can’t let you leave.
Salo: I’m sorry you feel that way.
Jayce: I’m sorry too.
- ジェイス: サロか? ここで何を?
- サロ: ジェイスか。こちらも同じ質問をしたいね。
- ジェイス: なぜ歩けるんだ?
- サロ: こんな壊れた生き物(→自虐的表現)を治せるのは誰だと思う? 彼と話したいかね?
- ヴィクター: ジェイス。もう二度と話す機会はないと思っていたよ。
- ジェイス: ヴィクター?
- ヴィクター: 本当は直接会って話したいが、やらなければならないことが多くてね。
- ジェイス: どうやってこれ(サロの体を通じて会話)を?
- ヴィクター(サロ)は巨大な異常[anomaly]を見る。
- ヴィクター: 僕らが(研究を)中断した時点より少し先に進んでいるようだ→異常[anomaly]によって発生するあれこれ&ヴィクターが独自に研究を進めてハイブマインド(集合精神)等を使えるようになったことも含意?→ジェイスの質問への回答。
- ジェイス: サロはまだそこにいるのか?
- サロ: もちろんいるとも。君たちがこれから話すことは厳重に守秘されると誓おう→だから安心して会話してくれ。
- サロ: 私はヴィクターに……返しきれない恩がある。
- ヴィクター: ありがとう、サロ。
- ヴィクター: ジェイス、君に共有したい新発見がたくさんあるんだ。
- ジェイス: ヘクステックには見切りをつけたんじゃなかったのか。僕にも(見切りをつけたはずだ)。
- ヴィクター: (あのときは)感情に惑わされてたんだ→ヘクステックの兵器化やジェイスの軽薄さに対する感情。
- ヴィクター: 来てくれ。僕に会いに。僕が成し遂げたものを見に。たくさんの人を救ったんだ。
- ジェイス: ヘクステックを大衆に与えたのか?
- ヴィクター: 君と約束していた通りにね→ジェイスとヴィクターは限られた人間だけがヘクステックを使える状態(e.g. ヘクスゲート)から、誰もが使える状態(e.g. 採掘用ガントレット)にしようとしていた。
- サロ: ヴィクターは本当に奇跡を起こした。
- ジェイス: ヘクステックは奇跡じゃない。呪いだ。終わらせなきゃいけないんだ、ヴィクター。僕らで。
- ヴィクター: 君は何か変わったな。何かあったのか→
[S1E6:19:02] Heimerdinger: Viktor, something's different. You've changed. What did you do? - ヴィクター: そうか、君もアーケインにふれたんだな。君の心は苦しみに囚われたんだ(かつての僕のように)。
- サロ: では失礼するよ。彼の元へ帰らなければ。
- ジェイス: 行かせるわけにはいかない。
- サロ: 残念だが行かせてもらうよ。
- ジェイス: 僕も残念だ。
S2E5: その他
[01:38]でヴァイが殴るチンピラはシルコの手下だったやつ→[S1E6:13:06][S1E9:18:29][26:06]のジャケットのイニシャルはヴァンダーのVとシルコのS。- サロはおそらく呼吸していない。ヘクスゲートのフェイルセーフがある空間は低温になっていて、S2E3では全員白い息を吐いている。本エピソードでもジェイスが喋るときは白い息が出ているが、サロ(ヴィクター)が喋るときは出ていない。
以下、ワーウィックとの戦闘の流れ。
- イーシャの血の匂いにつられてワーウィックが襲いかかってくる。
- ヴァイがガントレットで応戦する。
- ワーウィックの殺意を感じたヴァイが先制攻撃を仕掛ける。
- ジンクスが “Don’t hurt him.” と叫ぶ。
- ヴァイは構わずワーウィックの顎を砕く。
- ワーウィックは超回復力で再生する。
- ヴァイとワーウィックは戦闘を続ける。
- ジンクスは銃を構えるが撃たない。
- ジンクスが何かを叫ぶ→英字幕では “Hark!” となっている。「(私の話を)聞いて」の意。シェイクスピアに出てきそうな古風な言い回し。大河ドラマなら「聞けい! 皆の衆!」みたいな感じで言うことはありそうだが、Arcaneでこんな芝居がかったセリフがいきなり出てくることには違和感がある。ジンクスが言いそうなセリフというわけでもないし。しかし音声を注意深く聞くとたしかに “Hark” と聞こえる。どゆこと……。ここは英語ネイティブも混乱しているようで、「字幕の間違いでは?」と言われていたりする。ちなみに日本語字幕は「待って」。日本語吹替は「やめて」。
- ヴァイが壁に叩きつけられる。
- ワーウィックは血の匂いにつられてイーシャの方を向く。
- ジンクスがイーシャをかばって前に出る。
- ワーウィックがパウダーの記憶を再度思い出す。
- ヴァイが口の中の血を吐き出す。
- ワーウィックがヴァイの血に反応する。
- ジンクスがヴァイに “Vi, it’s him. You have to believe me.” と懇願する。
- ヴァイは逡巡する→が、おそらくシルコ宛てのヴァンダーの手紙を思い出して、決定的にすれ違ってしまったヴァンダーとシルコのようになるか、別の道をたどるかの分岐点なのだと理解する。
- ワーウィックがヴァイに襲いかかる。
- ヴァイは拳を下ろす→ジンクスを信じる道を選ぶ。
- ヴァイが “Vander!” と叫ぶ。
- ワーウィックが “Violet” という名前の由来を思い出す。
- 「正しいきっかけ」が揃ったことでワーウィックはヴァンダーの心を取り戻す。
- 戦闘で大きな音が連続したことで光源がなくなり(ヒカリゴケのようなキノコは音に反応して光を発生させるが貯蔵されていたエネルギーが尽きた)ジンクスがライターを灯す。
S2E6: The Message Hidden Within the Pattern
S2E6: あらすじ
- 奇跡のヒーラーの噂は広まり、ヴィクターのコミューンにゾウン各地から人が集まっていた。ヴァイたちもその噂を聞き、ワーウィックを連れてコミューンを訪れる。入り口で武装解除を求められ、ジンクスはジェムストーンを抜いてヘクステック銃を預ける。ヴァイもガントレットを置いていくが、イーシャはこっそりガントレットからジェムストーンを抜いて自身のポケットにしまう。ヴィクターはワーウィックの治療を請け負い、減衰していく自分の力を感じながらもヴァンダーの精神の奥深くへと入っていく。
- ワーウィックを追ってノクサス軍がヴィクターのコミューンにやってくる。アンベッサは武力制圧しようとするが、シンジドの「まずは科学者同士で対話を」という提案を受け入れ、行動を起こすのを夜まで保留にする。自らの目的のために無辜の民を攻撃しようとしたアンベッサにケイトリンはさらに疑問を抱く。
- シンジドとヴィクターは世界の在り方について哲学的な議論を交わす。ワーウィックの血を使ってヴィクターを完全な存在にしたい(その手法を用いてオリアナを蘇らせたい)シンジドと、ヴァンダーの人間性を犠牲にできないと考えるヴィクターは相容れず、シンジドはノクサス軍の拠点へ戻る。ヴィクターがワーウィックを治療してしまうと(アンベッサにとっては兵器としての/シンジドにとっては蘇生手段を見つけるための)価値がなくなってしまうため、シンジドはワーウィックを暴走させる血清を精製する。
- ヴァイはシンジドを訝しんで後を追い、ケイトリンと再会する。ジャンナ寺院でひどい別れ方をしたにも関わらず軽口を叩くヴァイにケイトリンは心を動かされる。アンベッサへの疑念が募っていたこともあり、ケイトリンはノクサス軍の手からワーウィックを救出する作戦を立てる。
- ヴァイは万一(単純な作戦失敗/ケイトリンが本当に信用できるかわからない)に備えてのバックアップ要員としてジンクスにも作戦を伝え(しかしケイトリンにはジンクスのことは伝えず)、離れたところに待機させる。コミューンの入り口で預けたヘクステック銃をイーシャが持ち出してジンクスに渡す。
- 捕縛したと偽って、ケイトリンはヴァイをアンベッサのテントに入れる。ケイトリンとシンジドはワーウィックに血清を投与するためにテントを出る。外ではノクサス兵が血でワーウィックをおびき寄せる準備をしている。アンベッサはケイトリンの傀儡化に邪魔な存在となるヴァイを殺そうとするが、会話の違和感からケイトリンのライフルに付属していた捕縛用ネット弾がないことに気づく。しかし時すでに遅く、ヴァイはケイトリンから預かっていた捕縛用ネット弾でアンベッサを無力化する。ヴァイはケイトリンのライフルを持ってコミューンに戻る。
- ケイトリンは指揮系統が一時的に麻痺する隙を狙ってワーウィックを逃がす予定だったが、シンジドを無力化したあとリクタスに阻止される。リクタスはケイトリンを殺そうとするが、ジンクスが乱入し、戦闘になる。ヘクステック銃の攻撃はケイニック・ルーケルンによって防がれ、純粋な格闘戦になり、ジンクスはリクタスに殺されそうになるが、ワーウィックが割って入り、リクタスを一撃で気絶させる。ジンクスの姿を見てケイトリンが激高しそうになったところにヴァイが戻ってくる。ケイトリンの目に映るのはお互いの無事を喜び合う普通の家族の姿だった。
- 一方そのころ、ジェイスは未来から持ち帰ったハンマーを携えてヴィクターのコミューンに忍び込んでいた。未来の記憶に苛まれ、コミューンの住人が「進化後」の姿に見え、錯乱したジェイスは子供に武器を向けてしまう。子供は優しい瞳でジェイスに手を差し伸べ、ジェイスをヴィクターのところへ連れていく。他の住人もジェイスに優しい視線を送る(ヴィクターと精神的につながっているため)。繭のような建造物の中でヴィクターは力を充填している(ファイヤーライトのアジトで発生していたような異常[anomaly]を集めている)。閉じられたヴィクターの目は夢を見ているかのように動いている。ヴィクターが目を覚ますと同時に、ジェイスは砲撃を放つ。未来から持ち帰ったハンマーによる異常[anomaly]の砲撃はヴィクターを直撃し、繭のような建造物も破壊する。建造物の破片は現実世界の法則を無視し、宙に浮かんだままになり、時折グリッチが発生する。ヴィクターがこときれると同時に、コミューンの住人が倒れていく。
- コミューンに何が起こったのかをヴァイたちが確認している後ろで、(シンジドに血清を投与された)ワーウィックが溶岩の血を流しながら暴走する。ワーウィックは近くにいたリクタスをなぶり殺しにする。その現場を目撃したアンベッサは激高し、ノクサス軍に突撃命令を下す。ヴァイたち、ノクサス軍、ワーウィック、三つ巴の乱戦になり、ヴァイは戦いの中で負傷する。ジンクスがワーウィックを落ち着かせようとするが弾き飛ばされる。混乱の中でイーシャは自分にできることを考え、心を決めて駆け出す。落ちていたジンクスのヘクステック銃を拾い、ジェムストーンを追加装填する。それを見たジンクスはイーシャの意図を理解し、駆け寄ろうとするが、ヴァイに止められる。三つのジェムストーンが装填されたヘクステック銃はワーウィックを無力化するが、過負荷のバックファイアでイーシャは死亡する。
S2E6: 脚本
[01:19]
Sky: Poor Salo.
Viktor: That isn’t Jayce. But there is another will at work within him.
Sky: I thought I heard something just before the portal closed. Ancient, like a…
Viktor: Like a voice. This is a sophisticated conjuration. A singularity, simultaneously self-replicating and self-annihilating.
Sky: We’ve never seen complexity like this.
Viktor: Flawless… exquisite… chaos.
- conjuration: 魔法。呪文。
- flawless: 完璧な。一点の曇りもない。
- exquisite: 精巧な。絶妙な。
以下、会話の流れ。
- スカイ: サロ、気の毒に。
- ヴィクター: あれはジェイスじゃない。別の意志が彼を動かしてる→
[S2E5:38:23] Viktor: Now I see it. You, too, have touched the Arcane.→ヴィクターはジェイスが自分と同じようにアーケインから精神干渉を受けたと思っている。 - スカイ: ポータルが閉じる前に何か(意味のある言葉)を聞いた気がする→ “the portal” はジェイスが出てきた巨大な異常[anomaly]のことか。ヴィクターが言う “another will” とはアーケインの意志ではないか、というようなことを言わんとしている。
- スカイ: 太古の、まるで……。
- ヴィクター: (誰かの)声のような。
- ヴィクター: これ(異常[anomaly]=ワイルドルーン→アーケイン?)は精巧な術式なんだ。自己複製しながら自己消滅を繰り返す、特異点。
- スカイ: こんな複雑さ、見たことがない。
- ヴィクター: 完璧で、緻密な、混沌だ→混沌を表すには程遠い形容詞を使うことで異質さを表現している。
[03:17]
Ambessa: Noxus prizes strength above all else, defining it by three core principles. Vision. The top of the triangle. Charting a course, and having the wisdom to navigate it. This form is your base, child. Your eyes see what others don’t. Might. Bending your environment to your will. Your speed is improving. But eventually you need force.
Caitlyn: Too much force exposes you to risk.
Ambessa: Indeed. The last is guile. Phantoms. Tricksters. Mages. Absent honor. Absent accountability. Remember this, Caitlyn. Tunnels in your eyes. Lava in your veins. Shadows in your heart. This is the truth of combat.
Ambessa: I’ve discovered a fourth principle. One that heightens all others. Sacrifice. The temper born of suffering. We understand it as others cannot. We are kin.
- vision: 視野。視座。カタカナ書きの「ビジョン」と同じニュアンス。
- form: 型。ここでは「武道の型」のニュアンス。
- might: 力。軍事的な圧力や影響力。
- guile: 狡猾さ。ずる賢さ。
- tunnels: “tunnel vision” は「視野狭窄」の意だが、ここでは一点集中のニュアンス。
- sacrifice: 日本語の「犠牲」とは少しニュアンスがずれる。自分の一部を差し出して何かを得るようなイメージ。
- temper: 気性。気質。金属を焼き入れして鍛えること。ここではダブルミーニングで使われている。
以下、会話の流れ。
- アンベッサ: ノクサスで何よりも重んじられるのは強さ。それを構成するのは三つの原理。
- アンベッサ: (第一に)視野。三原理の頂点。戦略を描き、進むべき道を見通す知恵を持つこと。この型はお前の基盤だ。お前の目は他者には見えぬものを見ている→ケイトリンの資質を認めている。
- アンベッサ: (第二に)力。まわりの環境を自らの意志でねじ伏せること。お前の動き(AGI)はよくなっている。しかしやがては真の力(STR)が必要だ。
- ケイトリン: 力みすぎれば隙をさらす→力を込めて大技を出せばカウンターを食らう。力任せに状況を変えようとすれば却って危険、のようなニュアンス。
- アンベッサ: その通りだ。
- アンベッサ: 最後は狡猾さ。黒幕、詐欺師、魔術師。(こういった)名誉なき者、何の責務も負わぬ者(は、それが故の強さがある)→ “phantoms” は「姿を見せずに卑怯に暗躍する連中」のニュアンス。ここでアンベッサが並べている三単語はすべてルブランを指している。憎い相手であっても、ずっと対立を続けているから(こそ)、アンベッサは黒薔薇の強さを知っている。
- 訓練を終えて去ろうとするアンベッサをケイトリンが後ろから襲う。が、いなされる。
- アンベッサ: 覚えておきなさい、ケイトリン。
- アンベッサ: 目にはただ一本の道を通し→周囲を排して冷徹かつ的確に敵を捉える視界。
- アンベッサ: 血管には溶岩を流し→戦いに必要な闘志を全身にたぎらせる→
[S2E8:33:17] Ambessa: You still lack the wrath necessary to defeat an enemy like the Rose. - アンベッサ: 心に闇を持て→勝利のために必要な手段なら卑怯だろうが人道に反しようが躊躇するな。
- アンベッサ: これが戦いの真実。
- アンベッサ: 第四の原理をいま見つけたわ。これは他の(原理)すべてを引き上げる。
- アンベッサ: 犠牲。苦悩によって鍛えられた(鋼のような)精神→ “sacrifice” は苦悩という対価を払って(生贄にして)強さを手に入れる、というニュアンス。
- アンベッサ: 私たちはこれを誰よりもよく知っている。同類だから→どちらも苦悩を対価に強さを手に入れた。
[05:36]
Huck: Vi. I hoped you might return.
Vi: You filthy traitor.
Huck: Yes. That was me at my worst. Simply awful. But the Herald has freed me of my past self. He’s given me a chance to make amends. All are welcome. But I must ask you to surrender your weapons. This is a place of peace.
- filthy traitor: S1E5でシマー欲しさにヴァイをシルコに売り渡したこと。
- the Herald: ヴィクターの二つ名。先触れ。使者。新しい時代や概念を告げる者、のニュアンス(e.g. 春の到来を告げるもの=a herald of spring)。レトコン前のLoL本編では「機械文明の先触れ/the Machine Herald」となっていたが、現在は「アーケインの先触れ/the Herald of the Arcane」となっている。
[06:53] Huck: The Herald’s vision.
コミューンの名前? もしくは「この光景がヴィクターの目指す理想社会、その一端だ」というようなニュアンスか。
[09:00] Sky: Viktor. You once told me, all systems have limits.
スカイの「どんなシステムにも限界がある」はおそらく助手時代にヴィクターが言っていたこと→やめておきましょうよ、のニュアンス。
[09:18]
Viktor: Vander’s psyche is deeply entangled with that of the beast.
Vi: How did you know his name?
Viktor: He told me.
Jinx: Ask for a miracle healer, get a metal fortune cookie.
Vi: I saw your father. His dream of your family and vision of Zaun as it could have been, it was… beautiful.
Jinx: Cookie.
Vi: Can you help him?
Viktor: I will do all in my power. However, I have one condition.
Jinx: Looks like you got a couple.
Viktor: You have much to offer this commune, Powder. Your talents can be used to build, instead of destroy.
Jinx: I’ll stick with what I know, thanks.
Viktor: My condition is that he must be restrained at night. I’ve seen the harm of which he is capable.
Vi(to Jinx): What do you think?
Jinx: You actually want my opinion?
Jinx: I hate fortune cookies.
Vi: We’re gonna get you out of there, Vander.
- fortune cookie: 中の空洞におみくじが入っているクッキー。ここでは中身のないこと(くじに書かれているようなどうにでも解釈できること)をそれっぽく喋って人を騙そうとする詐欺師の比喩。
- condition: 条件。病気。ヴィクターは前者の意味で、ジンクスは後者の意味で使っている。
以下、会話の流れ。
- ヴィクター: ヴァンダーの精神はあの獣と深く結びついている。
- ヴァイ: どうして(ヴァンダーの)名前を知ってるの?
- ヴィクター: 本人から聞いたよ。
- ジンクス: 奇跡のヒーラーを注文したのに、出てきたのは金属製のフォーチュンクッキー→奇跡を起こすヒーラーの噂を聞いてやってきたけど、実際は神託めいた(意味深でどうとでも取れるような)ことをそれっぽく語るだけの偽導師じゃん。しかも全身金属の怪しいやつ、みたいなニュアンス。
- ヴィクター: 君の父(の姿とイマジネーション)を見た。家族の夢、ありえたかもしれないゾウンの展望は……美しかったよ。
- ジンクス: クッキー→またそれっぽいこと言ってる、の意→咳払いしながら侮辱を隠す(本当は隠すつもりはない)のは英語圏のコメディでよくあるやつ。
- ヴァイ: 彼を救うことはできる?
- ヴィクター: 全力を尽くそう。ただし条件[condition]がひとつある。
- ジンクス: あんたの病気[condition]はひとつじゃなさそうだけど→ “Looks like you got a couple of (medical) conditions.” →ここまでのジンクスは「うさんくさい」と示唆していただけだったが、詐欺師お決まりの怪しい交渉が始まったと思って、もっと直接的な(やせ細った機械の体に対する)侮辱で攻撃している。
- ヴィクター: 君にはこのコミューンでできることがたくさんあるよ、パウダー→ここまではジンクスのあてこすりを無視していたが、パウダー呼びすることでジンクスを黙らせる→実際にジンクスには効果てきめんで、幻覚が復活しそうになっている。
- ヴィクター: 君の才能は破壊ではなく創造のために使うべきだ→ヴィクターはS1E7でジンクスのグレネードを解体しているので才能を知っている。
- パウダー: 忠告どうも。私はいつも通りでいくよ。
- ヴィクター: 夜間は彼を拘束することが条件だ。彼がもたらしうる被害を考慮してね。
- ヴァイ(ジンクスに): どう思う?
- ジンクス: 本気で私に意見を求めてる?
- ジンクス: フォーチュンクッキーなんて大嫌い。
- ヴァイ: 必ずそこから救い出すからね、ヴァンダー。
[13:30] Vi: Do you remember them?
このコミューンのある場所はS1E6でヴァイとケイトリンがいた場所(ハックのようなシマー中毒者が集まっていた最下層だったがヴィクターの来訪でコミューンが形成される)。ヴァイが給水塔を壊したので背丈を測った柱はポッキリ折れて現在のようになっている。
[13:46]
Vi: This place. Do you think it could actually work?
Jinx: Underground utopia, run by a skinny tin Machine Herald. Maybe when Piltover slides into the sump.
- sump: 汚水溜め。ゾウンに実際にある場所(レトコン前は最下層を意味していた)を指していると思われるが、ただの比喩かも。そこにピルトーヴァーが滑り落ちてきたら(=上層が下層のレベルまで没落したら)というありえない仮定→このコミューンがうまくいくことはほぼありえない。
[15:51]
Singed: You’ve felt it, haven’t you? Your decline? Your power is finite, diminished by every use.
Viktor: I’ve been expecting you, doctor.
Singed: Viktor. Incredible. What I wouldn’t give to glimpse the world through your eyes. To know what you know.
Singed: His quest led him astray of any trodden path. His own shadow dissolved to darkness. Now the only course was forward. The only warmth, a dream of her waltz.
Viktor: Knowledge is a paradox. The more one understands, the more one realizes the vastness of his ignorance.
Singed: Marvelous specimen, isn’t he? The regenerative qualities of his blood will stabilize you. Apex Shimmer combined with you, the apex form of Hextech.
Viktor: What you are suggesting would destroy him. And for what? Conquest? The greed of warmongers?
Singed: To complete your work. To save us from ourselves. You must survive, Viktor.
Viktor: Do you believe in fate, doctor? Our paths carved before us. Guided by an invisible hand?
Singed: Not fate, evolution. Nature’s greatest force, forever in flux.
Viktor: No. Evolution has a destination. Not to combat nature, but to supersede it. The final, glorious evolution. But he isn’t a specimen. He’s a man. And he needs my help. I will not sacrifice his humanity for your cause. You may leave.
Singed: Very well. But I assume you understand already, if you perish, this community is soon to follow.
- what I wouldn’t give ~: ~するためにはなんでも差し出す→なんとしても~したい。
- apex: 頂点。ここでは特定の技術によって到達可能な最高の地点、完成形の意。
- supersede ~: ~に取って代わる。手労働→蒸気機関、フィーチャーフォン→スマートフォン、のように、より優れた/新しいものに置き換わるイメージ。
以下、会話の流れ。
- シンジド: 感じているのだろう? 減衰を。君の力は無限ではない。使うたびに擦り減っていく。
- ヴィクター: (人を超える存在となった僕のところに)来るのはわかっていました、博士。
- シンジド: ヴィクター、すばらしい。君の目から世界を垣間見ることができるなら、君の知識にふれられるなら、何を差し出してもかまわない。
- ヴィクターはシンジドがオリアナの横で朗読(→全体的にシンジドの比喩)している記憶を垣間見る。
- シンジド: 彼の旅(探求→シンジドの研究)は踏みならされた道を外れ(→常人が通らない道→倫理に反する研究をしてアカデミーを追放)、己の影すら闇の中へ溶けた。もはや前に進む以外の道はない。ただひとつのぬくもり、彼女が躍るワルツの夢を道連れに(→オリアナが再び踊れるようになる日だけを心の支えにして前へ進む)。
- 現実に戻る。
- ヴィクター: 知識とは逆説的なものです。知れば知るほど、いかに自分が何も知らないかを気づかされる→知識体系が固定の体積を持つようなものであるなら、既知で埋めれば未知は減っていくはずなのに、なぜか既知で埋めるほど未知が増えていく、というパラドックス(何かを知ることは自分の世界の見え方を変化させることだからこういうパラドックスが発生する)→ヴィクターはシンジドが倫理に反する研究をしていたのは娘のためであることを知る→
[S2E5:21:33] Singed: Why does anyone commit acts others deem unspeakable? For love.が真であるなら、自分がこれまで許せないと思ってきたことにもそれなりの理由があるかもしれない。ジェイスが約束を違えてヘクステック兵器を開発したのにも、異形の存在にしてまで自分を生かしたのにも理由があるかもしれない。というようなことを考えると何もわからなくなっていく。人間の記憶・精神に直接アクセスできるがゆえに、人間というものがわからなくなっていく。 - シンジド: (ワーウィックは)すばらしい実験体だろう? これの血が持つ再生能力を使えば、君は安定する→ワーウィックは坑道での戦闘でヴァイに顎を破壊されても瞬時に回復した→この再生能力があれば力の減衰がなくなる。
- シンジド: シマー(≒ケミテック)の完成形が君と融合することで、ヘクステックの完成形となる→ “Apex Shimmer, combined with you, will be the apex form of Hextech.” の形。シマーの完成形(ワーウィック) x ヴィクター → ヘクステックの完成形。
- ヴィクター: あなたの提案を実行すれば彼は死ぬでしょう。何のために(そんなことをする必要がある)? 征服(他国への侵略)のため? 戦争屋の欲望を満たすため?→シンジドはノクサス軍と一緒にやってきたので、ヴィクターはシンジドがいまアンベッサの下にいることを知っている。補足: ヴィクターはハイブマインドで信者たちとつながっている。
- シンジド: 君の使命を全うするために。我々を我々自身から救うためだ→英語圏のキリスト教的価値観を前提しないと意味が取りにくいセリフ。人類は自身の破滅的行動によって自滅しがちだが、その構造は自身では変えられず、神によってのみ救われる、というような価値観(日本だと浄土真宗の他力本願が近い)は英語圏では非キリスト者であってもふんわりと共有されている。英語圏のフィクションはこの価値観が根底にあることが多い。この後半の文がなければ前半の “work” は「ライフワーク」「科学者としての研究」のような意味になると思うが、後半にキリスト教的価値観をベースにしたセリフがあることで、前半の “work” もまた宗教的な色が濃くなり、「神の御業」や「イエスの成したこと」のような使われ方としての “work” になる。そもそもキリスト教において「働く[work]」ということは、神から与えられた使命(天命)を全うしている、ということなので、キリスト者と非キリスト者では労働に対する捉え方がかなり違う、ということを前提しないと “work” のニュアンスは掴めない。
- シンジド: ヴィクター、君は生き延びねばならない→
[S1E6:03:03] Singed: The mutation must survive.に対応している。ヴィクターはいま「変異体=進化の可能性」になっている。 - ヴィクター: 博士、運命を信じますか? 我々の進む道はあらかじめ決められていて、見えざる手に導かれていると→唐突に話題転換しているわけではなく、上記のキリスト教的価値観をベースにした自然な会話の流れ。
- シンジド: 運命ではなく進化を信じる。自然界最大の力。それは永遠に変化し続けるものだ→ここでシンジドが “evolution” という言葉を使って言わんとしていることは「自然の淘汰圧による選択」のこと。そこに何らかの意志が働いているわけではないし、変化の道筋が決まっているわけでもない、という科学者として極めて真っ当な見地。この「自然」には「人類が自身の破滅的行動によって自滅に向かう」ことも含まれる。
- ヴィクター: いいえ、進化には目的地があります。自然と相克するのではなく、やがて取って代わる→栄光の進化を果たしたあとは自然の支配から逃れて、新しい法則の中で生きられるようになる、みたいなニュアンス。つまり、その最終進化のあとは「人類が自身の破滅的行動によって自滅に向かう」という法則からも逃れられる、とヴィクターは考える。
- ヴィクター: 最終最後の、栄光の進化(という目的地が)→異端ではあってもあくまで科学者として見解を述べるシンジドに対してヴィクターは宗教者としての見解を述べる→シンジドは科学者同士の会話をしにきた(
[14:59] Singed: I believe this Herald may be a former pupil of mine. A man of science. Let me speak with him.)が、かつての弟子はもはや科学者ではなくなっていた(根本を問う哲学的議論なのでどちらが正しいという話でもないが)。 - ヴィクター: しかし、彼は実験体ではありません。人間です。そして彼は僕の助けを必要としている。あなたの目的のために彼の人間性を犠牲にはしない。お帰りを→シンジドの世界観は「運命などなく自然の淘汰圧による選択があるだけ」だが「人の手で変えられる余地がある」というもの(
[S1E7:05:41] Singed: Nature has made us intolerant to change, but fortunately, we have the capacity to change our nature.)。そしていまシンジドは、ワーウィックの血を使って(→個人を犠牲にして)ヴィクターを人工的に進化させ、死を超克した存在にしたい(→その手法を用いてオリアナを蘇らせたい)。ヴィクターの世界観は「栄光の進化という最終目的地に向かっている」だが、シンジドのように(たとえそれが愛ゆえであっても)目的のために個人を犠牲にはしない。ヴィクターはまだこの時点では人間性を捨てていない。だからワーウィックの処遇については意見が相容れない。 - シンジド: よかろう。しかしすでに理解しているだろうが、君が滅びれば、このコミューンもすぐ後を追うことになるぞ。
[19:21]
Vi: On the job, I see.
Caitlyn: You can’t be here.
Vi: Oh. Here, like where I landed when this rich, unhinged mongoose just tackled me?
Caitlyn: Mongoose? Your hair. You look like an angry oil slick.
Vi: Don’t sugarcoat it, Cupcake.
Vi: Who’s out there?
Caitlyn: We tracked some sort of new chemweapon down here. A bloodthirsty murderous beast. What are you doing here?
Vi: Trying to save… my dad.
- unhinged: 錯乱した。
- angry: (海が)荒々しい。
- oil slick: (水の上に浮いた)油膜。
- chemweapon: ケミテック兵器=ワーウィック。
以下、会話の流れ。
- ヴァイ: お仕事中ってわけね。
- ケイトリン: なんでここにいるのよ。
- ヴァイ: 「ここ」って、錯乱した金持ちマングースに飛びかかられて倒れた「ここ」のこと?
- ケイトリン: (私が)マングースですって? (そういう)あなたの髪は、荒々しい、油膜みたいよ→ケイトリンはヴァイの真似をしてうまい返しをしようとするが、普段こういうジャブの応酬をしていないのでうまくできない。油膜は二人の比喩である “oil and water” から連想したか。
- ヴァイ: お世辞をどうも、カップケーキ→ “Don’t sugarcoat it.” は「オブラートに包まずはっきり言って」の意だが、ここでは(親密さゆえの)皮肉。かつ、私の軽口に無理に付き合わなくていい、のニュアンス。 “sugarcoat” はカップケーキ(砂糖菓子)から連想したか。
- ケイトリンが目を見開く→ジャンナ寺院での別れ方を考えると、ヴァイはケイトリンに対して怒りを向けてもおかしくないのに、最初に会ったころのように軽口を言ってくれることに対しての驚き。ヴァイの「カップケーキ」呼びは距離感の表現なので信頼関係が初期化されていることに対しての悲しみ。しかし同時に、「カップケーキ」呼びに懐かしさと愛しさを感じてもいる。ケイトリンはこの瞬間にヴァイとのつながりが絶たれてはいないことを知る。
- 遠くでリクタスとノクサス兵が会話している。
- ヴァイ: あそこにいるのは?
- ケイトリン: 私たちは新種のケミテック兵器を追ってここへ。血に飢えた凶悪な獣らしいわ。あなたこそ何をしにここへ来たの?
- ヴァイ: 父さんを救いに。
- ヴァイの表情を見てケイトリンはケミテック兵器=ヴァイの父であることに気づく。
[20:19]
Singed: Viktor believes he can save the man inside the beast. If he succeeds, I’m afraid the creature’s usefulness will be lost to us.
Ambessa: Then we’ll have to force his hand.
Singed: I believe I can craft a serum that will prohibit Viktor’s success.
- force one’s hand: (本人の意志に反して)無理やりやらせる。ここではワーウィックという手札を手放さざるをえなくなるように仕向けるイメージ。
- serum: 血清。
S2Act1時点のシンジドはワーウィックというプロトタイプで「死の超克」を試していたが人間性を取り戻せなかった→この方法でオリアナを蘇らせても意味がない→「正しいきっかけ」を求めてジンクスが来るかもしれない集会に参加する→現在のヴィクターの方に「死の超克」の可能性を見出す→ヴィクターが完全な存在になるためにはワーウィックには(当初とは逆に)人間性を取り戻してもらっては困る→兵器として利用したいアンベッサとしても困る→シンジドが人間性を失わせる血清を作る→本エピソード終盤でワーウィックに投与→ワーウィックは人間性を失って暴れる。
[22:43] Jinx: Had some time to think lately. Ever since you dropped into my life, it’s like I put on glasses. Except I can’t tell whether everything’s blurry or clear.
イーシャは喋れないのでジンクスを「ジンクス」とも「パウダー」とも呼ばない。イーシャは「出会った当時の生と死の狭間を漂うジンクス」を求めてはいるが、それはただ自由に振る舞う一人の人間でしかない。だからジンクスは、イーシャと共にいる時間は何のラベルもない「ただの人間」としていられる。それは「ジンクス」を受け入れられず「パウダー」と呼び続けたヴァイにも、 “Jinx is perfect.” と「ジンクス」を肯定し続けたシルコにもできなかったこと。ただそこにいるだけでいいという存在肯定。本来は子供時代に得ているべき経験を、ジンクスはイーシャと共にいることでやり直している。その経験が自分の世界の見え方を変えていることに戸惑っている。
[23:02] Jinx: Wanna hear a dumb joke? A sentimental ex-con, a giant furball, and two of Piltover’s most wanted walk into a weird cult. And here comes the punch line.
- a sentimental ex-con: 感傷的な前科者。ヴァイのこと。犯罪によってではないが監獄に収監されていた。
- a giant furball: 巨大な毛玉。ワーウィック=ヴァンダーのこと。
- two of Piltover’s most wanted: ピルトーヴァー最重要指名手配の二人。ジンクスとイーシャのこと。イーシャは指名手配されているわけではないが、ジンクスなりに愛情を込めて「私と同じだよ」と言っている。
- punch line: ( “dumb joke” の)オチ(はこれからわかる)。
[23:21]
Ambessa: Vi. You’ve been quite a curiosity. One who captured Caitlyn’s heart. I owe you thanks. Your absence provided a vacuum I was able to fill. In other circumstances, I might have offered you a position in my organization. Your resilience is undeniable. Of course, that won’t be possible. You cause too many complications. Caitlyn must not be distracted.
Vi: Don’t worry, she’s not distracted. You know, my father taught me about trust. He told me if I wanted it, there were three things I needed to do: Be honest, even if it means telling a self-righteous windbag that her breath smells like a cesspool. Be patient. Mm, still haven’t cracked that one, but being tied up sure helps.
Ambessa: And the third?
Vi: Just shut the fuck up.
- アンベッサ: ヴァイ、あなたは興味深い存在だったわ。(なぜか)ケイトリンの心を掴んでいた。感謝しないといけないわね。あなたがいなくなったことでケイトリンの心に空白が生まれ、私がつけ入る隙になった。状況が違えば、私のところに招いていたかもね。あなたの強靭さは認めるしかない。もちろん、そんなこと現実には不可能だけど。あなたは問題を複雑にしすぎる。ケイトリンの気を散らせるわけにはいかない。
- ヴァイ: 安心しなよ。ケイトリンの気は散ってないから→
[24:54] Vi: A big distraction.→気を散らされているのはお前の方だ、を含意している。 - ヴァイ: そういえばさ、父が信頼について教えてくれたよ。信頼されたいなら、三つのことが必要だって。(一つ目は)正直でいろ。たとえそれが、独りよがりのお喋り野郎(→アンベッサ)に「お前の息は下水のように臭いぞ」って言わなきゃいけないことを意味するとしてもね。(二つ目は)辛抱強くいろ。あー、これはまだ苦手だけど、こうやって縛られてる状況で少しは成長するかもね。
- アンベッサ: 三つめは?
- ヴァイ: (とりあえずお前は)黙ってろ→おそらく実際に言われたことは「雄弁は銀、沈黙は金」的なことだと思うが、それを汚い言葉にすることで、アンベッサに向けた煽りにしている。
[25:20] Vi: Vander’s in trouble. I have a plan. You’re not gonna like it.
これはケイトリンに会ったあとのヴァイがジンクスに言ったセリフ。ケイトリンが協力するので「あんたは(この計画が)気に食わないだろうけど」と言っている。ジンクスの協力についてはケイトリンに伝えていない→ [S2E8:11:08] Caitlyn: She wasn't there for my benefit. You didn't trust me to follow through.
[25:57] Jayce: I won’t fail.
[S2E7:36:47] Jayce: I won't fail. I swear it.
[33:02] Viktor: I understand now. The message hidden within the pattern. The reason for our failures in the commune. The doctor was right. It’s inescapable. Humanity. Our very essence. Our emotions… Rage. Compassion. Hate. Two sides of the same coin. Inextricably bound. That which inspires us to our greatest good… is also the cause of our greatest evil.
このモノローグはかなり難解で、多様な解釈が可能なので以下は参考程度に(本稿すべてそうだがここは特に)。
筆者解釈による訳: ようやく理解した。(この世界で繰り返される歴史の)パターンに秘められたメッセージを。このコミューンがうまくいかなかった理由を。博士は正しかった。これは不可避なのだ。人間性。我々の根本をなす本質。感情……怒り、哀れみ、憎しみ。それらは同じコインの表と裏。切り離すことなど不可能だ。それ(人間性)が我々を最上の善へと向かわせ、同時に、最上の悪を生み出す原因となる。
このモノローグは本エピソード中盤のシンジドとの哲学的議論を前提している。シンジドとの議論もわかりにくいが、全体的には「この世界は何なのか?」というのが主題だと思う。それは歴史を学べば誰もが思うこと。人類はなんでこんな愚かな行為を繰り返しているの? その先に何があるの? もっと根本的には、このサイクルは自然の淘汰圧による進化(一定確率で変異体が生まれて適者生存で残っていく)の中にあるだけだが、その繰り返しって何なの? この世界って何なの? この構造をどうにかすることはできないの? キリスト教的には「我々は我々自身を救うことはできない(神が救う)」という答えがあるが、ルーンテラにキリスト教はないし、ヴィクターもシンジドも科学者なので、帰納と演繹によって答えを導き出さなければならない。いやそこは科学の領域じゃないだろ、と言う人もいるだろうが、真理を追究していけば、どうあがいても最終的に「この世界って何なの?」に答える必要が出てくる。ヴィクターがモノローグで「理解した」と言っているのはこの問いに対する答え、だと思う。歴史は繰り返し、人類は相も変わらず愚かな争いを続ける……そのパターンの中に(誰かからの/世界そのものからの)メッセージを見出した。暗号解読のような感じで。人間性と呼ばれるものこそが、人を善の存在にも、悪の存在にもする(ここだけならわりとありふれた結論)。その「人間性」は人の根本にあるものであり、ビルトインされた駆動装置であり、取り外すことなどできない。そのビルトインされた駆動装置によってパターン(歴史の繰り返し)が描かれる。そこにはメッセージがある(ファーストコンタクトモノのSFで宇宙から届いた電波の中にメッセージを読み取るような感じ)。人間性がある限り、この繰り返しから逃れることはできない。我々は我々自身を救うことはできない。それは神のみができること。それなら、自分が神になればいい。自分はそういう運命にあった。世界はやはり「栄光の進化」に向かっている。その最終最後の進化のあとには自然の法則(歴史の繰り返し)に縛られずにすむ。ただし人間性を保ったままではそこには到達できない(ヴィクターはシンジドとの議論の時点では人間性を捨てていなかった)。そこにたどりつくには、人間性というビルトインされた駆動装置を取り外さなければならない。そうしなければ我々は我々自身を救うことはできない。このコミューンはハイブマインドで精神的につながってはいても、個々の人間性を捨ててはいなかった。それが間違いだった。だからまずコミューンの信奉者から人間性を奪う。次は人類全体から人間性を奪う。そうして新しい法則の世界へ向かうための使者[Herald]としての役割を自分が果たす(果たさなければならなかったのにここで終わってしまうのか)。というのが、このモノローグから読み取れるヴィクターの思考。そして “greatest evil” のところで歯車が異常[anomaly]を表にして止まり、ヴィクターがアーケインの力によって「最上の悪」になっていくことが示唆される。
補足: シンジドとの議論でヴィクターは「知識とは逆説的なものです。知れば知るほど、いかに自分が何も知らないかを気づかされる」と言っている。これは「完全に理解した」状態(禅でいうところの魔境)にならないために必要な前提だが、このシーンでヴィクターは「完全に理解した」状態になっている。そして最終的に、自分が何も理解していなかったことを(ジェイスを介して)自分自身から教えられる。
S2E6: その他
- ヴィクターが纏っているのはS2E2でジェイスがくれた毛布。
- ヴィクターが人々を治療したりハイブマインドを使ったりする力はアーケイン由来→その力がもう尽きそうになっていたので、ピルトーヴァーの重要施設に入ることができるサロにヘクスゲートのフェイルセーフから異常[anomaly](=ワイルドルーン→アーケイン由来)汚染されたシリンダーを持ち出させようとしたがジェイスに阻止される→ファイヤーライトのアジトのようにヘクスゲート基部から配管を通じてレーン内に流れ込む分があるのでそれを集めていた。
- ジェイスのハンマーは崩壊した未来の爆心地(
[S2E7:34:19] Jayce: This is where it all started, isn't it?)にあったものだから強力な異常[anomaly]の力を使える?→この力で破壊したものは世界の法則から外れる→物体が落ちてこない&グリッチ→因果を超えている。 - ヴィクターが持っていた歯車はジンクスをパウダー呼びしたとき
[10:02]に落ちたもの。シンジドとの議論で知のパラドックスについて語っているとき[16:39]にも持っている。ジェイスに砲撃されたあとにヴィクターの手から滑り落ちるカットは本エピソードで3回[00:38][30:54][36:09]繰り返されるが、すべて転がり方が異なっている→おそらくこのコミューンのくだりは何度も繰り返している。ヴィクター砲撃前にジェイスの顔が分裂するようなカットがあるが、これはジェイスがヴィクターを殺すのを躊躇して逃げ出してしまった世界線の示唆だと思われる。それでは求める結果にたどりつかないため、未来のヴィクターはジェイスをとことんまで追い込んで、強固な決意を持つようにしなければならなかった。
S2Act3: 要約
- 時系列的にはS2Act2: エコーは別の世界線でZドライブを開発する。
- 時系列的にはS2Act2: ジェイスは未来のピルトーヴァーでヘクステックがもたらす破滅を知る。
- ヴィクターはワーウィックの血を受け入れ、人を超えた存在となる。
- アンベッサは黒薔薇と戦うための手段をワーウィックからヴィクターによる「進化」に変更し、ヴィクターを異常[anomaly]の元へ送り届ける約束をする。
- ヴィクターが異常[anomaly]にたどりつくことは人類の滅亡を意味するため、ジェイスはあらゆる人に戦いへの参加を呼びかける。
- イーシャを失ったジンクスは生きる気力を失い、自殺しようとするが、エコーに止められる。
- ノクサス軍がヘクスゲートへ侵攻し、執行官と志願兵からなるピルトーヴァー軍が迎え撃つ。
- アンベッサの謀略によってノクサス軍が優勢となるが、ジンクス、エコー、ファイヤーライト、シルコの元手下たちが参戦し、押し戻す。
- ヴィクターの軍勢が参戦し、「栄光の進化」の準備を整える。
- ケイトリンとメルのタッグがアンベッサと戦い、メルがルブランを召喚してアンベッサを殺す。
- ヴィクターが異常[anomaly]を手にし、「栄光の進化」を開始する。
- エコーがZドライブを4秒制限を超えて使用し、ヴィクターにぶつける。
- ヴィクターは人間性を取り戻し、ジェイスが未来の記憶を見せる。
- ジェイスとヴィクターは「栄光の進化」を止め、消滅する。
- ジンクスはヴァイを救うため、ワーウィックと共に自爆する。
S2E7: Pretend Like It’s the First Time
S2E7: あらすじ
- 異常[anomaly]によって別の世界線に飛ばされたエコーは、オリジナルの人格を上書きする形で目を覚ます。そこではパウダーはジンクスになっておらず、ベンゾーもヴァンダーも、クラガーもマイロも生きている。常に薄暗かったレーンには(空気浄化/集光技術が発展して?)太陽光が差し込んでいる。
- エコーはパウダーたちの話を上の空で聞きながら、異常[anomaly]の絵をノートに描く。それを見たハイマーディンガーは、このエコーが元の世界のエコーであることに気づく。数年前の時点に飛ばされていたハイマーディンガーは、この世界ではヘクステックが発明されておらず、帰還方法がないことをエコーに告げる。
- エコーはパウダーとの会話でヴァイが死亡していることを知る。ヴァイの死の原因となったクリスタル爆発事故が分岐点であることに気づいたエコーは、事故現場からクリスタルの欠片を集め、ハイマーディンガーとパウダーの協力を得て、小さな異常[anomaly]を再現する。この異常[anomaly]を使って時間を巻き戻せることに気づいたエコーは限界を試すが、5秒時点でハイマーディンガーの体が爆散したため、巻き戻しをキャンセルし、使用限界を4秒と定める。
- エコーとパウダーが発明大会前夜祭を楽しんでいる間、ハイマーディンガーは「一時的な底上げ[momentary upgrade]」を装置に施す。この処置によって異常[anomaly]は巨大化し、元の世界へ戻れるだけの力を得る。しかし作動中に装置がパンクし始めたため、ハイマーディンガーは身を挺して装置を動作させ、光と共に蒸発する。エコーはこの世界のエコーと分離され、異常[anomaly]越しにパウダーと一瞬視線を交わし、元の世界へ帰還する。
- 一方、ジェイスは荒廃した未来で目を覚まし、子供のころに出会った魔法使い(未来のヴィクター)と再会するが、魔法使いはすぐに姿を消してしまう。ジェイスは魔法使いを追いかけ、崩壊したピルトーヴァーの光景を目にする。放射状に広がる崩壊の中心はヘクスゲート、つまりこれがヘクステックのもたらした結末だった。
- ヘクステックが機能せず、本来の重さになっているハンマーを担いで、ジェイスは崩壊した世界を歩く。朽ちかけた機械となった人たちは、迫りくる死に怯える瞬間で固まっていたが、突然動き出し、ジェイスは恐怖に駆られて逃げる途中で足元を取られ、崖から落ちる。落下中、ハンマーがジェイスの足を殴打する。ジェイスは落下の衝撃で気を失う。
- ジェイスは鍾乳洞のような場所で目を覚ます。元いた場所に戻ろうとするが、足が骨折していて崖を登れない。ハンマーも足の怪我も異常[anomaly]に浸食されていく。地下水を飲み、謎の生物を食べ、なんとか生き延びる。ただ過ぎていく日々の中で、ジェイスは自分がこれまでいかに浅はかだったかを思い知る。
- ハンマーを分解して足の補助具とし、ジェイスは鍾乳洞から脱出する。ヘクスゲートを目指して移動する途中、また機械人形たちが動き出すが、もうジェイスは動揺しない。空中に浮かぶ瓦礫を使って塔の上を目指し、グリッチの嵐を抜け、崩壊の中心部に到達する。そこには機械の体となった自分自身がいた。ジェイスはこの未来にたどりつかないための「約束」を魔法使い(未来のヴィクター)と交わし、異常[anomaly]に浸食されたハンマーを未来の自分自身から受け取り、元の世界へ帰還する。
S2E7: 脚本
[01:23]
Powder: You’re beyond help.
Powder: Whoa, relax, jumpy. I’ve got a new idea…
Powder: Uh, did you just throw that?
Ekko: Stay… Stay back.
Benzo: Oi. What in the seven sumps is all this racket?
Benzo: Oi, one of those days, huh?
Powder: You know those ugly twins, genius and madness.
Benzo: Maybe take the madness outside. I still got a business to…
Benzo: What’s gotten into him?
- beyond help: 救いようがない。エコーが自分に見とれていると勘違いしたパウダーの軽口。
- what in the seven sumps: “what on earth” のレーン版。おそらく7という数に特に意味はない。
- what’s all this racket?: いったい何の騒ぎだ。
- oi: 日本語の「おい」とほぼ同じ感じ。英・豪で使われる。米ではほとんど使われない。
- one of those days: うまくいかない日。調子の悪い日。
- what’s gotten into ~?: いったいどうしたんだ? “gotten” は米の言い方。英・豪は “got” の方を使う。慣用表現だが視聴者的には「別次元のエコーが入り込んでいる」というニュアンスで聞こえるようになっている。
[03:44]
Powder: Hey, spaceboy, I’m not talking to myself over here. What is up with you? You’ve been out of it all day.
Ekko: I feel like I woke up in the wrong universe.
Powder: This is what happens when you stay up all night. Those synapses start firing around like drunk slugs. There’s still plenty of time before the competition. Okay? We’ll work out the kinks. I’ve got you.
- spaceboy: 意識が宇宙に行ってる、のニュアンス。
- talk to myself: 独り言を喋る。エコーが上の空なのでパウダーはずっと一人で喋ってる感じになっていた。
- out of it: 上の空。
- drunk slugs: ヴァイとの怪物ごっこでもナメクジ出てきたな。
- kink: 欠陥。ここでは発明家大会に出す装置が抱えている問題点。
- I’ve got you: 私がついてる(からちょっとずつ問題を解決していこう)。
[04:14]
Mylo: Ah, if it isn’t Zaun’s royalty. My liege.
Powder: Sit down.
Claggor: Hey, hey, little man. Trouble in paradise?
- if it isn’t ~: 顔見知りに会ったときの「あ、~じゃん」という感じの呼びかけ。ここでは「これはこれは、ゾウンの王ではありませんか」みたいな感じでおどけている。(これ自体は軽口であるにしても)エコーは周りから一目置かれる存在である(ということは周知の事実である)、ということが読み取れる。
- my liege: 我が君。陛下。
- trouble in paradise: いい感じの状況(仕事/人間関係)だったのに問題が発生(してるのか?)。初見視聴時は「プロジェクト進行」の意味で聞こえるが、2周目は「パウダーとの恋愛関係」の意味で聞こえる。「S2E7: その他」のセクションで掘り下げる。
[04:28]
Powder: Just the usual project woes.
Claggor: Tell me about it. We finally got the hybrids to feed off the fissure gases, but the conversion rate’s way too low. They hardly grow. They’re nowhere near robust enough to purify all the air down here.
Powder: Unless you plant a million of them.
Mylo: No way we’re doing that.
Claggor: And we’ve tried cultivating the soil, infusing the water. No luck.
- woe: (産みの)苦しみ。
- tell me about it: わかるよ。俺も同じ(産みの苦しみを経験中)だ。
- fissure gases: 灰色の靄[Grey](を栄養源として育つ植物を品種開発したがガスから栄養への変換率が悪くて育たない)。
[04:49]
Mylo: I’ll be right back.
Claggor: Oh, no. Go. Save him from himself.
Claggor: Where would you be without her?
Mylo: Hey, Gert. No. Oh, come on. Hey…
Powder: Hey, Gert. Do the Chem Sisters have another show coming up? Mylo here is a big fan. Like, huge.
Gert: Cool. Uh, yeah, the old man’s gonna let us play the party the night before that Innovators Competition you all are gunning for.
- save him from himself: 自爆するから助けてやってくれ(助ける対象はガートではなくマイロ自身)→マイロは発明家大会前夜祭のパートナーとしてガートを誘おうとしている(英語圏によくあるパートナー文化を前提しないとただ口説こうとしているだけに見えてしまうやつ)。
- where would you be without her?: パウダーがいなかったらどうなってたことやら→パウダーには助けられっぱなしだ、の意。言い方からして “you” は “generic you” の感じだけど一般的な話ではなくて「俺たちは~」くらいのニュアンス。
- Chem Sisters: ガートがDJを担当する音楽グループの名前。元の世界線でケミ長者[Chem-Baron]を引き立てたのはシルコなので、ケミ長者の代わりがケミシスターズだとしたら、もしかしてシルコがP……? ないか? いやあるな。
- old man: ラストドロップの経営者であるヴァンダーのこと。
- Innovators Competition: 発明家大会。元の世界線でジェイスとヴィクターが参加したのとおそらく同じ→
[S1E9:09:41] Jayce: Remember the Distinguished Innovators competition? - gun for: 賞を取ろうとがんばってる。
[05:41]
Vander: What would they do without you?
Powder: There would probably be some arm-flailing.
Vander: You know, one thing I learned as a bartender: As good as it feels to pour everyone’s drink, you need to fill your own cup every now and again.
Powder: Let me guess. You think I’m holding myself back.
Vander: I think you’re too smart to spend your life in a bar.
- what would they do without you?: お前(パウダー)がいなかったらあいつらどうなってたことか、みたいなニュアンス。
- arm-flailing: 腕をぐるぐる回してるようなイメージ。主語は “existential there” なので、「そういう状況くらいはあるんじゃない?」と少し投げやりな感じで言っている。
- hold oneself back: 自分を抑える。
- too ~ to ~: ~するには~すぎる。ここでは「こんなバーで才能を腐らせておくな」のニュアンス。
[06:45]
Heimerdinger: One can’t go shouting from the rooftops about being thrust into parallel dimensions without awkward consequences. It seems the anomaly which dislodged us from our proverbial reality also scattered us across time.
Ekko: Man, I thought I was going crazy. How long have you been here?
Heimerdinger: One thousand, one hundred twenty-eight days, six hours, and twenty minutes. Give or take.
Ekko: So you’ve just been waiting for me all this time?
Heimerdinger: Precisely. Or rather, imprecisely. I grew skeptical you’d arrive, even during my unusually long lifetime.
Ekko: What about Jayce? Is he here?
Heimerdinger: I fear he may have wound up elsewhere. The anomaly behaved differently around him.
Ekko: Please tell me you figured out a way to get us home.
Heimerdinger: That is a veritable conundrum. I’m afraid Hextech was never invented here. And without a creation so prodigious as the Hexgates…
Ekko: No anomaly.
Heimerdinger: Oh, it isn’t all bad. I’ve been able to accomplish wonderful things in this world. Give it time to settle. This place will grow on you. You’ll see.
Ekko: Grow on me? I have people back home who need me. We don’t belong here.
Heimerdinger: And yet we can’t leave.
Ekko: I’m gonna find a way back, with or without you.
- dislodge: 追い払う。世界から弾き出されるイメージ。
- proverbial: (我々に)おなじみの(元いた世界)。
- veritable: 真の。ここでは「いやそれがまったくもって(難題なんだ)」のニュアンス。
- prodigious: 驚異的な。巨大な。
以下、会話の流れ。
- ハイマーディンガー: 並行世界に迷い込んだ、なんて大声で叫んでまわれば奇異の目で見られることは必至だ(からできないのは当然だ/やらないのは賢明だ)。
- ハイマーディンガー: あの異常[anomaly]は、我々を元の世界から弾き出しただけでなく、時間軸においても我々をバラバラにしたようだ→別の平行世界に飛ばした&飛ばし先の時間軸がハイマーディンガーとエコーで異なっている、ということを説明している。
- エコー: よかった。俺がおかしくなったのかと思ってたよ。どれくらいここにいるの?
- ハイマーディンガー: 1128日と6時間20分。おおよそだがね。
- エコー: その間ずっと俺を待ってたってこと?
- ハイマーディンガー: その通り。いや、厳密には違うな。さすがに私の極めて長い人生(における時間感覚)でも、君が来るかどうか疑問に思い始めていた。
- エコー: ジェイスは? あいつもここに?
- ハイマーディンガー: おそらく別の場所に飛ばされている。あの異常[anomaly]は、彼の周りでは(我々の周りで発生したのとは)別の挙動をしていた。
- エコー: 頼むから「帰る方法はわかってる」って言ってくれ。
- ハイマーディンガー: いやそれがまったくもって難題でな。この世界ではヘクステックが発明されていないのだ。ヘクスゲートのように驚異的(巨大)な装置も作られていない……(ということは)。
- エコー: 異常[anomaly]もない。
- ハイマーディンガー: まあそう悪いことばかりでもないぞ。私はこの世界でもすばらしいことを成し遂げてきた→発明によって(だけではないかも?)社会貢献して、居場所を作ってきた(馴染んできた)という感じのニュアンス。
- ハイマーディンガー: ゆっくり馴染んでいけば、君もこの世界を気に入るはずだ。
- エコー: 気に入るだって? 俺には帰るべき場所があって、そこには俺を必要としてる人がいる。ここは俺たちの居場所じゃないだろ。
- ハイマーディンガー: しかしそれでも、帰ることはできないのだ(残念ながら)。
- エコー: 俺は絶対に帰る方法を見つけてみせる。あんたの協力がなくてもね。
[09:38] Jayce: You. Did you bring me here? Where are we?
“You” は「あなたはあのときの魔法使い」のニュアンス。
[10:32]
Powder: What’s with the third degree, Ekko? We’ve been working on this for months.
Ekko: Humor me.
Powder: You had one of your funky dreams about an energy-storage device that you swore would win the competition. So you came to me for help.
Ekko: I came to you?
Powder: You weren’t gonna figure it out yourself.
Ekko: “Zero-loss chemical energy cell.”
Ekko: And this invention. You don’t have some alternative purpose for it?
Powder: You’re the big idea guy.
Powder: Sorry, sis. Someone’s wigging out over his project and having an identity crisis again. No names.
Powder: I got the “not living up to my potential” speech from Vander again. Reminds me of you.
Ekko: She’s dead? How?
Powder: That’s not funny, Ekko.
Ekko: It was a mistake to come here.
Powder: What’s that supposed to mean? Just ’cause you’re having a bad day, don’t take it out on me.
Ekko: Was it you?
Powder: You gave us the tip. We went on that job because of you.
Ekko: The job. That’s why there’s no Hextech here.
Powder: You should leave. Go. Before I do something I regret.
Ekko: Believe me, I’m working on it.
- third degree: 尋問(のような厳しい問い詰め)。
- wig out: パニックになる。
以下、会話の流れ。
- パウダー: エコー、なんでそんなに根掘り葉掘り聞いてくるのさ。何か月も一緒にやってきたことでしょ。
- エコー: いいから頼むよ。
- パウダー: あんたの奇天烈な夢がまた始まったの。エネルギー貯蔵装置で大会に優勝できるって。それで私に(開発の)手伝いを頼んだんでしょ(なんで覚えてないの?)。
- エコー: 俺が、お前に?
- パウダー: 自分だけじゃ無理だったからでしょ。
- エコー: ゼロ損失化学エネルギーユニット……→言葉の響きから想像できるのは、1. 貯蔵されたエネルギーを取り出す際に排熱のような損失がない、2. ゾウンの技術であるケミテックの応用、3. 手のひらサイズの電池のようなもの。
- エコー: それでこの発明ってさ、お前には他の目的はないの?→元の世界のジンクスの印象が強すぎて、何か裏があるんじゃないかと疑っている。
- パウダー: 思いついたのはあんたでしょ。
- パウダー(ヴァイの遺影に): ごめんね姉さん。誰かさんが進捗に焦ってまたアイデンティティ・クライシスに陥ってるみたい。誰とは言わないけど。
- パウダー(ヴァイの遺影に): 「お前は自分のポテンシャルを発揮してない」って、またヴァンダーに説教されたわ。あんたを思い出すよ。
- エコー: ヴァイは……死んだのか? なんでだ?
- パウダー: 笑えない冗談ね、エコー。
- エコー: なんでこんなところに来ちまったんだ→直訳だと「ここに来たのが間違いだった」だが、独り言のようなセリフなのでこういうニュアンスになる。
- パウダー: それどういう意味? 調子が悪いからって私に八つ当たりするのはやめてよ。
- エコー: お前が(ヴァイの死の原因)?
- パウダー: 情報をくれたのはあんたでしょ→
[S1E2:09:42] Vi: It was a tip from Little Man. - パウダー: 私たちがあの「仕事(盗み)」に行く理由を作ったのはあんた→だから根本的な原因はエコーだ、のニュアンス。
- エコー: (そうか)あの「仕事」(が分岐点なんだ)。だからこの世界にヘクステックがないのか。
- パウダー: 帰って。今すぐ。私が(後悔するようなことを)何かやらかす前に。
- エコー: 大丈夫だ。(元の世界に帰るための準備に)いまから取り掛かる→ “I’m working on it” は “You should leave” にかかっている。パウダーは「この場所から出て行って」と言っているだけだが、エコーは「この世界から出ていく」の意味で返答している。
[16:31]
Heimerdinger: You think you can recreate the anomaly with these?
Ekko: That’s the theory.
Heimerdinger: Inconceivable.
Ekko: So you’ll help me?
Heimerdinger: I meant that quite literally. I don’t believe this can be done. Tampering with the Arcane never ends well, lad. The risk is far too great.
Ekko: You said I was your pupil. I need a professor. Better yet, a partner.
Heimerdinger: Oh, blast nozzles. How could I forsake a brilliant lad in need? Again.
- tamper: (勝手に)いじりまわす。アーケインは人の手に余るものだ、のニュアンス。
- blast nozzles: ハイマーディンガー特有の感嘆詞。英語の一般的な表現ではない。
以下、会話の流れ。
- ハイマーディンガー: これ(クリスタルの欠片)で異常[anomaly]を再現できると?
- エコー: 理論上は(可能だろ)。
- ハイマーディンガー: 信じがたい。
- エコー: 手伝ってくれる?
- ハイマーディンガー: いや(さっきの発言は)文字通りの意味だよ。実現可能だとは思えん→ハイマーディンガーは特徴のある感嘆詞をよく用いるので、エコーは「いつものやつ」と思った。ちなみに世界線移動前にも使っている→
[S2E3:18:47] Heimerdinger: Inconceivable. - ハイマーディンガー: アーケインに手を出して良い結果になったためしがない。危険すぎる。
- エコー: 俺を弟子だって言ったじゃないか。俺には師匠が必要なんだよ。いやむしろ、相棒が。
- ハイマーディンガー: ああ、まったくもって。聡明な若者が困っているのを見捨てるようなことはしないさ。二度と→ジェイスとヴィクターのヘクステック開発を断固拒絶するのではなく監督するべきだった、のようなニュアンスか。
[21:34] Powder: Things are good, Ekko. I like my life. I don’t wanna lose what makes me “me” chasing some wild dream.
ヴァイを事故で死なせたことでパウダーは自分の意志で何かをすることをやめた。不吉な結果を招かないように自分を抑えている。
[25:35] Ekko: I was playing with inversions on Jayce’s acceleration rune.
加速[acceleration]のルーンは、元の世界線で未来のヴィクターが幼少期のジェイスに渡したクリスタルに刻まれていた文字→ [S2E9:36:17] Viktor: In all timelines, in all possibilities…
[27:26] Heimerdinger: And what’s the point of a device like this if you don’t enjoy the time you have?
ハイマーディンガーは不老ゆえの(薄く引き伸ばしたような)時間感覚で生きていたがエコーと出会って時間の使い方(=人生観)が変わった→終盤の [36:13] Heimerdinger: I must say that since I've met you, lad, I've truly lived. につながる。LoL本編でも時間操作スキル持ちだったエコーが、悠久を生きるハイマーディンガーの「時間」をこういうふうに変えたっていうのがとてもエモい。
[29:08]
Vander: You should be proud of yourself, Ekko. Powder’s been raving about your Z-Drive. Can’t remember the last time I saw her so alive. I have the feeling that you’ll be running this place soon.
Silco: So there’s a chance for us yet.
- rave about: 絶賛する。興奮気味に称賛する感じ。
- run this place: ラストドロップのこととも取れるし、ゾウンのこととも取れる。どちらにしても、エコーがパウダーのパートナーとして、というニュアンスを含意している感じ。
- chance: これもどうとでも取れるが、親密そうにスキンシップを取りながら言っていることからして、(ヴァンダーがリタイヤするのなら)私たちがロマンティックな関係になるチャンス(はまだある)の意か。
[30:54]
Powder: Some night.
Ekko: It’s beautiful.
Powder: Where’d you learn those moves?
Ekko: Oh, I was just following your lead.
Powder: Mm. He’s got lines.
Ekko: Hey. Uh… I just want to thank you. You know, for everything. I used to dream the undercity could be like this. But somewhere, I… got consumed by all the ways it wasn’t. I gave up on it. Gave up on you.
Powder: I’ve never seen you give up on anything, Ekko.
Ekko: You ever wish you could just… just stay in one moment?
Powder: Sometimes taking a leap forward means leaving a few things behind.
Ekko: I promise I’ll never forget this.
- パウダー: 素敵な夜ね。
- エコー: 綺麗だ。
- パウダー: どこで踊り方を覚えたの?
- エコー: お前に合わせてただけだ。
- パウダー: まあ、口もうまいだなんて→ “line” は口説き文句[pickup line]のニュアンス。三人称 “he” を使って、からかうような口調で言っている。
- エコー: なあ、その……。ありがとな。あれだ、いろいろ。地下都市がこんなふうになったらいいなって、昔は夢見てた。でも、変えられない現実に打ちのめされて、いつのまにか諦めちまってた。お前のことも(諦めてしまった)→パウダーがシルコの元に行ったあと、エコーがその状況をどうにかしようとしていたことが読み取れる。
- パウダー: あんたが何かを諦めるところなんて見たことないよ、エコー。
- エコー: ずっとこの瞬間に留まっていられたらいいのに、って願ったことはある?
- パウダー: 「前に進むためには何かを置いていかなきゃいけないときもある」でしょ→
[21:49] Ekko: Sometimes taking a leap forward means leaving a few things behind. - エコー: (俺自身の言葉なんだから)忘れないようにするよ。
[33:50] Ekko: This is a big upgrade.
[27:15] Heimerdinger: A momentary upgrade, if you will. って言ってたのに。 "momentary" は「束の間の」の意。本エピソード全体を貫くテーマ "moment" にかかっている感じ。
[36:10] Heimerdinger: Never a dull moment.
「まったく退屈しないな」のニュアンス。ここでも “moment” が使われている。
S2E7: その他
- ガートは元の世界でジンクサー[Jinxers]だったキャラクター。
- エコーが橋を渡っているときに登場するモブも元の世界のキャラクターが多い。1. 床屋で髭をカットされているのはS1E1でハックを脅していた男。2. 屋台で談笑しているのは、2.1. S1E5の違法肉屋店主ジェリコ。2.2. S1E4でシルコの密輸を見逃していた税関職員。2.3. S1E3でアカデミーの夜間警邏をしていたハロルド。たぶん他にもいっぱいいるがきりがないのでこのへんで。
- ジェイスのハンマーが機能しなかったのは、アーケインが「表出」というレベルではなく「顕現」したような世界ではもう魔法の力を「取り出す」ことができないからか。
- ジェイスが足を骨折し、地の底で暮らし、地上へ這い上がるのは、ヴィクターの人生をなぞっている。ヴィクターは足が不自由で、下層で生まれ育ち、ハイマーディンガーに見出されてアカデミーに入った。
- 描写から察するに、Zドライブは使用者の周りの時間を操作しているだけで、使用者自身の時間は常に(精神的にだけでなく物理的にも)順方向に流れている。だから巻き戻しをキャンセルしても、爆散したハイマーディンガーの毛がエコーの体に付着したままになっている。S2E9でエコーがジンクスの自殺を阻止する際も、グレネードによって生じた傷がエコーの顔に残っている。ちなみに巻き戻しの限界が4秒なのはLoL本編の設定から。
- 世界の分岐点となったクリスタル爆発事故について。パウダーが盗んだクリスタルは合計6個。元の世界線で爆発したのは1個。本エピソードの世界線で爆発後にパウダーが持っているのは3個なので、おそらくこちらでは3個爆発している。これによって爆発が大規模になり、次のように結果が変わった。1. ヴァイが死亡。2. 扉の反対側にいたジェイスとケイトリンも死亡or重傷。3. ジェイスが生存している場合でも事故の規模が大きくなったことにより処罰が重くなるorヴィクターがジェイスの身投げを止めなかった。4. これによりヘクステックが開発されなかった。
- エコーがパウダーに送ったネックレスの花柄は、右側にパウダー、左側にエコー、それぞれの横顔をかたどった模様になっている。
- パウダーはエコーが別人であることを感づいている。1.
[23:31]でエコーとハイマーディンガーが作業しているのを怪訝そうに見つめたあと黒板に書かれた内容を見る→どこでこんなことを思いついたのかという疑問が生じている。2.[23:54]で異常[anomaly]についての(おそらくエコーの)ノートを見たときにも怪訝そうにしている。3.[24:00]でソファに寝転がってエコーを見る視線も「何かがおかしい」と訴えている。4.[24:53] Powder: So, what does it do?と聞いている→何に使うものかは知らされていない。5.[27:12]でZドライブ実験終了後に立ち去る際にも怪訝そうにしている→おそらくここで(ほぼ)確信した。6.[33:42]で発生した異常に気づいてすぐにエコーのところへ駆けつける。これらは、パウダーが「別世界の存在について推測・理解できる」ということを示唆している→S2E9でエコーから別世界のことを聞かされても「理解」できる→おそらくエコーが語ったであろう "a good version of me" について信じることができる→イーシャが死んで[S2E8:22:37] Jinx: There's no good version of me.だと確信したことでジンクスは自殺を決意したので、 "a good version of me" が存在する可能性があると信じられたなら、自殺を思いとどまれる。 - この世界線のエコーとパウダーは本エピソード開始前から付き合っている。1.
[04:09] Powder: I've got you.でパウダーは自然な感じでスキンシップを取る。2.[04:14] Mylo: Ah, if it isn't Zaun's royalty.→王がいるなら王妃がいるはず→エコーとパウダーがセットで「ゾウンの王族」というニュアンス。3.[04:22] Claggor: Hey, hey, little man. Trouble in paradise?→「似合いのカップルなのに痴話喧嘩か?」みたいな感じで突っついている。4.[10:53]で画面右上に映る花束には "I ♡ you" というメッセージが添えられている。5.[12:03]でエコーが落としたノートにはハートマークや二人の舌がふれあうようなイラスト。6.[28:29] Benzo: Where's the little lady?の "little lady" は義理の息子のただの女友達に対して使うには親密さが出すぎる表現→少なくともベンゾーは二人をカップルだとみなしている。7.[29:17] Vander: I have the feeling that you'll be running this place soon.→このセリフの直前にパウダーの話をしているので、エコーとパウダーの二人で、というニュアンス。8.[32:06] Ekko: Can we just pretend like it's the first time?→さすがにエコーも気づいたのでこう言っている。
以下、ジェイスが鍾乳洞で思い出している過去のセリフ。
[S2E2:16:42] Jayce: I never asked for this.[S1E3:07:50] Jayce: That research is everything. My whole life.[S1E7:07:39] Jayce: He was my mentor, Mel. And I betrayed him.[S1E6:18:43] Heimerdinger: You must destroy it.[S1E2:17:05] Heimerdinger: It corrupts, consumes.[S1E2:16:05] Jayce: I was trying to create magic.[S1E8:19:58] Ambessa: (Who said anything about) Piltover.[S1E7:07:56] Mel: It's your time now, Jayce.[S1E3:26:50] Mel: Perhaps it's time.[S1E3:08:08] Jayce: No. No. (No. You heard the Council. If we're wrong…)→他にもある気がするがたぶんこれ。[S1E3:26:52] Mel: For the era of magic.[S1E6:18:52] Heimerdinger: I've seen nations destroyed…[S1E3:13:38] Jayce: Please. (We can prove that it works.)→他にもあるはずだがたぶんこれ。[S1E6:18:57] Heimerdinger: …exactly like this.
S2E8: Killing Is a Cycle
S2E8: あらすじ
- 魔法の力に覚醒したメルは、黒薔薇の首領であるルブランから祝福を受ける。ルブランはアンベッサが世界を破滅に導いていることについて、そしてそれを止める役割をメルに期待していることを語る。メルは懐疑しながらもルブランの分身を召喚する魔法具を受け取り、ピルトーヴァーへ帰還する。
- ジェイスの攻撃によって致命傷を負ったヴィクターは繭のような球体の中で仮死状態となるが、シンジドがケミテック装置を通してワーウィックの血の成分を繭の中に流し込み、ヴィクターを生きながらえさせる。ヴィクターは信者たちの体を通してシンジドとアンベッサに語りかけ、シンジドの変容処置(ヴィクターをヘクステックの完成形にする)を完遂させるにはヘクスゲート基部の異常[anomaly]が必要であると説明する。アンベッサは自分の兵士を「進化」させることを条件に、ヴィクターを異常[anomaly]の元へ送り届けることを約束する。ヴィクターは残った力を振り絞ってハックを「進化」させ、軍事衝突が生じる前の最後通牒に向かう。
- 迫るノクサス軍への対応策をケイトリンが考えているところに、負傷から回復したヴァイがジンクス逮捕について抗議に来る。ケイトリンはジンクスの作戦参加を隠していたことについての抗議で返し、二人は口論する。
- ケイトリンはジンクスの独房に食事を持っていく。前回の食事には手が付けられていない。ケイトリンはジンクスに釈明の機会を与えるが、イーシャを失い、生きる気力も失ったジンクスはケイトリンに殺されることを望む。憎悪することに疲れ果てたケイトリンは何もせずに立ち去る。
- ヴァイはジンクスの能力を「善いこと(=差し迫った危機の打破)」のために使えば状況が変わるかもしれないと考え、ジンクスを解放しようとするが、ヴァイまで失いたくないジンクスはヴァイを牢に閉じ込め、「悪循環を断つ」ために牢を立ち去る。
- 修繕された議会ホールでこれまでのことを思い返していたジェイスのところへメルが帰還する。ハンマーが反応したことでメルの魔力に気づいたジェイスは、なぜ爆撃時に全員を救わなかったのかとメルを糾弾する。口論の最中、ジェイスは柱の裏に隠れていたハック(ヴィクター)の存在に気づき、ハンマーで砲撃する。ヴィクターはノクサス軍が自分に協力していることを明かし、軍事的衝突が生じる前に、平和裏に自分をヘクスゲート基部の異常[anomaly]まで通すよう求めるが、ジェイスは拒絶する。交渉決裂によりヴィクターはジェイスを殺そうとするが、メルの魔法の助力を得て、ジェイスはハック(ヴィクター)を倒す。
- ジェイスとの交渉が決裂したことでヴィクターは心を決め、シンジドに本格的な変容処置(ワーウィックからの直接的な輸血=融合)を始めさせる。信者たちの体は完全に機械化し、イーシャの攻撃で再生不可能なほどに破壊されたワーウィックの脇腹も修復され、繭の中でヴィクターの新しい体が形成されていく。同時に、ヴァンダーの記憶は灰燼に帰し、ヴィクターの人間性も失われていく。古い体から脱皮するように、「アーケインの先触れ」としてのヴィクターの顔が生じる。
- ジェイスは上層と下層の代表を招集し、ノクサス軍とヴィクターの軍勢が攻めてくることを伝え、団結して危機を乗り越えることを呼びかける。何人かのハウス代表が場を去り、下層代表のセヴィカとスカー(ファイヤーライトのサブリーダー)も続く。音楽家のような非戦闘員が戦いに志願し、急遽訓練を受ける。都市外郭は放棄され、ヘクスゲートに最終防衛線が敷かれるため、戦いに加わらない市民は避難する。戒厳令により設置されていた検問所は撤去され、上層は下層の占領を終える。下層からも少数の市民が戦いに志願する。
- 軍事衝突を回避するため、メルはノクサス軍の拠点を訪れる。アンベッサはメルの生存を喜ぶが、黒薔薇との戦いの手段を手に入れるため、ピルトーヴァーへの侵攻をやめるつもりはない。アンベッサはメルにヴィクターの軍勢を見せる。
S2E8: 脚本
[01:22]
LeBlanc: Drink the moment, Mel Medarda. There is no time like your first.
Mel: I’m one of you? A mage?
LeBlanc: We each have our own expressions. Yours is quite rare. An empath. Attuned to the ethereal. Able to sense others’ inner selves and bend their magic. A conduit and a mirror.
Mel: What does that make you? Even now you hide your true face behind illusions.
LeBlanc: Truth is the greatest illusion of them all.
Mel: I think beneath that mask you’re scared. I can see through your tricks. That makes me a threat.
LeBlanc: For the gifted, arrogance is the ultimate threat. Your power has merit. But should one want you dead, a simple blade would do nicely.
Mel: Where is my brother?
LeBlanc: Regrettably, his fate wasn’t among your mother’s lies.
Mel: You killed him.
LeBlanc: I gave Ambessa every opportunity to atone for her transgressions. She chose pride over progeny. But you need not bear her crimes.
Mel: The test. This whole charade. You want to recruit me.
LeBlanc: Your talents developed quickly. It’s no coincidence. The Arcane is waking up.
Mel: What has my mother done?
LeBlanc: A calamity is approaching, rivaling even the ancient Rune Wars. Ambessa sits at the helm, blinded by her thirst for legacy. Our efforts to divert her course have foundered. We can’t afford another failure.
Mel: This is what you see in me? A silver bullet?
LeBlanc: I see salvation of your city, countless others beyond.
Mel: She’s my mother. For all her faults, she has always done what she thought was best for the family.
LeBlanc: Your brother thought so too, until he uncovered her secret. Your birth, the entire course of your life, was no accident. She hid you because you are that which she covets most: a weapon.
LeBlanc: Today you’ve been born into a new family, from which you’ll find there is sadly no return. Those untouched by the Arcane fear us.
Mel: What is this?
LeBlanc: A welcome to your future.
LeBlanc: The world is a perilous place for a solitary mage… sister.
- expression: あらわれ。魔法がどのように「表出(発現)」するか、のニュアンス。
- empath: 他者の感情を読み取る人。日本語だと「サトリ」が近いか。
- attune: 同調する。ラジオのチューニングを合わせるイメージ。
- ethereal: エーテルの。霊的な。形容詞だが “the” が付いて、「~それ自体の世界/領域」のようなニュアンスになっている。
- conduit: 導管。メル→他人へのパス。 “mirror” と合わせると増幅器のような感じか。半導体レーザーのように両端を鏡とすることで内部で力が増幅されるイメージ。全体としてメルの魔法は「魔力共振」である、というような説明になっている。
- what does that make you?: それならお前の方はどうなんだ、という感じで言い返すときに使うフレーズ。相手が言っていることを逆手に取る感じで使われることが多い。日本語に変換しにくい。この場面だとメルがルブランの話を「鏡で反射」している感じ。
- Rune Wars: はるか昔にルーンテラで起こった魔法戦争。
- sit at the helm: 舵を取る立場にいる。ここでは「アンベッサが世界を破滅に向かわせる方向へ舵を取っている」の意。
- legacy: 後世へ伝わるもの。ここでは「メダルダ家orアンベッサ自身の名を歴史に刻むこと」の意。
- silver bullet: (狼男を殺す)銀の弾丸。転じて、大きな問題を一気に解決する特効薬。一発逆転の切り札。
以下、会話の流れ。
- ルブラン: (魔法の力に覚醒した)この瞬間を堪能せよ、メル・メダルダ。初めてに勝る瞬間はない。
- メル: 私もあなたたちと同じ、魔法使いなの?
- ルブラン: 魔法の力がどのような形で発現するかは個々によって違う。お前の力は極めて珍しい。共振能力――霊的世界に波長を合わせ、他者の内面(内的自己=本質)を感じ取り、対象の魔力を捻じ曲げる力。伝送(導管)と反射(鏡)(による共振)だ→メルが政治家・実業家として極めて優れた能力を持っていたことの説明にもなっている→このあとのジェイスとの会話で出てくる “a passenger” につながる。
- メル: それならあなたは(何者か/何の能力を持っているのか)? いまだに本当の顔を幻で隠しているようだけど。
- ルブラン: 真実こそ最上の幻だ→ルブラン(黒薔薇)はノクサスの歴史を陰から操ってきた=真実という幻を作ってきた、という意味でもあるが、実際のところは煙に巻くような回答=ごまかし。
- メル: その仮面の下では怯えているんでしょう。あなたのペテン(ごまかす手口)は見抜けるわ。だから私が脅威になるのね→メルには人の心を読み取る力がある→ペテンを使って人を陥れるルブランのようなタイプにとっての天敵。
- ルブラン: (魔法の)才ある者にとって、最大の脅威は驕りだ。たしかにお前のそれは特別な力だが、お前に殺意を抱く者がいれば、ただの刃物一本で用は足りる。
- メル: (本物の)兄はどこ?
- ルブラン: 残念ながら、お前の母が語った嘘の中に彼の命運は含まれていない→アンベッサはキノに関しては本当のことを言っている→キノはもう死んでいる。
- メル: お前が殺したのね。
- ルブラン: 私はアンベッサに罪(「S1E9: その他」のセクションを参照)を償う機会を十分に与えたが、やつは子よりも誇りを選んだ。しかし、お前がやつの罪を背負う必要はない。
- メル: この「試練」もすべて茶番だったのね。私を仲間に引き入れるための。
- ルブラン: お前の才がこれほど早く開花したのは偶然ではない。アーケインが覚醒しつつあるのだ→ヴィクターによって。
- メル: 母は何を(した/しようとしている)?
- ルブラン: 惨禍が訪れようとしている。古代ルーン戦争にも比肩するほどの惨禍が。歴史に名を刻む(=メダルダ家をこの先も名家として存続させ続ける)ことに執着し、行き先を見失ったアンベッサが(破滅へ向かうこの状況を)先導している。進路修正の試み(→アマラによる暗殺)は失敗した。これ以上の失敗は許されない。
- メル: それが私に求める役割? (アンベッサという狼を殺す)銀の弾丸?
- ルブラン: お前の都市(ピルトーヴァー)の救済(をお前の役割として見ている)。それは数多の命の救済だ。
- メル: 彼女は私の母よ。どんなにひどい面があったとしても、いつだって家族のためを想って行動してきた。
- ルブラン: お前の兄もそう思っていた。やつの秘密を暴くまではな。お前の出生、これまでたどってきた道筋、それらは偶然の産物ではない。やつがお前(の魔法の才)を(黒薔薇の目から)隠していたのは、お前こそがやつの最も欲するもの、「兵器」だったからだ→アンベッサがルドとの間に子をもうけたのは(黒薔薇と戦うための)兵器が欲しかったからだ、と言っている。
- ルブランがメルにネックレス(ルブランの分身を召喚するための魔法具)を渡す。
- ルブラン: 今日、お前は新しい家族の元に生まれた。悲しいかな、ここ(新しい家族=黒薔薇)から引き返すことはできないとすぐに知るだろう(=足抜けすることはできないぞ)。アーケインにふれられぬ者たち(=魔法の才のない者たち)は、我らを恐れる(からお前も迫害される)→孤独感を煽って黒薔薇に帰属させようとしている。
- メル: これ(このネックレス)は?
- ルブラン: お前の未来への「歓迎」だ→ “welcome to” ではなく “a welcome to” なので、「ようこそ」ではなく「歓迎の贈り物」の意。これを使ってアンベッサを殺し、黒薔薇という新しい家族(=未来)に加わらせるための。
- メルが荒野を歩いてピルトーヴァーに戻る。
- ルブラン: この世界は危険に満ちた場所となるぞ。孤立した魔法使いにはな。姉妹よ→さらに孤独感を煽って、黒薔薇のみが唯一の居場所だと思い込ませようとしている。
[06:30]
Singed: I regret that I couldn’t save him. His injuries were too severe.
Ambessa: We do not lament a warrior’s death. We avenge it. What of their Herald?
Singed: The blood should sustain Viktor for a short while. Beyond that, it is up to his own will.
Ambessa: You promised a cure to death.
Singed: An outcome dependent on Viktor’s survival.
Viktor: Doctor. Your ingenuity deserves praise.
Singed: Viktor.
Viktor: I am… grateful. The world I now see is more… lucid than ever.
Ambessa: You can inhabit your followers?
Viktor: We are one. This is the Glorious Evolution. Or it could have been. I sense my twilight approaching. An anomaly festers beneath the Hexgates. I believe it has the capacity to complete the doctor’s transformation.
Ambessa: This will allow you to evolve others?
Viktor: In theory. But Jayce’s attack has done its work. I do not have the strength to overcome the defense he will raise against me.
Ambessa: I will deliver you to this anomaly, if you agree to empower every soldier I bring you.
Viktor: I will evolve all those willing.
- シンジド: (リクタスを)救えなかったことを遺憾に思う。彼の傷は深すぎた。
- アンベッサ: 我々は戦士の死を悔やまない。復讐を誓うのだ。「先触れ(ヴィクター)」の容体は?
- シンジド: この(ワーウィックの)血の作用によって少しは持ちこたえる。それ以降は、彼の意志次第だ→ヴァンダーの人間性を犠牲にしてワーウィックの血(=驚異的な再生能力)を受け入れる意志はこの時点のヴィクターにはない。シンジドは直接会話して知っているので “up to his own will” は「ヴィクターが拒絶すれば処置は失敗する」の意か。ヴィクターはジェイスとの戦闘後に完全に覚悟を決めて、シンジドに本格的な処置を始めさせる。
- アンベッサ: 死を治療(超克)すると約束したはずだ→それならヴィクターの死も止められるはず。
- シンジド: それはヴィクターが生き延びてこそ実現されることだ→鶏と卵。
- ヴィクター: 博士。あなたの才知は称賛に値する→死にかけた自分の命をつなぎとめていることに対する称賛。
- ヴィクター: 僕はいま、感謝の念で満ちている。かつてないほどに世界が明瞭に見える。
- アンベッサ: 信者の体を乗っ取れるのか?
- ヴィクター: 我々はひとつ。これが「栄光の進化」だ。……そうあるはずだった。自分の黄昏(力が尽きる瞬間)が近づいているのを感じる→だからこのままでは「栄光の進化」は完成しない。
- ヴィクター: ヘクスゲート基部にある異常[anomaly]、それが博士(が僕に施そうとしている処置→死を超克した存在への進化)の変容処置を完遂させられる力を持っているはずだ。
- アンベッサ: それで他の者たちも進化させられるのか?
- ヴィクター: 理論上は(可能だ)。しかしジェイスの攻撃は(僕に/僕の計画に)致命的なダメージを与えた(僕の進化を阻害するという目的を果たした)。彼が僕に対して準備するであろう防衛を突破する力はもう残っていない。
- アンベッサ: お前をその異常[anomaly]の元へ運んでやる。その代わり、私が連れてくるすべての兵士に力を授けなさい。
- ヴィクター: 望む者すべてを進化させよう→望まない者は進化させない→しかしこの矜持は人間性を捨てたあとにはなくなってしまう。
[10:20]
Maddie: Maybe we can negotiate.
Caitlyn: Not with Ambessa. I saw it in her eyes. She will burn Piltover to the ground for my betrayal.
Maddie: You can’t blame yourself.
Caitlyn: I don’t need consolation. I need a plan.
Vi: Arrested?
Caitlyn: I can handle this, Maddie. Check on my father?
Caitlyn: Vi.
Vi: She saved your life.
Caitlyn: If you will calm down for one…
Vi: Even knowing you’d never have done the same for her.
Caitlyn: We’ll never know, will we? You didn’t let me in on that part of your plan.
Vi: Clearly the right call, since you still can’t trust her enough not to shove her in a box.
Caitlyn: Trust? You believe I’m so daft I can’t recognize a contingency? She wasn’t there for my benefit. You didn’t trust me to follow through.
Vi: Can you blame me? How long were you sidled up with that shifty, self-serving war pig? She oinked poison in your ear. You just ate it.
Caitlyn: I know!
Caitlyn: The only thing Jinx cared about was getting you to safety. Then she just surrendered. I didn’t even have time to think before they hauled her off. She’s being held in the bunker while I decide what to do. I was waiting for you to recover.
Vi: Cait, she’s changed.
Caitlyn: We can’t erase our mistakes. None of us.
Vi: Who decides who gets a second chance?
- contingency: 不測の事態。ここでは不測の事態に対する保険=ジンクスの役割、の意。
- follow through: (約束に)最後まで従う。(計画を)最後までやり通す。ここではどちらのニュアンスも含めている。
- oink: 豚がブーブー鳴く。ここでは「アンベッサのうさんくさくて身勝手な戦争理論やその他諸々(を耳元で垂れ流されていたケイトリンが何も疑問に思わず豚のように食べてた)」の意。
- bunker: ここでは「堅牢な(地下)収容施設」のニュアンス。
以下、会話の流れ。
- 地図はノクサス軍の艦隊がピルトーヴァー最北部にあるヘクスゲートへ侵攻することを示す。
- マディー: 交渉可能かもしれない。
- ケイトリン: アンベッサがいる限り無理ね。彼女の瞳にその意志を見たわ(→
[S2E6:32:50])。私の裏切りへの報復としてピルトーヴァーを焼き尽くすと。 - マディー: 自分を責めないで。
- ケイトリン: 慰めはいらないわ。必要なのは打開策よ。
- ヴァイ入室。
- ヴァイ: (ジンクスを)逮捕しただって?
- ケイトリン: ここはいいわ、マディー。父の様子を見てきてくれる?
- マディー退室。
- ケイトリン: ヴァイ。
- ヴァイ: あの子はあんたの命を救ったのよ。
- ケイトリン: 少し落ち着いて……→ヴァイがセリフを重ねて途切れているが “second” と続く。
- ヴァイ: あんたが同じことを決してしないってわかっていてもね→セリフが切れているのでわかりにくいが直前のヴァイのセリフから続いている。もしケイトリンがジンクスの立場だったとしたらケイトリンはジンクスの命を救わなかっただろうということをジンクスは理解しながらもケイトリンの命を救った(のに逮捕するだなんて)。
- ケイトリン: 誰にもわかるわけないじゃない。私はあなたの(本当の)計画に加えてもらってなかったんだから→ジンクスが協力していたということをケイトリンはヴァイから知らされていなかった→もしジンクスが命の危険にさらされるような事態になっていたとしてもケイトリンはどうすることもできない→だからケイトリンがジンクスを救うかどうかは誰にもわからない→自己弁護しつつヴァイを責めている。
- ヴァイ: どう考えても(その判断は)正解だったね。あんたはあの子を牢屋にぶち込まずにいられないほどには、あの子を信用してないんだから→ケイトリンとジンクスが一緒に行動していたら失敗していた→だからケイトリンにジンクスの協力について教えないという自分の判断は正しかった→自己弁護しつつケイトリンを責めている。
- ケイトリン: 信用ですって? あなた、私が「万一の保険」に気づかないほどバカだと思ってるの? 彼女は私の(安全の)ためにいたわけじゃない。あなたが私を信用しきれなかった(=最後まで計画に従うかどうかわからなかった)からでしょ。
- ヴァイ: 私を責められるの? あんた、あのうさんくさい自己中の戦争豚と、どれくらいの間べったりだったの? あいつはあんたの耳元でブーブー言いながら毒を垂れ流して、あんたはそれを(豚のように)食べてただけじゃないの。
- ケイトリン: わかってる!
- ケイトリン: ジンクスが気にかけていたのはあなたの安全だけ。(ヴァイの安全を確認したら)彼女は自分から投降したのよ。私が何かを考える暇もなく連行されたわ。いまは堅牢な地下施設に収容されてる。私が処遇を決めるまでね。私はあなたの回復を待ってた。
- ヴァイ: ケイト、あの子は変わったんだ。
- ケイトリン: 自分の過ちを消すことはできないわ。誰にも。
- ヴァイ: 誰にやり直しの機会が与えられるかなんて、誰が決めるの?
[12:34]
Jinx: If you’re here to kill me, make sure to finish the job.
Caitlyn: Vi thinks you’ve changed.
Jinx: She can’t accept what you and I know. There are no happy endings.
Caitlyn: Is that all you have to say for yourself? There won’t be a trial. I’m giving you this one chance to account for your actions, all the pain you’ve caused. No amount of good deeds can undo our crimes.
Jinx: Do what you came here to do.
Caitlyn: Hating you… I’ve hated myself. I just don’t have the energy for it any longer.
Jinx: I didn’t know your mom was there. It probably wouldn’t have made a difference, but… I didn’t know.
- ジンクス: 殺しに来たのなら、きっちりやりなよ。
- ケイトリン: ヴァイはあなたが変わったと思ってる。
- ジンクス: (ヴァイは)私とあんたが知っている事実を受け入れらないんだよ。幸福な結末なんてないって。
- ケイトリン: 弁明の言葉はそれだけ? 裁判は開かれない。あなたの行動が引き起こした悲劇について釈明する機会を、いまここで一度だけ与える。
- ケイトリン: どれだけ善行を重ねても、罪は取り消せない。
- ジンクス: あんたの好きにしなよ→母親の仇である私を殺すならさっさとしろ。
- ケイトリン: あなたを憎む[hate]ことで……自分自身も嫌悪[hate]の対象になって、この先もそれ(憎しみ[hate]の循環参照)を続ける気力は、もうない。
- ジンクス: あんたの母親があそこ(爆撃した場所)にいるなんて知らなかった。たぶん知ってても(結果は)変わらなかっただろうけど……本当に知らなかった。
[14:37]
Mel: Jayce? What happened to you?
Jayce: Doesn’t matter.
Mel: Something happened to me too.
Jayce: You’re the reason we didn’t die in the attack.
Mel: Apparently so.
Jayce: How long have you known?
Mel: It started then. Feelings I couldn’t explain. But this… I still don’t fully understand.
Jayce: Why just me? Why not save all of them?
Mel: It wasn’t a decision. One moment you’re addressing the Council, and the next we’re standing in rubble. I didn’t have any greater awareness.
Jayce: How can I know you aren’t lying to me?
Mel: Why would you think I am?
Jayce: Because you used me, and Viktor, for Hextech. You called us “investments.”
Mel: Two brilliant young inventors who shared a penchant for impossible surprises. Carrying magic from myth to machine. Rallying the hope and hearts of a nation. You were a wise investment.
- ハンマーが反応する→ジェイスは魔力を持つ者が来たと思って警戒する。
- メル: ジェイス?
- ジェイスはメルが魔法の力を持っていることを理解する(→このあとの糾弾)。ジェイスの様子がおかしいことにメルが気づく。
- メル: 何があったの?
- ジェイス: どうでもいいだろ→だいぶ投げやりな回答。
- メル: 私にもいろいろあったわ。
- ジェイス: 僕たちがあの爆撃で死ななかった原因は君の力か。
- メル: どうやら、そのようね。
- ジェイス: いつから知ってたんだ?
- メル: あの(爆撃の)ときから、得体の知れない感覚が始まったの。でも、まだ自分でもよくわかっていない。
- ジェイス: なぜ僕だけ? なぜ全員を救わなかった?
- メル: 決めてそうしたわけじゃない。ついさっきまであなたが評議会で発言してたと思ったら、次の瞬間には瓦礫の中に立ってた。何が起こったのかさえわからなかったわ。
- ジェイス: その話が嘘じゃないとどうやって信じればいい?
- メル: なぜ私が嘘をついていると思うの?
- ジェイス: 君は僕を利用したじゃないか。ヴィクターのことも。ヘクステックのために。僕らを「投資対象」だと。
- メル: 不可能なことを実現する素質を持った優秀な二人の発明家。魔法を神話の中から機械(ヘクステックデバイス)の中へ。国中の希望と期待を集めた(→ピルトーヴァーがヘクステックという技術で興隆して国家としてまとまるようなニュアンス)。間違いなく賢い「投資対象」だったわ。
- ジェイスが未来の記憶に苛まれ、柱の裏に隠れていたハック(ヴィクターが最初に「進化」させた信者)に気づいて攻撃する。壊れた柱は世界の法則から外れ、浮いたままになる。
[16:06]
Viktor: Allow us a moment of civility, Jayce. We must talk.
Jayce: Viktor. How did you get in here?
Viktor: You once benefitted from my knowledge of this place.
Jayce: That was a long time ago.
Viktor: Had you given me the chance, I would have shown you the merits of my work. Our work.
Jayce: No, this is your obsession. Everything you’ve done to these people, you did alone.
Viktor: Perhaps. But I’m alone no longer. I now speak with all their voices.
Jayce: Say what you came here to say.
Viktor: Somehow I think you already understand what must transpire to complete my mission. I would prefer to do so in peace. The Noxian has other intentions.
Mel: Mother?
Viktor: The Arcane stirs within you.
Jayce: Viktor, for all our sakes, stay away from the Hexgates.
Viktor: Your mind has become rigid, Jayce. Fear clouds your judgment. This chain of events started with you. In my confusion, I was unable to reconcile this. But I now understand. The Glorious Evolution is destined. Let us instead do this once again as partners.
Jayce: My partner died in this room.
Viktor: It was my sincere desire to avoid this.
- ヴィクター: 不作法だね、ジェイス。話し合おうじゃないか。
- ジェイス: ヴィクター、どうやってここに入った?
- ヴィクター: ここに関する僕の知識を君はかつて使っただろ→S1E3で(警備の目をかいくぐって)忍び込んだときのこと→だからいまこうして忍び込めている、という説明。
- ジェイス: 遠い昔の話だ。
- ヴィクター: 君が(コミューンに来たときに)機会をくれていたなら、僕の研究[work]の価値を示せたのに→自然な日本語にするなら「研究」とするしかないが、「神の御業[work]」のようなニュアンスの “work” であることに注意。
- ヴィクター: いや、僕らの→
[S1E3:08:25] Viktor: This Hextech dream of yours has the potential to do that. / Jayce: Our Hextech dream.では、ヴィクターが「君の」と言ってジェイスが「僕らの」と訂正するが、ここではヴィクターが「僕らの」と言って、ジェイスが「君の」と訂正する。 - ジェイス: いいや、これは君の執着だ( “work” じゃないし “dream” でもない)。君が彼ら(=コミューンの信者や集まってきた人たち)にやったことは、君一人の責任だ。
- ヴィクター: かもしれない。だが僕はもう独りじゃないんだ。いまは彼ら全員の声を代弁している。
- ジェイス: 本題に入れ(ここに来たのはそんな話をするためじゃないだろ)。
- ヴィクター: どういうわけか、君もすでに理解しているようだがね。僕がやろうとしていることが完遂されるには何がどうなるべきなのか→ヴィクターはジェイスが未来にいたことを知らないので「どういうわけかわからないが[somehow]」と前置きしているが、ジェイスがサロを殺して異常[anomaly]の持ち出しを阻止したという事実から、これから起こる(べきとヴィクターが考えている)ことをジェイスが理解している、ということだけは理解できている。
- ヴィクター: 僕としては平和的にことを進めたいが、ノクサス人には別の思惑があるようだ→ノクサス軍は強硬手段を取ろうとしているので、その前にヴィクターがハックの体を使って最終的な交渉に来ている。
- メル: 母が?
- ハック(ヴィクター)がメルの後ろに回り込み、メルが魔法で抵抗する。
- ヴィクター(メルに): 君の中でアーケインが蠢いている。
- ジェイス: ヴィクター、お互いのためだ。ヘクスゲートには近づくな。
- ヴィクター: ジェイス、考え方が凝り固まっているな。恐怖は判断を鈍らせる→「栄光の進化」への恐怖を捨てて受け入れろ、のニュアンスか。
- ヴィクター: この一連の出来事は、君が始まりだというのに→ヘクステックの開発&ヴィクターとヘクスコアの融合。
- ヴィクター: 僕も(ヘクスコアと融合して)混乱の中で、このこと(運命)を受け入れられなかったよ。だけどいまならわかる。「栄光の進化」は運命づけられている。(敵対するのではなく)もう一度パートナーとして共に歩もうじゃないか。
- ジェイス: 僕のパートナーはこの部屋で死んだ→ジンクスの爆撃で→ヘクスコアと融合してからのヴィクターは別人だ、の意。
- ヴィクター: これだけは心の底から避けたかったのだが。
- ハック(ヴィクター)がジェイスを殺そうとする。
- メルが魔法で介入し、ジェイスがハンマーの砲撃でハック(ヴィクター)を倒す。
- ジェイスの左腕は異常[anomaly]に浸食される→未来から持ち帰ったハンマーの力を使いすぎると使用者の体が浸食される。
- ヴィクター: 博士、処置を開始してください。
[20:26]
Jinx: Go away. You’re too late.
Silco: Oh, it’s a hell of a place. It says something about the late Marcus that he found imprisoning your sister to be a greater mercy than killing her.
Jinx: Killing isn’t mercy.
Silco: A spark of rebellion still burns inside that husk, I see. No. Killing is a cycle. One that started long before Vander and me. And it will continue long after the two of you.
Jinx: I’m done running in circles.
Silco: We build our own prisons. Bars forged of oaths, codes, commitments. Walls of self-doubt and accepted limitation. We inhabit these cells, these identities, and call them “us.” I thought I could break free by eliminating those I deemed my jailors.
Silco: But, Jinx, I think the cycle only ends when you find the will to walk away.
- a hell of a ~: とんでもない~。いい意味でも悪い意味でも使われる。ここではいい意味の方だが反語的。
- I’m done: ここでは「終わりにした」というよりも「もううんざりだ」のニュアンス。
- oath: 誓い。誓約。公的な場で聖書に手を置いて宣誓するあの感じ。
- forge: 作り上げる。鍛冶場で鍛え上げる感じ。
- code: 社会的規範。掟。慣例。従うべき(と誰もが考える)ルール。
- commitment: 約束。義務。責務。
以下、会話の流れ。
- ジンクス: 消えて。もう遅いんだよ。
- シルコ: おや、実にすばらしい場所だな。お前の姉を殺さず投獄する方が慈悲深いと考えた故マーカス(の人間性)を物語っている→皮肉に皮肉を重ねているのでわかりにくい。最初の「とんでもない場所だな[a hell of a place]」はいい意味の方で言っているが、これは地下牢に対する評価なので反語となる。殺すよりも投獄の方が慈悲深いと考えたからマーカスはヴァイを監獄に入れたようだが、この「すばらしい場所」が、マーカスがどういう人間か物語っているな[it says something about ~]、という皮肉。ここでシルコが言わんとしているのは「こんなひどい場所に投獄するより殺す方が慈悲深い」なので、次のジンクスのセリフにつながる。
- ジンクス: 殺しは慈悲なんかじゃない。
- シルコ: 抜け殻かと思ったが中にはまだ反抗の火種がくすぶっているようだ。そう、殺しは(慈悲ではなく)サイクルだ。ヴァンダーと私が始めるよりずっと前に始まっていた。このサイクルはお前たち二人(ジンクスとケイトリン)がいなくなってもずっと続いていく。
- ジンクス: 同じところをぐるぐる回り続けるのはもう飽きた。
- シルコ: 人は自分で自分の監獄を作り上げる。誓約、規範、義務で鉄格子を組み、自己への不信と、自己に課した限界で壁を立て、その独房に、そのアイデンティティに自ら住み着き(=囚われ)、それを「自分」と呼ぶ。私は、自分を閉じ込めている「看守」を排除しさえすれば、その監獄から自由になれると思っていた→フーコーあたりの哲学が下敷きになっていると思われる。(ジンクスが妄想する)シルコは「看守≒上層からの抑圧」を排除すれば自由になれると思っていたが、それは循環(構造)の範疇にすぎず、何も変わらないまま世界は同じことを繰り返すだけ。だから次のセリフで否定する。
- シルコ: だがな、ジンクス(、私はいまはこう思っている)。この悪循環は、(戦わずに)牢獄から立ち去る意志を持つことでのみ、断ち切れるんだ。
S2E6のヴィクターとシンジドの哲学的議論がマクロ(世界)の主題だとしたら、ここでのシルコの監獄の比喩は、ミクロ(個人)の主題になっている。両方を合わせて、Arcaneというドラマのグランドテーマになっていると思う。
[21:41]
Vi: Jinx?
Jinx: What are you doing?
Vi: I swiped these from the guard station. If you come help use all that explosive potential of yours for good, maybe we could rewrite your story, like you did with Zaun. What do you think?
Jinx: Sure, Vi.
Jinx: You’re never gonna give up on me, are you?
Vi: Hey!
Jinx: You don’t have to worry about me anymore. You don’t need to feel guilty about being happy. You deserve to be with her.
Vi: Wait!
Jinx: There’s no good version of me.
Vi: What are you gonna do?
Jinx: Break the cycle.
- ヴァイ: ジンクス?
- ジンクス: 何してるのよ。
- ヴァイ: これ(鍵束)を詰所からかっぱらってきた。その爆発的なポテンシャルを善いことのために使えば、あんたの物語を書き換えられるかもしれない。ゾウンでそうしたように(→S2E3のポリティカルアートでゾウンを変えたこと)。どう思う?
- ジンクス: いいよ、ヴァイ。
- ヴァイが牢の扉を開けてジンクスを抱きしめる。
- ジンクス: 絶対に私を見捨ててくれないんだね→ジンクスは自分に近しい者はみんな死ぬと考えている(
[S2E2:28:11] Jinx: Whether I'm pulling the pin or not, everyone who gets close to me dies.)→イーシャの死でそれはもはや動かせない事実となった→ヴァイまで死なせたくない→不吉の元(自分自身)を絶つ。 - ジンクスはヴァイに一撃を加え、牢を出て、扉に鍵をかける。
- ヴァイ: ちょっと!
- ジンクス: 私のことなんてもう気にかけなくていいよ。幸せになることに罪悪感を持たなくていい。姉さんは彼女(ケイトリン)と一緒になるべき(そうする資格がある)よ。
- ヴァイ: 待って!
- ジンクス: 私の中に「善い私」なんていない→これまで何度も思い知らされてきたことだがイーシャの死によって “a good version of me” が存在しないことをジンクスは確信した→S2E9で別世界から帰ってきたエコーが “a good version of me” についてジンクスに語る→ジンクスは “a good version of me” の可能性を知る。
- ヴァイ: どうするつもり?
- ジンクス: 悪循環を断ち切る→自分の死によって。
[23:05]
Jayce: I’m sorry. I’ve been an idiot. And an ass. You’re hurting too.
Mel: For as long as I can recall, I have chased the archetype of a Medarda. I believed it my calling to merit the blood in my veins. It was all a lie. This blood is alien to me. Yet it has dictated the course of my entire life. I’m no more than a passenger. A life I spent in self-pity. Now it’s gone. I can never return to it.
Jayce: I’ve been confused about a lot lately. But there’s one thing I know in my bones. There is no force in this world that can control you. You will never be a passenger.
- ジェイス: すまない。僕がバカだった。ひどい態度を取ってしまった。君も傷ついているのに(隠されていた出生の秘密を知ったばかりで)。
- メル: 思い返してみれば、私はずっとメダルダ家の理想像を追い求めてきたわ。自分の体に流れる血にふさわしい存在になることが自分の使命だと信じてきた。でもすべて嘘だった。この血は私には異質なもの……なのにそれが私の人生をずっと支配してきた。私はただの「乗客(→自分で行き先を決められない存在)」にすぎないのね。(追放された)自分を憐れんできた人生の。それすらも失われて、もう二度と元には戻れない。
- ジェイス: ここのところいろんなことが起こって頭の中がぐちゃぐちゃになってるが、ひとつ直感でわかることがある。この世界のどこにも、君を支配できる力なんてない。君は決して「乗客」なんかじゃない。
[28:25]
Caitlyn: Had a feeling I might find you here.
Vi: I really believed she’d help. Say it. You told me so. I was an idiot to trust her. I went behind your back. I choose wrong every time. And because of it, I’ve lost everyone.
Caitlyn: You really think I needed all the guards at the Hexgates? Sorry to say, you’ve grown a bit predictable.
Caitlyn: Listen, while you were gone, I saw someone…
Vi: Cait. I don’t fucking care.
- go behind someone’s back: 出し抜く。ここではケイトリンを出し抜いてジンクスを解放したこと。
- saw someone: “dating someone” だと完全に「付き合っている」だが、 “seeing someone” だとその一歩手前くらいのニュアンス。関係性を濁して言いたいときに後者を使う感じ。これの過去形なので、マディーとの関係を「終わったこと」として言おうとしていると思われる(
[10:30] Caitlyn: I don't need consolation. I need a plan.の様子からすでに関係は終わっていることが察せられる)が、英語ネイティブでもどう解釈していいか迷うレベルの曖昧さ。ヴァイへの気まずさからマディーとの関係性を濁したい(or恋愛関係まではいかないような "fling" だった)のでこういう曖昧な表現になっているのだと思われる。
以下、会話の流れ。
- ケイトリン: なぜかわかったのよね。ここにあなたがいるって。
- ヴァイ: あの子が力を貸してくれるって本気で信じてたんだ。言えよ。「だから言ったでしょ」って。ジンクスを信じた私がバカだった。あんたを裏切って(出し抜いて)まで。私はいつも間違ってばかりだ。そしてそのせいで、みんな失ってきた→「失ってきた」は現在完了形なので「これまでのこと」でありつつも「現在のこと」に焦点が当たっている。ヴァイはいま、ジンクスとケイトリン、両方を失ったと思っている。ジンクスには騙されて(→これはヴァイがジンクスの真意を理解できていないためだが)。ケイトリンには見放されて(→裏切り行為をしたので信頼を失った)。自分が完全に孤独になったと思って絶望しているヴァイの吐露。
- ケイトリン: 警備を全員(ここの警備まで含めて)ヘクスゲートにまわす必要があったと本気で思ってる?→司令官であるケイトリンが意図的にここの警備をなくしていた→警備が皆無だったのでヴァイは詰所から鍵束を盗めた。
- ケイトリン: 悪いけど(じゃあ言わせてもらうけど)→ヴァイには “say it” と言われたが、言って欲しいであろう非難の言葉とは違う言葉なので “sorry to say” と前置きしている。
- ケイトリン: あなたのこと、見抜けるようになってきたわ→ “you’ve grown a bit predictable” は日本語に変換すると、「ヴァイが予測可能な方向に成長してきた」となるが、ここでの実際の主体はケイトリンの方。ケイトリンがヴァイの行動を読めるようになってきた、のニュアンス。ヴァイをからかうようなニュアンスも含む。それは当然、親密さのあらわれなので、「私はあなたを見捨てていない」の意になる。絶望していたヴァイはケイトリンのこの言葉に救いを見出す。S2E1で精神的に不安定になっていたケイトリンをヴァイが支えたのと逆の形。
- ヴァイがケイトリンにキスをする。
- ケイトリン: 聞いて。あなたがいない間、私、他の人と……→マディーと関係を持っていたことを話そうとしている。
- ヴァイ: ケイト、そんなのどうでもいい。
[31:29]
Ambessa: You’re alive!
Mel: I know about the Black Rose.
Ambessa: You know a facade. They are nothing but lies.
Mel: You taught me the best lies come wrapped in truth. What really happened to Kino?
Ambessa: Your brother was struck with curiosity. He got caught in their web and, with every action, grew more deeply entangled.
Mel: So you let him die?
Ambessa: I carried him in my belly, nursed him from my bosom. He was all the sweetness in my heart. For that, they took him, carved into me a wound that will never close. I pray you never suffer the agony of being forced to forsake one child to save another.
Mel: You should have come to me.
Ambessa: You’d have made the impossible intolerable. I did what you could not. For you. For the family.
Mel: Piltover has nothing to do with your feud. Board your boats, leave our shores. I will join you. We can avenge Kino together.
Ambessa: This is more than vengeance, child. These mages dangle over our heads a sword that impales us should we rise too high. Their very nature violates the most core of Noxian principles, that every one of us is equal on the battlefield. That through cunning, sweat, and steel we shape our destinies. The fact you’ve come to parley for your friends’ lives prove you still lack the wrath necessary to defeat an enemy like the Rose.
Ambessa: I’ve found another way.
Ambessa: Imagine, child, an army that need never fear death.
Mel: What have you done, Mother?
- アンベッサ: 生きてたのね!
- アンベッサはハグしようとするがメルの様子がおかしいことに気づく。
- メル: 黒薔薇のことはもう知ってるわ。
- アンベッサ: ただの見せかけを、ね。やつらのすべては嘘でできている。
- メル: 巧みな嘘は真実で覆われている。そう教えたのは母様でしょう。本当はキノに何があったの?
- アンベッサ: お前の兄は好奇心に駆られ、やつらの罠に絡め取られた。動けば動くほど深く、逃れられなくなっていった。
- メル: それで、そのまま死なせたの?
- アンベッサがメルの頬を叩く。
- アンベッサ: この腹であの子を産み、この乳であの子を育てた。何よりも愛おしいと思ってた。だからこそやつらはあの子を奪い、私に一生癒えぬ傷を刻んだ。
- アンベッサ: 一人の子を救うためにもう一人の子を見捨てなければならないなんて、こんな地獄をお前が味わわぬよう祈ってるわ→ここは娘への思いやりというよりも自己弁護のニュアンス。メルの非難に対する返し。
- メル: 私に話すべきだった。
- アンベッサ: (もしお前に話していたら)お前の存在が「(一人の子を救うためにもう一人の子を見捨てるという)不可能(な決断)」をさらに耐えられないものにしていただろう。私はお前がやれないことをやった。お前のため。家族のために。
- メル: でも母様(と黒薔薇)の確執[feud]にピルトーヴァーは関係ないわ。船を出して。この地から離れましょう。私も一緒に行くわ。二人でキノの仇を討つの。
- アンベッサ: これは単なる復讐ではない。
- アンベッサ: あの魔術師どもは、我らの頭上に剣をぶら下げている。我らが高みに昇らんとしたとき、いつでも突き刺せるようにな→ダモクレスの剣を前提している感じ。後半は条件節だが “if” ではなく “should” を使っているので、格調高い言い回し。家族同士の会話は打ち切って、将軍としての会話モードに切り替えている。
- アンベッサ: (そもそも)やつらの存在そのものがノクサスの根本原理に反するのだ。戦場では誰もが平等だという原理に。狡猾さと、汗と、鋼によって己の運命を切り開いていくという原理に→前衛職が後衛職に対して「遠くから広範囲魔法とか使ってんじゃねえよ! 殴り合え!」って蔑んでる感じに聞こえて草。
- アンベッサ: 友人らの命のために談判に(ここへ)来たという事実が物語っている。お前には黒薔薇のような敵と戦うために必要な怒りが足りぬと。
- アンベッサ: 私は新たな道を見つけた→鍛え上げた筋肉だけで戦うのではなく、ヴィクターの力による軍勢、という道。
- アンベッサがメルにヴィクターの信者たちの現状を見せる。
- アンベッサ: 想像してごらんなさい。死をまったく恐れぬ軍勢を。
- メル: 母様、いったい何をしたの。
[34:23]
Sky: I guess this is goodbye.
Viktor: Thank you very much for your company in my solitude, Ms. Young. I will miss our talks.
Sky: No. You won’t.
ここでのスカイの返答は、人間性を失ったヴィクターが「会話を恋しく思う」なんてことはないだろうとわかっているからか。ちなみにこれはスカイ初登場時のセリフの逆になっている→ [S1E5:26:57] Viktor: I can't figure out why it's not working. / Sky: You will.
♪ If I cross the line
ラストの曲で繰り返される “cross the line” はヒーローモノドラマの頻出フレーズ “You’ve crossed the line.” のニュアンス。ヴィランが「人として越えてはならない一線」を越えて、ヴィランとして完成するようなシーンでよく使われるフレーズ。ここでは「人として越えてはならない一線」からさらに一歩踏み込んで、人間性を捨てて人を超越した存在になること、この一線を越えた先に待つ孤独への予感、もろもろを凝縮した名曲(名歌詞)になっている。
S2E8: その他
- アンベッサはリクタスの武器からケイニック・ルーケルンを外して自分で使う→S2E9でケイトリンのライフル、メルの魔法を弾く。
- ルブランの姿はメルの回想(S1E8冒頭)に出てきた王族。メルのトラウマになっている人物なので少し驚いたあと「なんやねんお前は、なにがしたいねん」という感じでルブランを問い詰めている。ルブランが渡したネックレスもこの王族がしていたもの。
- 地下牢でジンクスが持っているジェムストーンは幻覚。
S2E9: The Dirt Under Your Nails
S2E9: あらすじ
- ジンクスは長かった髪を切り、ラストドロップに火を放つ。グレネードにジェムストーンをセットし、ピンを引き抜く。直後、別の世界線から帰還したエコーが時間を巻き戻す。何度かリトライしたあと、エコーはジンクスの自殺を止めることに成功する。
- ヘクスゲートでの戦いが始まる。ノクサス軍は海から艦隊で侵攻し、兵を揚陸させる。ピルトーヴァー軍は小型の転送装置を砲台にして、コンテナをノクサスの軍艦にぶつける。アンベッサは前線に立ち、執行官たちを薙ぎ払っていく。ケイトリンは高所からライフルでアンベッサを狙うが、魔法の弾はケイニック・ルーケルンによって防がれる。
- 巨大なシマー強化兵が、接岸した軍艦からヴィクターの繭を運び出す。ノクサス軍はさらに多数のシマー強化兵を戦場に投入し、転送砲台のある拠点を攻略する。砲手だったロリスは真っ先に狙われ、死亡する。
- ケイトリンたちはヴィクターの繭を破壊する作戦を始める。灰色の靄[Grey]による煙幕を展開し、ステブが繭に爆弾をセットするが、不発に終わる。この爆弾に工作した張本人、ノクサスのスリーパーエージェントであるマディーがケイトリンを不意打ちし、失神させる。
- ケイトリンが目を覚ますと、ピルトーヴァー軍はすでに制圧されていた。アンベッサが威風堂々とあらわれ、マディーがノクサス式の敬礼をする。ケイトリンは最後の抵抗としてアンベッサを奇襲するが、短剣を脇腹に刺される。マディーがライフルでケイトリンに止めを刺そうとした瞬間、メルの魔法障壁が展開され、マディーは跳弾で死亡する。メルはアンベッサに殺戮をやめるよう懇願するが、アンベッサは鼻で笑って取り合わない。
- アンベッサが軍に命令を出そうとしたとき、遠くから爆音で音楽が響いてくる。音の発生源は、ジンクスの隠れ家を元に建造された気球型飛行船だった(経緯については「S2E9: その他」のセクションで考察する)。操縦するのはジンクス。罪悪感の象徴である幻覚は、もうジンクスを脅かしていない。むしろそれを力に変えている。エコーをはじめとしたファイヤーライトメンバーたちがホバーボードに乗って飛行船から飛び出す。地上ではセヴィカをはじめとしたシルコの元手下たちが戦場に乱入する。混乱に乗じて執行官たちも戦闘に復帰する。エコーが巨大なシマー強化兵を倒し、繭の進行が止まる。さらにエコーとジンクスはヴァイがいる転送砲台の戦線に加勢する。音楽家の志願兵は死亡したロリスの代わりに砲手を務め、繭を破壊する。メルは繭の中が空であることに驚愕する。アンベッサがコミューンでメルにヴィクターの軍勢と繭を見せたのは、「嘘を真実で覆う」ためだった。
- 戦場にヴィクターの軍勢が投入され、執行官やゾウン人に対して「栄光の進化」の準備を整えていく。メルはアンベッサに、この道が世界の破滅につながっていることを悟らせようとするが、アンベッサは聞く耳を持たない。ケイトリンはメルとタッグを組み、アンベッサと決闘を始める。アンベッサに圧倒される二人だったが、ケイトリンは魔法防御の仕組みに気づき、自分の脇腹に刺さっていた短剣を引き抜いてアンベッサからケイニック・ルーケルンを奪取する。代わりにケイトリンは左目を失う。メルはルブランの分身を召喚する。ルブランはアンベッサに致命傷を与える。メルは魔法空間に侵入してルブランの正体を探り、分身を消滅させる。アンベッサはメルの腕の中で息を引き取る。
- ヴァイはヴィクターの軍勢から逃れ、エコーのホバーボードに飛び移り、飛行船上のジンクスに迫っていたワーウィックに一撃を加える。エコーは操縦桿を握るが、飛行船は蛇行しながら上昇していく。ヴァイはワーウィックに制圧されそうになる。エコーは意図的に飛行船の軌道を変え、塔の時計部分(=脆い)を破壊して内部に不時着させる。ヴァイは瓦礫に埋もれていたジンクスを助ける。ジンクスはワーウィックに「ヴァンダー」「父さん」と呼びかけるが、ヴァンダーの記憶が完全に焼き尽くされているワーウィックはヴァイに襲いかかる。戦闘中、ヴィクター側の動きによって塔内部の重力が無効化される。エコーを下敷きにしていた瓦礫も浮かび上がる。ヴァイとジンクスは武器の反動を利用して無重力の中でワーウィックとの戦闘を続けるが、「栄光の進化」が始まり、二人もその対象となる。
- ヴィクターはヘクスクローのビームでフェイルセーフルームの扉を焼き切る。ジェイスはヘクスゲートを停止させようとしていたが、ヴィクタが強制的に再起動する。ヴィクターはフェイルセーフの異常[anomaly]を発動させ、自らの杖に取り込み、塔の上へ向かって飛翔する。ヴィクターの重力魔法は近くにいたジェイスも巻き込んで浮かび上がらせ、さらには塔の機能を活性化させて内部の重力を無効化する(S1E3の実験初成功時にジェイスとヴィクターが浮かんでいたのと同じか)。ジェイスはハンマーの反動を使ってヴィクターを追う。二人は塔の最上部に到達し、ジェイスは現在の構図が未来で見た自分の姿とまったく同じであることに気づく。ヴィクターは異常[anomaly]の力を使い、「栄光の進化」を開始する。上層も下層もノクサス軍もなく、すべての人間が光の触手によって意識を統合されていく。ジェイスもまたヴィクターの手によって直接意識を統合される。
- 目を覚ましたエコーは世界の異変に気づき、元凶であるヴィクターの元へ向かう(理由については「S2E9: その他」のセクションで考察する)。何度も時間を巻き戻しながらヴィクターに近づこうとするが、ヴィクターの軍勢に捕らえられ、4秒巻き戻しても脱出できない状況に追い込まれる。エコーはZドライブの設定を変更して4秒をはるかに超える時間を巻き戻し、そのバックファイヤをZドライブごとヴィクターにぶつける。仮面が剥がれ、人間性の一部を取り戻したヴィクターに、統一された意識の中でジェイスが未来の記憶を見せる。未来のヴィクターは、現在のヴィクターに、「栄光の進化」の先にあるのは空虚だけだと伝える。ヴィクターは完全に人間性を取り戻し、動揺しながらも、一人で状況を解決しようとする。ジェイスは自分の左手首に埋め込まれたクリスタルをヴィクターに渡し、ヴィクターと共に加速[acceleration]の魔法を発動させる。加速[acceleration]のルーンの反転によって動作するZドライブのバックファイアはこれによって打ち消され、現実のジェイスとヴィクターは加速[acceleration]のルーンに吸い込まれ、消滅する。「栄光の進化」は止まり、ヴィクターの軍勢も動作を停止する。
- ヴァイとジンクスはワーウィックの拘束から解放されるが、ヴィクターの支配が消えたことでワーウィックの獣性が目覚め、ヴァイを襲う。ジンクスは身を挺してヴァイを守り、自殺をやめたことで無用になっていたグレネードを使ってワーウィックと共に自爆する。
- エピローグ: 追悼式が大々的に行われる。戒厳令が解除されて合議制に戻ったピルトーヴァーの評議会にはゾウン代表としてセヴィカが参加する。シンジドはヴィクターに施した変容処置を再現してオリアナを機械の体で蘇らせる。メルは軍を率いてノクサスへ戻る。キラマン家のアーカイブでヘクスゲートの設計図を調べていたケイトリンはジンクスが換気ダクトから脱出した可能性に思い至る。ヴァイとケイトリンは「水と油」のまま一緒に居続ける。S1E1でパウダーが「いつかあれに乗る」と言った飛行船が海の向こうへ飛んでいく。
S2E9: 脚本
♪
This world is a wasteland where nothing can grow
[…]
Please let me go
「(今度こそ)もう行かせてくれ」というジンクスの心境を歌った曲。 “grow” の箇所で逆再生になる。 “nothing” という否定をエコーが否定する。
[01:38]
Ekko: Wait!
Ekko: I just wanna talk to you.
Jinx: Get out of here, Ekko.
Ekko: I just…
Ekko: I just wanna talk to you, Pow… Jinx.
Jinx: You’re too late, Ekko.
Ekko: Wait!
Ekko: Always a dance with you. I think I’m just gonna sit here a minute. You know, catch my breath. See if I can talk an old friend out of blowing us up.
Jinx: I’m tired of talking.
Ekko: No!
Ekko: You know, I learned from someone… very special… that no matter what happened in the past, it’s never too late to build something new. Someone worth building it for.
- dance: 比喩。相手は自分の動きに反応し、自分もまた相手の動きに反応し、引き寄せ合ったり、離れたりを繰り返すような、複雑で予測できないやり取り、「駆け引き」のニュアンス。シルコ一味とファイヤーライトとして対立しつつも、二人がずっと付かず離れずの距離にいたことを表現している。
- talk out of: 説得して思いとどまらせる。
以下、会話の流れ。
- ジンクスがグレネードにジェムストーンをセットする。
- ※1
- ジンクスがピンを抜く。
- エコーが※1に時間を巻き戻す。
- エコー: 待て!
- ジンクスがエコーの方を見る。
- ※2
- エコー: 話がある。
- ジンクス: 失せろ、エコー。
- エコー: 話を……。
- ジンクスがピンを抜く。
- エコーが※2に時間を巻き戻す。
- エコー: 話があるんだパウ……ジンクス。
- ジンクスが無言でピンを抜く。
- エコーが※2に時間を巻き戻す。
- エコーは何も言わない。爆破で生じた血が滴る。
- ジンクス: もう遅いんだよ、エコー→幻覚のシルコに対するセリフと同じ→
[S2E8:20:28] Jinx: You're too late.→つまりここまではジンクスはエコーの姿を幻覚だと思っている。 - エコーが※2に時間を巻き戻す。
- エコー: お前とはいつもこんなだな→ “dance” は駆け引きの意(単語解説参照)だが、エコーが直前まで発明大会前夜祭でパウダーと踊っていたからこそのセリフ。
- ジンクスがエコーの方を怪訝そうに見る→ここで幻覚ではなく本物のエコーだと認識する。
- エコー: ちょっと座らせてもらうぞ。その、息を整えたいからな。昔のツレが俺らを消し飛ばさないように、ちょっと説得してみるわ。
- ジンクスがグレネードを見つめる→ここにいるのが現実のエコーで、「俺ら[us]を消し飛ばさないように」と言っているので、エコーを巻き込まないような方法に切り替える。
- ※3
- ジンクス: 話すことなんてない(もう話しても意味がない/疲れた/うんざり)。
- ジンクスがプロペラの上から身を投げる。
- エコー: やめろ!
- エコーが※3に時間を巻き戻す。
- エコー: 実はさ、ある人から学んだんだ。すごく特別な人(=別世界のパウダー)から。たとえ過去に何があったとしても、新しい何かを築くのに遅すぎることなんてないんだ。大切だと思える人のためなら→最後は少しわかりにくいが “There is someone who is worth building something new for.” をエモく言ってる感じ。
- ジンクスが違和感を覚える。
このシーンはジンクス視点で時系列を再構築した方がわかりやすい。
- グレネードにジェムストーンをセットする。
- エコー: 待て!
- エコーの方を見る。いつもの幻覚だと認識する。
- エコー: お前とはいつもこんなだな。
- エコーが幻覚ではないと認識する。
- エコー: ちょっと座らせてもらうぞ。その、息を整えたいからな。昔のツレが俺らを消し飛ばさないように、ちょっと説得してみるわ。
- エコーを巻き込まないように飛び降りようと考える。
- エコーがいつのまにか立ち上がっている。
- エコー: 実はさ、ある人から学んだんだ。すごく特別な人から。たとえ過去に何があったとしても、新しい何かを築くのに遅すぎることなんてないんだ。大切だと思える人のためなら。
- エコーが持っているデバイスを見る。猿(ジンクスのトレードマーク)のゾエトロープ。極小サイズの異常[anomaly](をジンクスが認識できるかどうかはわからないがヴィクターのコミューンにいたので推察はできそう)。さらに考えてみると、エコーはなぜ隠れ家の場所を知っているのか(→別世界の同じ場所から転移してきた)。さっきまで座っていたのになぜか次の瞬間には立ち上がっている(→ジンクス視点ではエコーが瞬間移動したように見えるはず)。何かがおかしい。という違和感をとっかかりにして、エコーはジンクスに別世界のことを話した。いや無理あるだろ、と思う人はこの二人がギフテッドであることを思い出そう。
[04:48]
Jayce: I need you and the Enforcers to buy me as much time as you can so I can shut down the Hexgates. It’s our only chance.
Caitlyn: Viktor’s at the center of all this, isn’t he?
Jayce: We’re meant to lose this fight. If he reaches the Hexgates…
Caitlyn: Then we’d best stop him.
- be meant to do: ~することになっている。~する定めにある。
- had best do: ~するのが最善だ。~しなければならない。
以下、会話の流れ。
- ジェイス: 執行官らと共にできる限り時間を稼いでくれ。その間に僕がヘクスゲートを停止させる。これしか望みはない。
- ケイトリン: 事態の中心にいるのはヴィクターなのよね?→メルがコミューンに直接出向いてアンベッサと話しているので相手方の状況はある程度わかっている(繭の中が空であるという致命的な嘘が混ざっているが)。
- ジェイスはコミューンでヴィクターに対峙したときのことを思い出す→ヴィクターがジェイスに微笑みかける(S2E6では描写されなかったカット)→ジェイスはどうすればヴィクターを救える未来にたどりつけるか考えている。
- ジェイスは未来の自分の姿を思い出す。
- ジェイス: 我々はこの戦いに負ける運命にある→彼我の戦力差を考慮し、かつ未来を知っているジェイスは、勝てる戦いではない、と冷静に告げている。この戦いの目的は軍事的勝利ではなく、最悪の結果(人類滅亡)を防ぐことだ、と説明するための前置き。
- ジェイス: もしヴィクターがヘクスゲートに到達したら……(到達した場合にどうなるかの説明は戦闘シーンとのオーバーラップで描写外となる)→日本語字幕と日本語吹替は直前の文とつなげて翻訳しているがこれは間違い。 “We’re meant to ~” は帰結節ではなく完全に独立した文。 “If he ~” に対応する帰結節は、演出上カットされているだけで、ジェイスは描写外でちゃんと説明しているはず。でないと、このあとのヴァイとケイトリンの反応の説明がつかない。
- ヴィクターがヘクスゲートに到達したらどうなるか(=人類が滅ぶ)ということを説明された面々が驚愕する。ケイトリンはヴァイの手を握ってお互いの恐怖をやわらげる。
- ケイトリン: 我々はヴィクターを止めなければならない、ということね→この戦いの目的を簡潔にまとめている。
[14:00] Ambessa: Desperation is the doorway to oblivion, child.
- desperation: 絶望。死に物狂い。
- oblivion: 忘却。消滅。
追い詰められた者が(戦術も何もかも忘れて)取る死に物狂いの行動は自身を滅ぼす道につながっている、のニュアンス。
[15:03] Ambessa: Still a fox.
“wolf” ではなく。
[18:26]
Viktor: Despite the circumstances, Jayce… I am… pleased to see you.
Jayce: There must be some part of you still in there.
Viktor: I am more than I ever was.
- ヴィクター: こんな状況ではあるが、ジェイス、会えて嬉しいよ。
- ジェイス: (そんなことを言っているということは)まだ元の人格が少しは残っているようだな。
- ヴィクター: (残ってるとか残ってないとかじゃなくて)僕はかつての僕を超えた存在となったんだ。
[22:11]
Viktor: It is the answer you and I pursued all our lives. An end to cruelty, injustice. All of us our own authors to an unbroken saga of progress. To the benefit of all.
Jayce: People deserve to choose their own fates.
Viktor: Choice is false. It is how we clothe and forgive the baser instincts that spur us to division. Death, war, prejudice. Energy spent only to consume itself. But we can be of one mind. United.
- unbroken: 完全な。途切れることのない。
- baser: 下劣な。
- spur: (そうさせるように)刺激する。仕向ける。
以下、会話の流れ。
- ヴィクター: これ(栄光の進化)は君と僕が生涯をかけて追い求めた答えだ。
- ヴィクター: 残酷で不当な現実の終わり→おそらくヴィクターはかなり過酷な人生を送っている→
[S1E2:32:48] Viktor: A poor cripple from the undercity. I was an outsider the moment I stepped foot in Piltover. I didn't have the benefits of a patron or a name. - ヴィクター: 全人類で完璧な進歩の物語を紡ぎ続ける→ “All of us (are) ~” の形。
- ヴィクター: それ(全人類で同じ物語を紡ぐこと)は全人類に資することだ→争いや差別、苦悩はなくなるかもしれないが、個を無視した全体主義→次のジェイスの反論につながる。
- ジェイス: 人には自分で自分の運命を選ぶ権利がある→個の自由意志を尊重した自由主義。
- ヴィクター: 選択など幻想だ。それは分断を生む下劣な本能を取り繕い、正当化するための口実にすぎない→選択というのは自由意志のことではなく下劣な本能によって「選ばされた」のを後付けでそれっぽくシュガーコーティングした概念にすぎない、の意。「選択している=自分は理性的である」という思い込みが人を理性的でない方向(自滅)へ導く。
- ヴィクター: (下劣な本能)それは死を、戦争を、偏見を生む。
- ヴィクター: (下劣な本能とそれによって生じる結果の繰り返しは)自らを食い尽くす無駄なエネルギーだ→そのエネルギーは進歩に向かわない→進歩の物語を紡ぐことができない→S2E6のシンジドとの哲学的議論で出た「人類が自身の破滅的行動によって自滅に向かう」に近い話。
- ヴィクター: しかし我々は考えを一致させられる。ひとつになれるんだ。
[24:17] Mel: A wolf has no mercy.
[S1E8:02:47] Ambessa: A wolf has no mercy.
[24:27]
LeBlanc: Your daughter is wiser than you credit. I salute you, Ambessa. For one without the gift, you were quite a thorn.
LeBlanc: What are you doing, sister?
Mel: I see your face, deceiver.
LeBlanc: Sly girl.
- gift: ここでは魔法の才能。
- sly: 狡猾な。抜け目ない。
以下、会話の流れ。
- ルブラン: お前の娘はお前が思うより賢いぞ→懐疑しながらもこうしてちゃんと役割を果たした。
- ルブラン: 敬意を表するよ、アンベッサ。魔力を持たぬ者にしては、ずいぶんと厄介な相手だった→称賛しているように聞こえるが、かなり蔑んでいる感じ。嘲笑するニュアンスが濃い。
- メルがルブランの魔法空間に入ってくる。
- ルブラン: 何をしているのだ、姉妹よ。
- ルブランが鎖の魔法でメルを攻撃するが、メルは逆にそこからルブランの正体を探る。
- メル: お前の(本当の)顔は見えたぞ。ペテン師[deceiver]め→ここではルブランの二つ名として言っているわけではない。
- ルブラン: 抜け目ない娘だ。
[25:46] Ambessa: You are the wolf.
“fox” ではなく。
[26:51]
Vi: Looks like you shouldn’t have come back.
Jinx: Still don’t get it, huh, sis? I’m always with you. Even when we’re worlds apart.
- ヴァイ: 戻ってこない方がよかったんじゃないの→ジンクスがひどい目に遭っているのを前提とした皮肉。
- ジンクス: 姉さん、まだわかってないの? (戻るとか戻らないとかじゃなくて)いつも一緒なんだよ。世界の反対側にいてもね(物理的に/地球の裏側にいても/精神的に/考え方が対極にあっても/敵対していても)。
[27:08]
Jayce: Stop this insanity, Viktor.
Viktor: That is precisely my intention. Your eyes won’t lie… when your mind… is open, Jayce.
- ジェイス: こんな狂気の沙汰はやめろ、ヴィクター。
- ヴィクター: それこそがまさに僕のやろうとしていることだ→人類が自身の破滅的行動によって自滅に向かうことこそが狂気の沙汰。それを止める。
- ヴィクター: 心が開かれれば、君の目は嘘をつかない。
[31:36]
Jayce: This is what you see?
Viktor: This conflict. This senseless waste. I know their minds, Jayce. They want better lives, but emotion clashes with reason. Humanity’s self-corrupting contradiction.
Jayce: You’ve always wanted to cure what you thought were weaknesses. Your leg. Your disease. But you were never broken, Viktor. There is beauty in imperfections. They made you who you are. An inseparable piece of everything… I admired about you.
- ジェイス: 君には(世界が)こんなふうに見えていたのか。
- ヴィクター: この(不可避な)衝突。この無意味な浪費。僕には彼らの心が理解できるよ、ジェイス。彼らはより良い人生を求めている。しかし感情が理性と相克する。人間という存在は自己矛盾で蝕まれるようにできている(内包された矛盾によって悲惨な結末に向かうようになっている)→だからその矛盾を取り除く→栄光の進化。
- ジェイス: 君はいつも自分の欠点(だと自身で考える部分)を治したがっていたな。足。病。だけどヴィクター、君はずっと欠けてなんていなかったよ。不完全さの中に美しさがある。それこそが君という人間を形作る。僕が敬愛した君の、かけがえのない(切り離すことなんてできない)一部なんだ。
[34:26] Viktor: That device can’t be.
初回視聴時はセリフが切れているのかと思ったが、おそらくこれで完結している。「あんな装置が(この世界に)存在するはずがない」「ありえない」の意。
[35:03]
Jayce: I thought I wanted us to give magic to the world. Now… all I want… is my partner back.
Viktor: Why do you persist? After everything I’ve done?
Jayce: Because I promised you.
- ジェイス: 君と共に世界に魔法をもたらす。それが自分の求めることだと、ずっとそう思ってた。でもいまは……君というパートナーを取り戻したい。それだけだ。
- ヴィクター: なぜそこまで僕にこだわる(なぜ見捨てないんだ)? これほどのことをしたあとで(たくさんひどいことをしてしまったのに)。
- ジェイス: 約束したからだ。君と。
ジェイスがここまで約束に固執[persist]するのは、未来で自分の軽薄さを思い知ったから。「ヘクスコアを破壊する」「ヘクステックを兵器化しない」というヴィクターとの約束を破ってしまったことが二人の決別につながり、現状を招いたから。だから今度こそ何があっても約束を果たす。
[35:33]
Jayce: Why did you ever give me this? Why?
Viktor: I thought I could bring an end to the world’s suffering. But when every equation was solved… all that remained… were fields of dreamless solitude. There is no prize to perfection. Only an end to pursuit. In all timelines, in all possibilities… only you… can show me this.
- ジェイス: なぜこんなもの(クリスタル=魔法の可能性)を僕に託した? なぜだ?
- ヴィクター: 僕は、世界から一切の苦しみをなくせると思っていた。しかし、すべての方程式を解いた(問題を解決した/矛盾を取り除いた)先に残ったのは、夢なき孤独の荒野だけだった。完全性の中に見出すべきものは何もない。ただ追求の終焉があるだけだ。あらゆる時間軸、あらゆる可能性の中で、君だけが、僕(引き返せる段階の自分)にこれ(未来の自分自分が語る「栄光の進化」の結果)を見せられる。
ヴィクターはさまざまな可能性を試し、さまざまなルーンが刻まれたクリスタルを幼少期のジェイスに託したが、加速[acceleration]のルーンを託したジェイスのみが、未来のヴィクターから過去のヴィクターにメッセージを伝えられた。正確には、別の世界線でその加速[acceleration]のルーンを反転させてZドライブを開発したエコーが元の世界線に戻り、安全圏である4秒を超えて時間を巻き戻し、そのバックファイア(周りの生物は致命的ダメージを受ける)を完全な存在となったヴィクターにぶつけ、一時的に不完全な存在に戻す(=人間性を取り戻す)、その瞬間に、ジェイスが統一された意識[one mind]の中で、未来の記憶を伝える。未来のヴィクターが過去のヴィクターにメッセージを伝え、かつ過去のヴィクターの考えを変える(→ジェイスの役割)のはこのルートしかなかった。
[37:11]
Viktor: You must go, Jayce.
Jayce: We finish this together.
- ヴィクター: 君は去れ、ジェイス。
- ジェイス: 終わらせよう、一緒に。
軽薄に [S2E2:16:10] Jayce: We'll make this right. Together. と言ってしまったことのやり直し。今度はヴィクターに [S2E2:16:15] Viktor: I must say goodbye to this place now. To you. とは言わせない。共に "make this right" する。
[43:24] Caitlyn: You may read about the war in Piltover. But history is made palatably abstract. For its truth… the agony of every sacrifice… the exaltation of every triumph… is more than one should bear. We… whose decisions led us here, will carry them forever. Our only consolation that with every loss, we found some good, some light, worth gaining, worth fighting for. And though we are doomed to revisit the error of our ways… spark ever more conflicts… our story isn’t over.
ピルトーヴァーで起こった戦争は記録に残るでしょう。しかし歴史は、飲み込みやすいよう、抽象化されて語られる。その奥にある現実、ひとつひとつの犠牲によって生じる苦悩、ひとつひとつの勝利によって生じる高揚、それらの重みに耐えられないから。私たち、この結末へ導く決断を下した者たちは、その重みを永遠に背負う。せめてもの慰めは、失うたびに、何か善いもの、光るものを得たこと。育み、守るに値するものを見つけたことです。たとえ私たちがまた過ちを繰り返し、さらなる争いを起こす運命にあるとしても。私たちの物語は続いていくのです。
追悼式でのケイトリンのスピーチ。
[45:59]
Caitlyn: Is that… singing?
Vi: It’s just a tune my mother used to hum.
Caitlyn: Are you still in this fight, Violet?
Vi: I am the dirt under your nails, cupcake. Nothing’s gonna clean me out.
- ケイトリン: ちょっと……歌ってるの?
- ヴァイ: 母さんが昔よく口ずさんでたメロディーだよ→S1E1冒頭でパウダーが歌っていた曲→
♪ Dear friend across the river - ケイトリン: ヴァイオレット、あなたはまだ戦場にいる?→Arcaneというドラマがずっと描いてきた「世界の仕組みそのものとの戦い」の。
- ヴァイ: 私はあんたの爪の裏についた土汚れなんだ、カップケーキ。どうやったって、拭い去ることなんてできないよ。
S2E9: その他
- 本エピソードにはカットされたシーンがある(本来はもっと長編になる予定だった)。おそらくジンクスとエコーのやり取り、気球型飛行船の建造、セヴィカたちの戦争参加あたり。
[10:18]でマディーがバッグから爆弾を取り出して執行官に渡す→起爆しないよう細工をしたのはマディー。[24:37]の描写から察するにルブランはアンベッサの記憶を抜き取っている? ルブランがキノになりすませていたのは記憶を持っていたからか。[31:11]の構図は[S2E7:33:11]の構図と同じ。ジェイスはそのことに気づいてハッとしている。[42:10]でグレネードの爆発が起こる直前にピンク色の線が走る。これはジンクスがシマーによる身体強化能力を使う際のエフェクト。ジンクスが換気ダクトから脱出したことの示唆。[44:28][45:01]はスウェインのカラス。黒薔薇に囚われていたメルがピルトーヴァーに戻るとき[S2E8:13:46]にもいる。今後はノクサスが主舞台になっていくことの示唆か。- ジンクス襲来時の気球型飛行船=ジンクスの隠れ家。構造が完全に合致しているので両者が同じものであるのは確定。なぜこうなっているのかまったく何の説明もないので想像するしかないが、筆者の想像は次のようなもの。まず前提として、ジンクスは子供のころに「いつか飛行船に乗る
[S1E1:05:22] Powder: One day, I'm gonna ride in one of those things.」と言っている。そして成長したジンクスが隠れ家としていたのはレーン換気システムの廃棄区画で、換気のための巨大なプロペラがある(これも明確な描写はないので実はこれが廃棄された飛行船だという線もありえる)。ジンクスは劇中でいつも何かしら開発している(e.g. 蝶型爆弾)ということを考えると、自分が子供のころに夢見たことを実現するために、「換気システムのプロペラを使って飛行船を作る」という作業をコツコツと進めていたのではないか。しかし空を飛ぶための技術的知識が欠けているために難航していた。そしてその知識を持っているエコー(e.g. ホバーボードの設計[S1E8:18:12] Ekko: You're wrong. It's designed for the fissures. The air is denser.)が本エピソード冒頭でジンクスの元にやってくる。エコーはジンクスに別世界の "a good version of me" について語る。ジンクスはそれを信じる(ジンクスが別世界の存在を理解できる可能性はS2E7で示唆されている)。ジンクスは別世界から帰ってきたばかりのエコーに現状を語る。二人は戦場への奇襲方法を考案する。飛行に関するエコーの技術的知識を使えば気球型飛行船を完成させられることに気づく。ゾウンの象徴であるジンクスと、ファイヤーライトのリーダーであるエコーの呼びかけで、多くの人が協力し、気球型飛行船を突貫工事で完成させる(ジンクスがコツコツと進めていた積み重ねの上にあると考えればそれほど無理はない)。ジンクスとエコー、ファイヤーライト、セヴィカたちは戦場に奇襲をかける。ちなみにこの気球型飛行船にはファイヤーライトのロゴがあるのでエコーが関わっていることは確定。さらにイーシャのトレードマークであるウサギ耳(S2E4の昆虫バトルで付けている)と×マーク(ゴーグル)もあるので、イーシャへの追悼の意も込められている→[02:58] Ekko: Someone worth building it for. - 不時着の衝撃で気を失っていたエコーが一直線にヴィクターを目指した理由について。S2E8でスカー(ファイヤーライトのサブリーダー)がジェイスから話を聞いているので、又聞きでエコーもある程度の状況は掴んでいる。が、おそらくヴィクターが人類滅亡を招いていることまでは公にはされていない。これを知っているのはジェイスと、冒頭の作戦会議にいたメル、ケイトリン、ヴァイの4人のみ。エコーは
[21:07]でヴァイと接触している。ジンクスの気球型飛行船に飛び移るまでの短い時間ではあるが「最悪の事態がどう引き起こされるか」を伝えるには十分な時間だったはず。「栄光の進化」が始まり、[30:35]で塔内にも光の触手が三本(ヴァイ、ジンクス、エコーの分)伸びている。ジンクスはシマーによる身体強化能力でこの触手を一度躱すことができている。つまり物理的な回避が可能だということ。目を覚ましたエコーは「最悪の事態」が始まっていることに気づく。あとは「(状況から)読めるものは読み、読めないものは推測[S2E3:18:06] Read what I could, deduced what I couldn't.」し、異変の中心(異常[anomaly]の影響は放射状に広がっている)に向かい、ヴァイから聞いた通りにヴィクターが「最悪の事態」を引き起こそうとしていることを理解する。そこからはホバーボードの機動力と時間巻き戻し能力で光の触手とヴィクターの軍勢を避け続ける。ヴィクターに最も接近した時点は[33:00]だが、この攻撃は失敗し、時間を巻き戻していったん距離を取る。エコー視点ではないので時間巻き戻しの描写はないが、[33:18]でもエコーはZドライブを使っている。[33:21]で地面に倒され、時間を巻き戻して脱出しようとするが腕を掴まれて失敗する。ヴィクターはジェイスの人間性を奪い、ジェイスは会話不能な状態になる。エコーの腕が自由になってZドライブを使えるようになるが、4秒前に戻っても捕まった状態のため抜け出せない。エコーはZドライブの設定を変更し、ヴィクターに最も接近した直後[33:00]まで時間を巻き戻す。ジェイスが会話不能な状態になったのもなかったことになり、「僕が敬愛した君の[32:36] Jayce: I admired about you.」と言った直後まで戻る。ヴィクターの背後を取ったエコーがZドライブをヴィクターにぶつける。Zドライブの中の異常[anomaly]が巨大化し、大爆発を引き起こしかける。ジェイスとヴィクターが精神世界で加速[acceleration]の魔法を発動させる。現実世界のジェイスの手首のクリスタルで加速[acceleration]の魔法が発動し、Zドライブが起こしかけている大爆発と打ち消し合う。その反応が起こる中心にいたジェイスとヴィクターは、加速と反加速の対消滅に巻き込まれて消える。 - それで結局、「アーケイン」ってなんなんだろうか。時系列に縛られないもの、因果の向こう側にあるものであることはたしかなようだ。人間は三次元空間を自由に移動できるが、時間軸は過去から未来に向かって一定の速度でしか進めない。三次元空間を移動するような感じで時間軸を自由に移動できる存在があるとしたら、人間の生きる世界にはどのように「突き出て」くるだろうか、みたいなことを考えてみるとおもしろい。ただ、それを語るには言語それ自体が因果に囚われすぎている。本稿がまさにそうであるように、「これはこういうことなんですよ」と言語で説明したらもうそれは因果の内側にしか存在できない。そこから抜け出そうとするならポスト構造主義の著書のように、意味不明な文字の羅列になるだろう。だからここでは、Arcaneで気になった点を羅列するのみに留める。1. なぜスカイはヴィクターをシマー中毒者が集う場所に導いたのか。2. ヴィクターがジェイスを殺そうとしたとき
[S2E8:18:46]アーケインから何か啓示を受けているような描写がある。これは何か。3. 加速と反加速の対消滅に巻き込まれて、ジェイスとヴィクターはどこへ行ったのか。
おわりに
Arcaneは物語構造が複雑だ。何度見てもよくわからない。最初は本筋が理解できなさすぎて、ジンクスとヴァイ、ヴァイとケイトリンの物語として見ていた。それ以外はよくわからないまま流し見していたが、見終わって「なんかすごいもの見た」という感覚だけが残った。2周目は物語構造を解析しつつ、ジェイスとヴィクターの物語として見た。3周目はさらにこの世界に深く潜り、ジンクスの心境をトレースしながら見た。見るたびに印象が変わるが、現状は「人は希死念慮と共にいかに生きるか、その可能性」という印象になっている。さらに周回すればきっとまた違った印象になるだろう。どの印象、どの見方も間違いではないと思う。本稿の解釈・考察はそのひとつにすぎないが、誰かがこの物語に深く潜る際の助けとなれば幸いである。
